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井手直行さんとザッソウ(全6記事)

リスクを恐れる部下が考えていること “失敗したくない”思考を生む、リスクヘッジにまつわる誤解 [1/2]

ソニックガーデンの代表・倉貫義人氏と仲山考材の仲山進也氏が「雑な相談」をするポッドキャスト『ザッソウラジオ』。今回はヤッホーブルーイング 代表取締役社長の井手直行氏をゲストに迎え、ベンチャーマインドの定義や、井手氏が注目する経営理論「エフェクチュエーション」について語り合います。

ベンチャー = ブラック企業ではない

倉貫義人氏(以下、倉貫):そもそもベンチャーマインドとか、Back to the Ventureの「ベンチャー」ってどういうことですかね。ちょっとベンチャーを言語化してみたいなって思いました。

井手直行氏(以下、井手):僕らは1月にリーダー陣を集めた合宿をやった時に「ヤッホーブルーイングの理想のベンチャーってどんなの?」というのをグループディスカッションして、いくつかのチームに発表してもらったんです。そうしたらぜんぜん違和感がなくて、そこは伝わっているんだなと思いました。

例えばベンチャーっていろんなイメージがあるけど、ちょっとブラックなイメージもあったりするじゃないですか。残業が多くて、なんかもうガーっと。

倉貫:そうですね、時間を問わず働くっていうイメージですね。

井手:そうそう。あるテーブルの発表でいくと「うちはそれは違う」「おお、そうね」みたいな。働く時は働くけど、休む時には休んで、常に過重労働みたいなものはちょっと違うよね。といってホワイトな感じも違うよね、みたいな。

「だけど、新しく入ってきたスタッフは、ホワイトな企業って感じがすごくあるんじゃない?」みたいなね。そのへんはリーダー陣、いいなと思って。

僕は「てんちょ」ってニックネームを名乗って、みんなにもそう呼ばれています。がくちょからパクっているんですけど。

仲山進也氏(以下、仲山):(笑)。TBPで僕が名乗っていた「がくちょ」からきていますよね。

井手氏が考えるベンチャーの6要素

井手:それでちょうど先週、ベンチャーマインドについて深掘りでディスカッションしようと、少人数の希望性で10人ちょっと集まったのかな。その中の質問に「てんちょの『ベンチャー』の、もうちょっと具体的なイメージを伝えないと、みんなと目線が合わないんじゃないですか」って言われて。

そうだよなと思って、1枚のスライドに「いっぱいあるけど、とりあえず僕の思うベンチャーは……」っていうキーワードをいくつか書いたんですよ。

大きい順から、1つ目が「社会的にインパクトがある」。例えばうちでいくと「日本のビール市場にバラエティを提供して、ビールファンに幸せになってもらう」みたいな。「こういう社会が実現したらすごいよね」という壮大なもの。

2つ目が「急成長」。100年、500年かかるんじゃなくて、数年〜10年ぐらいで成し遂げようみたいな。3つ目が「誰もやったことがないことをやる」。4つ目が「常識を疑う」。

5つ目が「リスクを取って大きな成果を得る」。最後に6つ目が「だから賛否両論が起きる」。このあたりはみんなが躊躇するようなワードがいっぱいあるよね、みたいなね。

ほかにもあるけど6つ。僕の思うベンチャーのイメージを、うちのミッションとかビジョンとのひもづきを兼ねながら提示しましたね。

徹底的にリスクを排除するから挑戦できる

倉貫:いいですね。さっきのブラックな感じというか、働きすぎとかっていう表面的なところではなくて、そもそも成し遂げたいことから話している感じがありますね。

井手:そうです。特にうちの最上位概念のミッションと社会的インパクトをつなげて、急成長はうちのビジョンの中期計画の最終像をイメージして。

あとはほかのところ、日常の大きい事柄をひもづけながら「やったことがない新しいことって、過去にこういうことがあったよね」とか。「常識を疑っているって、こういう大きい事例があったよね」みたいな、そんなものをひもづけて説明しましたね。

倉貫:それで、みなさんの反応はどうだったんですか?

井手:「リスクを取ると言うと、みんな勝手にいろいろやっちゃうけどいいんですか?」「いやいや、そういうリスクじゃなくって、予想されるリスクは全部排除するんだよ」と。

潰して潰して、それでもどうやってもわからないリスク。こんなふうになったらリスクだけど測りようがないし、現時点でそれを調べようがない。そういう時に、いろいろ考えたけどより大きいメリットがあって、そのリスクに耐え得るような状況だったら行く、みたいな。

「だから勝手にいろんなことやって、リスクの地雷がいっぱいそのへんで爆発しているのは違うんだよ」みたいな(笑)。このワードをとっても、そんなふうにもうちょっと説明する感じがありましたね。

「自由」「リスクを取る」という言葉への抵抗感

仲山:なるほど。「アドベンチャー」が(ベンチャーの)語源らしいですね。

井手:そうなんだ。

仲山:そもそも「冒険」だから、ノーリスクの冒険ってないよねっていう。だけどなんの準備もせずに「俺はエベレストに登るんだ」っていったら、あっという間に死んで終わるわけなので。

井手:そうですよね(笑)。

仲山:今のてんちょが言ったリスクが、僕が「自由」って言った時に「みんながわがまま放題にやったら組織が崩壊するのでは」って言われる感じと同じだなと。

井手:(笑)。

仲山:みんな自由とかリスクは冒してはいけない、やりたいことをやってはいけないみたいな、抑えつけられているとらえ方なんですかね。スタート地点の解釈の受け取り方の違いって何なんだろう。リスクを取ったことがないのかな。

意見のぶつかりあいを避けるとチームになれない

井手:全員じゃないですけど、ちょっと良くない風潮として、「何かうまくいかないことが起きてしまうこと自体、やったらやばいんじゃないか」みたいなね。

ちっちゃな失敗とか揉め事とか、そういうことが起きたらダメなんじゃないか。だからそういうことには手を出さないほうがいいんじゃないか……みたいに思う人は、議論をしているとそこそこいるようです。

けど、そこはみんなの力でできるだけ予防していく。それでもわからないけど、その先にすごく大きいメリットがあったら、そこはその時の状況で判断していくのが僕らのやり方なんだけど。

そういうちょっとでも何かがあるようなことを危険だと思って近づかないようにすると、それはいわゆる大企業のサラリーマンみたいな感じ。決まったことしかやらないんだったら、そういうことは起きないかもしれないけど……みたいな話をしたりするんですよね。

仲山:チームビルディングでいうところの、第1ステージのフォーミング(メンバーを決める段階)ですよ。

井手:そうなんです。だから第2ステージのストーミング(さまざまな意見がぶつかる混乱期)にいくのを怖がってフォーミングにいる。そういうことなんだよ、みたいな説明もたまにすることがあって。

派手なストーミング、死にそうなストーミングは良くないけど、できるだけ穏やかなストーミングになるようにちゃんと配慮をしながら。

でも、そこでいろんな議論になるのはやはり大事で。いきなり死ぬ覚悟でチームビルディングのストーミングにいくのは「いやいや違うよ」みたいな(笑)。

(一同笑)

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