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AIが変えるマネジメントの未来:アルゴリズム管理の可能性と課題(全4記事)

モニタリングや進捗確認はAIで十分? “AI管理”で変わるマネージャーの役割と“存在意義”

組織課題を丹念に読み解く調査&コンサルティング会社「ビジネスリサーチラボ」が開催するセミナー。今回は「AIが変えるマネジメントの未来」をテーマとしたセッションの模様をお届けします。「アルゴリズム管理」で変わる中間管理職の役割について語られました。

ホワイトカラーにも広がる「アルゴリズム管理」

伊達洋駆氏:では、私からの情報提供は以上とさせていただき、ここからはいただいているご質問にお答えしていきたいと思います。では、最初にいただいているご質問にお答えします。

「アルゴリズム管理が日本の正社員を前提とした労働環境で、どのように使われていくとお考えでしょうか。ご紹介いただいた事例がギグワーカーや業務委託など、投入量を変動できる前提にある働き方だったと思うので、質問させていただきました」という内容です。

確かに、研究上の知見としては、ギグワーカーや業務委託の事例が中心になっています。ただ、この領域では労働者性が争われている部分もありますし、完全に「社員とは別物だ」と切り分けられる状況でもなくなってきています。雇用形態の間に少しずつ連続性が生まれてきているというのが、まず1つ言えることです。

さらに、正社員を前提とした環境においても、アルゴリズム管理は少しずつ進展してきています。例えば、今日ご紹介した物流や倉庫の事例の中には、正社員として働いている方がアルゴリズムの指示を受けながら物を動かす、あるいは物流作業を行うといったケースも含まれています。

加えて、ナレッジワーカーの領域にも、今後アルゴリズム管理がかなりのスピードで広がっていく可能性があると考えています。近年は、生成AIをはじめとする自動化のためのテクノロジーが急速に普及しており、そうした中で、PCの中でアルゴリズムが仕事をアサインするようなかたちのほうが効率的な場面が出てきています。

例えば、プロジェクトマネジメントの現場では、「誰に、どのタイミングで仕事を振るか」「リマインドをどうするか」といったタスクは、本来人間が担ってきたものですが、非常に手間もかかりますし、負担も大きいですよね。こういった部分こそ、アルゴリズムで管理したほうがうまく機能するかもしれない。

その意味では、ナレッジワーカーも決してアルゴリズム管理と無縁ではない。実際に、アプリのレベルではすでにアルゴリズム管理に近い発想が、順次機能として実装されてきていると捉えることもできるわけです。

ですので、正社員であっても、ホワイトカラーやナレッジワーカーであっても、今後アルゴリズム管理が広がっていく可能性は十分にあると思います。

AIが仕事を割り振る未来像

これは日本に限った話ではなく、諸外国でも同様に起こっている流れです。

ただし、日本の場合は雇用環境が少し特殊で、いわゆるメンバーシップ型の雇用が中心です。つまり、ジョブが明確に定義されていないことが多い。そうした中で、アルゴリズム管理をどう適用していくのか、どう実装していくのかは、今後の検討課題になると思います。

もちろん、すべての業務をアルゴリズムで代替できるわけではありません。ただし、例えば「プロジェクトマネジメントはもうアルゴリズムが担います」とか、「スケジュール管理はアルゴリズムが推薦する順に進めていき、人間はクリックするだけ」といった未来像は、そう遠くないものとして想像できる。

すでに一部の領域では、そうした状況にかなり近づいている部分もあります。そういった変化が、今後さらに進んでいくのではないかと考えています。

細分化された業務下でのキャリア自律支援

では、次のご質問に移ります。「アルゴリズム管理の導入が進んでいくとしたら、従業員のキャリア自律をどのように支援していけばよいとお考えですか? アルゴリズムによって業務が細分化され、全体像が見えにくくなることへの懸念があります」というご質問をいただいています。

確かに、アルゴリズム管理のもとでは、自分の目の前の業務をひとつひとつ遂行していくことに集中しやすくなり、どうしても近視眼的になりがちです。それは効率性の観点から見れば、合理的な働き方とも言えます。

ただ一方で、自分が今取り組んでいる業務と、自分自身の長期的なキャリアとのつながりが見えづらくなってしまう。これはキャリア形成の観点では、少し課題になる部分かもしれません。そういった状況に対して、人事としてできることはさまざまあると思いますし、今後その重要性はより増していくのではないかと感じています。

例えば、従業員に対して複数のキャリアパスを提示していく。あるいは、メンター制度やキャリアコンサルティングなどを活用して、それぞれが自分のキャリア目標を主体的に考えられるように支援する。また、そうした目標に向かって前に進んでいけるような、動機づけや制度設計による後押し。そういった働きかけが、これまで以上に求められてくるのではないかと思います。

私たちは、目の前の仕事だけをしているわけではありません。その仕事は、長いキャリアの中の一部分です。だからこそ、日々の業務とキャリア全体とをどう接続していくのか。その橋渡しをどう設計するのかが、非常に重要な論点になるのではないかと感じました。

