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良い議論は「聴く」ことからはじまる ~多様な意見を引き出し、組織の成果につなげる力~(全4記事)

少数派も意見を言える「じゃんけん方式」 モスフード役員会に学ぶ、フラットな議論ができる会議術 [1/2]

エール株式会社・篠田真貴子氏が、組織のイノベーションを生む「聴く力」と「対話」の重要性を解説します。Googleやベル研究所の調査事例、モスフードサービスの「じゃんけん方式」会議などを例に、多様な意見を受け入れる組織づくりの重要性を紹介します。

相手の考えを引き出すには「聴く」が不可欠

篠田真貴子氏:次です。今まで「聴いてもらう」「聴く」とはどういうことなのか。聴いてもらうことで、自分でも気がついていないけれど、本当は考えていることに気づける。それをやってもらう「聴く」は「without judgement」ですよということをお話をしました。

じゃあ、これが対話の場面になると、どういうことが起きるのか。そもそも私は対話をどう定義をしているのかのお話をしたいと思います。

やはり、対話は価値観が異なることが前提です。ご紹介しているのは伊藤邦雄さんの記事です。人的資本経営のコンセプトを政府の委員会でまとめられた方なんですね。

この記事では「対話と会話は異なります。会話が価値観の共有を前提としているのに対し、対話は価値観が異なるかもしれないことが前提です」とおっしゃっています。

ということは、これをやろうと思うと、「without judgement」で聴かないといけない。ジャッジを入れちゃうと、さっきの上司と部下の会話のように、価値観の違いが表面化しないんです。だからさっきの、「一緒だよね?」という前提の「with judgement」の上司の場合は、会話だったんです。

対話は、「あなたは何?」。上司は「僕の場合は目標達成って、自分の成長実感を伴うからうれしいけど、あなたは仲間の喜びだからうれしいんだね」ということを表面化させたいのが対話です。だから対話って、「話す」じゃなくて「聴く」がポイントなんですよ。

通常の会話とかディスカッション、ディベートなどと言われるものは、「with judgement」で、これは「聞く」ものなので、そこに違いがあると思います。

さっき会話の話が出ましたけど、ディスカッション、いわゆる、よくある会議を思い浮かべてください。「最終的にこれに決めたよね」っていうゴールに向かって情報や意見を重ねていくものです。

3つ目のディベートは、自分の考えとは関係なく、ある論点を主張して相手を説得する技法です。我々の仕事で言うと、契約の交渉とかですよね。自分の考えは別にどうでもよくて、とにかく「この条項は死守」みたいなことをがんばるわけじゃないですか。

これと比べた時に、やはり対話って多くの職場ではなかなかやっていない。つまり、相手と価値観が違うことを前提に語り合って、その結果、自分の考えや価値観への理解を深めるところまでいくのが対話なんですね。

対話のスキルは経営にも効果を与える

対話がビジネスの場面でどう起きるのかを、宇田川元一さんという経営理論と組織論の研究者の方が、この『他者と働く』と『組織が変わる』と、こちらの『企業変革のジレンマ』の3冊の中で書かれています。

3冊目だけ少し丁寧にご紹介をさせていただきたいんですが、この本では、「対話とは、他者を通して己を見て応答することである」と言っているんですね。

「みんな喧々諤々、意見がいっぱい出てよかったね」だと他者を通して己を見ていない可能性がある。意見がワーッと出ているだけで、それは対話ではない。

何を言っているかというと、「対話とは、相手の生きる世界を相手の視点で捉え直し、それに対して自分が応答し、自分が変わっていくプロセスだ」と。

経営って結局、常に変革をしているわけなんですけど、変革が停滞しちゃう。その中の問題って、同じ課題でも、部門によって、本部と現場で見え方が違うって、もうどこでも起きることなんですけど。

じゃあ、本社がわかっていないとかそうではなくて、本社は本社の見え方が、現場は現場の見え方があるという多義性を認めて、「なんでこの問題解決が止まっているんだっけ?」ということを、相手の視点を通じて知ろうとする態度が対話です。

対話をすることは、結局は聞き手である自分も変わるわけですよ。「その見方、気がついていなかったな」という発見がある。だから経営とは変革であるとした時に、「変革とは、対話である」という話なんですね。

「聴く」とか「対話」って、単にガス抜きとか、上司が部下をマネージする時のスキルの1つという面もあるけれども、それだけだと捉えると本質を見失うというのが、今日のテーマの集団浅慮です。これも経営の意思決定に関わるすごく大事なポイントだなと考えています。

個人的に、この本はとてもおすすめです。ご興味があったらぜひご覧いただけたらと思います。

対話がイノベーションを生んだ2つの事例

ここまで、対話がどういうことかを整理しました。「じゃあ、これが集団浅慮を乗り越えてイノベーションを生む場面でどう作用しますか?」ということをお話ししたいなと思います。

わりと有名な事例なので簡単にご紹介しますけれども、Googleで「Project Aristotle(プロジェクトアリストテレス)」というものがあって、社内のパフォーマンスが高いチームがほかと比べてどういう特徴があるのかを調べたものです。

そうしたらですね、この2つがわかりました。「メンバー間の話す量が均等」「非言語コミュニケーションに敏感である」。ここまでお話ししたことを思い出していただくと、つまり「聴き合って」いるんですよね。

誰かが1人でウワーッとしゃべっているわけでもないし、しゃべっていない時にそっぽを向いているわけでもなくて、お互いに非言語を拾い合っているということかなと思います。

なので、まずGoogleでこういうことがあった。これは「聴き合う」ですよねというのが1つ。

もう1つ、事例をご紹介してからスライドに戻ります。聴いてもらうと、触発されてイノベーションが進む。

20世紀前半、AT&Tの下にあった、大量の特許と何人ものノーベル賞受賞者を輩出したベル研究所で、「特許取得数の多い研究者ってほかと何が違うの?」という、同じような発想の研究をしたんですね。

結果が、「ハリー・ナイキストとランチを食べていた」。この人はベル研の研究者なのでめちゃくちゃ優秀だけど、ベル研の中では普通の(レベルの)人です。

なんですけど、この方の突出した特徴は、極めて温かな人柄で、好奇心が旺盛。つまり、聴き上手だったんですよね。この人とランチを食べながらおしゃべりしていると、さっきの(意識の)水平線の話で、いろいろと気がつくんですよ。

しゃべっているうちにだんだん研究のアイデアが出てくる。なおかつ、いい人でみんなから話を聴いているから、ある種のハブになって、「じゃあ、誰々さんと話してみたら?」みたいに紹介してくれることで特許につながるということが実際に起きていました。

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