【3行要約】・営業チームでは個人の自立と組織の助け合いをどう両立させるかが永遠の課題となっています。
・高橋氏は「経験学習サイクル」と「安全な対話環境」という二つの要素が組織力向上の鍵だと指摘します。
・マネージャーは極端な施策を勇気を持って実行し、その過程で失敗から学び、組織に最適な軸を見出すべきでしょう。
前回の記事はこちら 「それぞれの自立」VS「お互いの助け合い」
高橋浩一氏:さて3つ目。「それぞれの自立」と「(お互いの)助け合い」ということです。

これは自立の話ですが、各個人がいいプレイヤーでありつつ、お互いの助け合いとしてチームとしての団結力があったら理想ですが、起こりがちなのは、各個人が強いプレイヤーになろうとしても、生き残れないと離脱してしまうリスクがあります。
あるいは、チームとしての団結力というのは、いわゆるフリーライダーというか組織に助けられてやっているけれど、本人はそんなに強くなっていないケースもあるわけです。さぁ、これをどうするか。
これをどうするかにもついても、私はブランコ理論で、片っぽをしっかり極端にやり、弊害が見えてきたらもう片っぽを極端にやることを推奨したわけなんですけど、この見極めポイントですね。

もうすでに助け合い文化があるんだったら「自立極端」のほうに振ってみるのもありでしょうね。あるいは率直に話せる雰囲気であれば「自立」のほうに1回やってみることもあります。
あるいは課題が単純だったら「自立極端」で、複雑だったら「助け合い」。なぜかというと、課題が複雑だと個人個人がうまく立ち回れなくて、各個人がスタックしてしまうことがあったりするわけですよね。ですから、課題が複雑だったら助け合いのほうから入るのがいいんじゃないかと思います。
チームのサイズが大きい場合は、助け合いのメリットが非常に大きいわけです。大きいサイズだったら余裕があってできる人がいたりするわけですので、「助け合い」のほうからやることによってメリットを享受しやすいです。
「自立」とは何か
では「自立」と「助け合い」それぞれ話をしていきます。
まず「自立って何ぞや?」っていう話です。自立していない営業の話からしていきたいと思いますが、自立していないと、例えば「本を読んだらこういうことが書いてあった」とか「上司にこういうことを言われた」とか「先輩からこういうアドバイスをされた」となったらもうぶれぶれで、「どれが正解なのか」って混乱してしまうんですよね。
みなさんも組織を見渡してみると、例えば新人とかでこういう状態になっている方はやはりいらっしゃったりするんじゃないかなと思います。

そんな時に妥当解を探す力があれば落とし穴にはまらない。お客さまと状況によって正解が変わるわけですし、正解だったかどうかは教えてもらえないわけですし、お客さまも正解をわかっていないことが多いので、いくつか試してみて生き残る選択肢が現時点では正解なんだと。「でも良い選択肢があるかもしれないな」となるのが、自立している人の行動パターンですよね。実際に試してみようということです。
自立の状態を作るためにはどうしたらいいか
こういう自立の状態を作るためにはどうしたらいいかということで、語り始めたらたくさんありますが、1番押さえていただきたいエッセンシャルな部分は、経験学習サイクルが回る状態をその人の中に作るということです。
デイビッド・コルブという人が提唱した経験学習サイクルがありますけども、健全な成長をするためには、何かの経験があったら、それを振り返り、自分なりにキーワードに落とし込んで、新しいチャレンジをしてみる。これがグルグル回っている人は、ある程度自分でも成長していけているということなんです。

回っている例と回っていない例の具体的なイメージを比較で出します。例えば商談で少し違うお客さまの反応があった時に、自立している、経験学習サイクルが回っている人は思うわけですよ。
「あれ? なんかいつもの商談に比べるとお客さまがけっこう率直に話してくれたな」「なんでだろう? 今日の商談は自己開示をやってみたのがよかったんじゃないか?」と。
キーワードとして「自己開示」。「じゃあ、次の商談でもう少し試してみよう」「別のお客さまでまた試してみよう」となるということです。
これがちゃんとグルグル回っている人って自立していますよね。ですが、自立がし切れていないってどういうことかっていうと、「もう考える時間はない」と。それで結局「大量行動で関係構築だ」みたいな。
余談ですが、今2,500人の購買者に対してのものすごく細かい購買行動の詳細調査をやっているんですが、この「大量行動で関係構築」が実はそうじゃないという、けっこう衝撃の事実が出てきたので、これは別の場で共有したいと思います。
「とにかくがんばるだけだ」となってしまうと、これはもう自立がおぼつかないですよね。自立という状態を作るためには、経験学習サイクルがちゃんとみんな回った状態を作っていきましょうという話です。