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変化を生き抜く 適応型リーダーシップと人事が導く組織のつくり方〜「学び」を起点にした個と組織のあり方を考える〜(全5記事)

社員は元気だが成果が出ない「ぬるま湯」な組織 経営と現場の交差点で踏ん張る人事の役割

【3行要約】
・人事は「人を生かして事をなす」ことだが、個人と組織の両立は難しい――多くの企業が直面する永遠の課題です。
・坪谷邦生氏と黒川公晴氏は、現代の組織では「搾取」か「ぬるま湯」の二極化が進み、真の人事機能が失われていると指摘。
・人事部門だけでなく、すべてのリーダーが「葛藤の中で持論を持ち、人と事を同時実現する」人事の視点を持つべきだと提言します。

人事は「個人」と「組織」の思いを両立させる役割


坪谷邦生氏(以下、坪谷):黒川さんは(「人事とは何か」という問いに対して)どうですか?

黒川公晴氏(以下、黒川):そうですね、人事は組織においてのみ存在する。組織というのは織りなす相互作用によって1つの目的を達成しようとしているという存在意義がある中で、一人ひとりの人生を抱えているじゃないですか。

これは僕の個人的な問題意識から端を発しているんですけど。やはり充実した人生にしたいという思いで、何らかの自己実現を果たしたいと思って社会人になっていて組織に属しているので、個としてはそこのサポートが欲しいですよね。

一方で組織の存在意義があるので、たぶん(坪谷さんが)おっしゃっていることに近いと思うんですけど、しっかり両方達成されるためには何をすればいいかを考え、実行する機能というふうに僕は捉えています。

「搾取」でも「ぬるま湯」でもない組織を作るには

坪谷:ありがとうございます。もう完全に一緒ですね。じゃあ、ちょっと坪谷のやつを出していただいて。

人事とは「人を生かして事をなす」ことだと私は考えています。日本語ってすごいなといつも思うんですよね。人事の2文字で根幹をちゃんと言ってくれているなと。

「人を犠牲にしてでも、事をなす」はダメです。これは人事じゃないですね。これは搾取です。「人は元気に生きているが、事が成されない」。これも最近多いですけど、これも人事じゃないです。これはぬるま湯です。一人ひとりの力が十全に発揮され、組織の目的が成し遂げられる状態。つまり「人」と「事」を同時に実現することが人事だと私は考えています。

この同時実現というのが、もう肝中の肝なんですけど、やはり難しいんですよね。「人」側に寄ってしまう時もあれば「事」側に寄ってしまうこともあって、我々はよく「交差点に立っている」みたいな言い方をするんですね。

「経営と現場、短期と長期の交差点のど真ん中に立って、ちぎれないように踏ん張るのが人事だ」みたいなことをよく言うんですけど、その時にどうやったらこの両極のものを1つのこととして成し遂げられるか。ここを管理するのが人事だろうなと思って。さっきの中庸とかもその考え方の1個ですね。

そういう統合の仕方。この間もくるみんが、「人事塾は厳しい場だった」と言ってくれましたけど、自分の持論は葛藤の先にしかないと思っているんですよ。

先ほどから「持論でけっこうです」と言っているんですけど、経営がこう言っている。経営の言うとおりに、「今してもらっているように方針を通そうか」も簡単だし、現場がこう言っている、「経営者はこう言っているけど、お前たちの言うことはわかるから守るよ」も簡単なんですけど、その両極が違う時に人事の自分はどこに立脚して何をするのかを問われているわけですね。

そこにはやはり持論が要ると思っていて、さっきの中庸のフロネシスと一緒で、「これが正解です」はやはりないんですよね。セオリーはありますね。原理原則はあるんですけど、やはり「自分はこう思う」というのを置いてみて回さないと始まらない。なので、人事塾では葛藤をめちゃくちゃ扱うし、「その葛藤の先にどんな持論を持つの?」ということを研鑽し続けているので、しんどい時はしんどい。

でも、持論を置けたりほかの人たちの持論を聞いた時に「そうかも」ってパッと晴れたりする瞬間は楽しいですよね。そんな感じの人事でございました。

リーダーも「人事」をしないといけない

黒川:リーダーシップとわりと直結するというか、葛藤の中で自分がどう選ぶかという意識の用い方は、僕らが伝えているリーダーシップそのものというか。

いや、そういうことを言っていられない状況のほうが多い中で、自分で考えて、「パーパスを取りたいけど取れないんだよな」「だからこっちに行くんだ」と自分で選べるかどうかは、けっこう大事だと思っています。やはり葛藤プラス思考と選択がすごく大事で、それを体現するのが人事というファンクションみたいなものですね。

