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井手直行さんとザッソウ(全6記事)

新規事業が“生まれ続ける”組織の勝ちパターン ベンチャーマインドを作る、成功体験のスパイラル

ソニックガーデン代表・倉貫義人氏と仲山考材の仲山進也氏が、毎月さまざまなゲストを迎えて「雑な相談」をするポッドキャスト『ザッソウラジオ』。今回はヤッホーブルーイング代表取締役社長の井手直行氏がゲスト出演。PR企画「インドの青鬼防衛隊」の成功を切り口に、ベンチャーマインドを持った組織の作り方を探ります。

「インドの青鬼防衛隊」の成功体験


倉貫義人氏(以下、倉貫):(分業化した部門をつなぐ施策を始めたという前回の話題に対して)あぁ、1周まわってきた感じ。てんちょ的には、今のがくちょの観察は、どう感じられるんですか?

井手直行氏(以下、井手):よく、がくちょが「螺旋で1周まわって」という話をするから、今聞いて「なるほど。うちも1周まわって」という感じ(笑)。

確かにそういう、「もう1回みんなで一体感を持とう」みたいな話は、2024年の全社員研修のあとからやっているので「確かにそうなのかな」なんて思いましたね。

仲山進也氏(以下、仲山):「インドの青鬼」というビールがあるんですけど、通販のメルマガの担当が勇気を出してチャレンジをして。節分の日に青鬼が間違えてやっつけられないように「インドの青鬼防衛隊を結成します!」って言って、隊員を募集する企画をやったら予想以上にめちゃくちゃ反響があった、みたいなことが起こったんです。

「こういうの、こういうの」みたいな話をみんなで共有したと。でもそれはね、やったことがない人にとってはめちゃくちゃリスクを感じているみたいで。

倉貫:怖いでしょうね(笑)。だってヤッホーブルーイングを好きで入っていて、会社を傷つけちゃいけないと思いながら、「ちょっとおもしろいことをやらなきゃ。やってみよう」って思ったんでしょうね。

仲山:やってみて「楽しかったな」という成功体験を得ると、もうその人はみっちり伴走しなくても自走し始められるみたいな。

倉貫:今日、ベンチャーマインドの話を聞いていて、これはもしかしたら、がくちょのよく言うアクティビティの話とベンチャーマインドの話はつながるのかなと思ったんですね。

仲山:そうですね。チームビルディングの時に体を動かすアクティビティをみんなでやりながら学びを得るかたちになっているけど、仕事と関係ないからノーリスクじゃないですか。

倉貫:そうね。勇気は必要だけど、失敗しても別に責められやしないし。

ペルソナを作る前に、お客さんと会話しているか

仲山:試行錯誤するのに勇気はいらないから、というのが1個のポイントだと思っていて。仕事だと失敗してはいけないという思いが先立ちすぎると何も動けなくなる。なので「仕事もアクティビティみたいな感じでやればいいのね」ということが体験できる。

あとはお客さんに話しかけたことがない人は話しかけてみるとか。「お返事待ってます」みたいなことを言うのって、たぶんめちゃくちゃ勇気がいると思うんですよ。

こう、大企業の人がペルソナをどうしたらいいか、みんなで会議室に籠って作ったりして。「いや、そんなのお客さんに聞きに行ったほうが早くない?」みたいなことを感じるわけですけど。

倉貫:勇気がないからペルソナを作るっていうこと?

仲山:お客さんが怖いから。

(一同笑)

想像上の生き物だから、どんな攻撃をしてくるかがわからないと不安ということなのでは? と、思っているんですけど。

倉貫:ペルソナを作ることも大事ですけど、作りすぎちゃうと、実はリスクを取っていない可能性があるねという。

仲山:その前に、お客さんとまずしゃべってみたほうが良くない?

倉貫:そうね(笑)。絶対に当たるマーケティングはリスクがないから、何のリターンもない可能性があるということですよね。

マーケティング専門家への素朴な疑問

井手:今のマーケティングの話でいくと、2014年あたりに中央大学ビジネススクールの田中洋先生という、すごい大御所のマーケティングの専門家の方に、うちの「よなよなエール」の顧客調査を手伝ってもらった時。

マーケティングがあまり詳しくない時にいろいろ教えてもらった時に、「だけど先生、マーケティングどおりにやったらうまくいくはずなのに、なんでいっぱいいる先生の教え子みんながうまくいかないんですか?」って、ちょっと意地悪な質問をしたら、「いや、井手さんね。ちょっと違うんだよ」と。

「マーケティングは、やれば全部が当たるっていうわけじゃなくて、当たる確率を上げるためのものなので、当然当たらないこともたくさんあるんです」と。「あ! そうなんですね。やれば当たるわけじゃないんですね」「違います!」。当たる確率を上げるだから、絶対に当たるわけじゃないですもんね(笑)。外れも多いという(笑)。

(一同笑)

仲山:まさにね。フレームワークってそうですよね。うまくいっているやつを分析してみたら全部に当てはまっているね、みたいな。エフェクチュエーションの5つ全部に当てはまりますねみたいなことがあるけど。じゃあ「5つのマスを全部埋めました!」で、うまくいくかと言ったらそんなことない。

井手:そうですね(笑)。

倉貫:エフェクチュエーションどおりにやったらうまくいくわけじゃないですよね。

井手:確かに、確かに。

根性論ではなく創意工夫

仲山:諦めないとか、先ほどの「ベンチャーというとブラック」みたいな話で言うと、今のブラックって、労働時間の長さみたいなことじゃないですか。楽天で育った者からすると、例えば僕はECコンサルタントをやりながら楽天大学を立ち上げたんですけど。そうすると業務量が2.5倍ぐらいにはなるんですよ。

井手:(笑)。

倉貫:いやぁ、それはベンチャーじゃないですか(笑)?

