OpenAIのしたたかな演出の結果
亀山:OpenAIとGeminiだっけ。どっちが優秀か俺はいまいち知らないんだけど。本来はもしかしたらGeminiのほうが上かもしれないけど、(OpenAIが)「早くやりますよ」とか言ったり、あれもマーケティングみたいなところもあるじゃない。
大野:そうですね。「75兆円、ソフトバンクと投資をします」と言ったり。
亀山:とかね。素人から見ると、どっちが上かはわかっていない。実際どっちが上だろう(笑)
大野:実際は拮抗していますね。でも、やはりブランドイメージや世界観を作るのがうまいのはOpenAIですし、ブレイクスルーをちょこちょこ起こしてくれているのはOpenAIではある。だけど、いろいろなサービスと連携できたり、ビジネス的に盤石の体制にいそうなのはGoogleのほうかなという感じがするので、際どい戦いです。
亀山:だとしようか。普通で言うと、GoogleとOpenAIが同時に出たら、Googleの勝ちと思っちゃうね。
大野:思いますね。
亀山:だって聞いたことがないよ、OpenAIなんて。でも、早めにマーケティングをするとか、予算をかけましたとかっていう、プロモーション的なものも含めて、今いい勝負になっている。
大野:そうですね。
亀山:というのが、Googleが先にやっていたら、出る幕がなかったかもしれないという気はするんだよね。
大野:そうですね。Googleが認知を取り切っていたら、世界はこうならなかった気がしますね。
亀山:だって、入口をけっこう押さえているじゃない。
大野:そうですね。
亀山:それで言うと、スタートアップ、OpenAIは「いや、Googleみたいなものを俺たちも作れますよ」と言うけど、それだけじゃ勝てなくて。ああいう、ちょっとしたたかな演出の仕方とかプロモーションがないと、やはり良いものだけじゃ駄目なんだよね。そこがちょっとビジネス上のまた別の世界かな。
大野:みんなの中で、「AIと言えばOpenAIだよね」みたいなポジションを取るということですね。
1位のポジションを取れば、その後の広告コストは抑えられる
亀山:そうだね。でも本当に物が良くないと、結局はそうならないんだけど。英会話の時なんかがそうだけど、DMMも英会話は後発で、10番目ぐらいだった。
大野:そうだったんですね。
亀山:オンライン英会話サービスはもともと他にもいろいろあったんだ。うちらはけっこう後発だったけど、担当者がフィリピンへ行ってサービスを作り出して、まあまあネット上で評判が良かったわけよ。評判が良かったし、比較しても内容が似たりよったりだったので、「だったら、ここはプロモーションで押していけ」みたいな話になるよ。
大野:他の競合と比べて、DMMが圧倒的にプロモーションの……。
亀山:プロモーションをわかりやすく言えば、まず他よりも半額にして。
大野:そういうことですか。
亀山:「赤字でいいから、しばらく事業計画を変えろ」ということで。もともとは2年ぐらいで黒字だったのが、「広告を打ちまくって半額でやれ」とか言って、ある程度市場で1番を取ったら、そこからは同じ値段でもいいやという話をするだけ。
大野:1位のポジションを取れば、その後から価格の競争力もつくから、そこから回収するということですね。
亀山:やはりそこを取ると、広告コストがあまりかからなくて済む。OpenAIも、今だったら、広告を打たなくていいわけよ。
大野:打たなくていいですね。
亀山:ここ2~3年ですごく投資していたとしても、ここから先はGoogleと似たようなライバル、同等ぐらいの立場に立ったじゃない。
大野:そうですね。GoogleとVS(バーサス)で並ぶだけでもすごいですからね。
亀山:これはすごいよね。だって、それまで誰も知らない名前だったもの。
大野:そうですね。お金をどう使うかもそうだし、いろいろな手段があると。サプライズが。
「未完成だけど出しちゃう」という決断が正しかった
