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ダメ上司は部下を管理する。優秀な上司が共通して行う真のマネジメント論(全3記事)

「先天的リーダー」タイプの真似をして失敗する人 "縁の下の力持ち”な「後天的リーダー」の戦略 [2/2]


成果を出す管理職は「めんどくさい仕事」を率先してやる


——「縁の下の力持ちになる」って、何をすれば部下やチームに貢献できるのでしょうか? 部署によって違うとは思うんですけど、具体的にはどのようなことをしたらいいですか?

木下:仕事にはまず、「やるべきこと」「やりたいこと」「やれること」の3つがあります。放っておくと、人というのはだいたい、「やりたいこと」と「やれること」しかしないんですね。なので、やるべきことだけど、やりたい・やれることではない仕事が必ず浮いてしまうんです。それをやるという感じですね。

そういう仕事は、「難しい仕事」というよりは、「めんどくさい仕事」の場合が多いんですね。なので、管理職というのは、めんどくさい仕事を部下に振るのではなくて、めんどくさい仕事こそ自分がやるというのが、実は正しいんですね。

多くの良くない管理職は、その逆をやっています。めんどくさいことは部下に振って、自分はめんどくさくないことをやる。これってぜんぜんチームが機能していない状態なんですね。メンバーには、みんながやりたい仕事をやってもらう。残っためんどくさい仕事を管理職がやる。成果が出ている管理職って、だいたいこういうやり方をしています。

部下のためにあえて厳しく接する上司

木下:管理職のもう1つの仕事、「部下の育成」について、ちょっとお話ししたいと思います。これは「婆の愛か」「母の愛か」という言葉で表現されるんですけども、「婆の愛」って何かと言うと、お婆さんの愛ですね。孫に好かれるために、孫が欲しがるものは何でも与えてあげる。お菓子が欲しければ、お菓子を与えてあげる。お小遣いが欲しければ、お小遣いを与えてあげる。

こういうおばあちゃんは多いですよね。「孫は目の中に入れても痛くない」と言いますけども、お婆さんの孫への愛というのは、こういう表現をすることが多いと言われています。

一方で「母の愛」、お母さんの愛情というのは、教育的観点から、子どもが欲しがるからといって、何でも与えてあげようとしないですよね。「お菓子が欲しい」と言っても、「お菓子を食べ過ぎてご飯が食べられなくなったら栄養(バランス)が悪くなるよ」とか、「虫歯になったりするよ」と心配するからむやみに与えないです。

そして、お小遣いを与え過ぎて贅沢癖がついてもいけないから、お小遣いも欲しがる量だけあげるんじゃなくて、きちんとそういうことも考えてあげていきます。子ども側からすればどうか言うと、やはり何でも与えてくれるおばあちゃんが好きですよね。小さい頃は「おばあちゃんは○○してくれるのに! お母さんのバカ!」となったりします。

しかし、大人になってくると、徐々に「本当に自分の将来のことを考えてくれていたのは、お母さんだったんだな」と気づくようになりますね。大人にならなくても、小学校・中学校ぐらいになると、誰でも気づくと思うんですけども。

「何でも甘やかしてくれることよりも、時には厳しく言ってくれる人のほうが、その人のことを愛してくれているんだよ」ということを表現する方法として、「婆の愛」と「母の愛」という言葉があります。

本来この話は、「本当にあなたのことを考えてくれているのは母です。母の愛に気づきましょう」というメッセージが込められています。なので、厳しい上司というのは、本当にあなたのことを考えてくれているということですね。

優秀だけどストレス耐性がない部下へのアプローチ

木下:一方、これをマネジメント側の観点に転用します。これは上司の立場からすると、相手が子どもレベルなのか、孫レベルなのかで、指導法を変えましょうという話になってくるんですね。なので、良い上司というのは、相手によって指導法を変えられる上司なんです。相手が今、子ども段階なのか、孫段階なのかによって変えましょうという話です。

孫というのは、やはり厳しい指導を受け入れる体制になっていないんですよ。なので、子どもが優秀で孫がダメというわけでもないんですね。優秀な孫というのも、実はぜんぜんたくさんいます。優秀なんだけど、ストレス耐性が弱い人っているわけですよ。この人はプレッシャーがあると、一気に力が出せなくなったりしますので、そのタイプの人には、やはり「孫アプローチ」をしていく必要があります。

