【3行要約】
・努力や学習に励むビジネスパーソンは多いものの、周囲の評価に振り回されて本来の目的を見失うという問題があります。
・『覚悟の磨き方』著者の池田氏は、人の評価ではなく「天が与える爵位」、つまり自分の行動にふさわしい結果を信じることが重要だと強調。
・誰も見ていない時こそ自分の哲学に従って行動し、「今とは違う1年後」を作るために新しいことに挑戦すべきだと提言します。
「最初にどういう思いで始めるのか」が大事
池田貴将氏(以下、池田):吉田松陰がもう1つ、とても、とても、とても、とても、とても大切にしていたのが「初一念」という言葉なんですね。最初にどういう思いで始めていくのかが、実はとても大事だよということです。始める時に、どんな思いで取り組むのかということだったんですね。

シンプルに言うと、吉田松陰が言っていたのは「功名か義か」という。「功名」というのは、自分自身の名前が売れればいい、自分自身を見てほしい、自分自身が評価されたい、自分自身が褒められたい、自分自身の私利私欲を満たしたいという、自分自身の名を上げたいことですね。
もう1つは、自分自身の時間やエネルギーを、この目的のために捧げる。自分の時間やエネルギーを、この志のために捧げるという、「義」というものですね。ミッション、自分自身の目的、自分自身のビジョンですね。
例えば勉強する。例えば自分自身が人と関わっていく。例えば何かを学んでいく。最初は「有名になりたい」と思って学び始めるのか、それとも「自分自身が誰かの役に立ちたい」と思って学び始めるのか。最初はほんのわずかな違いしかない。3ヶ月経っても、半年経っても、ほんのわずかな違いしかないかもしれない。
「壁にぶつかった時」こそ大きな差が出る
池田:だけどその違いは、数年経った時に大きな違いになっていく。特にどういう時に大きな違いになるのかというと、うまくいっている時は差はないんですけども、壁にぶつかった時、乗り越えなければいけないハードルにぶつかった時に差がつきます。
自分が私利私欲を満たしたくて始めている人は、乗り越えなければいけないハードルにぶつかった時に、「なんでこんなにがんばらなきゃいけないの?」「自分自身の私利私欲を満たすんだったら、もっと簡単な方法があるよね」と、違う方法を選んでしまう。
一方で、「自分自身は、世の中にこういうことを届けていくんだ」「自分自身は、こういう世界を作りたいんだ」「自分自身は、こういう人たちの問題を解決したいんだ」。そんな目的を持って始めたのであれば、その壁にぶつかる度に、「いや、これを乗り越えるためにやってきているんだよね」「このハードルの向こう側が見たくて、自分自身は取り組んでいるんだよね」と。そこでさらに、自分自身の決意や志を高めていくことができます。
なので、松陰さんの弟子たちに教えていた判断基準というのは、自分自身の私利私欲を満たすためではなくて、自分自身を使って周りの人たちの役に立ちなさいということ。
月収2万円、倉庫住まいでも挫けなかった理由
池田:だから、学ぶのは何のためか? 有名になって、偉くなって、出世するためではなくて、自分自身の価値を上げて、周りの人の役にもっと立てるようになるために学ぶ。だから、学ぶということの意味が、どういう目的で学んでいるのかによって、大きな違いを作り出していく。
それを松陰さんがすごく大切にしていた難しい言葉で言うと、「天爵」と「人爵」というのがあるんですけど。天から与えられる爵位、今で言うと地位ですかね。天から与えられる地位と、人が与える地位というものなんですよね。

どういうことかと言えば、人が与える地位はわかりやすいですけども、たくさんの人たちが評価している、たくさんの人たちが良いと言っている、上司が採用している。だけど、ある会社では上司には評価されなかった、同僚には評価されなかった人も、違うキャリアを選んだ、違う会社を選べば、そこから評価されたり、「この人材は、うちの会社の未来を担う」と期待される人もいるわけですね。
僕自身は大学を卒業して、さまざまな目標達成のやり方を研究しにアメリカに行きました。帰ってきて、人脈もない、お金もない、実績もない、何の資格もない状態で、日本のビジネスパーソンの人たち向けにセミナー・講座をやると決めました。
同級生からは、「池田くん、そんなことをやっていないで就職しなよ」と言われたり、先輩たちからは、「いや、そんなことをやったって、池田くんがうまくいっていないんだから、なんでうまくいっていない人の話を聞くのよ?」と言われました。
やはり最初はとにかく集客をどれだけしても、5,000円のセミナーに1ヶ月間で集まった人数が4名で月収2万円みたいな状態だったので、知り合いの人の家の倉庫に住まわせてもらいながらスタートしていったんですよね。でもその時に、僕自身をずっと支えてくれていた言葉の1つ、判断基準というのが、「人が与える爵位ではなくて、天が与える爵位」。
