ソニックガーデンの代表・倉貫義人氏と仲山考材の仲山進也氏が「雑な相談」をするポッドキャスト『ザッソウラジオ』。今回はヤッホーブルーイング代表取締役社長の井手直行氏がゲスト出演。これまでのザッソウを振り返りながら、エフェクチュエーションとベンチャーマインドの関係性について語り合います。
ビジョンよりも“おもしろいから”で成長するパターン
倉貫義人氏(以下、倉貫):(ベンチャーマインドをどう身につけるのかという話を受けて)インストールとか、言ってみたら洗脳させる活動ではなく、本人たちが行動しているうちにマインドセットが身につく方法ってないんですかね。一生懸命エフェクチュエーション(成功した経営者に共通する行動原則)の本を読ませてもいいんだけど、なんかちょっと違うな感じもする(笑)。
井手直行氏(以下、井手):それを考えると、僕がチームビルディングや通販をやり始めた時も、エフェクチュエーション的にどんどん広がっていきました。なので倉貫さんが言うように、結局、やっていくうちにマインドが出てきたというのが正直なところです。
いろいろやってベンチャー的な行動になっていったと同時に、三木谷さんみたいな人や、がくちょを通して楽天さんのことを知って、それはそれで刺激になりましたので。
ちょっと話を戻すと、第1回目の時に「私が考えるベンチャー」みたいなところで、僕が「社会にインパクトがある」「成長」「賛否両論」とか言ったあれは、いわゆるベンチャーというわかりやすい刺激をいただいて得たインプットなんです。
それも大事にしているけど、今、ふと新たな学びとして、別にビジョンはないけどエフェクチュエーション的にちっちゃくやり始めて、仲間ができて、「これはおもしろい」みたいな感じで動機づけになって、それで途中から雪だるま式に大きくなっていって、「うわぁ、すげぇ」みたいなのもたくさんある。
だからアプローチの仕方がちょっと違うけど、結果的に、両方ともベンチャーな感じがある。そこをもっと、僕はエフェクチュエーション的なベンチャーマインドの話もしたほうがいいんだなと、今、ちょっと棚卸ししました(笑)。
(一同笑)
「賢者風」「愚者風」2つのリーダーシップ
井手:どっちかというとわかりやすい「賛否両論」や「リスクも取る」みたいなほうもあるけど、最近はそうじゃないアプローチをやっているし、言っているよな、みたいな。
両方ともベンチャー的な感じがあるけど、ちょっとアプローチが違うから、こんがらがらないように整理しないとなって。
仲山進也氏(以下、仲山):それをわかりやすくする表現の1つが「賢者風」と「愚者風」みたいな。賢者風リーダーシップは、なんか強そうな感じのやつ。愚者風リーダーシップというか、愚者風ベンチャーマインドはエフェクチュエーションっぽいやつ。
倉貫:確かに。でも小さくやって発見があり、一緒にやっている会社側もそうだし、ユーザーさんや受益者さんやビールを飲む人も含めて、そういう人たちと一緒に楽しくて広がっていく。ヤッホーさんのイメージはけっこうそっちだなという感じは……。
井手:そうなんですよ。だからそっちにシフトしてきて、気づかなかった自分の思考の整理が、このザッソウラジオの3回のシリーズでめっちゃ整理できて、撮れ高がめっちゃ高いんですけど(笑)。ありがとうございます。
僕は、今言っていることよりも、もう1個言っているエフェの要素をもっとみんなに伝えたほうが混乱しなくて、ヤッホーに合っていていいのかもしれない。きっとそうだわ。
倉貫:井手さんが今、長考モードに入ってしまいました。
仲山:内省モードに(笑)。
ワクワクしてリスクを忘れる状態
井手:(笑)。これはひもづいたというか、同じベンチャーなんだけど違うアプローチ。ベンチャー的なところにエフェクチュエーションがあるんだけど、「すべてのベンチャーのやり方じゃないよ」っていうのは、もともとすごく理解していたんです。
だけど、そことさっきの「社会的インパクトがあって、リスクを取って」みたいなところとの棲み分けができていなくて、ごっちゃにして話している自分に初めて気づいたのは、すごく良い整理ができたと思いました。
倉貫:最初の「リスクを取る」みたいな話も、しっかり考え抜いてできるようにしようという。これもリスクテイクというよりは、やっているうちに「これはおもしろすぎるな」「ワクワクするからやるしかないな」みたいな感じでやっていると、リスクを忘れている状態になれるじゃないですか。
