【3行要約】
・効率的な会議運営が求められる一方で、「30分で本当に成果が出るのか」という疑問も根強く残っています。
・長谷部氏は「論理と感覚の両利きの視点」を提唱し、効率化で捻出した時間を価値観のすり合わせに活用することを推奨。
・チーム全体で会議後すぐに議事録共有やToDoに着手する習慣をつけ、プロジェクトの初速を上げることが重要です。
控えめで他人任せなメンバーの対処法
長谷部可奈氏:時間の許す範囲でいただいた質問にお答えしたいと思います。みなさんけっこう、チャットのほうに「どうなんだろうね?」という感想を書いていただいていますが、もしあれば「Zoom」のQ&A機能から気軽にご共有いただければなと思います。
イエス、ノーで聞きたいと思いますが。米山さん、ここまでチャットを私はあまり見られていなくて、駆け足で進んできたんですが、取り上げたほうがいいものがあれば「うん」と言ってください(笑)。ありそうですか? なさそうだったら、事前にいただいている「Miro」のほうに進んでいきたいと思います。
じゃあ、「事前にいくつか回答を書きますね」と米山さんに(コメントを)いただいていますので、私たちは事前にMiroにいただいているものを見ていきたいと思います。たくさんいただいています。ありがとうございました。
ざっくり見ていくと、「そもそも考え方をどう広げていったらいいんだろう?」「プロジェクトマネージャーの育成をどうしていく?」「スケジュール、遅延しちゃうよ」というようなお話。あと会議のほうは、「30分でいったいどういうことをしているんだ? 時間内に終わらないんだけど」というようなお話をいただいています。
残り時間は短いですが、ピックアップして見ていきたいと思います。ちょっと根深いというか私が一番気になっているのは、「日本人はマネジメントがうまくないと、昔、聞いたことがあります。いい意味で控えめ、悪い意味で他人任せ。そのような性格でもプロジェクトマネジメントはできますか?」と、事前の質問でいただいています。
主体性は「対話」を通じて引き出し合うもの
本書のタイトルで、「主体性を取り戻す技術」と言っていますので、本書の論点で回答いたします。
控えめ、他人任せではない主体性は、自分の中から自分の努力で見いだすものではなく、対話を通じてお互いに引き出し合うものだと考えています。これは8章のチーミングのところで触れています。簡単に言えば、人から期待されれば応えたくなるのが人間の性(さが)ということですね。例えば災害時に自主的に助け合ったりする行動が見られるのも、この一例だと考えています。
なので、ロールセッションというのは私たちの本の中で紹介しているものですが、お互いの役割にどういう期待をしているか。「こういうことを任せたいんだよね」とか「こういうことを任されたいんだよね」ということを、対話を通じて他者の期待に応えることを伝えていき、主体性が育まれていく環境をプロジェクトの中でぜひ作っていただきたいなと思います。
「あなたは今日からプロジェクトマネージャーですよ」と言われて、いきなり責任が取れる性格には変わらないと思いますので。先ほどの「過去から未来へ」という時間軸を見て育んでいくところを見て、プロジェクトを進めていただけるといいかなと思っています。
「両利きのプロジェクトマネジメント」をチームに浸透させるには
あともう少し見ていきたいと思いますが、「考え方をどう広げていくのか?」といただいています。「両利きのプロジェクトマネジメントをすべき人が必要性を理解しないです」というようなお話もいただいています。
このピンクのは米山さんが書いてくれているやつですね。「『論理と感覚』という両利きの視座は、当然プロマネだけでなく、メンバーも持っていることが望ましいです。ただそれは、抽象的な概念として持っているのではなく、具体的な行動として持てていることが大事だと考えています。そのほうが腹落ちもしやすく、チーム全員に考え方が浸透しやすいからです。
具体的な行動としては、例えば、論理、直線的なモードについては、ミーティング前のアジェンダ設計と、ミーティング後すぐの議事録共有。感覚的なところについて言えば、全員で付箋に意見を書き出すことで雑談する時間も許容して、ちょっとゆるむ時間がある。モヤモヤや違和感を出せる場がある。
こういう具体的な実践を通して理解していっていただくとよいと思います。なので、まず具体的なところをベースにみなさんと一緒に考え方を共有していってください」とお願いしています。
これは実はみなさん、わりとふだんやっていると思うんですよね。なので意味付けの仕方が重要だなと思っています。
定例会議後のアクションの初速を上げる
