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働くをもっとオモシロク、仕事が「冒険」になる組織とは? 〜 自分らしく成長できる“土壌”のつくり方 〜(全5記事)

組織ルールは「ちょっと違和感を持たせる」言葉選びを 社内に浸透するスローガンの作り方 [1/2]

【3行要約】
・軍事用語を無自覚に使うビジネス界の慣習は広く浸透しているが、その言葉が組織文化に与える影響への認識は不足しています。
・サイバーエージェントやfreeeの事例から、「社内でバズるか」「遊び心があるか」が組織内コミュニケーションの鍵となることが明らかに。
・リーダーは言葉の持つ力を意識し、採用段階から価値観の共有を図りつつ、定期的な組織の点検と更新を実践すべきです。

前回の記事はこちら

ふだん使っている言葉は組織のカルチャーに反映される

司会者:パネルディスカッションは3つほどテーマがあるんですけれども。今10分程度いろいろご紹介していただいたと思うんですが、お互いに興味があることや気になることがあったと思うので、お二人に対してそれぞれにご質問があれば。そこでお話ししながらみなさんとも膨らませていければなと思うんですけど。

安斎さんはさっき「めっちゃ気になるところがありました」とおっしゃっていましたが(笑)、いかがですか?

安斎勇樹氏(以下、安斎):先ほどの「言霊」、言葉をすごく大切にされているって、やはりすごく大事だなと思いました。僕の本で「戦略とか戦術って軍事的だよね」と言っているんですけど、さっきも言ったとおり、別に戦略とか戦術という言葉を使うのをやめようというわけではないんです。

でも、そういう言葉を使っていることに自覚的になる必要はあると思うんですよね。無自覚に軍事用語に染まりまくって「お客さんを刈り取る」と日常的に言っていると、外の飲み会でも言っちゃったりして「え、刈り取られるんですか?」みたいなことがけっこうあるじゃないですか(笑)。

笠井康多氏(以下、笠井):(笑)。

安斎:そういう不祥事とかもありましたよね、シャブ漬け的な発言があったりとか(笑)。悪気がなかったとしても、ふだん使っている言葉は(組織の)カルチャーに反映されるなと思っていて、そのへんの言葉を大切にされているという話はすごく理解できたんですけど。

それを例えば「マジ価値」と決める時に、どうやって決めているのかとか、どういう方針があるのかとか。今ちょうど2026年あたりにルールデザインの本を書きたいなと思っていたりもするので、ルールをつくるという意味でもルールづくりのプロセスとか、その時の言葉の使い方とかはすごく気になったところです。

組織ルールは「ちょっと違和感を持たせる」言葉選びを

司会者:笠井さん、いかがですか?

笠井:ありがとうございます。これはブランドコアみたいなところにもあるんですけれども、我々の会社はすごく「遊びごころ」というものを大事にしているんですね。常にただの真面目じゃなくて、そこに何か遊び心がある。

言葉選びでいくと、さらに「ちょっと違和感を持たせる」ということもすごく大事にしているんですね。1回読んだだけだと理解できないものにしないと、1回読んだだけで理解したつもりになっちゃって、結局そこに込められた思いを理解せずに勝手に解釈してしまうことがありますので。

「ちょっとわからないな、何だろう。でもおもしろいな」と思ってもらって、ちゃんとその定義を確認しにいって、その言葉をちゃんと自分の中に正しくインストールするということを、やはり言葉の上ではすごく大事にしているのはありますね。

安斎:なるほどですね。すごく具体的な話を聞きすぎかもしれないですが、「マジ価値」とか決める時は、コピーライターみたいな人が誰かいるんですか?

