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【弁護士解説】退職代行・SNS告発時代の問題社員対応と不当にならない辞めさせ方(全3記事)

職場を乱す“問題社員”への最終手段 適切な「退職勧奨」5つのステップを弁護士が解説 [1/2]

【3行要約】
・問題行動を起こしたり、業務違反をしたりする社員への対応に悩んだとしても、いきなり解雇するのは法的リスクがあります。
・弁護士の吉野誉文氏は「問題社員は自分が正しいと思っているため、段階的な指導と記録が不可欠」と指摘します。
・企業は就業規則の整備から始め、文書による業務指導、懲戒処分、退職勧奨という流れを理解し、事前に対応の仕組みを構築すべきです。

問題社員への退職勧告の進め方

吉野誉文氏:ここまで非常に駆け足で、多くの情報をお伝えしておりますが、最後のテーマですね。「企業が取るべき対策と適切な対応手順」に移りたいと思います。

こちらの事例をみなさんに共有した上で、具体的にどのようにしていくかをお伝えしたいなと考えています。これは実際に相談いただいた事例を、少しミックスしたものになります。簡単に読み上げますね。

現場に反抗的な態度を取る社員Xがいます。社長である自分がいる時には問題を起こさないのですが、自分がいないと他の社員の言うことを聞かないようです。

私自身も何度か口頭で注意をしているのですが、今回、直属の上司に対して、「そこまではできません!」と大声を出した報告を聞きました。仕事はある程度するので流してきたのですが、ここまで来たらどうしたらよいと思いますか? 職場の雰囲気も良くないようで、必要によっては辞めてもらうのもありかと思っています。

こういった相談が実際にありました。そうなった時、みなさんならXさんにどうアプローチをされますか? 少しお考えいただけたらと思います。

方向性の策定と同時に就業規則をチェック

まず、私が実際にどういう対応をするかお伝えしていきますね。まずステップ0-1として、全体の方向性を定めます。

Xさんについては、「もう、これはもう無理だと辞めてもらう方向を考えるのか、あるいは働き続けてもらう方向で考えるのか、どっちが望ましいのかな?」を検討いただく。クライアントと話をして決めるかたちになります。

こういった事例であれば、基本的にいきなり辞めてもらうという解決策は取りにくいのかなと考えられますが、最悪、辞めてもらうと。

要は是正されない場合は辞めてもらう方向になるかと考えますので、1次案としては働き続けてもらう。でもこの状況を改善しないといけない。だから指導方針を考えなければいけない。それでも無理だったら辞めてもらう。という二段構えでですね、方向性を定めるのが現実的かと考えます。

その上で、並行して就業規則を確認をします。要は、懲戒解雇の要件が明文化されているかどうか。あるいは注意・指導の記録が残っているのかをチェックします。

実際の事例では、私が就業規則を拝見するとですね、そこまで多くはないかもしれませんけれども、1回就業規則を定めたまま、ずっと変わらないまま放置してしまっている企業さんもあります。なので(相談されたと)同時に、例えばSNSの投稿に対するルールであったり、副業に対するルールであったりの整備をすることが多くあります。ここで書いているのは整備というところですね。

この、全体的な方針を決めたところがステップ0ですね。

“指導の事実を残す”ことが重要

じゃあ、今度はこの1から5までというステップがあります。

まずは注意指導と記録。そして2つ目に段階的な懲戒処分を考えましょう。そして退職勧奨をする。あるいはそれがダメだったら解雇予告、解雇手続きをするということですね。

先ほどの指針の中で、改善しなかった場合は辞めてもらうと決めている方針の場合、ステップ5までのことを視野に考えて取り組んでいくかたちになります。

まずステップ1ですね。文書にて業務指導を行います。正式な指導としてXに伝えます。具体的に言いますと、こういった指導書を渡すかたちになります。

ちょっと小さい字なんですけど、指導内容を通知しています。「令和何年何月何日何時頃、何々課において上司である何々に対して、業務命令に対して『そこまでできません!』と大声を出すなど威圧的な態度を取った旨の報告がありました」って書いてあります。ここまで具体的な事実を記載して、指導の事実を残します。

本人に渡してサインをしてもらい、注意指導を記録に残します。

本人は自分が問題社員だと思っていない

ちょっと戻りますが、例えば最初の指導のところで、「もう辞めてもらうことを優先したいんだ」ということで、退職勧奨も選択肢としてはあるかといった相談をよくされます。

これはみなさん、どう思います? 要は、もう反抗的になっているXに対して、「もう、そんなに嫌やったら辞めたらどう?」って言うことで辞める可能性ってあると思いますかっていうことなんです。

これ、私の経験則であったり考えですので恐縮なんですけども、このタイミングで「辞めたらどうか?」って言っても、勧奨に応じることはおそらくないと思います。

理由は簡単で、Xさんは自分がやっていることが正しいと思っているからですね。これまで黙認してきているし、仕事もある程度やってきていて地位もあると思っているから、このタイミングで言われても、「いやいや、ちゃんとやっているから、辞める理由なんてないやん」みたいになる可能性があるので、このタイミングで退職勧奨をするのはあまり(おすすめしない)かなと思います。

なので、まず私としてはステップ1、文書にて業務指導を行う。その上で、必要に応じて上司から報告書を提出するかたちにします。要は、「こういう事実があったということを報告してください」というかたちで報告を出すと。

また、必要に応じて、周囲の社員の方のヒアリングを行ったりとか、本人に対するヒアリングもこのタイミングで行うことが多いかなと思います。1つのステップとして記録に残すということですね。

すぐに解雇せずに懲戒処分を行う

この指導を行った上で、じゃあ、指導にもかかわらず改善されなかった場合に関しては、業務命令違反の懲戒処分を行います。

この懲戒処分を行うにあたっては、いきなり解雇するのではなく、これもみなさん、よくご存じだと思いますが、注意して、厳重注意したり出勤停止にしたり、配置転換、退職勧奨、解雇と、要は一定の流れでもって懲戒処分を進めていくかたちになります。

ですので、これは業務改善指導書を提出したのにそれに従わなかった場合は、例えば減給処分するといったことが視野に入ってくるかなと思います。

「じゃあ、このタイミングで退職勧奨を行うのはどうだろうか?」と質問されることがあります。タイミングとしては悪くないかと思います。

要は「指導しました。この状態でも良くないですよ。だからあなたはこういう悪い事実が積み重なっています。先ほどのヒアリングで事実も確認できているので、このままだったら懲戒処分を行わないといけなくなるよ。そういう処分を受けるんだったら違うところで活躍できる場所を見つけたらどうか?」みたいな退職勧奨を行うことはあり得なくもないかなと考えますが。

これもやはり改善されない中で懲戒処分を行っているので、会社に対して反発心が強い中で退職勧奨を行うのも、一般的にはかなり厳しいと考えられるかなと思います。

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