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なぜ、あの企業は強いのか? ⸺戦略を超えた「一体感」をつくる組織の感情マネジメント(全5記事)

ふだんは目立たない“献身家タイプ”ほど企業文化のカギを握る 隠れたキーパーソンを組織で活かすためのヒント [2/2]

“身近な人の情報発信”が現代のコミュニケーションのカギ

髙原:じゃあ、いくつかオーディエンスの方からご質問をいただいているので。

冨田:わぁ、うれしいですね。

髙原:最後にさらっとだけ、私の考えというか話もした上でQ&Aパートに入っていけたらなと思っています。先ほど冨田さんからもあったように、いかにキーマンの影響力を波及させるかとか、施策をどうするかというのは本当に個社ごとかなと思うので、1つの施策として見ていただければなと思うんですけれども。

私たちがインターナルの組織変革をしていく中では、コミュニティというアプローチをすごく大事にしています。それこそ私たちもキーマンの存在がすごく大事だなとは思っていまして、トップダウンのメッセージ発信だけだと、今の時代は情報の浸透や変革がどんどん難しくなってきていると思うんですね。

いろんな壁もありますし、継続的にずっとやり続けることが難しかったり、遠すぎて当事者意識を持ってもらうのが難しかったり。言葉が抽象的で、なかなか日々の実践につながらなかったりとか、いろんな課題があって。これはもう社内のことだけではなくて、そもそも世の中が変わってきているかなと思うんですね。

無批判に権威を信じるとか、偉い人の言っていることを信じるとか、情報をただ鵜呑みにするというよりも、一人ひとりが取捨選択をして関わり方も選びながら、自分に近い人の発信をより信頼するようになってきている。

社内でもこれが大事かなと思っていて、キーマンからの生きた言葉をどういうふうに社内に伝播させていくか。その装置として、コミュニティというものを作っていくことが大事なのかなと思っております。

時間もあるのでさらっとですけれども、コミュニティを通じてキーマンの言葉に日々触れるとか、ふだんはあまり接していない人の情報で気づきを得る。

有名な研究なのでご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、1970年代の(マーク・)グラノヴェッターの「弱い紐帯」というものです。強いつながりじゃなくて弱いつながりから得た情報のほうが、新鮮さや行動変容につながる情報であることが多いという研究があって。

もう50年近くにわたっていろんな補強研究も出ていて、弱いつながりとか橋渡しとなっている人の存在の重要性がうたわれていますけれども、そういった装置を作っていくことが大事なのかなというふうに思っております。

今日はぜひオーディエンスのみなさんからのご質問にもお答えしたいので、具体的な作り方や事例については割愛をさせていただきますが、もし気になる方がいらっしゃれば個別でお声がけいただきたいなと思います。キーマンの声を伝えていく、あとは社内のネットワークを拡散していくという、施策としてのコミュニティの重要性もお伝えをいたしました。

目立ちたくないタイプの人を巻き込むには

髙原:そうしたら質問をいただいていますので、そちらにお答えする中で、もし必要があればまた事例とか立ち上げ方にも帰っていきたいなと思うんですけれども、みなさんご質問ありがとうございます。

冨田:ありがとうございます。

髙原:「キーマンが目立ちたくない方の場合、どういうふうに巻き込んでいくと良いか、うまくいくか」という質問を1つ目にいただいているんですけど、ここはどうですか?

