株式会社キープレイヤーズ代表取締役 高野秀敏氏のYouTubeチャンネルでは、1万人以上のキャリア相談、3,500人以上の経営者の経営や採用の相談に乗ってきた高野氏が、働き方にまつわるノウハウを紹介します。今回は高野氏の著作『ベンチャーの作法「結果がすべて」の世界で速さと成果を両取りする仕事術』でも触れられている、企業と離職者の関係性について解説します。
人がたくさん辞める = 悪い企業なのか
司会者:今回出版された『ベンチャーの作法』の中で「『何人辞めた』ではなく『誰が辞めた』が重要」っていう記載がありますが、ベンチャー企業って離職する人がすごく多いと思うんです。よく人が辞める会社って、けっこうヤバかったりするんですか?
高野秀敏氏(以下、高野):私はそう思わなくて、T2D3(スタートアップ企業の成長スピードを測る指標。売上額が前年の3倍、3倍、2倍、2倍、2倍と上がり、5年で72倍の成長をすることを指す)みたいな感じで成長している会社だったらたくさん採用するし、たくさん辞めていっちゃうんですよね。だから上場している会社レベルでも、「50人採って25人が辞めている」みたいな会社はたくさんある感じですね。
司会者:なるほどですね。
高野:その中身が大事で、優秀な方で尖っている方は起業しちゃうんですよね。これは、それぐらい優秀な人を採っていたってことなので、まったく問題ないですよね。
司会者:しょうがないという感じ。
高野:で、申し訳ないですけど、パフォーマンスを出していない方がお辞めになっている(パターン)。これはむしろ『ビジョナリー・カンパニー2』で言う「誰をバスに乗せて、誰に降りていただくのか」ってことがきちっとできている会社なので、むしろ良い会社ですね。
大切なのは組織にとって重要人物とされていて、評価も高い人ですね。「絶対起業してやる」みたいな人はしょうがないです。そうじゃなくて組織向きなチームプレー型の方で、中枢を担っていた人たちが辞めちゃっている。これはインパクトがかなり大きいですね。だから、辞めている人の中身が大事。
人数より、どのポジションが辞めているのかを見る
高野:あとは人が辞めてもプロダクトとかサービスがぜんぜん大丈夫な会社とか、辞めている人が多いって言っているのに実は伸びている会社もかなりあるんですね。だからそこは数字とか中身を見ないといけないと思いますね。
司会者:なるほど。じゃあ自分が今勤めている会社で人がどんどん辞めていても、サービス・売上が伸びていたら関係ないと。
高野:そう、考え方ですね。だからこの間、記事で「今後1年間で退職したい人が多いランキング」みたいなのをお見かけしましたけども、ああいう会社さんの中でも、たぶん上場する会社はぜんぜんあるんですよね。
確かイー・ガーディアンさんは話を聞いた時に、大きくなったあとに5人だかになっちゃった。だけど上場されましたよね。だから短期で見れば「辞めてる人が多いけど大丈夫?」ってなるんだけど、やはり表面的な情報じゃなくて中身が大事かなと思いますね。
司会者:なるほど。ほかに「社内でこういうポジションの人が辞めたらヤバい」っていうのは何かありますかね?
高野:辞めている人と、その理由ですよね。例えばCFOの方ってよく入れ替わるんですね。理由は、証券会社の方とか監査法人の方から「この方では上場は難しいと思います」って言われるケースがあるんですよ。

それなのか、「この会社はもう上場できないから辞めよう」となっているのか(笑)。中身ですよね。CFOとか管理部長が辞めている理由があって、これはなかなか部下の人にも正直に話せない内容かなと思うので、そういう本当の情報を集められるかどうかが大事かと思いますね。
実は多い、組織のNo.2の離職
司会者:ほかには何か「こういうポジションの人も辞めたらまずい」とかってありますか?
高野:意外とないですね。だから、人が辞めたからダメになるようなタイプじゃない会社に入ったほうがいいんじゃないですかね。
司会者:ちなみにNo.2の方が辞めた場合ってどうでしょうか。
高野:No.2の方もよく辞めるんですよ。No.2の方が辞めたからこそ、自分が入ってその会社を浮上させられるって思う人もいるでしょうし、No.2の方の部下だった方が飛躍することも多いです。
司会者:なるほど。
高野:No.2の方は正直辞めやすいですよね。No.2の方が辞めたからダメなわけではないということです。同じですね。辞めたことによって、本当に極端に数字が下がってしまうんだったら確かに良くないことですけども。
司会者:なるほどです。誰が辞めたとしても、中身が重要だってことですね。
“組織崩壊してよかった”パターンも
高野:そうですね。組織崩壊したって話はよく聞くんですけど……これはもう、みんなに言えない内容だと思いますけど、社長は(組織崩壊して)「よかった」って思っている人もいます。辞めてもらいたかった人たちだった、となっているケースもある。
それで短期的な影響はあるんですけど、基本は自分の反乱分子みたいになっていて、辞めてもらうしかなかったケースですよね。だから思ったほど社長とか投資家は困っていないと言うし、驚いてもいないケースも非常に多いですからね。
司会者:実際の内情としてはそういうこともあるってことですね。
高野:そうですね。これまで経営メンバーとかコアになっている人が辞めていない会社は、一度も見たことがないです。10人の時に活躍する方と100人の時に活躍する方は当然違うので、辞めること自体は本当に自然なことかなと思いますね。
司会者:なるほどです、わかりました。細かいことは『ベンチャーの作法』の本の中にも書いてあると思いますので。
高野:はい、よろしくお願いします。
司会者:高野さん、ありがとうございました。
高野:ありがとうございました。