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山口:あともう1つが、この間、斎藤環先生の『イルカと否定神学』という本を読んで、とってもおもしろかったんです。
篠田:否定神学。シンガクって神さまの?
山口:神さま、theologyのことです。神学って、もともと神さまとはどういうものかを考えていく学問なんですが、元よりナンセンスなんですよ。だって、神さまって人間の人智を超えてるものなので、言葉に表せないわけですよね。だから、言葉で表せないものを言葉で表そうとしてるという意味で、そもそもナンセンス。
だから、否定神学ではどういうアプローチをするかというと、「神は何でないか」ということをひたすら列挙していくんですね。
篠田:なるほど。
山口:それで線を引いていくと、そのうち接線がどんどんと像を作っていくので、「どうも(神とは)こういう輪郭なんじゃないか?」というアプローチなんです。
斎藤環先生は臨床心理の先生で、ラカン派の分析家だったわけですが、彼は心を病んだ患者を相手にしていろいろと話を聴いている時に、「臨床心理学は否定神学である」(と気づいた)。それは何かというと、患者は本当に重要なことは言わないということなんですね。輪郭ばっかりしゃべっている。
本当に重要なことは本人もしゃべれないし、場合によっては気づいてない。毎回出るんだけれども、何か欠落しているものがある。その欠落してるものは何か? というところから治療のアプローチを組み立てると言っていて。ラカンがそういう考え方をしたんですけれども、ご自分のアプローチは非常に否定神学的であると。
山口:僕はコーチングのセッションを受けていた時期が3年間ぐらいあったんですが、話す時に最も話しにくいものは何かっていうと、話す側が聴いてもらう側の時間をもらう時に、端的に言うと嘘をつこうとするんですね。「いやいや、ぜんぜんOKです」とか。
篠田:「大丈夫です」とかね。
山口:「楽しくやってます」とかね。うちの息子もそういうことがあって、今は留学してるんですが学校側から言われていることは、「ヘルプしてくれって言う力が彼には足りない。『助けようか?』って言うと、『It’s OK、I’m fine.』ってすぐ言っちゃう」と。
外側の接線ギリギリまで寄れればいいんですが、まさに否定神学的に本当に重要なことは言わずに、「I’m fine」「OK、もうぜんぜんもうHappyで……」といった外側のことばっかり言っちゃってかっこつける。だから、僕が聴いてもらう立場になるんだとすると、自分で意識するのは、かっこつけないほうがいいってことですかね。
篠田:そうねぇ。かっこつけるかどうかって難しいじゃないですか。だって、無意識のうちに自分が避けたい状況なわけだから。エールのセッションでわりと起きるのは、その人のペースで話すとどうしても話しやすい話をするんですよね。
話すって、要は自分の主観を言ってるんです。だけどよくあるのは、仕事の話や愚痴をわーっておっしゃるセッションが2~3回あって、じっくり聴いてもらってるうちに、ある程度愚痴を言い終わるタイミングが不思議と来るんですね。その瞬間、視点が切り替わる。
例えば「部下が私の言う指示をぜんぜんわかってくれない」みたいなことをおっしゃるんだけど、あるタイミングで本当にふと「部下の○○さんから私はどう見えてるんですかね?」ということが出てくる瞬間があるんですよ。
そうすると、まさに見たくなかったものを見る準備ができる。その準備のために、わーって聴いてもらうっていう手前のプロセスがある。そういう人の心の動きがあるんです。
山口:そこまで待ってあげないと(話してくれない)。
篠田:それこそ斎藤環先生みたいなプロであれば、待ちすぎずに「ここはもう突っ込んで大丈夫」っていう頃合いを見つけるんだと思うんですが。一般人の私たちの普通の会話の中でも、実は聴いてもらうことでそういう作用が起きることはあるなと思って聴いてました。
聴いてもらう側に求めることとして、しゃべりたくないことをあえてしゃべったほうがいいよとは、言い過ぎなくてもいいのかなって思ったりはします。
多治川:ありがとうございます。
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