アイデンティティー・パートナーズ株式会社主催イベント「ダイバーシティサミット-session1」より、株式会社イトーキの女性限定コミュニティ「SPLi(サプリ)」の取り組みを紹介します。社員コミュニティをただの会合として終わらせないための工夫や、実際に行っている企画の内容など、企業の多様性施策のヒントとなる情報をお届けします。
社員コミュニティ運営のノウハウを深掘り
河北隆子氏(以下、河北):ありがとうございます。やはりトップのコミットメントってはすごく響きますと。今みたいにリーダーがリアルな現場を抱えて、人事だけではなくそれぞれの立場から導き出すという事が大事。
あと、このSPLiも女性だけでワイワイってやっているように見えて、目的は「リーダーシップを開発する」なんですよね。ここも、まず目的が違うと思います。よくある「みなさんでガス抜きをして、ランチに行って」みたいなことだけではなくて、ちゃんと目的が立っている。
実際に他社さんとの交流、外向きのアプローチも入れているっていうのも大きいですよね。内向きだけではなくて外向きのアプローチも入れて、自分自身が変わっていく。
私たちもそのランチコミュニティにお邪魔したことがあって、本当に気楽に、みなさんが肩ひじ張らずにご飯を食べながら話し合っていく場って、意外となかったなって思いました。
そういうアプローチが組織風土を生むし、自分ももっと勉強したいとも思うし、自律的にいろんな企画を作りたいみたいな気持ちも立っていくと思いました。SPLiは、始めてどのくらいって言いましたっけ?
一階裕美子氏(以下、一階):丸3年が終わって、4年目がこれからスタートです。
河北:3年か、早い。今後、4年目以降はどういうふうにしていきたいと思っていますか?
一階:やはりふだんいる場所でしっかり力を発揮するっていうことをもっとやっていきたいと思っていて。そのためのきっかけとしてコミュニティがあるんですけど……何でしょう、ちょっと私はあまり口がよろしくないので、変なことを言っちゃうかもしれませんが(笑)。
河北:一緒です(笑)。
日々の仕事にプラスになるような活動を意識
一階:コミュニティ自体が目的になってしまっていると良くないんですよね。それでがんばっているって思っちゃダメで。今いる場所、もしくは自分が掲げている目標があれば、そこに向かってしっかり成長する、お互いに刺激し合うことをしっかりやっていこうって、さらに気合いを入れているところですね。
河北:ありがとうございます。質問も来ていますので読みたいと思いますけれど。ちなみに、でも「総論で賛成、各論は反対」と言われたり、トップが握っているとはいえ、こういう動きをになんとなく対立しちゃうとか、男性に理解いただきにくいみたいなことをおっしゃる企業さまもいらっしゃるんですね。
このあたりに困っているということをイトーキさんからあまり聞いたことがないんですけど、うまくやっているポイントは何ですか?
一階:いろいろあって、例えば社外ゲストにお越しいただく時に、メンバー向けだけの時もあるんですけど、時には全社向けにオープンにして「SPLi主催です。誰でも聞けますよ」みたいにやることもあります。
他には、例えばロスフラワー(規格外などの理由で廃棄される花)を使ってオフィスでアートを作るみたいなイベントをやったことがありました。
クライアントがオフィスをご移転されたりした時とか、みなさんもお祝いの花を贈られると思うんですけど、それを胡蝶蘭にせずにSPLiで接点を持っていた会社さんのロスフラワーに変えたりとか、そういう事業側にも少しプラスになるようなことを意識しています。
河北:なるほど。
一階:地道なんですけども、ここで得られたネットワークが、実はお仕事のほうにもつながったりとか。もちろん、「SPLiの活動ばっかりして……」みたいな人も個々には聞きますし、初めはメンバーの中からも、「なんで会社がやっていることなのに時間外なんですか? 残業代は出ないんですか?」みたいなのがあったんですけど、「いや、だったら入らなくていいですよ」って(笑)。
河北:(笑)。
一階:自分のためにプラスになると思ったら参加してほしいということです。
“ママさん会”のような企画はやらない
河北:いいですね。組織と人がちゃんとつながるように、経営や事業と切り離されないように。そういう取り組みが全体性を良くするなと思いますね。派手ではないけれども、地道に重ねていくと風土にもなる。とっても重要なことですね。
質問に取りかかりたいと思います。「トップの認識が低い、コミットメントの低さを改善する方法があればご教授ください」と書いてあります。いかがでしょうか(笑)?
