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変化を生き抜く 適応型リーダーシップと人事が導く組織のつくり方〜「学び」を起点にした個と組織のあり方を考える〜(全5記事)

600名のトップパフォーマーがやっている「学び」のサイクル 圧倒的に伸びる人が持つ視点

【3行要約】
・学びは知識の蓄積だけでなく「適応」そのものだが、多くの人が学校教育の影響で「学ぶことは苦しい」という固定観念に囚われています。
・黒川公晴氏は600名のトップパフォーマーの観察から、「理解・思考・実践」のサイクルを回し、「おもしろがり力」を持つ人が圧倒的に成長すると発見。
・ビジネスパーソンは学びを仕事だけでなく人生全体の充実につなげ、自己決定感や影響感を高めながら適応型リーダーシップを実践することが重要です。

学びとは何か?

坪谷邦生氏(以下、坪谷):では次の問いにいってみますか?

黒川公晴氏(以下、黒川):キートピックをざーっと扱っていくと、みなさんの中で問いや、「いや、でもこれはこうじゃないですか?」みたいなポイントが湧いてくると思うので。

そこからちょっと全員開いて最後に対話の時間を大事にできればなと個人的には思っておりますが。今日の1つのテーマである学びについて、少しだけお話をさせていただきたいと思っております。みなさんにも同じようにお聞きしたくて、「学びとは何か?」という問いをまた、2、3分ですかね?

坪谷:そうですね。

黒川:その後ちょっと坪さんにもおうかがいして、お話ししていきたいと思います。チャットの方もぜひよろしくお願いします。

(会場の方々同士で話し合い)

黒川:またチャットからいきますか?

司会者:共通項で挙がっているのが、「成長のための営み」「生きることそのものが問題である」と。

坪谷:「生きること」、すごい。

司会者:「何をするとかを自分で貯蔵して自分の武器にするまでの営み」、すごい。「生物が生き、成長していく営みそのもの」「最大限に引き出すことに向けての営み」。「営み」が多いですか。

「自分の中の苦しさ、葛藤、歯がゆさに対して一番の処方箋が学び」。素敵な回答。「自分に欠けていることの追求」「知る喜び」「体験する喜び」「それまでの自分を超えることが学びである」。

黒川:超えることね。

司会者:「もしくは、その時点で足りないものを認識して知ることが学びである」。

黒川:なるほど。

司会者:あと、「知識の蓄積をすること」「新たな思考ができるように更新、アップデートされること」。

黒川:知識の蓄積、言いにくいですね。

参加者の声を聞く

司会者:というのがチャットのお声でございましたが、現場からもぜひ聞きましょうか? 

話者8:このチャットとすごく近いことをみんなで話していました。インプットって何か信号がビビッと入ってきて自分の中に湧き起こる。あとは体験だったりまさに新しいことを知る喜び。喜びだったら、体験する喜びだとまさに我々も話していたことで。

あとは「まねぶ」というのも同じように出ましたね。誰かがわかったことを自分の中で追体験しながら自分の中に落とし込んでいく、それが学びじゃないかという話も4人で話して出ました。

黒川:ありがとうございます。

話者9:重複しないところで言うと、自己変容かなというような話をしていました。ただ、よく成長することを学びと近いところで聞くことがあるんですけど、それに対して唯一の違和感が、ネガティブな成長もあるよねと。

先ほど「人事は自分も含む」とおっしゃっていたと思うんですけど、「人のために私さえ我慢したら、ここは丸く収まる」となった時に、我慢する力が成長しちゃっているケースはあると思っていて。それは、どういうふうに表現したら排除できるんだろうなと。ポジティブな自己変容、前向きな自己変容が学びかなという話をしていました。

司会者:なるほど。もうどんどんご起立いただいて。

話者10:知識として得るだけじゃなくて、それを行動に移して、振り返って概念化する、今後に活かせるようにするというのが一番出たアイデアだと思います。以上です。

「直観」「反省」「自覚」の3つが学びである

黒川:(学びとは何かについて)坪谷さんのご意見をぜひ聞きたいです。

坪谷:いっぱい言いたいことはあるんですけど、まずは今日の場なので、適応です。適応することイコール学びと言えるんじゃないかなというのが1つ目です。

2つ目は、興味がない方は申し訳ないですけど、日本の初めの哲学者と言われている西田幾多郎という人が言っている、「直観」「反省」「自覚」という、この人間の営みですかね。みなさんに(意見に)乗っかると、この営みを私は学びと捉えています。

黒川:直観、反省、自覚?