(一同笑)

仲山:普通の考え方だったら、「これを両方やるのは無理なんですけど、優先順位はどうしたらいいんですか?」みたいな話になりがちだと思うんです。でも楽天でそんな質問をしようものなら「両方できる方法を考えればいいだけじゃん」って言われて終わるので。

(一同笑)

仲山:それで、楽天の成功のコンセプト、行動規範が5つあるんです。「スピード!!スピード!!スピード!!」というのがあって、その意味合いって「できる方法を考えればスピードが上がるじゃん」みたいな。他の人が1年かかるところを1ヶ月でやる、といったことが示されている1つの基準なんですけど。「そういうことができる方法を、頭がちぎれるほど考えればいいじゃん?」という意味なんですよね。

倉貫:めちゃくちゃ速く手を動かすのではなく?

仲山:じゃなく。

井手:気合根性で1年中働けばいいやっていうのじゃなく?

仲山:そういう走り回れとかじゃなくて。そのへんのニュアンスというか、優先される選択肢ですよみたいなことは、見えていない人もけっこういると思うので。選択肢を示すのは大事かなと思います。

根性論では達成できない目標を立てる

井手:今の話、あらためていいですよね。僕が2023年のコンセプトは「ベンチャーのために30パーセント成長するようなことをやってほしい」みたいな内容だったんだけど。

それは今のがくちょが言っているように1パーセントとか、5パーセントを改善しようと思ったら普通にできる。10パーセントの売上を上げるでも、なんか集客するでも、気合根性でできるけど、30パーセントぐらいになるとやり方を変えないとできないから。

それでいう意味の30パーセントで。だから、延長線上じゃない。「それが達成できるような、新しいことも考えるんだよ」って言うんですけど、なかなかそういう見方ができないから、どうしても気合根性の30パーセントのやり方にいって、ブラックな道を歩みかけて心が折れるみたいな時期があったんですよね。

だから、そこがなかなか。伝えたとしても、どうなんでしょうね。どうやったらそれができるようになるんだろう(笑)。

楽天で経験した“やってみるかモード”

仲山:僕がよく話をするのは、チームビルディングのアクティビティで無理めな目標を言われるやつがあるじゃないですか。

井手:はいはい。

仲山:例のやつ。それでまぁ、イノベーションが起こるようなやり方が編み出されて、実際に達成できるっていう成功体験を得ることが多いわけですけど。あの体験をしたあとにいつも話をするのが、僕が楽天に入って学んだけっこう大きな1つのものとして、そういうイノベーションを起こし続ける組織文化って、どうやってできるのかみたいなこと。

三木谷(浩史)さんは、今までのやり方だと絶対に無理なお題しか出してこないタイプの出題スタイルなので(笑)。最初は絶対に「え、無理じゃない?」って思うんです。でも、いろいろやっているうちにだんだんやり方が見つかって、気がつけば達成できた、みたいな成功体験を1回します。

そうすると、第2問が難易度が上がったかたちで出てきて。また「無理じゃない?」って思うんだけど、やっているうちにできましたというのを3回ぐらい体験をすると、ちょっといい意味で頭が麻痺してきて。まぁ、次からは何を言われても「とりあえずやってみるか」みたいな。

倉貫:無理なやつも普通に「できるんじゃないか?」みたいな。

仲山:そう。「できる気がする」みたいな感じになってくるんですよね。その人たちが「やってみるか」モードになったところに新人が入ってきて、第1問を聞いた時に新人が「そんなの無理ですよ」とか言うんだけど。

「まぁ、とりあえずやってみますか」という人たちがわらわらと動き始めて、その流れに巻き込まれているうちに新人が1回目の成功体験をするみたいな。

それが3回続くと、その新人だった人も、また新しく入ってきた人が「無理です!」と言うところに「まぁ、とりあえずやろっか」って言う側になっているみたいな。それが組織文化ができる流れだなと思ったというか、学んだので。それを体験できるようにするのが大事かなという気はします。

成功体験の積み重ねが組織文化を作る

倉貫:そうですね。無理めなアクティビティというか、まず、仕事のハードルが大事であるということですね。先ほどの井手さんの、てんちょの10パーセント、20パーセント(売り上げを上げるコンセプト)ぐらいではないという。「これ、無理じゃないか」っていうハードルの高いものと、それを1回クリアできる成功体験がないとダメで。

成功体験がある人が何回かやっているうちに、他の人も巻き込んで成功体験が増えることで、ようやくできちゃうみたいな。でも、これは本当に、なんでしょうね。楽天も最初のめちゃくちゃ高いハードルをクリアできていなかったら、今の楽天がない可能性がありますよね。

仲山:まぁ、そうですね。

倉貫:初期の頃のメンバーも大事だったんだろうなという感じはしますが。

井手:だけど、きっと今もけっこう無理な難題が出ているわけですよね。

(一同笑)

倉貫:今もね(笑)。

井手:わからないけど、傍から見ていると携帯事業なんかたぶんそんな感じで(笑)。無理難題を。

仲山:新しい技術で携帯電話の会社を作るアクティビティというので、お金をめっちゃかけつつ、日本中にアンテナを立てなきゃいけないアクティビティみたいな。

倉貫:ベンチャーマインドがだいぶわかってきたのか、わからないのか。

(一同笑)

倉貫:ということで、第2回としては十分ということで。残りあと最終回が残っていますので、また来週。


ポッドキャストはこちら
井手直行さんとザッソウ第2回 組織のこと、考えてきたこと

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