アルゴリズム管理で変わるマネージャーの役割

では、次のご質問に移ります。こちらは少し難しめのご質問ですね。「アルゴリズム管理の影響によって、中間管理職の役割が変わるように思います。例えば、管理業務の一部が自動化されることで、マネージャーのモチベーション低下や存在意義への不安が生じるのではないでしょうか」というコメントとご質問をいただいています。

なかなか大きな問いで、ここで網羅的にお答えするのは難しい部分もありますが、いくつか感じたことをお話しできればと思います。

確かに、アルゴリズム管理が導入されていく中で、マネージャーが担ってきた業務の一部、例えば日常的な管理や監督のような仕事は、アルゴリズムによって代替・補完される可能性があります。評価の領域については、法的な観点からの検討も必要になるため一概には言えませんが、少なくともマネジメント業務の一部は、アルゴリズムによって変化していくと考えられます。

実際、「アルゴリズムマネジメント」という言葉もあるように、マネジメントの一部がアルゴリズムに置き換わっていく可能性は十分にあるわけです。

特に、日常的なモニタリングや進捗確認のような業務は、アルゴリズムによって大幅に効率化できる余地が大きい。忙しいマネージャーの方々が、これまで多くの時間を割いてきた部分をテクノロジーが肩代わりしてくれることで、業務負荷が軽減されるかもしれません。

そうなると、マネージャーが本来取り組むべきだけれども、なかなか手が回っていなかった業務、例えば人材育成やチームビルディングのような業務に、より力を注ぐことができるようになるのではないかと考えています。

変わるマネジメントのあり方

さらに、ポジティブな未来像をあえて想像するなら、アルゴリズムによってインプット・アウトプットされるデータが蓄積されることで、部下に関する多様な情報をマネージャーが把握できるようになるかもしれません。

ただここは難しいところもあって、関係があるかどうかわからないようなデータから、部下の状態を読み取っていいのかどうかという問題も出てきます。例えば、チャットの履歴などから「この人、今やる気を失っているようです」とアルゴリズムが示唆してきたとしたら、それをどこまで信用して、どう扱うのか。

もしかすると、そうしたことも技術的には可能になってくるかもしれません。すでにそういったサービスが存在していたらすみません。ただ、そういう未来は十分に想像できる範囲にあると思います。

このように、部下に関する情報がデータとして見えるようになれば、マネジメントのあり方も変わっていく可能性があります。マネージャーが一人ひとりの状況に合わせた個別対応を行い、より効果的に成長を支援したり、コーチングを提供できるようになるかもしれない。

つまり、人とアルゴリズムをつなぐ存在として、中間管理職やマネージャーが新しい役割を担うことも考えられるわけです。

いずれにせよ、マネージャーとしては今後、人間にしかできない、より付加価値の高い業務に特化していく必要があるかもしれないということを考えながら、お話しさせていただきました。

正社員にアルゴリズム管理を導入する際に必要な視点や仕組み

さて、最初のご質問や先ほどのキャリア支援の話とも関連するような、続きのご質問もいただいています。

「ギグワーカーだけでなく、正社員に対してもアルゴリズム管理が導入されるケースが増えていくのではないかと感じています。正社員の場合、長期的な雇用関係やキャリア形成への影響も考慮する必要があると思うのですが、人事として今後どういった点に留意すべきでしょうか」というご質問です。こちらも非常に重要な論点ですね。

確かに正社員にアルゴリズム管理を導入する際には、目先の業務効率だけでなく、中長期的なキャリア形成や人材育成の視点も欠かせません。

例えば、アルゴリズムが業務を自動的に割り当てる仕組みになった場合、その業務が本人のキャリア目標やスキルアップにどうつながるのか、従業員自身が納得できるかたちで意識づけていく必要があります。あるいは、そうした視点を持てるような機会づくりが求められると思います。

そのために、キャリア面談のような仕組みを設けたり、アルゴリズムが提示する業務内容と本人の意向、さらには会社の方向性とを調整する場を用意することも、人事の役割として重要になるでしょう。

個人とアルゴリズム、あるいは組織の意図が完全に一致するとは限らず、時に齟齬やかい離が生じることもあります。そうした場合には、配置転換や学習機会の提供といった柔軟な対応も求められるはずです。

このように、アルゴリズムによる業務設計と、正社員のキャリア支援をどう両立していくかは、これからの人事にとって大きなテーマになると感じました。

以上で、いただいたご質問にはすべてお答えできたかと思います。

本日は「アルゴリズム管理」という、非常に先端的かつ変化の大きいテーマを取り上げました。進行中のトピックである以上、確定的に言い切れない部分も多くありましたが、それでもこのテーマについて考え続けること自体に意味があるのではないかと私は思っています。

今日の講演や質疑応答が、みなさんの今後の議論や実践のきっかけになれば、これ以上うれしいことはありません。それでは、これにて本日のセミナーを終了させていただきます。ご視聴いただき、ありがとうございました。

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