アイデンティティー・パートナーズ株式会社のシンクタンク「わたし・みらい・創造センター(企業教育総合研究所)」は2025年、日本企業約200社を対象にアンケートを実施し、今後のDEI施策に対する意向を調査しました。本記事では副センター長の頼木康弘氏が、調査レポートの内容や、企業が多様性施策を実施するメリットを紹介します。
アメリカ企業でも対応が分かれるDEI方針
司会者:それではさっそく、DEIレポートの概要に入っていきたいと思います。頼木さん、バトンタッチいたします。
頼木康弘氏(以下、頼木):では私のほうから、DEIのレポートについてご紹介したいと思います。
2025年の年初にアメリカ大統領の衝撃的なニュースがあり、そのニュースをもとに緊急アンケートを実施しました。今回は限られた時間の中でギュッと凝縮してご説明いたしますのでよろしくお願いします。
前回の(セミナーの)お話を聞いている方は、ちょっと重複している部分もありますが、新しい部分も入れておりますので、ぜひお聞きいただければと思います。
みなさんもご存じだと思います。2025年の1月、アメリカのトランプ大統領によって政府内のDEIプログラムが停止されるという動きがありました。
これによってどういうニュースがあったかというと、DEIの専門職の人が一時的に休職となって、連邦レベルのDEI施策が凍結されたというのがもともとのいきさつです。
この動きに対して、アメリカ国内でも企業ごとに対応が分かれました。推進派企業と慎重派企業と書かせていただいたんですけども、Appleさんとかマイクロソフトさん、Googleさんに関しては、引き続き推進していく。変わらずやっていくよと言っている一方で、Amazonさんやウォルマートさんは、慎重派ですね。もう少し、抑制して進めていこうということで、いろいろな企業の動きがありました。
日本企業のDEIに関する動向を調査
頼木:ただ、動きを継続したり、変更したりしているというのが、現状です。なので当初よりは変化はしているんですけども、いろんな部分が出てきたというところです。この背景には、いわゆる逆差別の懸念とか、法的なリスクとかコストの負担がある。あるいは実効性に対する疑問などが、やはり慎重派に大きく出てきました。
実効性っていうのは、「本当にDEIって意味あるの?」「組織にとって、企業にとって大事なの?」という話が非常に注目されました。
ここを踏まえて、さっそくアンケートの中身に入っていきたいと思います。

日本企業さまにいろいろアンケートをさせていただきました。1つ目の質問です。「DEIの取り組みをやっていますか?」その結果、全体の約6割が「取り組んでいる」あるいは「積極的に取り組んでいる」と回答していただいていて、約9割が何らかの行動をされていると出ました。これが1枚目の結果です。けっこう数字が多かったなとあらためて感じました。
次ですね。実は最初のレポートの中には入っていない、私たちのほうで採っているものなんですけども、業界別にどんな特徴があるかを見てみました。
すると、製造業、金融・保険業、運輸・物流・エネルギーという、(スライドの)赤のかっこで囲っている3つの分野で特に取り組みが進んでいる傾向が出ていました。
ということで、おそらく業界によって大小が変わってくると思います。DEIの取り組みや、ビジネス環境が違ってくるので、もしかしたらみなさまの業界とか、あるいは組織の中でDEIがどう位置付けられているかが問われた部分があるかなと思います。
特にこの3つの業界に多く出てきた背景には、従業員の多様性とか、あるいは採用競争の激化が背景があるのではないかと考えています。
約6割がDEIに取り組んでいると回答
頼木:では次、2問目の質問ですね、実際にDEI施策を「積極的に取り組んでいる」、あるいは「取り組んでいる」「取り組む予定である」という企業さんに聞きました。

その中で「経営課題としてどのような取り組みをしていますか?」と尋ねましたら、最も多かったのは従業員満足度と採用の部分でした。

これは日本企業が人材確保と、あるいは採用、人材の定着に大きな課題を認識していて、その解決策の1つとしてDEIを位置付けていることが見えます。
では次ですね。「DEI施策の重要度・緊急度はどうなのか?」
これ、上が緊急度だと思いますけども、実は私たちは、DEIの緊急度はそれほど高くないのではないかという仮説を立てていたんですけども、結果、予想以上に高く出ました。
下側左の、青い部分とオレンジの部分が、どちらかというと意識や重要度、緊急度が高いところになりますので、だいたい7割の会社さんが「高い」あるいは「どちらかといえば高い」という数字が出ていました。
今後ますますDEIは対応しておかなければいけない重要なテーマ、あるいは組織の競争力にも影響があるのではないかというふうに私たちは感じております。