アイデンティティー・パートナーズ株式会社主催イベント「ダイバーシティサミット-session1」より、株式会社イトーキの一階裕美子氏、株式会社NTTデータの浜口麻里氏をゲストに迎えたトークセッションの様子をお届けします。企業のDEI施策の現状や、多様性のある組織を作る意義などを語り合います。
「DE&I、本当に必要ですか?」
河北隆子氏(以下、河北):(NTTデータの取り組みを踏まえ)ということで、ちょっと現実的なことを聞いてみましたけれども、みなさんいかがでしたでしょうか。
本当はもうちょっと掘り下げたいところなんですが、けっこういい時間ですので、総括してみたいと思います。
今回のテーマは「DE&I、本当に必要ですか?」と。先ほどのアンケートリサーチ、分析、解説を受けて、「本当に必要かしら?」って、あらためて大事な議論をしていく。そして何をしていくかを考えていくフェーズにいると思います。

まずお二人に「どうですか?」って聞きたいと思います。打ち合わせしていないので怖いけれども(笑)。イエスかノーかと、その理由を3つ、教えてもらいたいと思います。
お二人とも大変お手数ですけれども、チャットに上げていただくことはできますでしょうか? そこから少しお話を膨らませていただき、最後は今後の展望と課題とか、メッセージをいただきたいと思っております。
今日お聞きになっているみなさんは、もうちょっとここを聞きたいなっていうところがおありだと思いますので、質問を入れてくださって問題ないんですけれども。
では、「DE&I、本当に必要ですか?」の回答と、そしてこの理由を3つ、少しだけ詳細をみなさんにお話しいただければと思います。では一階さん、お願いします。
女性社員のロールモデルが女性でなくてもいい
一階裕美子氏(以下、一階):はい。普通に必要というか、「DEI」っていう言葉で聞くとどうかと思うかはあると思うんですけど、ある意味これは社会とか組織都合の目的で、一人ひとりが持っているパフォーマンスを最大限に発揮することが間違いなく組織や社会の力になるということ。
働いている、生きている我々一人ひとりから見ると、やはり私たちが活き活きと働くため。昔は苦しんで働いて成果を出す時代もあったかもしれないんですけど、それで社会が良くなったとしても、一人ひとりが社会の犠牲になるのは嫌だなと、単純に思っています。
というのと、最後に、もうすでに社会は変わっているって私は思っていて。少なくとも今日、途中、紹介できなかったんですが、私が今担っている組織のメンバーはまだ男性のほうが多いんですけど、実はその中に共働きで子育て真っ最中のメンバーがいて、「朝、行けません」とか、もう日常茶飯事ですよ(笑)。奥さんと共働きで必死なので。
うちの若い女子メンバーが、その男性の先輩のことをロールモデルと言ってくれています。途中、ご質問でも出ていましたが、もうそんな時代なので女性だけの話ではなく、優秀な男性社員の方に来ていただくためにも、(DEIは)必須だろうなと思っています。
河北:ありがとうございます。その話、本当にしてほしかったです、うれしいです。ロールモデルっていうと、どこかで「女性のロールモデルは女性」って考えてしまいますけれども、本当に今って、夫婦で一緒に仕事をしてがんばって、みたいな男性を見て、「あの人がロールモデル」って女性の若い方が言う時代ですよね。とてもいい話だと思います。ありがとうございます。
すでに社会は変わっているというところと、もちろん組織のためだけではなく、一人ひとりが活き活きと働くため。これがちゃんとつながっている。一人ひとりが持っている力を最大限に発揮するという現状もお話ししていただきまして、もう大変うれしいです。ありがとうございます。そして今度は浜口さんですね。どうでしょうか?