亀山:そう。時代の流れを作るためだった。その時に「ぜんぜんこれ使えないわ」となるのは駄目だよ。それなりに「けっこう使えるじゃん」というものを出したじゃない。
大野:確かに。そうですね。
亀山:たぶんその時に、Googleは同じようなものを出せたけど、未完成だから出さなかった。
大野:それはそう思いますね。
亀山:でも、「未完成だけど出しちゃう」みたいな。これが決断として正しかったみたいな話じゃない。
大野:実際そうですよね。今、音声生成の領域だと、Algomaticでは「にじボイス」をけっこう広く知っていただいています。僕らもサービスとしては本当に早く出すチームで、いろいろ機能開発したり、「にじボイス」を使ったサービスも今ちょこちょこ作っています。企画から出すまで、早ければ1ヶ月ほどで、そういうやり方をしていたりします。
亀山:でもぶっちゃけ言えば、「(投資した)20億円使い切っておけよ」という感じ。「2年間あったのに使ってないのかよ」みたいな。
大野:(笑)。それはそうですね。
亀山:だから、スピード感的なもので言うと、投資のお金をまだ1割か2割しか使っていないとしたら、何のために入れたかわからないじゃない。
大野:確かに。ただ貯金されているみたいな。
亀山:それこそバンッとそのお金を置いておくか、人材に投入するか、開発とかいろいろな実験に使うか、プロモーションに使うから価値があるんだよね。他に比べたら早いかもしれないけれど、俺からすると「まだ遅いな」という(笑)。
大野:がんばって使っていきます。
亀山:がんばって。無駄遣いはしなくていいんだけど。
80点から60点に落としてでもお金を使う
大野:やはりけっこうお金を使うのは難しいなと思うところもあって。いや、「使っていこう、使っていこう」という考えはあったのですが、無駄にはできないじゃないですか。例えば、どう考えてもやる意味がないテレビCMにお金を使えるとしても、やってもしょうがないじゃないですか。
亀山:それはそうだね。
大野:お金をめちゃくちゃ使うとしたら、マーケティング費用ですね。人員は増やすのにちょっと時間がかかるので。
亀山:人員の中で、自分たちが80点の人間を入れようと思ったら、俺だったら60点まで落としてでも増やすかな。
大野:そういうことですね。より幅広く。
亀山:「逆にチャンスを多くやってみよう」とかする感じかな。
大野:そうですよね。
亀山:だって、たぶん求人はけっこう来ていると思うのね。
大野:はい、来ていますね。
亀山:意外とその中から、おもしろいものが出る可能性もあるじゃない。
大野:そうですね。でも今年(2025年)はお金をけっこう使います。
亀山:そうなの?
大野:はい。まだ亀山さんにはしゃべってないんですけど、僕の中でけっこう使う予定があって。
亀山:2年ぐらいでそれを使い切って、おかわりが来る頃かなと思っていたのが、来年おかわりぐらいでした。
大野:亀山さんからすると、だいぶ堅めの経営になってしまった。
亀山:(笑)。
大野:普通のスタートアップからすると、だいぶ使っているほうなんですけど。
亀山:まあまあ、そうかもしれないけどさ。
大野:僕的には、人員もそうですけど、やはりサービスの認知とか、アクセルを踏むタイミングで一気に使いたいなというのがあって。今年はいくつかいけそうだなというのがあるので、それをちょっとだけ踏んでいこうかなと思っています。おかわりはまだです。20億円の次の……。
亀山:(笑)。
大野:これだけ「おかわりしよう、おかわりしよう」と会うたびに言われているので、いざ「おかわりさせてください」と言ったら、「嫌だよ」と言われたらどうしようかなと思うんですけども(笑)。
亀山:その時はまた考えるけどね。
(一同笑)
大野:焚きつけるだけ焚きつけて。
亀山:いやいや、ちゃんと伸びていればぜんぜん大丈夫だよ。
大野:そうですよね。ありがとうございます。じゃあ、そんな感じですかね。
亀山:みんながんばって投資しようね。
大野:はい、がんばっていきます。じゃあ、ありがとうございました。