【3行要約】
・変化の激しい時代には情報やノウハウが溢れているが、それを活用できる人とできない人の差は「判断基準」の有無にあります。
・『覚悟の磨き方』著者の池田貴将氏は「令和で最も売れている教養書として吉田松陰の思想が注目されるのは、不安定な時代だからこそ」と指摘。
・ビジネスパーソンは周りの評価ではなく、自分が心から正しいと思う「至誠」の精神で判断し、行動することが重要だと説きます。
令和で一番売れている教養書『覚悟の磨き方』著者が登壇
池田貴将氏:行動心理学・リーダーシップ研究者の池田貴将です。日頃、みなさまのパフォーマンスを上げるというプログラムを、個人の方や経営者の方、組織に提供しております。
本日は「心に火を灯せ」ということで、『覚悟の磨き方 超訳 吉田松陰』という本が、今60万部を超えて広まっております。今というこのタイミングの中で、どういったものが必要とされるのか。みなさまのこれからのステージを上げていく上で、どういったものがお役に立てるのか。精一杯お届けしていこうと思います。
本日、みなさまにお会いできることを心から楽しみにしておりました。短い時間ではありますけれども、精一杯みなさまのお役に立てるように全力を尽くしていきたいと思います。
それでは、さっそくではあるんですけれども。今という時代のこの1年間だけでも、『覚悟の磨き方』という本は10万部以上が売れております。令和になってから日本で一番売れている教養書でも、吉田松陰の『覚悟の磨き方』が選ばれましたし、先日もNHKで吉田松陰の特集が組まれたりしていました。
今という時代の中で、なぜ(吉田松陰の考え方が)重要になっていくのか。吉田松陰を必要としている要素というのは、変化が激しい時代ですよね。世の中が不安定になっていく。これから先、どうなっていくのかがわからない。そういった時代に、何が鍵になっていくのか?
みなさまのところの資料にも出ていますけれども、ピラミッドの上の部分ですね。「世の中の人は、これから将来どうなるのか?」という情報だったり、さまざまな起業やプロモーションのノウハウだったり、ブランディングのやり方だったり、目標達成のメソッドだったり、キャリアをアップするための方法論だったり。インターネットの時代、SNSなどでそういったものはさまざまな情報として手に入ってきます。
今、「吉田松陰」の考え方が注目される理由
一方で、みなさまも実感があると思いますけれども、「その情報を使って、動き出せる人と動き出せない人は何が違うのか?」というのが、みなさまのピラミッドの下のところに書いてある、「判断基準」なんですよね。

自分自身の判断基準を持った中で情報を取り入れていく人は、それをどんどん使っていくことができます。この後、幕末のリーダーたちを育てた吉田松陰が、どういう判断基準で生きていたのかをご紹介いたしますけれども、変化の激しい時代じゃないと、この判断基準というのは求められないんですよね。
変化がない時代だったら、みんながうまくやっていることを、そのまま同じようにやっていけばうまくいきますけれども、同じことをやっていたら置いていかれるだけ。去年やっていた成功の方法を、今年またやったとしてもうまくいかないのであれば、それは変化が激しい(ということ)。去年の正解が、今年の正解でなくなっていってしまう。
そういった時に、自分の中で判断基準をしっかりと確立させていかないと、変化に振り回されてしまったり、情報、ノウハウ、やり方、メソッドに振り回されてしまいます。なので、どう決断していくのかが、とても大事なポイントになっていきます。
米国の文化を学ぶため密航を企て失敗、牢獄へ
歴史の授業ではないので吉田松陰について簡単にお届けしていきますと、吉田松陰は11歳の時に、殿様に抗議をするところから始まります。小学校5年生ぐらいの段階で、県知事に抗議するみたいな状態ですね。なので、学問のお守りとかになっていたりもします。

