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『ノーノーマル時代を生き抜く リーダーシップの教科書』出版記念イベント(全4記事)

リーダーの指示がコロコロ変わるのは、本当に悪なのか? イーロン・マスクの発言から日本企業が学ぶべきこと

『ノーノーマル時代を生き抜く リーダーシップの教科書』の出版を記念して開催された本イベント。著者で、株式会社HRファーブラ 代表/組織人事コンサルタント&ファシリテータ/研修講師の山本紳也氏が登壇しました。本記事では、日本企業によくある、他責文化と完璧主義がもたらす意思決定の遅れや、現場のリーダーに求められることを解説します。

日本的組織文化の功罪

山本紳也氏:ネガティブから入りたくないんですが、ちょっとこれはストーリー性がなくていろいろ突っ込んでいますけれども。「日本企業の日本的組織文化」と書いていますが、僕が日本企業で気になることをバッと並べてみた感じなんですね。

自分事に落ちない他責文化。結局言われたことをやっていると、当事者意識、自分事にはならないじゃないですか。「言われたとおりにやれ」と言われて失敗しても、それは「やれ」と言った人の責任であって自分の責任ではなくなっちゃうんですよね。仕組み的にもうそうなってしまっている。なんか手を挙げたら負け、みたいなのはあるかなと。

「オーセンティックリーダーシップ」という言葉が使われたりしますけど。日本語ではすごく難しいんですが、やはり「自分らしさ」という言葉が一番合うのかなと思うんです。

やはり日本の企業は、自分の価値観でどうすべきかとか、自分の価値観、倫理観の下ではこうあるべきだと思うことが空気の中にないんです。「うちの会社は」とか「組織としては」とか「うちの部としては」という話しか行われていないんですよね。

それじゃあ多様な人がいても意味ないんですよ。「俺はこう思う」「私はこうすべきだと思う」という多様な価値観、多様な考え方をぶつけ合わないと、いろんな国の人、いろんな生い立ちの人がいてもあんまり意味ないので、やはりここは大きい。

「やる/やらない」と「できる/できない」を切り分ける

それからこの3番目の、「やる/やらない」と「できる/できない」。今日午前中に話をしていた人も「もう、これ」とか言っていましたけど、やはりここは切り分けなくちゃいけない。特にこれだけ世の中が変わってきてVUCAでノーノーマルになってくると、世の中の延長線上にないものはやる意味があるかどうか、やりたいのかどうかで決めて、それで決まったら、「じゃあ、どうやるか?」なんですよ。

本当にどうしてもできないものはできないかもしれないけれども、やれるかやれないか、ここを切り分けないで一緒に話していると、いつまで経っても「よし、やろう」という話にはならない。日本の企業の意思決定がすごく遅い中には、これがあるかなとは思います。

リスクはわかりますよね。取らずに避ける文化。それから内向き短期志向にならざるを得ない文化。これはなかなか説明しにくいんですけども、やはり間違いなく内向きだと思います。もちろん社内政治とか上の人の顔色をうかがっているのもそうだし。

さっき言ったように、目に見えるところだけじゃなくて、みんなが知らない間に「うちの会社はこういうふうにするべきだ」とか「こういう考え方とかこういうやり方をする会社なんだ」ということをベースにして、世の中がどうなっているかとかお客さんが何を望んでいるかが2番目、3番目に落ちちゃっているケースをすごく見るんですね。それをやっていたら、やはり今の時代は乗り切れない。

だからいろんな人が本当に言いたいことを言い合えるような場ができないと、こういうものが打破できない。だから、部長研修で「これダメよ」と言うだけで直るかというと、そんなもんじゃないので。やはり、みんなで潰していかなくちゃいけないと感じます。

日本企業がイーロン・マスクの発言から学ぶべきこと

ダラダラしゃべっていますけどもうちょっとこの話をすると、これはみなさんの会社では何て言います? 「石橋を叩いて渡る」と似たような言葉はあります?

僕はこの言葉しか知らなかったんですが、お客さんから聞いた言葉でこういう言葉(「石橋が壊れるまで叩き続ける」)が出てきたんですよね。だから、昔よりひどくなっているという話ですよね。壊れるまで叩き続けるんだから、結局誰も渡らないわけですよね。

なんとなく「上の指示はこんな感じだ」みたいな話になっていて、とにかく1回叩いて、最初から何もやらない。無茶しちゃダメよ? イチかバチか、「もう8ぐらいまでOKだったら行ってみよう」とやらないことには、時間的にも追いつかない。

僕は最近どこに行ってもこの話をするんですけど。1ヶ月前の2月26日(アメリカ時間)、閣僚会議で選挙で選ばれていないイーロン・マスクが1人、例によって帽子を被っていて。

日本でもニュースで、その場面だけ取り上げられているんですよ。英語で何て言ったかもう忘れましたけど、イーロン・マスクが立ち上がってニコニコしながら、大臣たちや長官たちを前に「いやいやいや、誰だって失敗するんだよ。私だって失敗するんだよ。でも、やってみないとわからないじゃないか」と言っていたんですよね。

解説がついていたわけじゃないですけど、日本のニュース番組では、たぶんこういう無茶苦茶なやつだという論調でそれを流していたんですよ。僕はまったく逆で、これを日本の企業は学ばなくちゃいけないんだと。

もちろん無茶をやるのがいいとは言っていないですけども、「やってみないとわからないんだよ」って、今本当にそうなんですよね。やはりこれは、ちょっとぐらい見習わなくちゃいけないことじゃないかなと思ったんです。

「朝令暮改」は本当に悪なのか?

