パーパスを起点に、共感する人たちとつながり行動をしているフロントランナーたちをゲストにお呼びするトークイベントシリーズ Project MINT Luminary talk! シリーズ。今回は、大人が知るべき「リフレクション(内省)」と「ダイアローグ(対話)」をテーマに、教育・組織開発コンサルタントの熊平美香氏が登壇しました。本記事では、理解できない相手との向き合い方についてお伝えします。
内省は1人で行うものではない
植山智恵氏(以下、植山):私もどちらかというと、リフレクション、内省というのはやはり自分の中で静かに気づくみたいな印象があったんですけれども。未来を作るダイナミックなものという表現が、本当に素敵だなぁと思いました。リフレクションは未来を作る壮大なものなんですよね。
熊平美香氏(以下、熊平):でも智恵さんの、この講座がまさにそうだと思うけど。
植山:あー、確かに。
熊平:そうですよ。だって1人じゃないからたくさんのことにみんな気づけているわけだし。それぞれが自分に向き合っていることをみんなが開示するから、より早く自分についてみんな気づきを得るわけじゃないですか。
これを1人でやっていたら、とてもじゃないけどあの期間の中で答えにたどり着けないと思うんですよね。だから、まさにそれをやっているんですよ(笑)。
植山:確かにそうですね。そう言っていただいて、ありがとうございます。「早く行きたければ1人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」というアフリカのことわざがあるように、まさにリフレクションはそういうことなんですかね。
熊平:そう思います。
リフレクションを組織に導入する時の壁
植山:いや、すばらしいです。ありがとうございます。先ほど(リフレクションの)基本的な考え方を熊平さんにお話しいただきました。実際に今日ご参加いただいているみなさんも、ある程度もうリフレクションとかダイアローグに何かしら関心がある、すごくアンテナの高い方たちだと思っています。
おそらく職場でも対話の文化やリフレクションを根付かせていきたいなと思っている方も多いんじゃないかなと思っています。例えば1番目のトークテーマなんですけども。

会社の中には、いろんな人がいるじゃないですか。今日ここに参加いただいてる方は、どちらかというと自分自身もリフレクションしていきたいし、広めていきたいと思っている方だと思うんですが。会社の中にはどうしても「いや、それよりも売上が大事でしょう」とか「ちゃんとPDCAサイクルを回すほうが優先度が高いんじゃないの」みたいな方もいらっしゃると思うんですけど。
例えばそういう共通認識がない人と対話をしていくにはどうしたらいいでしょうか? ということなんですが、いかがでしょう。
熊平:ありがとうございます。私もこれとずっと戦ってきたようなものなので、課題感という意味ではすごく共感します。その答えとして、一応私は「意見」「経験」「感情」「価値観」という4つで、自分の意見を、あるいは相手の意見を理解するというフレームワークに今たどり着いているんですけど。
もともとメンタルモデルという学習する組織で定義している大事な考え方なんですけれども、このメンタルモデルとほぼ同じなんですけどね。それを私は常に自分の頭の中に持っておくようにしているんです。それがすごく助けになりますというのを、ちょっと説明させていただきます。
理解できない相手との向き合い方
熊平:まず、例えばさっきのように「売上がすごく大事です」「利益が大事です」(と人に言われて)、「自分はそうあんまり思っていないかな」と。その時、その人にはその人なりの、そう思う背景があるというのが、メンタルモデルの言っていることなんですよね。
なので、「その人はどうしてそう思うんだろうか?」ということを理解しようとする聞き方をするのが、1つポイントになるわけです。
本当は「意見」「経験」「感情」「価値観」とちゃんと整理してしゃべってくれればいいんだけど、世の中そういうわけにはいかないので。まず1つ大事なことは「どうしてそう思われるのかな?」というようなことに出会った時は、なるべく相手にその背景をベラベラとしゃべってもらうのがポイント。
その背景にあるたくさんのご経験とかを話していただけると、「あぁ、こういう気持ちだったんだなぁ」「こういうことを大事にしているから、そういうふうにおっしゃっているんだな」と、その人の意見がいったん整理できるんですよね。そうするとそれはそれ、ということで否定するものでもないという気持ちにもなれます。
また自分が特に否定したくなる時は、今度は自分の大事にしていることが否定されたと思っているという事象なので、「いや、何が否定されたと感じているのかな」という、自分を4点セットでリフレクションすると、「あー、あれね」みたいな感じで自分のこともわかる。
意見の相違は「自分を知る良い機会」になる
熊平:なので、こういうことが自分の中でできるようになると、まあまあ、どんな人が現れても、それはある意味自分を知るいい機会だったというオチになる。そんな感じなんですよ。
植山:なるほど。じゃあやはり、その反対意見を持っている方の感情や価値観まで知ってあげるというか。
熊平:そう。でもね、これを何度もやり始めるともう何でもありというか、何でも来いになっちゃうんだよね。人間ってそんなもんなんですよ。自分も含めてですよ、もちろん。何かにこだわるというのは、誰もがこだわることなので。
それで、私たちがリフレクションをやっている背景というのは今の自分のこだわりであって、普遍的な……。なんていうのかな、「もう生涯それしかないよね」ってことじゃないという。
この柔軟性みたいなものはリフレクションで磨かれるものなんですよね。それをまったく知らない人が固執しちゃう。1つの意見に固執しちゃうのは、何においてもあまり得策ではないので。そうじゃない世界を作りたいということもあって、リフレクションを広めたいなというのはありますね。
すぐに評価や判断する癖が良くない
植山:確かに、「こうあるべき」というものは本当に、あるようでないものというか。その会社の中でみんなで作っていくということなんですかね。
熊平:あらゆる事柄について、私たちはそういうものを持っているわけじゃないですか。でも、それもまったく違う経験をすれば違うものになってしまうような、ある意味うつろうものでもあるし、立場を変えると違う景色に見えることだってたくさんあるわけだから。結局のところ、1つの真実はないというかね。
植山:ありがとうございます。そうですよね。そうすると、やはり会社の中のつながりだったり、共感だったり、心理的安全性だったりも、やはりこういう対話を続けていったら自然に生まれていくことはあるんですかね。
熊平:これはどっちが先かなぁ。微妙ですね。やはり心を開かないと関係性が作れないじゃない? でも結局、ある意味、誰もが自分を受け入れてもらえていないという感覚があるのかなという気もするよね。
みんなが「否定されるんじゃないか」という不安の中で自分を開示しないから、結果つながれない感じになるよね。だからリーダーでも誰でもいいんだけど、「ここは安心な場所だよ」というスペースを作れる人がいたら、同じ人間だって変わるじゃない。
だからMINTに来ている人たちはたぶん会社ではそうじゃないけど、MINTの中では自己開示しているじゃない? つまり、安心な場所だということが確信できるからですよね。それを作っていく人はやはり必要だと思うんだよね。
その時にすぐに評価したり判断する癖が良くない。それももう本当にメンタルモデルの押し付けだから。ということをみんなが知れば、「あぁ、違う意見だね」という。そういう落ち着いた心持ちで多様な意見を聞けるんだけど、すぐ否定にかかっちゃう人がいるからね。