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井手直行さんとザッソウ(全6記事)

部下の興味を業務に活かすマネジメント 組織を成長させる、社員起点の“やる気の伝搬”

ソニックガーデンの代表・倉貫義人氏と仲山考材の仲山進也氏が、毎月さまざまなゲストを迎えて「雑な相談」をするポッドキャスト『ザッソウラジオ』。今回はヤッホーブルーイング 代表取締役社長の井手直行氏がゲスト出演し、ベンチャーマインドの言語化や、社員の行動を引き出すマネジメント術について深掘りします。

ベンチャーマインドとは許容可能なリスクを取るもの

倉貫義人氏(以下、倉貫):倉貫です。

仲山進也氏(以下、仲山):仲山です。

倉貫:ザッソウラジオは、倉貫と「がくちょ」こと仲山さんで、僕たちの知り合いをゲストにお呼びして、雑な相談のザッソウをしながら、ゆるくおしゃべりしていくポッドキャストです。4月のゲストは株式会社ヤッホーブルーイングの代表取締役社長、井手直行さんです。第2回となります。よろしくお願いします。

井手直行氏(以下、井手):はい、よろしくお願いします。

倉貫:第1回では、がくちょが(ヤッホーブルーイングの)「エア社員」として長くお付き合いされているという話題から、最近の「てんちょ」こと井手さんのホットワードが「ベンチャーマインド」だと。楽天もベンチャーマインドからスタートしたところから、そもそもベンチャーってリスクを取るよね。でも、リスクって何でもかんでも取ったらいいものではないと。

計算や考慮をした上で取るのがリスクじゃないかというところから、キーワードが「許容可能なリスク」。「それ、エフェクチュエーションですね」と、盛り上がったのが第1回でした。

仲山:はい。

倉貫:僕はだいたい、最初におさらいをするんですけど。

井手:はぁ、すばらしいおさらいです。

(一同笑)

「変化し続けようとする強い意志」

仲山:まだベンチャーマインドについては、深まっていないので、続きをいきますか。

井手:そうですね。ベンチャーマインド。

仲山:前の全社員集会の時にチラッと言いましたけど、僕が楽天に入社して間もない頃に、創業副社長の本城慎之介さん……ちなみに本城さんは今、ヤッホーの近くの地域で学校を作っていらっしゃいますが。

倉貫:えー!?

仲山:軽井沢風越学園という。

倉貫:あ、聞いたことがある。

仲山:うん。それで印象に残っているのは、本城さんがベンチャーの定義として、「変化し続けようとする強い意志」という表現をしていたんですよ。

井手:いいなぁ。

倉貫:いいですね。

仲山:要は、止まっている意味の安定とは対義語になるし、あとはたぶん、強い意志を持っていないと、なんとなく現状に満足しがちだよねみたいな。なので、現状に留まっていること、変化していないことを許さない強い意志を持ち続けるのがベンチャーマインドだ、みたいな。それが印象に残っているんですよね。

そうすると、てんちょが前回出されていた6つのキーワード。誰もやったことがないことをやるとか、急成長とか、常識を疑うみたいなところにもつながっていくと思うし。僕は、なんとなくそんな感じでベンチャーとか、ベンチャーマインドの定義をイメージしています。

「諦めない力」をどう養うのか

井手:僕もその切り口でいくと、この間、がくちょもいて、倉貫さんも前にご一緒したICCという経営者のイベントでのセッションの時に、「当たり前の作り方」という、要は今までなかったものを常識にすることを成し遂げている経営者が集まったディスカッションがあって。

テーマである当たり前を作る。要は僕らでいくと「ビールに味を! 人生に幸せを!」というミッション。いろんなバラエティのビールを日本のビール市場に提供して、ビールをとおしてビールファンに幸せになってもらいたい! みたいな、もう壮大なミッションで、まだまだ道半ばなんですけど。それをやるには何が大事ですか? という時に、僕が言ったのは「諦めない心」とか「諦めない力」。

先ほどの私のキーワードも、できない理由を言って辞めちゃう人がほとんどなんですけど、「それを諦めずにずっとやり続ける力こそが、一番大事な根本のところだと思います!」みたいな話をしたんですよ。確かにそれは、がくちょの「本城さんが言うところに似ているなぁ」なんて思っているんですけど。