坪谷:直観は「純粋経験」と西田幾多郎は言っていたんですけど、経験そのもの、判断する前の起きている事象そのもののことを直観。ただ見る、直接見る。

例えば人事図書館に人が集まっていて、今みんなでしゃべっているのは、めちゃくちゃ判断しているんですよね。人事図書館だと知覚しているし、みんなでしゃべっていると客観的に見ちゃっているので、これはもう反省なんですよ。

「直観」は、瞬間だけ。「あぁ」という瞬間。これだけが直観です。直観があって、それがすべてなんですね。知識とかの前にまず直観があるというのが西田幾多郎の考え方です。

それを「あぁ、そうか」と客観的に反省する。今日はここが盛り上がって良かったな。反省する。これはもう直観から離れていますね。大分客観的に自分のことを顧みている。これが「反省」です。

最後の「自覚」は、直観と反省を踏まえて、そういう自分であるという捉え方をする。自覚。自らを知る。「自らを覚える」ですね。

「経験学習」のサイクル

坪谷:この3個のことが学びだと私は捉えています。これが2つ目。3つ目は人事に戻りますね。

西田幾多郎の言っているお話と非常に似ているのが、人事の世界で有名な経験学習ですね。経験学習と言われていますけど、経験して、反省して、洞察を得て、行動する、経験する。このサイクルを回す。

さっきの西田幾多郎のやつとまったく一緒じゃないですか。これは西田幾多郎よりだいぶ後の人ですけど、後の日本の哲学者のほうが先に考えているという話でした。以上です。

黒川:ありがとうございます。そうか、同じことを言っていましたよね。自覚というのは、「反省をする思考傾向を持っているよな」という自分とか、「なんかいつも、これがいいと判断するよな」とか「これが悪い、イケていないといつも思うよな」みたいなことの輪郭を形成していくみたいな感じですかね?

坪谷:近代の心理学っぽく言うと「メタ認知」というやつですね。

600名のトップパフォーマーを観察してわかったこと

黒川:なるほど、ありがとうございます。じゃあ、少しだけ僕のお話をしたいと思います。適応の根幹が学びだという結論から入ります。適応型リーダーシップをずっと伝えていて、その根幹にあるのが学びだと。日本を代表する企業の、しかもこれから経営幹部になっていく600名のトップパフォーマーとずっと学びを共にしてきていて、学びを真の意味で行う人こそ成長するし変化を遂げるなという実感が出てきたんですよね。

それは、「そういう人たちはこのサイクルを確実に回している」と。この本の最後でも書いているんですけど、「理解」「思考」「実践」ですね。やはり少し似ています。

理解がやはり必要なんですよね。要は知識とかいろんな理論をちゃんと整理して自分で理解をする。特に大事なのは、良質な情報にちゃんと触れられるか。

だからたぶんこの後、組織の中でどうやって学びを作っていくのかという話にもなるかもしれないんですけど、まず良質な情報がアクセシブルなかたちでちゃんとそろっているかどうかがすごく大事。それを踏まえて、理論のポイントを理解して、基礎学力を高めていく。ここはつまり受験勉強の世界ですね。ここで終わると試験勉強をやっているのと同じです。要は読んだものをそのまま再現して、アウトプットして、評価を受ける。

次に踏むべきステップは思考ですね。思考というのは2ステップあって、1つはやはり学んだ理論から、さっきちょっと言いましたけど再解釈する。

理論を使う時はシステム思考を使うと、「4年前に一緒になったパワハラ気味の上司は彼の問題だとずっと思っていたけど、システム思考で見るといろんな相互作用があって彼をそうさせているんだな」と再解釈できるかどうかがすごく大事なポイント。

