PR2025.11.27
数理最適化のエキスパートが断言「AIブームで見落とされがちな重要技術」 1,300社が導入した「演繹的AI」が意思決定を変える
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多治川綾乃氏(以下、多治川):今回は「『聴く』で、人を動かす」というテーマに迫っていきたいと思っております。では、本日のゲストをご紹介したいと思います。お一人目は、エール株式会社取締役の篠田真貴子さんです。自己紹介をお願いいたします。
篠田真貴子氏(以下、篠田):よろしくお願いいたします。篠田真貴子と申します。この後にお話ししますが、私は今、エールというスタートアップの会社の取締役をやっていて、「聴く」ということを人に届けることをビジネスにしています。
ロゴは(スライドの)下に並んでいますが、私はエールの前には、これまで合計5つのけっこうタイプが違う組織で働いてきました。
一貫して自分が転職を繰り返すところもあって、その都度、「組織と私の関係はどうあると一番いいんだろうか?」というところから始まって。より範囲を広げて、「一般的に組織と人の関係って、お互いがのびのびと力を発揮できるにはどうやったらいいんだろう?」ということをずっと関心事にしてきたなと思っています。
その関心を深めていった先に、コミュニケーションの中でも「聴く」というテーマにすごく関心を強く持ちまして、そのタイミングでエールにジョインをしました。あと、この『LISTEN』という本がちょうどアメリカで出たところで出会いまして、監訳の機会に恵まれました。
ご興味があったら、この本を手に取っていただけたらうれしいんですが、一方でまあまあ分厚かったりします。お忙しいと思いますので、その場合はPodcastでお話ししたものがあるのでご紹介をします。この「コテンラジオ」自体は歴史をテーマにしたポッドキャストなんですが、番外編というかたちで、歴史とは関係なく私を呼んでいただきました。
今日もちょっと触れますが、私自身の来歴であったり、「聴く」との出会いや、聴くってどういうことか? というお話をいたしました。早回しだったら1回30分ぐらいで聴けるので、よかったら触れてみてください。いったんは以上でございます。
今日は、「聴く」がどうやって人と私たちと世の中を動かしていくのか、山口さんと一緒に深められたらと思っております。よろしくお願いします。
多治川:篠田さん、ありがとうございます。
多治川:では、本日のお二人目のゲスト、独立研究者・著作家・パブリックスピーカーでいらっしゃいます、山口周さん。よろしくお願いします。
山口周氏(以下、山口):よろしくお願いします。自己紹介ですかね。僕はもともと美術史の研究をやっていて、広告会社に行って、その後は外資系のコンサルティング会社なので、どちらかというと自分から出してばっかりの仕事をやってきました。
非常に饒舌な人ばっかりが集まるので、自分も饒舌にならないと、「明日から来なくていいよ」って言われちゃうような職場だったんです。なので、自分はほっとくとしゃべりすぎちゃう癖があるなっていうことに、どこかで気がついて。
あとは大きかったのは、やっぱり子どもを持ったことですね。一番上の子が今は大学生で、一番下が中学生で3人いるんですけれども、子どもはやっぱり話を聴かないとどうしようもないなというふうに思って。子育ての過程で、「我慢して聴く」ということをだんだんとするようになってきたら、けっこういろいろとうまくいくぞと思って、聴くことに興味を持つようになりました。
あともう1つは、学生時代からずっと心理学に興味があって。例えば、河合隼雄先生とか東山紘久先生の本で、「とにかく黙っていることが一流のカウンセラーの条件」と聴いて。コンサルタントはしゃべりまくるのが一流なので、真逆なんですよね。
そのへんにも非常に興味があって、ぜひ今日は篠田さんと一緒に傾聴について深められたらなと思ってますので、よろしくお願いします。
多治川:山口さん、ありがとうございました。では、今日の司会は私、PARADOXのディレクターの多治川が務めさせていただきます。よろしくお願いします。
多治川:ではさっそくですが、ここからはお二人のトークに移らせていただきたいと思っております。お申し込み時のみなさまのコメントでも「2人のトークの広がり、展開が本当に楽しみです」と、たくさんいただいておりまして、私も楽しみにしてまいりました。まずは篠田さんから、今日のテーマの「聴く」についてお話しいただけますでしょうか。
篠田:わかりました。じゃあ、はじめに10分ほどいただいて、今日扱う「聴く」というものを私はどう捉えているかというお話をさーっとします。
まず前段で、なんで私が「聴く」をしゃべるのかっていう、この矛盾に毎回すごく悩むわけなんですけれども。先ほど紹介した『LISTEN』という本の監訳と、エールが聴くことを事業にしているので、日々「聴く」を提供してるわけですよ。それってどういうこと? というのを、はじめにちょっとご紹介しますね。
私たちがやっているのは、社外で主に大企業のお客さまに向けてオンラインで外部から1on1、つまり1対1でお話をうかがうサービスをプラットフォームで持っていて、これを活用した研修サービスを売っているんですね。
サポーターと呼んでいる方々がお話を聴く人たちなんです。スライドでは4,000名になってるんですが、実は今はもう4,000名を超えるほどいてくださっています。隔週30分、オンラインで私たちが聴く。お客さま側は聴いてもらえるから、だんだん話せるようになっていく。こういうことをやっています。
大企業向けというか、主に大企業のお客さまが多いんですよね。(導入実績のスライドを指しながら)こういうところが使ってくださっています。
これを通して、聴いてもらえる時間が誰にとっても当たり前にある社会になったらいいなと思って仕事をしておりますので、四六時中聴くことについて考えてるし、「どういうことなんだ?」って探求している日々を送っているんですね。