ワークライフバランスではなく「ワークインライフ」
浜口麻里氏(以下、浜口):「必要だし当たり前になってほしい」と書いたんですが、実は最初は「社会課題解決」って書いたんです。冒頭にも少し話しましたけど、やはり労働人口の減少で、IT業界だけじゃなくほかの業界も人材不足なのであろうというところ、もう画一的な採用はまかり通らない時代なんだろうなと思っています。
新卒でも経験者でも、私が採用する中では、条件面でなくどちらかというと個人のスキルやパッションをお聞きするようにしているんです。
そういう意味では、個を重視する、個をよく見るっていうところで、すごくいい面だなと思っているのが1つ目ですね。
2つ目は、「ワークインライフ」と書きました。一昔前はワークライフバランスってよく言いましたけど、「今はワークインライフなんだ」と誰かが言っていました。
それはそのとおりだなと思っていて、仕事は人生や生活のあくまで一部でしかないし、ライフあっての仕事なんだろうって思います。
(子育てなどの)制約がある方にどうしてもスポットが当たりがちなんですけども、自由に働ける人にも自分の人生を充実させる権利があるので、そこは私も言っていきたいなと。どうしてもマイノリティだけの話をしちゃいがちなんですが、みんな平等に自由な権利はあるよっていうところ。
最後に、「多様性が人を豊かにする、成長させる」と思っていて、やはり似た属性の人ばかりの組織よりも、多様な人とか価値観、考え方の方がいるほうがアイデアの広がりが出るし、考えてもいないことに触れて自分自身の発想も広がると思うんですね。
私、新卒からずっと今の会社にいるので、けっこうツーカーで話せる人ばっかりではあるんです。ただ身近な例だと、子どももそうですし保育士さんとか保育園で関わる職業の方とかと話すと、やはりいろんな発見があって自分の幅が広がったなと思うので。
制約がある人のためのものというよりは、やはりその環境がみんなを豊かにするし、成長させるんだっていうことを発信していきたいなと思って書きました。
“はみ出す”ことで見える景色がある
河北:ありがとうございます。とっても素敵ですね。もちろんマイノリティ差別をなんとかしなきゃいけないんだけども、「そこだけに焦点」じゃなくて「全員活躍」で、みなさんが豊かになることだしね。個を見るのもそうですよね。
1つの条件だけで人を機械的に見ることは、優秀な企業さまであればあるほど変わってきましたよね。きっちり洞察してその人の内側、能力も感情も人間性もちゃんと見ていくっていうことですよね。うれしいですね。ありがとうございます。
スクールでもよく「はみ出し合いましょう」とか言っちゃうんですけど、越境すると自分自身がちゃんとわかったり、会社のことも見えたりとか、自分の中で発見が増えたりします。人生を豊かに生きてもらえる。働くってそういうことだとも思いますしね。とっても素敵な3つでございます。ありがとうございます。
そしてお二人に、ビジョンっていうか、展望と課題、どちらでもいいですが、お伝えいただければと思います。一階さん、どうでしょうか?
一階:そんなに大それたことはあんまり考えていないんですけど(笑)。
河北:(笑)。
“女性活躍推進”というキーワードへの違和感
一階:私は日々マネジメントする中で、せっかく働いていて生きているんだから、純粋にちょっとでも楽しく過ごせる組織でありたい。「その方が前向きにパフォーマンスを発揮できる」というのはもう大前提で、そういう組織を少しでも増やしたくて。
SPLiに参加しているメンバーがそんなリーダーになってもらえたら非常にうれしいですし。なので、施す側と言うのも変なんですけども、何かを施されるのを待つのではなくて、自らが誰かに何かをするような人が1人でも増えるといいなと思っていますし、それが当たり前であればいいと思っています。
今日、登壇のお話しをいただいた時も「普通に仕事しているだけです」ってお返事したんですけど(笑)。
河北:はい、はい。メールに書いてありました。
一階:本当に日々普通の働き方をしているだけなので、みなさんとそんなに変わらないと思っています。なので、そんな当たり前がさらにバージョンアップされる社会がみなさんと作れたらうれしいなと思っています。
河北:ありがとうございます。浜口さん、どうぞ。
浜口:ちょっとさっきと重複しますけど、やはりDEIとか名前を付けたり対外的に発信しなくても当たり前になれるようにしていかないといけないなと思っています。
たぶんこの中にも、女性活躍推進っていうキーワードが嫌いな方がたくさんいるんじゃないかなと思うんです。
やはり女性活躍推進もそうだし、育児・介護の両立とか、障がい者雇用とか、マイノリティに対する施策が目立っているので、対象の人が優遇されているようにも見えると思うんです。少なからず不公平感をお持ちなんじゃないかなと。
女性活躍推進は、マイノリティの中でも最大のマイノリティなので、たぶん今はそこがフォーカスされちゃっているんですけど、その名前ゆえに誤解を招くところもあって。
自分らしい生き方が実現できる社会を目指して
浜口:さっきワークインライフのところで少し言ったんですけど、結局、お互いさまなので、趣味の時間で休みを取るのもゆっくりしたいのも、すべて自由だしOKだと思うんです。なので、やはりお互いにカバーできるようにしたい。
それが、子育てだったり育児だったり……一緒だ(笑)、子育てだったり介護の事情だったりでも、「山登り行きたいんです」「ゲームしたいんです」でも、何でもいいと思うんです。
そういうお互いのライフを充実させるための時間を、お互いにサポートできる。そうしないとやはり、一部の人がおそらく優遇されているように見えちゃうんじゃないかなと思うので、その払拭が私のミッションかなと思って、やっているところです。
河北:ありがとうございました。お二人にしっかりね、最後お伝えいただきまして、なんだか心が動きました。
一階さん、そして浜口さん、ありがとうございます。みなさん大きな拍手をして締めたいと思います。
たくさんの示唆とアイデアと、いろんな工夫や苦労、表も裏もお話しくださいまして本当にありがとうございました。