圧倒的に伸びる人は「おもしろがり力」がある

黒川:次のステップ2は、今、「明日から自分のシステムの中にどう働きかけるか」ということの仮説を立てるんですよね。この思考力を高めていくにはやはり良質な問いが重要で、問いを作る力と最近よく言いますけど、問いを立てられる力を養うのはすごく大事。

最後はやはり実践ですよね。仮説を立てて、ここで終わると評論家になっちゃうので、それを少しでも自分の半径5メートルでいいので試して、現実から表れるフィードバックを基にまたこの理解に入っていくみたいな。

このサイクルをグルグルと回せる人は圧倒的に伸びていくんですけど、何が違うかというと、やはり「おもしろがり力」ですね。これを回す。「はぁ、こんなセオリーがあるんだ」「はぁ、こんな考え方ができるんだ」「あっ、確かに言われてみれば、あの時はこういうことだったんだな」みたいな、味わえる力。

「ちょっとやってみるか」とやってみて、結果、うまくいかなかったとしても、それをおもしろがって話せるとか、そこからまた学べるみたいな。この「おもしろがり力」が左右しているなというのをすごく強く思います。

学びは仕事だけでなく「人生そのもの」の充実につながる

黒川:本題なんですけど、この学びというのは、基本的には何らかのインプットを得て、自分自身で考えて、答えを見つけて、能動的に変容を遂げることです。

なので、これって適応そのものだよなと最近すごく強く思うんですよね。学びイコール適応だと。その実践の結果、他者、自分以外の世界に変化をもたらしていくのが適応型リーダーシップの実践です。

僕は、これをまだあんまり外で話せていないですけど、学びは仕事の文脈を超えて人生そのものの充実につながっているはずだと強く思っています。

これをあえて理屈付けて説明するためにもう1個用意しているのが、このエンパワメント・モデルなんですけど。これはもしかしたらご存じの方がいらっしゃるかもしれませんが、トーマスとベルトハウスという人の理論ですね。

適応型リーダーシップとエンパワメントの関係

黒川:組織におけるエンパワメントとかエンゲージメントを図るには、「自己決定感」「影響感」「自己効力感」「有意味感」の4つがそろっていないといけないと言っています。要は、どれだけ自分で決められているか、どれだけ自分でそのプロセスに影響を与えられているか、できると思えるか、そこに自分がいる意味があると思えるか、この度合いによってエンパワーされていくという。

これで見ると、適応型リーダーシップはまさにこれなんですよね。意志を持って組織を見て、自分でその答えを見つけて動く。自己決定して有意味感を高めていく。自分を変容させながら周囲に働きかけていくという、対自分、対他者のこの影響感ですね。

その結果、「あ、変わった」と思えるという、この自己効力感を高めていく。これを高めれば高めるほど自分自身の効力感、エンパワメントが高まっていくと捉えられる。こういう気持ちは組織だけじゃなくて、家族もコミュニティもいろんな社会問題を含めて、人生を通じて実践できるものだなとすごく思うんです。

なのでこういう考え方を知ってほしいと最近強く思いますし、そっちの世界にちょっと薄く染み出していっている感じです。

なので最近、これがまた学習的生き方だと思うんですよね。それが、実践するスキルが適応型リーダーシップで、これが人生のエンパワメントにつながっているなというのが、今日お伝えしたかったことの1つでもありました。

坪谷:もう本で読ませていただいて、「おもしろがり力」は「これこれ!」って思いました。

黒川:本当ですか?

坪谷:やはり圧倒的にそこで差が出ると思うんですよね。人によって本当に違うじゃないですか。学校教育を全部否定するわけじゃないんですけど、学ぶのはしんどいことだという癖付けをけっこうされてしまっている方が多くて、そこを越えておもしろがれる人が、今イキイキと伸びている感じがするんですよね。

なので、もう1個のおもしろがり方を思い出さなきゃいけないというか。もう小学校に入る前は、たぶんみんな1個1個の人生の学びをおもしろがっていたと思うんですよね。そんなふうに思います。

黒川:はい。ということで、残りの時間はみなさんの意見を聞いていきたいと思います。ここまで、ありがとうございました。

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