今日のこの10分では、私が聴くに出会ったきっかけと、エールも含めて聴くということをどう捉えているのかをお話ししていきますね。まず、私が聴くについて「あ、そういうこと?」って本当に腹落ちしたのは、この本に出会ったからです。どちらもすっと読める本なので強くおすすめをします。
右側の『この気もち伝えたい』は、左側の『こころの対話 25のルール』のある部分を抜粋した絵本なんですね。なので、内容の重複はあります。
著者の伊藤守さんは、コーチ・エィというコーチングの事業・企業を日本で初めて作った、いわばパイオニアの方なんですよね。その方が書いた本なんですが、この本に出会ったのは1つの大きな動機ではあったんです。
篠田:私がエールにジョインした動機で言うと、人と組織の関係とか働き方には、個人的な興味がずっとあったんですね。私は前職でほぼ日という会社のCFOを10年やっていたんですが、そこが上場して自分のミッションは完了したので卒業させてもらって、1年間ジョブレスといって、要はぶらぶらしてたわけですよ。所属がないから、誰とも利害関係がない状態。
その期間に本当にみなさんが、「暇でしょ」「ご飯食べない?」「篠田さん、次はどうするの?」って、若干心配もするので聴いてくれるんですよね。そうやって聴いてもらって、「あぁ、聴いてもらってるのって本当にありがたいな」と思って。
自分も何とはなしに、周りの話を聴くことが前よりできるようになった感じがあって。そうすると、すごくいいわけですよ。「これ、すごいな。ぜんぜん気がついてなかったな」と思いました。
さっき周さんが「コンサルタントはしゃべることが商売」って言っていましたが、私もかなりそっち側なので、元来はむちゃくちゃおしゃべりなんです。(聴くことの重要性を)知らなかったなぁと思っていたら、エールという会社のサービスがちょうど立ち上がり期で、実際ビジネスになろうとしてるってすごいなと思ってジョインをしました。こんなことで、「聴く」にずっとまみれた5年目を過ごしているんです。
篠田:じゃあ、私の過去はどうだったかというと、今申し上げたことに初めて自覚的になって振り返ると、実際に聴いてもらってよかったな、あの時に聴いてもらったからその後の自分の人生が動いたな、という経験が確かにあるんですよ。
今はここ(過去の経歴の話)には深く入りませんが、自分の人生のアップダウンの主観です。すごくハイになっている時から、めっちゃドカーンって落ち込む時まで、さまざまあったんです。
例えばめっちゃ落ち込んだ30代半ばは、マッキンゼーで「もうお引き取りください」って言われちゃって、ガーンってなってショック。もう毎日泣いてみたいな時期があって、そこから本当にちゃんと立ち直るのに相当な年数を要したんですね。
その時に、最終的には私が退職した理由を知ってる伊賀(泰代)さんという人に、私のキャリアをWebでオープンにする前提でインタビューしてもらったんです。インタビューって、やっぱり聴いてもらう時間じゃないですか。伊賀さんは、私がマッキンゼーを去ることになった事情も知ってるから、ごまかしようもないわけですよ。
そこであらためて、自分がマッキンゼーを辞めるに至った経緯をちゃんと言葉にして振り返ることで、ちょっと客観視できて。「ああ、そういうことだったんだな」って、ある種クロージングできた感じだったんですよね。
そこから自分の経験を客観視して、本当の意味で自分の糧にすることができた。これは、やっぱり聴いてもらえたからだと思います。あらためて考えてみると、やっぱり聴いてもらう時間があるということは、自分が次のステージに行く時のすごく大事なプロセスだったなと認識をしました。
篠田:ここでの「聴く」とは何を言っているかというと、みんな今は私の話を聴いてくださっているわけで、聴けてるか聴けてないかで言ったら聴けてるわけですよね。それは前提だとした時に、聴いてる最中にご自身のジャッジを入れながら聴いているかどうかで、実は2つに分かれるんだと思うんです。
どっちがいい・悪いということじゃなくて、聴き方に種類がありますよという意味で、これをご紹介します。私たちは普通、一生懸命聞く時は左側の「聞く(with judgement)」の聞き方をしています。
例えば左側の人が、「やっぱり子どもには小さい頃から英語を学ばせるべきですよね!」という意見を述べます。それに対して、「そうですよね」「どうですかね」というふうに、内心反応するじゃないですか。
この場合は聞き手が英語教育に関してなんらかの考えがあって、それに照らし合わせてるんですよね。別にいちいちそこで「ちっ」とか反論したり、「そうよ!」とは言わないんだけど、やっぱりその心の動きは表情に表れて、相手に伝わるわけです。
一方で右側の「聴く(without judgement)」というのは、同じような意見に接した時に、聴き手側が「そういうお考えなんですね。その背景をもうちょっと教えてもらえますか?」というような聴き方です。
この時に、もしかしたら聴き手は子どもの英語教育に関してまったく違う意見を持っているかもしれないんだけど、その考えをいったん脇に置いて、自分の判断を挟まずにフォローし続ける。
すごく良かったのは、その時の伊賀さんは右側の聴き方でした。「あの時、やっぱり篠田さんはわかってなかったよね。ダメだったよね」とか、そういうことは一切言わない。「あ、そう。今はどう思ってるの」「その時に思ってたことと(今で)何か違いはあるんですか」という感じでいてくれたんですよね。
伊賀さんのサイトはたぶんもう閉じちゃってるんだと思うんですが、その話をさらに振り返って、あるカンファレンスで私の失敗経験としてお話ししたものがあります。それは今もログミーに残ってますね。
山口さんにも、当時ご自身がやっていたブログに取り上げていただいて。当時から本をいっぱい出されていて著名人だったので、「うーわ! こんな有名な人に取り上げられてしまった」と、ドキドキしたのを思い出しました。私の名前と「マッキンゼー 失敗」みたいなので(ワードを検索すると)出てきます。
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