さらに、こうやって禅問答みたいに自分に問いながら、うちのスタッフとやり取りをしている時に、「諦めない力はどうやって養うんですか?」みたいな質問があった時に、諦めない力を出すぐらい、上位概念のやりたい動機があるっていうことなんだなと思って。要は、やりたい動機があるから諦めないわけで。

まぁ、それは僕の場合でいくとミッションの実現。世界的に実現するのはまだまだ先だけど、ビールをとおしてファンの方が喜んで、目の前で「幸せになった」とか、「人生が変わった」って言っている姿を見るのが喜びであり、それに携わっているうちのスタッフが幸せになるのが喜び。

そういうことが、ものすごく動機づけになっているから「諦めずにいるんだなぁ」なんて思っているので。「諦めない力!」だけを言っていると、そもそも動機がないと(笑)わかっちゃいるけど諦めるんだろうなと。だんだんそういった上位概念のほうにきています。

「つまりは執着力の話」

井手:この間、楽天にもいて、ヤフーの社長もやった小澤(隆生)さんのICCのセッションにちょっと行ったんですよ。そしたら小澤さんが孫(正義)さんの話をし出して、「孫さんは、本当にいつも大きいことを言うけど、彼は絶対にやるんです。それを40年間休まずやるから周りの人間は死にそうなんです」みたいな(笑)。

(一同笑)

「私も死にそうでした」みたいなことを言うんだけど(笑)。クレイジーみたいなワードで盛り上がったんですけど。小澤さんは「つまりは執着力の話なんですよ」とまとめていて。どれだけ執着しているか。孫さんは、本当に執着している、みたいな。

だからそこも諦めない力とか、先ほどの本城さんのあたりと、根本の大事なところは同じなんだなと思って聞いていたんですけどね。

倉貫:まぁ、そうですよね。やりたいことがないのに「諦めるな!」って、何をがんばるんだって話になりますからね。

(一同笑)

井手:そうそう。

倉貫:これはもう、マネジメントの仕方なのかと思うんですけど。例えば、みんながてんちょと同じぐらい「やりたい動機がある」と思っていれば、諦めない力とか執着力につながっていくんだろうけど。

だけど、てんちょが心から信じているやりたい動機は、ある意味、第二の創業者みたいなもので、それを周りにどう伝播していくんですか? そこが大事な気がしているというか。

やり抜く力は個人の興味から生まれる

井手:まさに今、そこを現場で伴走しながらやっているんです。僕は社員・スタッフとか、お客さんが喜んでくれることが動機づけになる。あとは先ほどのキーワードで「新しいことをやる」とか「急成長」みたいなビジネス的な醍醐味、社会的にインパクトを与えて世の中を良くしようみたいな、人々が幸せになっていくことと重なる部分もあるんですけど、そういうビジネス的な動機づけもすごくあるんですよね。

「やってみたい」みたいな、達成感がすごく動機づけになっているんですけど、それが社員にもあればいいなと思いつつ、実際には、人によって動機づけもいろいろあると思うんですよね。

倉貫:そうですよね。

井手:そこの方向性がまったくズレていたらダメですけど。例えば、私はこの円の中にやりたいことが入っている。(他の社員のやりたいことの円と)少しズレていたとしても、重なる部分が大きければ大きいほど、違和感なくできると思うんですけど、人によっては(やりたいことが)ぜんぜん違う。

本当にビールが好きで、このビールをなんか届けたいという軸の人もいるでしょうし。もっと違う動機づけもあると思うから、そこを会話の中で確認しながら、うまく事業に重ねる度合いを広めてあげたら動機づけはできるんだと思う。でも、本人もわかっていないケースがすごく多いんですよね。

倉貫:確かに。

井手:「そういうところに興味があるんだったら、うちが今やりたいこととそんなにズレてないから、やっちゃえば?」みたいな感じで、いろんなミーティングとか、新しい施策の時に背中を押している感じですかね。