一階:一度社長と話してください、というのが一番早いかもしれないんですけど(笑)。
河北:(笑)。でも、そういうアプローチって新しくていいですね。社長も困っていますから、外の方と語り合ったりするとヒントをもらえますもんね。
一階:あとは、もし必要であれば我々がいくらでもお話ししに行きます。さっきもちょっとありましたけど、「女性が集まるとフワッとしたコミュニティになって終わっちゃうんじゃないか」って思われている経営者の方もいらっしゃるかもしれなくて。
当社の場合は逆に、先に(代表取締役社長の)湊(宏司)から「女性の労働組合みたいな活動だけはするな」って言われていたんですね。例えばあまり“ママさんの会話”みたいな企画はしていないんですよ。もちろん雑談の中ではそんな話もあるとは思うんですけど、どちらかかというと仕事の悩みとか。
河北:ありがとうございます。けっこう重要なことですよね。そして、さっきみたいにいろんな成果を数値化していくことで理解していただく、応援していただくっていうことがすごく大事だと思いますね。私どもの修了生が御社と交流することも普通に起こってきていますので、そこからわかってくることもあると思います。
自分の業務内容を紹介する企画のねらい
河北:次の質問です。「SPLiの活動をに関して、具体的な取り組みをいくつか教えていただけませんでしょうか?」って書いてあります。たくさんあると思いますが教えてください。
一階:そうですね、いっぱいありますね(笑)。何がいいんでしょうか? さっきちょっと数値情報を出しましたけど、ゲストの方に来ていただいたりとか、いっぱいあるんですよね。

例えば(実施企画の)Lunch SPLiで何をやっているかというと、お互いの仕事紹介をやります。それをリレー形式でやったんですけど、当社の中でも女性が担っている役割が……「女性が担っている役割」って言うのも本当は嫌なんですけど、比較的サポート寄りの仕事に女性が多くて。
そうするとふだんこうやって人前で話したりプレゼンテーションしたりする機会がないんですよね。仕事の幅を広げようと思うと、プレゼンテーションも交渉も、人前で話すことが必要になってくるので。
お仕事紹介をすることで、まず話すことの実践と、自分の仕事に誇りを持てたりとか。もちろん参加するメンバーは、「あっ、うちの会社でもこんな仕事あるんだ」とか、「この仕事、簡単そうだけど実は大変なんだな」とか、そういうビジネス理解もリアルに広まったということで非常にいい企画です。
仕事紹介をしたのがちょうど30名強ぐらいですかね。もうだいぶ回ったのでいったん終わったんですけど。ほかにもたくさんあるので、よろしければ、ご連絡をいただければ紹介します。
自分の仕事に誇りを持つことの重要性
河北:ありがとうございます。いいと思いますよ。私、製造現場の組織変革の仕事をしていて同じようなことをしました。そうすると本当に、自分の工場を誇りに思ったりとか、相手に伝えることの難しさを理解することで、交流も生まれてくるんです。お互いに苦労していますからね。
そういうことをインタビューをして、Webサイトにアップするみたいなこともとか、ちゃんと見える化していくこともひっくるめて大事ですね。交流がちゃんと価値を生むんだというところ、ありがとうございます。
けっこうな時間なんですけれども(笑)、「SPLiの参加者の上司の方にも働きかけを行っているのでしょうか?」と書いてあります。ここをちょっと最後に、お願いできますか?
一階:基本的にはしていないんですけど、まずSPLi入るのは、上司の許可は要らないです。ただし時々、研修を就業時間中に行うことがあるので、そういった時はしっかり上司の許可を得てきてくださいってお願いしています。許可を得るのも大事なことなので。
河北:そうですね。私どもも、ビジネススクールとして派遣いただいているところへは報告会もしますので、上司の方に成果をご納得いただいたりもしています。
さて、今やり取りさせていただいて、施策のことやリーダーとして、みたいな話もできて、「あっ、そういうコツがあるんだ」っていうところも押さえていただけたのではないかと思います。