笠井:それは社内でうんうん唸りながら(決めます)。過去のこういった、本当に今の幹となっているような言葉は社内で生み出してきた感じです。特にCEOの佐々木大輔は、そういうところに非常にこだわりが強いので、ずっと「これじゃない、これじゃない」とかやっていますね。

サイバーエージェントでは「社内でバズるか」を重視

安斎:なるほどですね。いや、おもしろいな。でもすごく大事な気がしていて、やはり組織内のスローガンや制度は、権力によって守らせることができるじゃないですか。ああいう指針は、評価制度とちゃんと結びつけて「やってないよね?」とフィードバックする。

例えば「マジ価値」じゃなくて「価値創造」として、「価値創造してないよね」とフィードバックすることはできると思うんですけど。

やはり人間はロボットじゃないし兵隊じゃないので、おっしゃっていただいたとおりちょっと違和感とか、内発的な好奇心をくすぐるものがないと、やらされる組織の指針は、本質的には浸透しないんだよなと思っています。

その意味でサイバーエージェントさんも、組織づくりがすごく強い会社だと思うんです。たぶん今「サイバーエージェント ミッションステートメント」で検索すると、サイバーエージェントの組織の指針が出てくると思うんですけど。

けっこう気になる英語や日本語の言葉がバラバラっと書いてある。で、たまに「ライブドア事件を忘れるな」みたいな重いやつがあったりするんですけど(笑)。

(一同笑)

安斎:これも僕は1回、人事の方に取材して「どうやってつくっているんですか?」と聞いたら、社内でどれだけバズるか、流行るかを考えていると。さすが広告の会社だなと思ったんですけど、「流行らないルールは使われないから、どうやって流行らせるかを考えている」と言っていて。「なるほど、ITの広告の会社っぽいな」と思ったんですけど。

それとまたちょっと違うんだけれども、それにすごく通じる社内コミュニケーションのこだわりをめちゃくちゃ感じたんです。「遊び」というのはやはりキーワードですね。

社内ではマネージャーのことを「ジャーマネ」と呼ぶ

笠井:そうですね。成長するにあたって新しい人がどんどん増えていく中で、やはり独自用語は賛否両論あるんですよね。最初のキャッチアップコストは非常に高くて、いろんなことを学ばなきゃいけないのに、「この会社は新しい言葉まで学ばなきゃいけないのか」というのがあって。

実はこの会社が持続的に成長していくにあたってという議論をした時に、私自身はもっとちゃんと普通の言葉を使ったほうがいいんじゃないかとか、そういう議論をしたんですね。

その時に言われたのが、「これはすごく大事だ」と。「マネージャーという言葉を使った途端に、絶対にみんな上下関係を意識するようになる。多くの会社がそういうふうに使っているから、そのままそれを使ってしまうとそうなってしまう。そうなっていくと、どんどん縦社会になっていくよね」と。

そういったことを食い止めるために「常に横なんだ」というメッセージを言葉に込めようということで、これ(ジャーマネ)を使っていくことが大事なんだと言うので、「なるほど」と私も思って。

それ以来「キャッチアップコストは大変だけど、コミュニケーションコストは下がるから」とみんなに説明して……当然トレードオフはあるのでデメリットもあるんですけど、そういったことを大事にすることで「良い面もやっぱりあるよね」ということを、みんなに理解していってもらっている感じですね。

安斎:なるほどですね。「ジャーマネ」については、新しく入ってきた人は「これ、なんでこうなってるんですか?」って聞いてくるんですか?

笠井:絶対に聞いてくれるので(笑)、フリーらしさを紹介する上でもすごく大事になってきますね。

安斎:でもそういうコミュニケーションというか、対話とか「なんでかと言うと……」という、これまでの経緯のストーリーを話すきっかけがそこに誘発されるのは、すごく大事ですよね。

説明しなくても伝わる文言はたぶんある意味そんなに強くなくて、語り続けなきゃいけないシンプルなルールのほうが、きっと組織的にはいいんだろうな、おもしろいなと思いました、「ジャーマネ」。ルールデザインの本を書く時の事例にちょっと……(笑)。

笠井:ありがとうございます(笑)。ぜひぜひ取り上げてください。

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