「じゃあ、ちょっとここは直線の感覚でピシッとやりますが、ここからは曲線の時間として、みんなでふだん、どうかというのを考えていこうか?」みたいな使い方をしていくと、「あっ、これが両利きでやっているということなのか」と具体的に伝わっていくかなと思っています。
あと、ほかにも来ているのは、プロジェクトの進め方。「どうしてもスケジュールが遅延してしまうんですが」というお悩みをいただいています。回答を読み上げますね。
「遅延にはさまざまな要因があり得ると思いますが、本書でおすすめしている定例会議を絡めた対処法としては、チーム全体の会議後のアクションの初速を上げることを意識していただけると、結果としてプロジェクト全体のスピードも上がり、遅延しにくくなるかと思います」
会議後すぐに議事録を共有、ToDoに着手する
これが具体的にどういうことかというと、「会議後すぐに議事録を共有する。あとToDoの担当各自がすぐに着手する」。ここで完成させる必要はないんですが、とりあえず手をつけてみるところまですぐやっておくということですね。
「例えば、月曜日から金曜日までに実施するToDoがあったとして、月曜日時点で手書きでもよいのでラフな検討メモを共有してもらうといったサポートがあるとToDoが確実に進みやすいかなと思います。手書きメモでよいというかたちで一歩目のハードルを下げることで、対処のスピードをチーム全体として上げていくことが有用です」。
人間誰しも、この一歩目の腰が重いんですね。私もです。どんどんタスクの処理コストが高まって、気持ち的には「あぁ、締め切りは迫っているが何にもできていない」となって、ますます遠ざかりたくなるので、ToDoが割り振られたら、なんなら会議中にその場ですぐに確認してもらうことをやっていただくといいかなと思います。
タスクをさばくのがすごく得意な人に聞くと、「いや、お風呂に入りながらどういうことをするか考えているんですよね」と言っていました。なので、本丸というか「実際に成果物を作る」みたいなところに着手する前の準備運動をきちんとデザインしていくことが大事かなと思っています。
会議時間を30分に抑えるポイント
ここまでがプロジェクトのほうでいただいているものですね。あとは会議のほうで、「本当に30分で?」「両利きのプロジェクトマネジメントを週1回30分で本当に実現できるんですか?」といただいています。これは「会議を両利きの視点から考えてください」とお伝えしています。
「前提となる価値観やそれぞれの思いのすり合わせが終わっていれば、週1回の30分のミーティングで確認しなければいけないことは減らしていけるんじゃないかな」と考えています。
「ただ、30分という時間自体に意味があるわけではないですし、これがどのプロジェクトでも適切な時間かというと、そういうことはないと思います。そもそも必要な議論はじっくり時間をかけて行われるべきで、何でもかんでも短くできるものでもないと思いますので、会議を直線と曲線で捉え直して推進していってください」というのが、私たちのお伝えしたいことです。
すり合わせがされていないからこそちゃぶ台返しが起きることもあると思いますので、そういったことを丁寧に踏んでいくことで、2時間かかっていた会議を短くできるということですね。
あと、やはり過去から未来への連続で考えているので、「今月、1週間に1回やるとしたら4回あるから、この4回をどういうふうに使っていこうか?」というような時間軸でプロジェクト全体を見ていただくのもよいかなと思います。
効率化して捻出した時間をどう使うか
先ほどお伝えしていたとおり、事前にアジェンダを設計して、いかに効率良くできるかに情熱を注ぐのは直線のほうですね。「ToDoがきちんと果たされるかどうか?」「みんなが取り掛かりやすい状態になっているか?」というところを見ていくのが直線です。
そうやって捻出した時間を曲線の時間に使っていく。「そもそもこのプロジェクト、どうなっていくといいんだっけ?」みたいな話もいいですし、「最初のキャリアでは、こういうスキルを習得したいと言っていたけど、どうよ?」みたいなことを話すような時間に使っていただいてもいいですし。
単純に効率化だけを推進するのではなく、効率的に進めることで捻出した時間をもっと大事なところに使いたい。というふうに、みんなで考えて使っていけるといいかなと思います。
ただこれも、プロジェクトマネージャーだけが思ってやろうとしても、「えぇ……もう、ちょっとそういうのは意味を感じないので、曲線の時間とかいいっす。作業させてください」と言われると元も子もないので。やはりこういうことを大事にしてプロジェクトを進めていくのが今の時代は大事なんだよという価値観のすり合わせは、プロジェクトメンバーと最初にしておく必要があるかなと思っています。
ということで、残りあと4分ぐらいになってしまったので、質疑応答はここまでにさせていただきます。ありがとうございました。