たぶんそれでやってきていらっしゃったのかなという感じもします。今日のいろんな取り組みの結果を聞くに、そのワクワク感がめちゃくちゃ伝わってくるんですよね。
リスクに対して、これは
何回か前の青木(耕平)さんの回でも「リスクを不安ととらえて無くすのではなく、不安があるからこそ希望がある」みたいな話をしていて。
それって結局「リスクをどうとらえていくのか」みたいな話になった時に、「なるべく不安を解消した上でしっかり考えていきましょう」というよりは「不安があるけど、でも、これはめっちゃおもろいからやってみよう」というほうが、みんながやりやすくなりますね。
井手:そうですよね。あとはエフェクチュエーション的にも「許容可能な損失」は「リスクを取る」と同じような感じなんだけど、聞こえ方でいくと「許容可能な損失」のほうがあんまりビビらずに(笑)、自分の範囲の中でやっていける雰囲気はありますよね。
倉貫:いける範囲でチャレンジしていこうということですね。
井手:はい、ちっちゃくね。
“アホだって思われるぐらいは許容可能な損失”
仲山:なのでそれこそ、エスコンフィールドのファイターズさんとのプロジェクト(ブルワリーレストラン「そらとしば by よなよなエール」)も、別に「じゃあ、借金してそこに乗っかろう」とはならないわけですもんね。「お金を使わずに」みたいな。
井手:やらないし、ありがたい話だけど、別にそれまでにファイターズさんと付き合いがあったわけでもないんです。だから「とりあえずいろいろな無理難題も、全部こっち側から要望を出しちゃえばいいや。嫌われても、もともと付き合っていないしな」と思って。
「あいつ、アホだ」って思われるぐらいはぜんぜん許容可能な損失だなと思って、とりあえずばーっと言ったらほぼ全部受けてくれたので、「うわっ、言ってよかった!」みたいな(笑)。
(一同笑)
倉貫:第2回の節分のエピソード(節分に合わせて実施した「インドの青鬼」PR企画の成功)も、本人にとっては怖かったんだろうけど、許容できる損失の範囲でチャレンジして、うまくいったということなんでしょうね。
井手:そうです。そこの事例は本当にエフェクチュエーション的な考え方でアドバイスもしていたんですよ。「とりあえずちっちゃくやってみればいいじゃん。別にうまくいかなくても大した損失じゃないしね」みたいな。
そこの動機づけは、ちっちゃくやって、ちょっと成功体験を得て、「またやってみたい」って思わせるようにしたいなと思っていたので、アプローチは完全にエフェクチュエーションで進めていたんです。
倉貫:結果として誰もやったことがないし、常識を疑ってリスクを取っているが、「リスクを取ってやれよ」と言ったわけではないという。
エフェクチュエーションの理解が深まるおすすめ回
井手:そうですよね。これは結果としてそうなるという構図かな。これはありがたい会ですね。ありがとうございます(笑)。
倉貫:いえいえ。こんなに久しぶりにお会いして、本当に雑な相談をしていただいて、録れ高もあって。
仲山:3回丸々ね(笑)。
井手:(笑)。めっちゃ録れ高ですよ。あんまり課題にも感じていなかったんだけど、今こう言っていると確かに矛盾があるな、みたいな。で、整理ができた結果が、僕が言っていたベンチャーのキーワードの要素だった。すばらしい。
ちなみにラジオを聞いている人は、エフェクチュエーションの意味は、なんとなく理解している方が多いんですか?
倉貫:ザッソウラジオのリスナーさんは履修済みだと思っています(笑)。
(一同笑)
井手:そうなんですね。じゃあよかった(笑)。勝手にエフェで盛り上がっちゃっているから。
仲山:吉田満梨さんもゲストで来られているし。
井手:そうか。ちょっと前に出ていましたよね。
倉貫:もし「エフェクチュエーションって何だろう?」と思った方は、吉田満梨さんの回(#108~110「吉田満梨さんとザッソウ 」)をぜひ聴いてください。
仲山:でも吉田満梨さんの回を聴くよりは、僕と倉貫さんが最初に『エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」』っていう本がおもしろいって
2人でしゃべった回が。
倉貫:そっちのほうがわりかしエフェクチュエーションの意味を説明しています。僕らは本の解説の回の時にちゃんと説明して、吉田満梨さんがゲストの回では、エフェクチュエーションの説明とはぜんぜん違う雑な話をしていて(笑)。
井手:じゃあ、吉田先生の回の話はダメだ(笑)。
仲山:吉田満梨さんに説明してもらうと、講演で話している話になっちゃうからね。