熱量を社内に伝搬させる

倉貫:いわゆる個人の動機づけや方向性と、会社の方向性をすり合わせていく。これは僕らもやるんですけど、ヤッホーブルーイングぐらいの規模になったら、てんちょが一人ひとりとすり合わせられない気もするんですけど、どうされているのかなと。

井手:いや、そこは全体向けにベンチャーのキーワードとか、そのためには諦めない力が大事とか、動機づけとか、そういう、僕が経験したところをまだ伝えきれていなくて。

あとは今週の金曜日にちょうどUD(ユニットディレクター)合宿というのがあって、僕の時間が1時間半あるので、まずリーダー陣に動機づけの話をしようかなと思っているんですけど。その都度、「てんちょ座談会」みたいなことをやりながら全体に発信し、小グループ研修でもその都度発揮しつつ、現場でも1人ずつやっていくみたいな、併用で考えていて。

僕が思うに、現場の一人ひとりの動機づけを全員分やるのは無理なんですけど、そこでその人が輝いて、ベンチャーっぽくなっていく姿を周りの人が見たら「なんでそうなったの?」って思ったり、刺激になる。その人自体が「私はこういうきっかけで」って語れるようになると思うんですよね。

その芽が出たぐらいの例が、この間の、がくちょも来てくれたベンチャーマインドの研修で。現場のスタッフで新しいことをやってちょっとうまくいった事例を社内に共有したんです。そういうことを1人ずつ作っていくのも、周りに波及していく効果があるなぁって思っているので。

全員の1on1は当然できないんですけど、その中でも可能性がある数人のスタッフが、そういう状況になるのを身近で見ることもすごく大事かなって。

倉貫:大事ですね。

井手:自分も現場に降りていきながらやっていくことも大事かなと思って、あの手この手で広めようとしています。ちょうどまだ一歩目って感じですね。

組織が分業化される弊害

倉貫:がくちょはベンチャーマインドを含めて、ヤッホーブルーイングさんでそういうことをやり始めた反応は感じているんですか?「変わってきたな」というか。

仲山:人数がだんだん増えると、分業化が進んでいくじゃないですか。

倉貫:大きくなると、そうせざるを得ないところがありますからね。

仲山:そうそう。ヤッホーの場合も、例えば、てんちょが最初に「楽天のお店に本腰を入れてやるか」って、1人で全部やるところから始まっていると思うんですけど。

そうすると、お客さんからいろんなことを言われて「だったら、こういう企画をやってみようかな」みたいなことを作って、メルマガを出してみたら反応が来て、みたいなことを繰り返していくうちに、プレイスタイルの自由度が高まって、だんだんスケールも大きくなって、今に至っていると思うんです。

でも、そこから大きくなったことによって分業されていくと、SNSを使いながらお客さんとコミュニケーションをする部署と、通販の注文に対応をする部署みたいなものに分かれてきたりする。

通販のところは買ってくれたお客さんにメルマガを出すみたいなことをやっているんだけど、お客さんとワチャワチャするような企画はSNSの部門の仕事なので。通販のメルマガは双方向性とかを、そんなに企画されずに淡々と送られるみたいな。

倉貫:それぞれで、ですよね。専門性を持っているけど、お互いの喜びを知らない状態で、それぞれの部署になってしまいがちですよね。

ほんの少しの工夫で売上が動くことも

仲山:そう。それでたぶんてんちょとか、僕とかがそういうメルマガを見ると「メディアみたいに使うともったいないよな」と感じますよね。いかに返事が来るように工夫するか、みたいなことを思うじゃないですか(笑)。

井手:前にがくちょが、「昔やっていたメルマガもやったほうがいいと思うんですけど、みなさんどう思いますか?」 みたいな感じで(笑)。

仲山:返信フォームが付いていて終わるみたいな(笑)。

井手:そうそう(笑)。

仲山:そうすると次の展開につながったりするので。そういうふうにメルマガとかを使って動的にやっていくと、ぜんぜん意図していないのに注文が増えていくことを経験してきているから。分業化されすぎたことによる弊害が出てきたところに、てんちょが螺旋をもう1周させてつなぎ合わせる活動をやり始めたなと思って、見ている感じです。

ポッドキャストはこちら
井手直行さんとザッソウ第2回 組織のこと、考えてきたこと

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