一代で東証プライム上場を成し遂げた木下勝寿氏の仕事術や、北の達人コーポレーションの社員の働き方などを通して、「リアルな北の達人コーポレーション」をお届けする「北の達人チャンネル」。本記事では、正しい管理職と間違った管理職の違いについてお伝えします。
「成長のためには失敗も必要」は間違い
木下勝寿氏(以下、木下):では、次ですね。部下の育成においてなんですけども、「教育の場」と「業務の場」を分けて考えるのをすごく重要視しています。まず、「間違った管理職」と「正しい管理職」の違いなんですが、「部下の失敗に対してどう思うか」ということですね。
間違った管理職って、「本人の成長のためには、失敗も必要だよね」と思っています。そして、「本人の評価が下がるだけなので、自業自得だよね」と思います。こうなると管理職とか上司じゃなくて、単なる先輩レベルなんですけども。
正しい管理職というのは、まず、部下の失敗は会社の損失になるということを認識しています。部下に失敗させないために、カバーするのが仕事なんですね。「成長のためには、部下を失敗させることが大事だよね」と言っていても、先ほども言ったように、教育の場と業務の場は別なんですよ。絶対に、業務に影響が出るほど失敗させてはいけないということですね。
「教育のために業績が犠牲になってはならない」
木下:部下が失敗するということは、部下の失敗を防げなかった上司の責任になります。人選ミスだったり、マネジメントミスになってくるんですね。まず、「教育のために業績が犠牲になってはならない」というのが鉄則です。部下の失敗経験というのは、上司がリカバリーして、業績に影響が出ない範囲で行わなければなりません。絶対に、この失敗で会社全体に影響が出てはいけません。
よくあるのが、器の大きな上司を気取ってしまって、部下が失敗しても、「うん、大丈夫だよ」と言ってしまうことです。業績に影響が出た場合ってどういうことかというと、結局、他の人のがんばりをムダにしているんですね。
例えばこの人が失敗をして、500万円の損失を出しました。「うん、大丈夫だよ」と言っても、「あなた個人で500万円払ってくれるんですか? それだったらいいですよ」という話なんだけども。そうじゃないとした場合に、他のメンバーのがんばりが、500万円分、ムダになっているんですよね。なので失敗していい範囲を、ちゃんと考えてやらないといけないんです。
部下は「上司の悪いところ」に合わせてくる
木下:あとは、ぜひ覚えておいてほしいことがありまして、「部下は自分の悪いところに合わせてくる」というところなんですね。まず、このグラフがありますけども、あなたが管理職だと思ってください。あなたはA~Fの項目が、以下のような感じだったとします。Aの項目は5点、Bの項目は5点、Cの項目は5点、Dの項目は4点、Eの項目は5点、でもFの項目だけちょっと苦手で1点です。合計すると25点です。

あなたに部下がいました。部下や後輩というのは、A~Eをいきなりあなたのレベルに合わせられないんですね。よって、一番悪いFに合わせてきます。内側の小さい六角形になります。あなたが1ヶ所でも1の部分があれば、部下や後輩は1をデフォルトとします。つまり、1×6=6の人になってしまうということですね。
一方で、全部が3の上司というのは、プレイヤーとしては3×6=18で、25のあなたよりも低いです。しかし、部下も3×6=18に育つんですね。

つまり、あなたが1点でも不得意なところを残していれば、部下は全員そこに合わせてきます。プレイヤーとしては、良いところを伸ばして悪いところに目をつむることができるんですが、管理職は悪いところを潰すことが最優先になってきます。
管理職がやってはいけないこと10箇条
木下:そのために、「管理職がやってはいけないこと10箇条」があります。すぐに諦める。できない言い訳をする。危機感がない。成果が出ない理由を外部要因にする。やるべきことを、「自分がやらなくていい理由」を見つけてやらない。ミスをしても謝らない。ミスをしてもばれないようにごまかす。人が見ていないところでサボる。うそをついてごまかす。トラブルから逃げる。
リーダーがこういう部分を持っていると、チーム全員がこういったことをしますので、チームが機能しなくなるんですね。リーダーを選ぶ際は、「その人の一番悪い部分がチームにまん延するとしたら、誰を選ぶべきなのか」ということを考えています。