また、プレッシャーに強いけども、ぜんぜん響かない人もいますので、必ずしも子どもが優秀なわけではありません。ただ、管理職になる人というのは、たぶん子どもタイプだった人が多いです。子どもタイプの人(管理職)が、すべての人に対して(自分がされたのと同じように、部下に対して)子どもへのアプローチで接してしまうと、孫の人がけっこう大変ですよね。

なので、単純にプレッシャーが力になるタイプか、プレッシャーがマイナスになるタイプなのかを見極めて対応しましょう。

どれだけ良いリーダーでも、全員から好かれるのは無理

木下:では、孫と子どもを分けて指導できるようになりました。しかし、子どもは子どもでいろんな価値観の子どもがいます。「すべての子どもに使えるマネジメントってできるんでしょうか?」というと、これも実は違うんですよね。あるエピソードを紹介したいと思うんですけども、これも私が勤めていた時の話です。

当時、私は新入社員でチームのリーダーの先輩がいました。通常は新入社員は営業をするんですけども、担当のクライアントがいないので、全員が新規のクライアント開拓をするんです。当時は電話でアポ取りをして、ずっと新規の開拓をしていました。

先輩のみなさんは、すでにクライアントさんがいるので、特に新規の開拓はしなかったんですけども、そのリーダーの人は、新人の我々に混じって、一緒に新規のアポ取りをするんです。

それを見ていて、僕はこのリーダーの人というのは、「自分の別のクライアントさんもたくさん持っていながら、我々と一緒の仕事をしている。背中で仕事を教えるかっこいいリーダーだな」と思っていました。

ところが僕の同僚は、「ねえ、あのリーダーどう思う?」と言ってきたんですね。「リーダーなのに、俺たちと同じ仕事をしていて夢がないよね」と言ったんですよ。「そうなの!?」と思ったんですけども。その人のその姿勢を、僕は「かっこいい」と思ったんだけれど、ある人は「夢がない」と思ったんですね。

つまり、誰からも好かれる・尊敬されるリーダーになるのは無理なんだと、その時僕は悟りました。「みんなから好かれよう」というのはまず無理なんですよ。どれだけ良いリーダーになろうとしても、ある人から好かれ、ある人からはダメだと言われます。

そうなってくると、どういうリーダーを目指すべきかというと、少なくとも、「自分ならこういう上司を尊敬する」「こういうリーダーを尊敬する」という上司像・リーダー像を作って、そこに向かって突き進んでいくしかありません。

そのリーダー像をやっていったとしても、ある人は尊敬してくれるでしょうし、ある人からはダメだと言われるかもしれません。でも、やはり自分が自分をリーダーとして認められるかどうかがすごく重要なんですね。

部下への指導レベルを見極めるポイント

——先ほど、部下が子どもレベルなのか、孫レベルなのかを見極める方法を教えていただきました。そうは言ってもやはり、評価されたいがあまりに、自分が孫レベルでも、無理して「厳しく指導してください」と言う人もいると思うんです。木下社長は具体的にどんなポイントを見て、子どもレベルなのか、孫レベルなのかを判断されていますか?

木下:その人の「厳しい」のレベル感を、会話しながら探っていくんですよね。例えば「こういう時に、こう指導されるのと、こう指導されるの、どっちがいい?」とか、その人にとっての「厳しい」というのがかなり甘い感じだったとすると、よく言うのが、「今想像している『厳しい』の3倍ぐらいをイメージして。私が言っている『厳しい』ってそれなんだけど、大丈夫?」と聞きます。

「もうちょっと抑えてほしい」という感じだったら、「まだ孫なんだな」となるし、「本当にそのレベルでいけます」という感じだったら、「子どもなんだな」となるので。その人の感じる「厳しい」とか「大変」というのが、自分とどれくらいギャップがあるかを、会話しながら見ていく感じですね。

具体的によくあるのが、採用とかで面接をしている時に、「うちの会社、けっこう厳しいですよ」と言うと、「前の会社も厳しかったから大丈夫です!」と。そこで「どれくらい厳しかったの?」というのをずっと聞くんですね。

「この人はそれを厳しいって言うんだ」という感じでだいたい想像して、「うちってその3倍ぐらい厳しそうだけど大丈夫?」と聞く感じですね。

——やはりそこまで言われたら、表情や言葉で素直に表現してくれるものですか?

木下:この時は別にうそをついているわけではまったくないんですよ。この人にとってはこれが「厳しい」なんだけども、「それは本当に序の口だな」と我々は思うので、そういう人は結局、採用しないことが多いですけどね。

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