「この人の下で働きたい」と思われるリーダーの共通点
山本:たぶんイーロン・マスクにしてもスティーブ・ジョブズにしてもみんなそうだと思うんですけども。ソフトバンク創立30周年の時に、孫(正義)さんが社員向けと株主向けに「今後の30年」という話をされたんですよね。
実は僕は社員でも株主でもないのにちょっと潜り込ませてもらったんですが、もう本当に「ソフトバンクに転職しようかな」とか思っちゃったんですよ。「あっ、こういう人の下で働いてみたい」と思わせるんですよね。やはり強烈なビジョンを持っているんですよ。
イーロン・マスクはぶっ飛んでいますけども、たぶんそういうことなんだと思うんですよ。若い時はみんなパワハラで無茶苦茶だったと言われていますが、たぶんそれを超えるだけのとんでもないビジョンがあるからみんな一緒に働くんだと思うんですけどね。
本当かどうかわからないですけど、イーロン・マスクと一緒に働いていた人が、「彼と一緒に働いているとわかるのは、彼は自分が生きている間に、火星に人間が住めるようにしたいと本気で思っている」と言っていました。
「そこから逆算すると、今の世の中の物事の流れだとスピードが追いつかない。だから人と違う時間軸を彼は持っている。ひょっとしたらトランプ政権に入っていったのも、トランプだったら今の規制を全部ぶっ壊してくれるかもしれないというのもあったかもしれないね」とか。
方法論とかやっていることの良い悪い、好き嫌いは別で、やはりみんなが「なんかいいな」と思う人とか。そういうデカい話じゃなくて小さいことでもいいと思うんですけども。やはり「こういう人たちを幸せにしたい」とか「ここに貢献したいんだ」とか。そういうのを持っているリーダーに惹かれるのは、どこの国でもいつの時代でもたぶん一緒かなとは思います。
メンバーがついてくる上司の10の要素
山本:最後の章で書いているんですけど、心理的安全性の時と同じ失敗をしちゃダメだよと。甘やかす話をしているのではなくて、当然のことながらビジネスは厳しいし苦しいものなんですよね。それをちゃんとやりきれる人が、この10個のコンピテンシーを持っていて初めてみんながついて来るわけだから。
石井遼介さんの『心理的安全性のつくりかた』にも書いてあるように、ちゃんと厳しいことを言い合える場にしていかなくちゃいけないんだよということ。その中で結果を出せるリーダーでないと。やはり10個というのは、ビジネスができる、結果が出せるという上での話なんだよということを書いています。
最後にこの準備をしていてふと思ったんですけど、最近こんな人を見かけました。みなさん、見たことありません?

ちょっと無理やり書いたのもあるんですけど、他人の行動を常に注意深く観察して、その背景を理解しようとしている。「なんでその人はこういうふうになったのか? なんでこんな意固地になっているのか?」という背景を、行動する前にちゃんと理解しようとしている。
生い立ちによって、環境によって一人ひとり違うんだ、違う価値観と違う考え方を持っているんだということをちゃんと前提として持っている。自分で全部できるわけじゃなくて、ちゃんと頼るところは他人に頼らなくちゃいけないと思っている。それぞれ役割があると思っている。
とても傾聴するので、聞かれても「いや、お前はどう思う?」と問い返すんですよね、質問を質問で返しちゃうんです。リクルート的かもしれないですけど。
いわゆる常識や今までのルールではなくて倫理的に、あるいは自分の価値観に照らし合わせて通すべきかという話を、そこで意思決定をしている。十分に状況を理解した上ですべてのステークホルダーに対して甘くやったり厳しくやったりということを、人でするのではなくてあくまで公平に扱っていると僕は思いました。
自分の過去、失敗、トラウマまでどこかのタイミングで共有をして、そこでちゃんと信頼関係を築いていっている。さっきのと近いですけど、その場その場で他人の置かれた環境や状況、思いに合わせて判断をして行動をしている。その代わり決めたことはすぐに行動するし、行動させる。何を達成したいかという明確なビジョンがあって、そのビジョンのためにやっている。
誰のことを言っていると思います? 知らない人は知らないと思うんですけど。僕はこれを準備していて、本当にふと思ったんですよ。
この人(TBSテレビドラマ『御上先生』)ですよね。最初、すっげぇ冷たい嫌な先生から始まったんですが、実は無茶苦茶温かくて学生がみんなついてきたという、現代版金八さん(『3年B組金八先生』)だったんだと思うんですけれども。こういうことなのかもしれないと、僕は逆にこのドラマを見ていて思いました。
ということで、結局1時間ほど一方的にしゃべってしまってすみません。
司会者:いえいえ、山本さん、ありがとうございました。