坪谷:まさに。私は、部署とか職種と……あんまり置いていないんですよね。先ほどのリーダーシップは、リーダー以外の人にも必要だとおっしゃったのとほぼ相似形で、人事はすべての人に必要。人事部門だから人事をするというよりは、やはりリーダーも人事をしなきゃダメだと思いますしね。働く一人ひとりが自分という「人を生かして事をなす」人事であるべきだなと思っています。

なので私の人事の定義は、「人を生かして事をなす」ことであって、給与計算とか労務とかも大事なんですけど、そういうファンクションで考えていないという感じですね。以上でございます。

イキイキしていない人事の言うことは聞けない

黒川:「人」には自分も含まれるんですね? ああ、救われます。

坪谷:それが人事かもしれないですね。特に人事部門の人は、私もそうでしたけど、「みんなを生かして事を成そう」として自分を置き去りにすることが多いんですよ。でも、イキイキしていない人事の言うことをあんまり聞きたくないんですよね。

黒川:めっちゃ苦笑いしている人がいますよ。

坪谷:(笑)。じゃあ、その人は自分を生かすところから始まる。自分を生かせていないとね。私は1人称、2人称、3人称とよく言うんですけど、まず「私」という1人称がイキイキしていることですね。で、目の前の「あなた」、2人称ですね。それができないと、マスのみんなをイキイキさせるのは無理なんですよ。まず「私」から。

「組織」とは何か?

黒川:というところで、次の問いへいきましょうか。お願いいたします。

坪谷:もうちょっと人事を語っちゃダメですか? 嘘ですよ、組織にいきましょう(笑)。「組織って何でしょうか?」。じゃあ、またオンラインの方はチャットに、こちらのみなさんはみなさんで考えてみてください。組織って何でしょう? 持論でけっこうですよ。思いつきでもけっこうです。経験則でも、なんとなくでいいですよ。

(会場の方々同士で話し合い)

坪谷:盛り上がっていますが、そろそろお聞きしてもいいですか? チャットもけっこう(コメントが)挙がっていますので、先にチャットにいきますか?

司会者:「目的を持った個の集団」であったり、「同じ目的を持った個の集まり」。近いですね。

坪谷:近いですね。

司会者:飛ばしていきます。「何らかの目的を持つ人の集まり」「目的を達成するための人の集まり」「相互作用によって成り立つ」「異質な人の集団」。

坪谷:おっ? ヘラルボニー社の人がいらっしゃるのかな?

司会者:では、会場からも聞きましょうか。まだマイクを持たれていない方に、ぜひバトンを渡したいですね。

話者6:ここの中で「組織は壁」と出てきて、プロパーの人と業務委託の人といろんな人がいる中で、別に変に分けるわけでもなく、同じ会社のプロパーと言った時に、距離の近さとか、ある種、外から守られているみたいな意味での壁みたいなところは確かにしっくり来る。別に排他的でもないけど、なんか家みたいな……家でもないんですけど、「壁?」みたいな。というのが、おもしろいなと思いました。

坪谷:自分たちの外に壁がある感じですかね。ありがとうございます。もう1人ぐらいいきましょうか?

話者7:ここの3人で話していたんですけど、ここの2人がけっこう似ていて、「組んで織りなす」なので、組むためにはまずそもそも人がいて、組むための目標とか目的があり、集まるからには、1人ずつやるよりは組んだほうがアウトプットができるみたいな、そういう話になりました。

答えられなかったのは、「そもそも、組織とチームの違いって何なんだろう?」とか。そういう話があって、結局時間がなくてそこまでは話せなかったという、そんな感じです。

日本を組織として捉えてみる

坪谷:ありがとうございます。黒川さんどうですか。

黒川:意外に難しいですね(笑)。でも基本は同じですよ。キーワードは、「共通の目的」「人」ですよね。そして「相互作用」みたいなのが組織を作っていく。でも最近の僕は、「組織をどの外縁で捉えるか」みたいな思考の訓練をよくするんですよ。

もちろんおもしろ半分でするんですけど、もうそれは究極、この国を組織として捉えた時に、僕はリーダーシップというキーワードで考えるんですけど。さっき言ったように自分が他者に対して及ぼす前向きな影響力そのものなので、この国を前向きに前進させる、この目標の置き方にも工夫の仕方があるんですよ。

経済、安全保障、外交とかたくさんありますけど、目的を置いた時に、自分がどれだけ影響力を発揮し得るのかと考えることもぜんぜんできるので、国は組織だと。その中でリーダーシップを発揮することもあり得るよなということを考えたりしますね。組織、人、目標。

坪谷:ありがとうございます。

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