冨田:ありがとうございます。そうですね、巻き込み方も本当にいろいろあると思っています。表に出て何かをやらないといけないような巻き込み方もそうなんですが、例えば横断的なプロジェクトを何か作り、そこにメンバーとして入っていただきます。

その中で、シンプルに意見を言ってもらうだけでその場のパフォーマンスとしてはかなり良いという人は、全社発表の場でその人も出していきましょうとか。それはぜんぜん別の話かなとは思っていますので、その人の特性に合わせた巻き込み方、活用の仕方と言ったら言い方がすごく悪いですが、本当にケースバイケースかなと思いますね。

おっしゃるとおりで目立ちたくないタイプもいたり、具体的に切り分けるといろんなタイプがあると思います。逆にめっちゃ目立ちたいタイプがいるのかもしれないですが、そこは本当にケースバイケースです。

「どう巻き込んでいくか」というところはいろんなレイヤーがありますし、単純に対話してその人からインサイトをもらうだけでも、十分巻き込んでいく一環にはなるかなという感じはしますね。

髙原:ありがとうございます。

「上層部が望む人材」と現場にズレがある場合はどうする?

髙原:今も続々と(質問を)いただいているみたいなんですが、次もいきたいと思います。カルチャーを体現する、バイネームの人物の考え方に関してです。まさに期待値の話ですね。「上層部が望む人材と、現場から見た時に『この人はすごく会社を体現しているよな』とか『理想であるな』という人のズレがあったら、どちらをキーマンと考えれば良いのか」。このへんってどうですかね?

冨田:すごくいい問いですよね。まさに話の中盤でも触れたところです。この段階だと、残念ながらどちらがキーマンとは言えないというのが解です。

キーマンうんぬんの前に、会社として誰をどう評価するかという視点が完全にズレちゃっているというところに対して、一定何か違うアプローチで是正していかないといけないよねというのが、現象で言うとそこにギャップがある状態かなと思っています。

一方で、先ほどの回答にも絡むんですけれども、これも具体の部分を想定しないとなかなか明確に言えなかったりもしますが、例えば(従業員数)1,000人の会社で1つの事業部に20人がいるとします。その20人の事業部の中で、「この人は本当にキーマンだよね」という人がいる。なぜキーマンかというと、他の19人にめっちゃ信頼されている。

でも、例えば(そのキーマンは)めっちゃ目立たないし、別に会社から評価もされていないんだけど、キーマンだと思われているんだよねという20人の部署があった場合、当然それは1,000人の会社の上層部からしたら評価はできていないから、評価していませんという話なんです。

「じゃあ、20人の部署に介入して、その20人の部署をより良くしましょう」とか、もしくは仮にこの20人の部署がめちゃめちゃパフォーマンスがいいのであれば、「それはなぜか?」というところに人事レイヤーから切り込んでいって、いろんな切り口で見る。

そうした時に、「実はこの人(がキーマン)でした」みたいなところを探究の成果として出していくとか、そういったアプローチはできるのかなと思っています。

トップ研究者20人に1つだけ共通していた意外な事実

冨田:1個思い出したんですが、私がすごく大好きな話があって。だらだらしゃべり過ぎちゃって恐縮なんですが、ベル研究所の(ハリー・)ナイキストの話ってみなさんは知らないですか?

ベル研究所という、すごく有名でいろんなものを開発した研究所で、特許をばんばん出しているわけですよね。「なんでみんなこんな特許を出せるのか?」と、特許を出している研究者のトップ10やトップ30を調べたんですよ。調べた結果、共通項はどうやらなさそうだと。

でも、明らかにトップ20人は結果を出しているから「なんでだろう?」と、もっと調べたら1つだけ共通点があったんですね。「どうやらすごく目立たないナイキストというやつと、みんなランチをしているらしい」みたいな。

髙原:へえ。

冨田:ナイキストはめちゃめちゃ好奇心旺盛で、ガンガンいろんな質問をする。なので、結果を出している人たちは問いによって自分の思考が活性化して、結果的にパフォーマンスを出していましたという、うそのようなたぶん本当の話なんですけど、まさにそういったことが起き得るんです。

今みたいに、「実はパフォーマンスとしてこうでした」という隠された真実みたいなものを、誰がどう会社に対して発信していくか、誰がどう上層部にアピールしていくかも重要な部分なんです。これがすべてではないんですが、こういったことを手を変え品を変えいろんなかたちでやるというのは、わりとけっこうある話です。

髙原:ありがとうございます。

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