プライドが高い部下に効く一言

では、第3位、ドン。「それってダメだよ」って言いたくなる時があるんですよね。例えばルールを守らないとか、ちょっとマナーができていないとかね。その時に「それってダメだよ」って言いたくなるんですけれども、それで人が動くのであれば簡単です。
自分に対するプライドが高いとか、もしくは見た目を気にするとか、そういった部下がいますよね。その場合はこう言ってください。「それって○○さんのポリシーに合ってる?」。これね、意外とよく効くんですよ。
例えばこんな感じです。部下が「いや、だって○○だったので、××さんを手伝うことはできませんでした」と言い訳じみたことを言ったとしましょう。その時に「そっか。それってさ、職場の後輩から見てかっこいいかな? それって伊庭さんから見て自分のポリシーに合ってる?」と言われた時に「やべ」と思うんですよね。
これはハマる人とハマらない人がいますが、プライドが高いとか見え方を気にする人にはめちゃくちゃ効きます。説教よりも価値観で考えさせることをやってみてください。
「それって○○さんのポリシーに合ってる?」
さあ、私は今、偉そうに言いましたが、ちょっと私の恥ずかしい過去を白状します。まだ20代の頃でしたね。私が結婚したのは27歳の時で、あれは26歳の頃だったと思います。2人の上司に呼ばれました。
1人目の上司から、「伊庭さ、ちょっと来てもらっていい?」と言われました。2人で会議室に入って「お前さ、女子寮に行ってるらしいじゃん」。そうなんですよ。女子寮に遊びに行っていたんですね。女子寮に男子が遊びに行ったらダメなんですけど、遊びに行っていたんですよ。「行こ行こ~」「飲もうぜ~」って、女子寮で飲んでいたんですね。バカでしょ。いや、今はもうたぶん寮もない会社なんですけども。
当時はまだそういう寮がありまして、それがバレましてね。「お前、女子寮で飲んでるらしいやないか」。「あぁ、すいません……」「あかんって、お前。ダメだよ」って言われたんですね。「わかりました」。
治らないんですよ。誘われたら「行こうぜ」「行こうぜ~」って、また女子寮へ飲みに行くんですよね。
上司が替わったんですね。「伊庭、ちょっと会議室に来てもらってええ?」って言われまして、その時にこう言われたんですよ。「伊庭さ、おめぇ」……「おめぇ」って言う方ですね。「おめぇさ。それってかっこいいと思ってやってるの? それともかっこいいかどうかも考えずにやってる?」って言われたんですね。
「え、どういうことですか?」って言った時に「いや、あのさ、俺はルールは別にどうでもいいんだけど、なんかだせえなと思ってさ」「え!?」「なんで俺がそう思うかわかる?」。
「ルールを破ってるからですか?」「違うよ。お前のやってることは男としてだせぇんだよ。だってよ、こそこそこそこそと女子寮に潜り込んで飲んでんだろ? お前がマンションを借りて呼べばいいじゃん!」と。
「何せこいことやってんだよ、お前。かっこ悪い」って言われたんですね(笑)。まぁ、昔の叱り方ですよね。
「かっこ悪い」って言われた時に「本当や! めっちゃかっこ悪い!」と思って、それ以来1回も行かなくなりました。でも、その付き合っていた彼女とすぐ結婚しまして、今に至っております。1年間か2年ぐらいは女子寮で飲んでいたというね。女子寮にいた妻と結婚しておりますので、今こうやって言えております。
何度も同じミスをする部下は「理解の粒度が荒い」

さあ、ではいきます。第2位、ドン。ちょっと真面目なトーンでいきますよ。部下が何度もミスすることがありますよね。その時に「もう2回目はないよ」なんて言っちゃダメですね。じゃあ、どう言うんでしょうね。
この時はティーチングのスキルを使えばいいんですよ。ティーチングはこれなんですよね。最後に「念のために復唱してもらっていい?」。このティーチングのセオリーを使えばいいんです。
例えばセリフ例。ミスを2回した部下に対してこう言うわけですよね。「そっか。じゃあさ、お互いのためにもう1度確認しておかない?」「はい。わかりました」「私も抜け漏れがあるかもしれないので、復唱してもらっていい?」「わかりました」。
復唱してもらうんですね。「OK、それで認識合ってるよ。じゃあそれでやっていこうか」という感じですよね。ところが、よくミスする部下っているじゃないですか。復唱してもらうと抜け漏れがあるんですよ。
よくミスする部下の共通点を言いますね。理解の粒度が荒い。粒度というのは粒感のことですよね。例えば「明日の13時」が「明日の昼」とか「明日の午後」とか、ちょっと粒度が荒いんですよね。
そこを確認することもできますので、この「復唱してもらっていい?」というのは、抜け漏れ予防につながります。
ポイント。復唱することで抜け漏れ確認もできますし、教育効果もあります。「あ、そっか。こういった捉え方ではダメなのか」というね。ぜひそのあたりも覚えておくといいかなと私は考えております。
「よろしく」のあとに付け足したい一言

さあ、では第1位、ドン。最後の最後、どう言うかですよね。「じゃあ、よろしく!」だけではなく、時にはこう言ってください。「よろしく! 期待してるよ」。この「期待してるよ」という言葉を言えるかどうかで、けっこう大きな差になるんですよ。
セリフ例。「よし、じゃあそれでいこっか。よろしく。期待してるよ」。はい、これが言えるかどうかです。じゃあ、この「期待してるよ」がなんで必要か。普通に考えると、人は期待されたらやりたくなりますよね。
もう1つ効果があるんです。期待されたら裏切るわけにはいかない。これですよね。信頼されているわけですから、裏切るわけにはいかない。
私もまた白状いたしますと、小学校の時の友だちは悪いやつばっかりだったんですよ。先生から怒られながらも常にゲームセンターに行く。もう入り浸りです。ちょっと悪い友だちがたくさんいました。
でも、5~6人でつるんでいたんですけども、私はぐれませんでした。親から期待されているってわかっていたからですね。「これ以上こちらにいってはいけない。そろそろ戻ろう」と思って戻って勉強しました。
これ以上いくと親が悲しむ。期待しているからですよね。これ以上いっちゃダメとわかったので、その友だちと付き合うのは小学校6年の8月で止めました。今でも覚えています。「もうそろそろやめとこ」と。親を泣かせるわけにはいかない。
マネジメントもまったく一緒なんですよね。「この上司を泣かせるわけにはいかない。悲しませるわけにはいかない」。この感覚をどれだけ知っているかが大きなポイントなんですよ。なので「期待してるよ」ってぜひ伝えてあげてください。それで、本当に期待してあげてください。
私の研修でフィードバック研修というものがあります。部下に対して耳の痛いことをちゃんと伝え、課題に気づかせ、対策を講じていくというフィードバック面談の研修があるんですね。
その最後の最後の言葉がこれなんです。「OK。じゃあそれでいこう。伊庭さん、期待してるよ」。この言葉を最後に自然に言えるかどうか。これって大きなポイントなんです。
これ、実は私の持論じゃないんです。フィードバックの基本セオリーなんですよ。
なので、今日ティーチングのセオリーとかフィードバックのセオリーと言いましたが、私がお伝えしていることは私の持論ではなく、きちんとした理論に基づいたことがけっこう含まれておりますので、ぜひお持ち帰りいただくと汎用が効きます。ぜひやってみてください。