人が与える地位やステータスではなくて、天が与えるステータスを大切にしなさい。天というのは何かと言ったら、そこに書いてあります。人が与える評価とか地位を追いかけてしまうと、人の見る方向が変わったら、自分自身の態度も変わったり、人の評価が変わったら、自分自身の態度もコロコロ変わっていってしまう。
「誰も見ていない時」にどんな行動をとるか
池田:でも、天が与える爵位は何かと言ったら、すごくシンプルに言えば、「いや結局、自分自身がやっていることにふさわしい場所に行き着くから」ということなんですね。自分自身が思いを持って取り組んだとしても、理解されるかもしれないし、理解されないかもしれない。それはわからないけども、自分自身が思っていることにふさわしい場所に、人生は最後にたどり着きますよという。
特に松陰先生の大切にしていたのは、誰かが見ているところで努力するのは誰だってできるんだよ。誰かが褒めてくれるんだったら誰でもできる。だけど誰も見ていない、なんならやったらそのことで後ろ指を差されて、やたら批判される。そんな状況の中で、自分自身がどんな思いでどんな行動をしているのか。
『覚悟の磨き方』という本を書かせてもらいましたが、覚悟というのは、誰かが見ている時、いざという時にどんな決断をするのかではなくて。むしろ誰も見ていない時に、自分自身が100パーセント、自分次第でコントロールできることの中で過ごしている時に、どんな行動をして、どんな選択をしているのかによって作られていく。
だから、みなさまのところの最後にも書いてありますけど、その結果もたらされる位置を受け入れていくということです。なので、吉田松陰の教えの中ではシンプルに言えば、自分自身がどんな人生哲学を持って過ごしているのかがとても大事でした。
周囲から「変わっているね」と言われる状態を目指す
池田:自分自身がどんな人生哲学、目的を持って過ごしているのか。周りの人の目を気にして、周りの人に評価されるように何かを発するんじゃなくて、世の中が変わっている時なので、周りの価値観もどんどん変わっていく。
そんな時に周りに受け入れられよう、周りに受け入れられよう、周りに受け入れられようとしていくと、周りがどんどん変わっていくから、自分自身もどんどん、コロコロ表面的なもので変わっていかなきゃいけなくなる。
だから、松陰さんが弟子たちに伝えたのは、「世の中が変わっているんだから、変わっている世の中で受け入れられるのを目指すんじゃなくて、その人たちから『変わっているね』と言われるのを目指しなさい」と。
だから松陰さんが教えていたのは、「諸君、狂いたまえ」という。狂っているというのは、松陰さんの言葉で言えば、とても幸せな状態だという。自分自身が心から正しいと思っていることに対して、100パーセント純粋な気持ちで取り組めていること。英語で言うと「go crazy」なんですけど、「go crazy」は日本語にすると、「夢中になれ」という意味です。
だから周りから見たら「狂っているよね」と言われる人ほど、本人は自分自身の物差しで、自分自身の判断基準で、自分自身の目的に向かって夢中で過ごせているわけですね。
今日は短い時間ではありましたけど、お届けしたものが1つでも2つでも、一言でも二言でも、みなさまの心に届くようなものになったら、とてもうれしいなと思います。
松陰さんは、「どんなところだったとしても、どんな時代だったとしても、どんな過去を経ていたとしても、何歳だとしても、経験があってもなくても、その人がその人にしかできない道が必ずある。だからその道を行きなさい。信じて行きなさい」というのを繰り返し教えていました。みなさまにとって、信じる道を行く力に少しでもなったらうれしいなと思います。それではご清聴、ありがとうございました。
(会場拍手)
「今と同じ1年後でいいのか」を自分に問う
司会者:ありがとうございました。それでは最後に、今壁を乗り越えようとしているビジネスパーソンのみなさまに、一言メッセージをお願いいたします。
池田:僕は、「1年後は必ずやってくる」という言葉をすごく大切にしています。1年後というのは、よほどのことがなければ必ずやってきます。でもその時に、今と同じ1年後にいたいのか、それとも今とは違う1年後にいたいのか。僕はそれをいつもいつも、自分自身に問いかけています。
今と同じ1年後でいいのであれば、同じことを繰り返していればいいだけ。一方で、今とは違う1年後を作りたいのであれば、これもとてもシンプルで、今までとは違うことを行っていけばいいだけ。
1日1日では小さな違いしか作られませんが、その1日1日の違いが積み重なっていくと、1年後にはまったく違うところに進んでいきますので、少しでも、みなさまが今ぶつかられている壁を乗り越えることのお役に立てたらうれしいなと思います。
司会者:池田さん、ありがとうございました。
(会場拍手)