「朝令暮改、上等」と僕はどこかに書いていて、「この言葉、使っているし、大好き」という人たちが何人か来ていますけども。だって世の中の環境は変わるんだから、変わらなきゃダメじゃんという話じゃないですか。

「いや、1回みんなの前で発表しちゃったから変えられない」とか言っていたら、もうアウトですよね。本の中ではサンクコストという考え方みたいなものも入れていますけれども、要は、これがたぶん「アジャイル」という言葉なんだと思います。

言葉としては使っているんだけれども、1回やり出したことは止まらないというのはすごくありますよね。もう役所仕事はまさにそうですけども、企業がそれをやっていてどうするのという話。

あんまり使わないですけど、サンクコストというのは、日本語で「埋没費用」と難しい言い方をしますよね。要は投資してしまったけど、そこでやめて捨てる。もうなかったことにしてしまう。そしてそれは赤字計上する。それをしないで、「もう投資したんだから続けてやらなきゃ」と言っていたら、それの倍も3倍も赤字が出るよという話ですよね。だからそれがすごく大事になってきているかなと。

“100%を目指すべき”という固定観念

これはさっき気がついたんですが、(スライドの)下の目盛りは要は100パーセントを目指す美徳。これはありますよね。100パーセントになるまでずっとデスクトップでやり続ける。

世の中はだいぶ変わってきていますけれども、ラーニングカーブってそうですよね。人事の方々はよくご存じのラーニングカーブというものは、だいたい8割方できるまでに40パーセントぐらいの時間が必要で、100パーセントまで持っていこうと思うと100パーセントの時間が必要ですよと。

ビジネスでも開発でもそうで、やはり昭和の時代はこの100パーセントを目指すという美徳によるクオリティの高さで物が売れた。でもそれは、商品の寿命が5年も10年もあった時代の話なんですよね。今みたいに半年、1年で陳腐化する時代にこんなことをやっちゃ絶対ダメなんです。

だから中国とかは、みんな無茶苦茶だって言うけれども、もうイチかバチかで出しちゃうわけじゃないですか。今は商品がソフトだから、ダメだったらすぐアップデートすればいいんですよ。「テスラ」は寝ている間にアップデートされるんですよね。オフィスの中で一生懸命開発しているよりも、それをやっているほうが、よほど早くこのロールモデルに届くわけです。だから、これがいろんなことで起こってくる。

人事の人たちが多いような気がするので人事の話をすると、これはけっこうわかりやすいですよ。何年でローテーションを回しますかという話です。5年でサイクルを回していくと、5ポジション経験するのに25年かかるんですよ。だから、20歳で働き始めたら45歳になるわけじゃないですか。

でも、「こいつは、やれそうだな」というのは、5年やらせなくても2年やらせればわかるんですよ。2年でやらせたら失敗することもあるかもしれない。けれども2年で回していくと5つのポジションが10年で経験できるんですよ。だから、20歳から働き始めて30歳で部長をやれるようになるんですよね。

この差はすごく大きいと思います。その代わりダメだった人、ドロップアウトした人をどうするかというのは必ずつきまといますけど。もちろん日本の大企業ではそれが難しいところはありますが、40歳の社長が生まれないのは、間違いなくこれ(が原因)だと思っています。

完璧な情報を得る前に意思決定、行動する

(スライドを)作っていてキレイにできていないなと思ったんですけど、左側が人事の仕事で、人事の方だったらわかりますよね。なんとなくこういうサイクル。採用と配属と、ちょっと分けて書くかどうかという話。ジョブ型だったら1本で、メンバーシップ型だったら採用があって配属がありますよね。

これがマネジメント、人事のサイクルで、これをきっちりと回せるようにしていくのが人事の仕事の大前提であって、これはたぶん組織マネジメントのインフラ整備をしているんだと思うんですね。

こちら側(右側)が仕事のやり方です。今の時代だとこうだと思っています。要は、とにかく情報が入ってくるようにしなくちゃいけない。情報がコロコロ変わるから、とにかく情報が常にアップデートされるようにしておかなくちゃいけない。だからこれは本当は外からの矢印がいっぱいあるほうがいいのかもしれない。

極端に言えば、情報を取りにいかなくても勝手に入ってくるような状態にしておかないと追いつかない。入ってきた情報で、「よし、このタイミング」というところで、みんなで議論をして意思決定をするんですよ。この情報が完璧になるまで待っていると、さっきの石橋を叩くだったり、100パーセントまで回すという話になる。これだけ世の中が変わっていると、絶対に100パーセントにはならないんですよね。

もうみなさんおわかりのとおり、要は「こういうものを新しくやろうと思ってこうやっています」と言ったら上司が、「いや、あれも調べろ、これも調べろ。ここは大丈夫なのか? お前、リスクマネジメントはできているのか?」と。今の時代、そんなものを準備していたら市場がなくなっちゃいますよね。

だからやはりこれは、ここ(サイクル)を速く回すということなんですよね。意思決定をしてすぐに行動する。行動して「ヤバい、ダメだ」と思ったら……なぜ思うかというと、新しい情報が入るからなんですよ。行動するからこそ新しい情報が入ってくることもあるんですね。だからこの右側のサイクルをいかに速く回すかという話のはずなんですね。

やはりこちらがビジネスの大事なところで、これをできるリーダーが現場に必要だということなんだと思います。

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