21歳から、各地の知識人と交流します。わずか5年で、青森から長崎までとにかく歩き回って、自分自身に刺激を与えてくれる人、自分自身に知恵を渡してくれる人、自分自身が勉強になる人というのを、貪欲に動き回って、歩き回って、自分自身が見聞きしたもの、触れたものを大切にして集めていきました。
24歳の時に、アメリカから(マシュー・)ペリーが軍艦4隻でやってきます。その時に吉田松陰は、日本とアメリカの文明の差を見て、「このままではいけない。これは海を渡って、向こうの文化を学ばなきゃいけない。技術を学ばなきゃいけない」と言った。
当時は黙って海外に行ったら死罪という時代でしたけれども、その時に命を懸けてペリーの黒船に乗らせてもらおうとして失敗します。向こうは英語を使っているんですが、漢文で「乗らせてくれ」という文章を書いたので、向こうからそもそも理解がされないという状態でした。
そうした中で、失敗をして自首をして、野山獄という終身刑のような牢屋の中に入れられてしまうんですね。そこには、20年入っている人とか30年入っている人とか、人生を捨ててしまったような、投げやりになっている人たちがたくさんいたんです。
終身刑の囚人たちと学び会う場をつくる
松陰さんのマインドセットというのはどういうマインドセットかと言ったら、「どんな場所にいようが、自分ができることがある。どんな場所にいたとしても、自分自身を磨き上げることができる」。
特に吉田松陰が信じていたのは、「順境」と言うんですけど、うまくいっている流れにいる人よりも、うまくいっていない逆境にいる人たちのほうが学びは深い。学んでいることが自分の身になる。
だから、吉田松陰が一緒に終身刑になっているような人たちに語ったのは、「僕らは今、うまくいっているか逆境かだったら、どっちだ?」みたいな。それはもう全員が「いや、どう見たって逆境でしょ」と。「こんなに学びに適した時はないと思うが、いかがか?」みたいに言って、そこにいる囚人同士がみんなで教え合う関係を作っていきました。
それから、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、松下村塾という自分自身が建てた塾で1年余り指導をしました。その後、明治時代になってから、総理大臣を含む90名以上を育てていったんですね。
その時の松陰さんが教えていたことは、世の中の価値観がどんどんどんどんと変わっている時代に、周りに答えを求めたところで周りに答えはない。だから、自分自身を信じること。
この後にも出てきますが、自分自身が心から信じていること、自分自身が心から正しいと思うことなのであれば、そのことを全力でやり抜きなさい。というのが、松陰さんが90名以上の人たちにずっと教え続けていたことなんですよね。
吉田松陰の教えから、リーダーシップやモチベーションを考える
その後、松陰さんは幕府から取り調べを受け、幕府批判をしてしまって、29歳で命が終わってしまったんですけれども。松陰さんの教えで僕自身がやったのは、世の中のリーダーシップやモチベーションの科学ですよね。人はどうやったらやる気になっていくのか。
吉田松陰の言葉も、やはり当時はなぜだかはわからなかったけど、現代の科学では、そういうふうに思考すれば、「それは確かにやる気になるよね」というものがあったんですよね。
なので、リーダーシップやモチベーションの科学と吉田松陰をこうやってギュッとブレンドして作ったのが『覚悟の磨き方』という本です。アスリートの人たちは『覚悟の磨き方』を持ち歩いて、広めてくださっている人たちもたくさんいます。
その中で、今日お届けしていきたいのは、みなさまの人生で、さらに次のステージに向かっていく段階の時に、吉田松陰の教えの中でこのポイントはぜひ押さえていただきたい、持って帰っていただきたいというのを、選んでご紹介していきます。
(その)1つが何かと言いますと、松陰さんの座右の銘というか、自分自身がとにかく大事にしていた。教える時に、人と関わる時に、自分自身がいろんな選択をする時に、何よりも大切にしていたのがこの2文字で、「至誠」という言葉なんですね。至誠、誠に至るなんですけども。

シンプルに言うと、先ほども途中でお伝えしましたが、「心の底から自分は正しいと思っていますか?」「その決断をすることが、心の底から自分自身は良いことだと思っていますか?」という。それが、自分自身が心から良いことだと思っているのであれば、必ず人には伝わるし、人は動いていく。道は開いていく。
自分自身が心から正しいと思うことをする
だから松陰さんは最後に処刑される前の晩に遺書を書いていたんですけど、その遺書の中にも、「自分自身が処刑されることは、なんら嘆くことではない。自分自身の思っていることを正直に伝えて、それが伝わらなかったんだから、自分自身の誠が足りなかったんだ」と書いて、「君たちが心から信じることに取り組みなさい」と弟子たちに送ったんですよね。
「心から自分自身が正しい(と思うこと)」というのは、周りの人がどのように評価するのかではなくて、世の中から見てどうなのか。1つの答えとしては、僕らはいつかこの世を去るわけじゃないですか。それは1年後かもしれないし、50年後かもしれないし、どのタイミングかはわからないんですが。
いつかこの世を去る時に、自分自身が「あれをやっていてよかったよね」と思えるのであれば、それは心から正しいと思うことのはずなんですね。特に幕末という時代の中だと、「明日、自分の首が道端に転がっていたとしても仕方ないという覚悟を持て」みたいなのを、松陰さんがずっと教えていたんですね。
現代では、それは起こりにくいことですけれども。自分自身が心から正しいと思うことを、自分が亡くなる時に「あれをしておけばよかった」と思うのであれば、それは周りの人に理解されなかったとしても、今自分自身が取り組むべき正しいことかもしれないですね。