このように、リーダーの器がまだ育っていない段階の方をリーダーにすると、逆効果になることがあります。よって、安易に誰かをリーダーに任せるわけにはいきません。なので、リーダー候補に対しては、業務スキルだけではなくて、日常の言動も見て選んでいます。
まずは、あなた自身が、ぜひ良いリーダーになってください。チームは風土がすごく重要です。そして、その風土はリーダーが作り出すんですね。なので、まずはあなた自身が良い風土が作れるリーダーになりましょう。そのためには、あなた自身が思っている「これくらいいいだろう」という甘えは、まず断ち切りましょう。
例えば、今あなたが部下として、上司の文句ばかりを言っていれば、あなたが上司になった時には、あなたの部下はあなたの文句ばかりを言うようになると思います。なので、まずは自分自身が自分の欠点を克服しましょう。それを克服したあなたが作る風土というのは、あなたと同じように、弱みから逃げない強い風土になります。
「誰がどこでどんなミスをしたのか」がわかるチェックシートを作る
——高橋さんは、管理職になるに当たり、どのようなことを意識されていましたか?
高橋一雄氏(以下、高橋):まず、管理職になるにあたって、「管理職の仕事のゴールが何か」というのを明確にするのを意識しました。自分自身が考える管理職の仕事のゴールというのは、「仕事の管理を通じて、1人では出せない成果をチームで出すこと」。もう1つ重要なのは、「その成果を継続的に出せる仕組みや状態を作ること」と考えていました。

「今は成果は出ているんだけれども、今後もそれが続くわけではないよね」という状況になることが意外と多いなと思っているので、こういうふうに考えていました。
ここからは実際に、私が管理職になるために、どんなことを行っていたのかを説明したいと思います。まず初めにやったのが、自分の部署の仕事をひととおり、自分で体験して把握することを行いました。チームのサイズにもよるかなと思うのですが、自分がやったことのない業務をやっている人をマネジメントすることもあると思うので、まずは自分が全部やってみる。
これは何のためにやったかというと、各工程において「誰が」「何を」しているのかをまとめたチェックシートを作ろうと思ったからです。このチェックシートの目的としては、成果が出ていない場合や、ミスが起きた場合において、「誰がどこでどんなミスをしたのか」を明確にするために作りました。
ミスをした人を責めるためのものではなくて、成果が出ていない理由を「誰々さんが悪い」といったかたちでヒューマンエラーとして捉えると、同じ失敗を繰り返しがちになると思っています。重要なのは、システムエラーとして捉えること。
そのように問題を捉えて、業務の配置やフローを改善していくことが大事かなと思っています。なのでチェックシートを活用して、問題の所在を明確にして、具体的な改善につなげることを行ってきました。
メンバーという「変数」に依存せずに安定した成果を出す
高橋:具体的な問題解決の手段なんですけれども、まずステップ1としては、問題が起きているところに、自分自身が介入していって、不足している分を自分でカバーすることを行います。
ただそれだけでは、ずっと自分がそこに張り付く必要があるので、ステップ2としては、各メンバーの得意・不得意を踏まえて、配置の変更を行いました。例えば、ケアレスミスが多いメンバーだったら、注意深さがあまり必要ない業務をやってもらうとか、あとはその後の工程で、誰かのチェックが入るような位置に配置するかたちです。
これで解決できればいいかなと思うんですが、それでも難しい場合はステップ3として、メンバーのスキルに合わせて、業務フロー全体を見直すということと、それに応じた再配置を行うことを行いました。
こうすることによって、業務マネジメントを通してメンバーの調子に左右されずに、安定して成果が出せる状態を作っていく。これが私が管理職になる際に、最初に取り組んだことです。
マインド面で言うと、管理職としてメンバーに成長を求める前に、「自分自身が管理職として、できるだけのことをやり切る」という姿勢は大事かなと思っています。
成果を出すために、まず自分が管理職として、メンバーの能力を最大限引き出すためにやれることを全部行って、それでも到達しない、さらに高い成果を出す必要がある場合に、初めてメンバーに成長やスキルアップを求めるという順番を意識しています。
こういったマインドを持つことによって、管理職として、メンバーという変数にある意味依存せずに、安定した成果を出し続けられるかなと思います。
木下:最後になりますけども、良い上司というのは、仕事のマネジメントを徹底して、チームの進捗を小まめに把握して、問題を早期に発見して、必要に応じて自分がカバーする人です。また、部下のタイプを見極めて、指導法を変えて、自分の欠点を潰すことで、組織全体の風土を良くしていきます。
先天的リーダーの真似をするのではなく、縁の下の力持ちとして後天的リーダーを目指すことが、本当の尊敬を得る近道です。ぜひ、この動画を参考にして、みなさんも良い上司を目指してみてください。