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井手直行さんとザッソウ(全6記事)

16年間続けた施策がプロ野球コラボに結実 ヤッホーブルーイングの躍進を支える“小さなトライ”戦略 [1/2]

ソニックガーデン代表・倉貫義人氏と仲山考材の仲山進也氏が、毎月さまざまなゲストを迎えて「雑な相談」をするポッドキャスト『ザッソウラジオ』。今回はヤッホーブルーイング代表取締役社長の井手直行氏がゲスト出演。北海道日本ハムファイターズとの協業などの大型企画が実現する中、その背景にある事業推進スタイルの変化を深掘ります。

ベンチャーマインドを掘り下げて気づいたこと

倉貫義人氏(以下、倉貫):倉貫です。

仲山進也氏(以下、仲山):仲山です。

倉貫:『ザッソウラジオ』は倉貫と「がくちょ」こと仲山さんで、僕たちの知り合いをゲストにお呼びして、雑な相談のザッソウをしながらゆるくおしゃべりしていくポッドキャストです。

4月のゲストは株式会社ヤッホーブルーイングの代表取締役社長の井手直行さんです。最終回となります。よろしくお願いします。

井手直行氏(以下、井手):はい、よろしくお願いします。

倉貫:第1回、第2回と、ベンチャーマインドの解像度をより上げていこうということで、楽天のエピソードやヤッホーブルーイングさんのエピソードを聞いてきました。

ベンチャーマインドを身につける前に、そもそも高いハードルを越えていく成功体験を続けていけば、そういうカルチャーが会社の中に浸透するんじゃないか、みたいな話がありました。それを受けて「てんちょ(井手氏のニックネーム)」として、なにか思うところがありそうな雰囲気でしたが。

“無茶ぶり”な目標をどこまで出すか

井手:第2回のザッソウラジオの話なんですけど、がくちょが「一見無理めな目標を三木谷(浩史)さんが出して、みんなが『無理だろう』って言っているけどクリアして、それを3回ぐらいやると慣れてくる」みたいな話をされました。

そう言われてみるとけっこう初期の頃は僕が無邪気に、あんまり周りのことも考えずに、と言うとそこまでではなかったけど(笑)。ある意味無茶ぶりなお題をポンと出して、それを達成するまでずっと見守っていたり、時には一緒にやったりして、大きいことをどんどん実現していったんです。

それがさっきの三木谷さんの話に似ているなと思うんです。だけど、それをやっていくとだんだん負担になって、ちょっと倒れかける人が出てきて。わかりやすく言うと、30パーセント成長をするのに違うやり方を探すんじゃなくて、気合・根性でいこうとして疲労・疲弊しちゃう例が出てきて。

今思うと、それを僕が近いところでやっていたら、たぶんいろいろアドバイスや伴走ができた。けれどちょっと大きくなってきて、僕がファシリテーター役をできなくなっている時にそういうのが起こってきちゃって、あんまり無茶ぶりなお題を出すのはちょっと危険だなと思ってきているんです。

あんまり無茶なお題は出してこなかった時期が続いているのはあるなって、今、ちょっと思っていて、これはどうしたもんだろうかなと。

といっても、無茶ぶりはいつでも出せるけど、そうするとうまくいく人にとっては自信になっても、(気合・根性でやろうと)誤解して違うやり方を探せなくて耐えられなくて潰れかかる人も出てきちゃうんだろうな、うーん……みたいなことを感じたんです。がくちょと倉貫さんは、どう思いますか? 

組織文化を言語化しないと生まれるリスク

倉貫:さっきのハードルの話で言うと、高いハードルがあるほうがよくて。高いハードルをクリアした人たちは生存バイアスがかかるので「そうすべきだ」となるが、実はそこには生存できなかった人たちがいるんじゃないかと。

でも、僕も会社経営をしていますが、包括性というか、やはり全体をなんとかする、全員をうまく活用できる、生き生きできることを求めたいというのは当然あると思います。

僕自身も経営者なので、やはりやりたいことがいっぱいあるじゃないですか。「こうなったらいいな」と思うし、なんだったらストレングスファインダーの上位資質が「慎重さ」なのに、「最上志向」も持っているので、より「もっとこうしたい」というのが出てくる。

それに巻き込まれて、本当に近くにいて一緒にやれる人もいれば、「やっぱりきつい」ってなる人も出てくるので、これは僕もがくちょに聞きたいなと思いました。

仲山:やはり1個は考え方というか、お題の設計です。「30パーセントプラスの目標を達成してください」みたいなお題があったとします。会社の理念や行動規範ってお題の制約条件だと思っているんですが、そのお題に取り組む時には「こういうポイントを押さえること」みたいなものが制約条件じゃないですか。

さっき言った(楽天の行動規範の)「『スピード!!スピード!!スピード!!』を押さえること」みたいな。「スピード!!スピード!!スピード!!」の意味は「ほかの人が1年かかるところを1ヶ月でできる方法を、頭がちぎれるほど考えて編み出すことである」みたいな、まずはお題の言語化を意識する。

そのお題をやって成功体験を得た人は、もう言われなくても「行動規範が制約条件ってことね」みたいなものが身についていくと思うんです。

でもそれって、みんなが慣れてくると、言語化されないまま「30パーセントプラスで」というお題だけが出てきて、「気合でがんばる」選択をする人がハッピーじゃなくなることが起こり得るので。

倉貫:「スピード!!スピード!!スピード!!」を「手をいっぱい動かせ」だと思っちゃう。ゲームのルールを間違っちゃうっていうことですよね。

仲山:そうです。

エフェクチュエーション的な事業の進め方にシフト

井手:今話しながら、うちらは「30パーセント成長」っていう言い方をしているけど、楽天のいろんな研修に出たら、「引き算経営」「ギャップを埋めるためには普通のやり方じゃない」みたいなことを教えられます。

ずっとそれしかない思考だったんだけど、(いつしか)リスクを感じて、そこまで追求しなくなっていったんです。

(目標成長率が)30パーセントあるのを頭がちぎれるほどやることで達成するというやり方も、今も1個の選択肢にはあります。

「じゃあ、今は何なんだ?」と思った時に、今の僕が夢中なのはどっちかというと、エフェクチュエーション的なほう。ちっちゃくやったり許容可能な損失の中でやっています。

僕のベンチャーのキーワードの「新しいことをやる」を価値基準にしたりとか、一見何の役に立つかわからないけどだんだんおもしろい芽が出てきて、クレイジーキルトの原則で仲間をつなぎながら、飛行機のパイロット(の原則)のように僕らがやりたいところに向かうようにいつも修正しながらやっている。

近年、ドーンと来ているでかいやつは、例えば北海道の日本ハムファイターズさんと一緒に、エスコンフィールドのバックスクリーンに「そらとしば by よなよなエール」というブルワリーレストランを作ったんです。

これは球場でビールを作ってお客さんが飲めるレストランで。しかも目の前で野球観戦ができるポジションにお店を作っているのは世界で初めてなんですよね。こういうのもファイターズさんと一緒にやりながら生み出していきました。

あと、今は着工中で2026年中にオープンするんですが、大阪の泉佐野市、関西空港の次の駅(りんくうタウン駅)の真ん前に、体感型ブルワリーを作っているんです。

ここも泉佐野市さんと組んで、建設費用を補助金で全部負担してもらって、世界でもあまり例がない、楽しく遊べるような見学ツアーもできるブルワリー。イベントもそこでやる予定です。

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