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良い議論は「聴く」ことからはじまる ~多様な意見を引き出し、組織の成果につなげる力~(全4記事)

部下の思考を広げる上司・狭める上司 職場の“あるある質問”が社員の意識に与える影響 [1/2]

エール株式会社・篠田真貴子氏が、相手の価値観を探る「without judgement」での聴き方を実例とともに解説。「聴く」「聴いてもらう」取り組みが、多様性を活かす組織づくりにどうつながるのかを紹介します。

意見を聞く前に、まずは自分の意見を認識する

篠田真貴子氏(以下、篠田):じゃあ、ここから今言った(集団浅慮と多様性の)話と、このコミュニケーション、中でも「『聴く』とか『聴いてもらう』対話ってどうつながるの?」というところをお話ししていきますね。

みなさんの中でも「多様な意見を交わしてアイデアを生んで、活かすのがいいよね」って思っていらっしゃると思うんです。この時によくある状況が、まず意見を言う時に会議の主催者がですね、「みんなにも言いたいことがあるはずだ」という暗黙の前提に立った上で場を用意して、「どんどん言って、お互いにぶつけ合ってください」と。そうすると、なんだか「しーん」ってなるケースが出てくる。

もしくは意見が出てきて、「言いたいことが言えてよかった」とか、「喧々諤々の議論でぶつかってよかったね」ってなるんですけど、本当にそうでしょうか? 本当に、多様性を活かす事業推進のもとになっていますか? そこから問いかけを始めたいんですね。

私がここからお話しするのは、(スライドの)2段目が目指したい姿なんじゃないかというご提案です。「言いたいことがあるはず」という前提がダウトであって、まずは自分の意見を認識するステップが必要。

その上で意見を受け取る側の用意も必要です。ただ意見が出てくるだけじゃダメで、意見を交わした結果、お互いに物事の捉え方がアップデートされるところまでいって初めて意味があるんですね。

「これ、どうやってやるの?」っていうのを、左から順にいきます。「意見を言う」につながるのが、実は「聴いてもらう時間」です。「受け取る」、要はここが「聴く」ことであると。

最後、「活かす」ところ。これが「対話」であると考えています。この3つを順番に、解像度を上げていきながらお話をしようと思います。

聴いてもらう機会がないと「気づき」を認識できない

まず1個目の「聴いてもらう」っていうと、なんとなく悩みを聞いてもらうイメージがあるかもしれません。ですが、もうちょっと幅広く、じっくり話せるとか、自分の考えがだんだんと言葉になるような経験が話し手に起きる状況です。

私たちって、この瞬間も五感でいろんな刺激を受けていますよね。本当はその1個1個に気づきの種があるんですけども、言ってみれば知覚に線が引かれていて、そこから下ってほぼ意識に上っていない。

当然です。そんなの全部いちいち気がついていたら、「1歩歩くのに1時間」みたいなことになってしまうので、やらない。これが大人としての振る舞いなんです。

例えば、「おとといの夕食には何を食べました?」。覚えていないんですよね。「この1週間で最も感情が動いた場面は何ですか? あなたのお客さまにとって、この1ヶ月ってどんな月でしたか?」って、今こうやって問いかけると、会場にいらっしゃるみなさんも、思わず「うーん、何だっけな?」とか「えっ、どういうこと?」って、頭の中でちょっと思考が動いたと思うんですよね。

これなんですよ。こうやって、実は日常から気づきの種があったり、自分が思っていることがあるんですけど、それは「聴いてもらう」タイミングがないと出てこないんですよね。今はわざと質問のかたちにしましたが、別に質問がなくても、ただダラダラと話をしているうちに考えが整理される経験があるかと思います。

意識できていない大事な情報に気づかせる

結局、私たちってもう大人なので、気がついていることは「言いたい、言いたくない」って判断して、TPOを分けているんですよ。

そうすると、例えば管理職の方が「部下の本音を聞きたい」って言った時に、例えば「みんながランチ中に言っている自分の噂話を聞きたい」っておっしゃっている意味の時があるんですけど、それは別に、聞いちゃダメです。それは失礼。

そこが問題なんじゃなくて、お互いにわかっていきたいのは、さっきの(スライドの)水平線の下なんですよね。そこに大事な情報や気づきがあって、一緒に見にいきましょうと。それって「聴かれる」機会がないと話さないんです。

聴かれる機会がないと話さないってどういうことか? 私の経験を例に出します。私はこれまで、けっこう違ったタイプの職場で仕事をしてきて、振り返るとそれぞれに典型的な質問があったんですね。

先輩が後輩に聞くとか、上司が部下に聞くとか、会議で必ず問いかけが出る。それによって職場での私たちの意見ってけっこう形成されちゃうんです。

「それ、本当におもしろいと思っている?」

1個だけご紹介しますと、日本長期信用銀行は、まぁ、昔なので、銀行の中にも序列がありまして。長銀は2番手で、トップが日本興業銀行だったんですね。何かにつけて「興銀はどう?」(と聞かれました)。「お客さまはどう?」よりも「興銀はどう?」のほうが、よっぽど頻度が高かったんです。

それは新入社員だった私にどういう影響を与えると思います? お客さまのことを考えるよりも、「興銀はどう?」っていうほうに意識付けされるわけです。

ほぼ日では、「それ、本当におもしろいと思っている?」。もう厳しいんですよ。もちろん「おもしろい」にも定義があるんですけど、やはり、ほぼ日は「おもしろい」が事業価値を生むことが共通認識だから、「それ、いくら売れそう?」よりも「おもしろいと思っている?」と聞かれる頻度が高かったんですよね。

みなさんの職場にも、こういうものがあると思うんですよ。そうすると、一人ひとり「聴いてもらえない」ことがある。例えば、私がほぼ日で「いやぁ、でもそれ、儲かるかな?」とか言ってもみんながあまり耳を傾けてくれないんです。

興味を持っていないわけじゃないんですけど、優先度が低い。そうすると、聴いてもらえないと思い、私自身も「それ、儲かるのかな?」っていう話ってあまりできない。そして考える量が減り、だんだんと忘れる。職場ってこういうことが起きるんですよね。

聴いてもらうだけでも行動のきっかけになる

逆に、その職場がどうこうとかではなく、本当にフラットに聴いてもらえる場があったならば、この経験を学んで、概念化して実践できます。これを整理した、心理学者のデイビット・A・コルブの経験学習モデルをお見せしています。

これ、平たく言うと振り返りですよね。私たちは無意識に振り返りをやっています。

上司に「あの件」って言ったら、ちょっと眉がフッと動いたとします。「これはまだ言っちゃいけないな」と思って、待とうとしますよね。日々、そういうことをやっているわけです。

その時に誰かに10分でも30分でもただじっくり話を聴いてもらい、「今日はこんなことがあって。そういえばあの件を上司に言おうと思ったんだけど、なんだかそのままになっちゃいましたね」みたいに振り返っていくうちに、「それでよかったんだっけ? やはりちゃんと言わなきゃな」というような概念化ができて、次の実践につながる。

自分の脳内だとすごく独りよがりになっちゃったり、意識の下に埋没しかねない気づきが、ただ聴いてもらうだけでも行動に上がってきますよねということが、聴いてもらうことの大事な効果です。

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