退職を踏みとどまる理由の1位は「信頼できる上司」
松島:(悩みの段階がどこなのかが)大事だし、マネジメントとか人事も、これをちゃんと共通言語として言えるのか。成長、自律、人間関係、どうだろうと。「Aさんはどうかな?」「今、ぜんぜん意味を感じていないよね」みたいな会話をしたいですよね。
司会者:いいですね。では、踏みとどまるためには何が必要なのか。ここもアンケートを取ってみました。「もしこの要素がなかったら自分は会社を辞めていただろう」というものを聞いたんですね。みなさん想像してみてください。なんだと思いますか?
新保:何だろう。
司会者:1位、圧倒的だったんです。「信頼できる上司の存在」。
松島:まぁ、そうね。
司会者:そのあと「将来のキャリアに対する可能性」「悩みを相談できる風土や環境」「組織のビジョンへの共感」。最後に「仲間」という感じでございました。だそうです、松島さん!
松島:やはり「上司じゃん」みたいな話になっちゃうんですけど。これ、2位、3位、4位にも上司がすごく影響すると思っています。まず上司に「辞めたいです」って言える・言っているって状況があるんですね。その上で、対話をしたら、将来のキャリアについて、すごく真剣に話をしてくれて「あ、なんかキャリアを見い出せたな」「ここまで相談していいんだ」とか。
属人的な要因だけではない
松島:ここまで、仕事じゃない人生のことを話せたことにポジティブな気持ちになったりとか。あとは忙しくてふだん話せてないんだけど、改めて組織のビジョンもわかったとか。やはり上司の影響で2位、3位、4位は、ひもづいていく感じがしていますね。アンケートを見ても、そんな実感をしました。
新保:すごい。これ、本当に圧倒的。もう約9割じゃないですか。たぶん、ほとんどの人が上司の影響ということですよね? 今日来ている方はたぶん、退職代行か踏みとどまるかで悩んでいる人たちだと思いますが、ちょっとここで薄々感じたこととして、「いや、この『上司』っていうのは属人的なんじゃないの?」と。
司会者:そうなんですよね。
新保:「再現性はあるの? いい上司がいたからなんじゃないの?」「それでうまくやるって……」って、思うんですよ。実は僕も松島さんと会って1年ちょっとですけど。毎回この話をしていて。聞いていくと、最初は「わー、Zenkenさんの取り組みすごい。圧倒的だわ」「これ再現性ないかな? どうやってやるんだろう」と思って、特殊だなと思ったんですけど。
でもね、話せば話すほど、実は意図しているというか。属人的にしているわけじゃなくて、ちゃんと組織的にやっているなとすごく思ったので。今日、それをご紹介いただきたいなと思っています。抽出したのは3つのポイントと、具体的な取り組みですね。
これ、すぐにできることもあるので、多分に参考になると思います。それでは松島さん、あらためて教えてください(笑)!
部署やチームごとのビジョンはあるか?
松島:いやいや(笑)。そもそも「できているぜ! ドヤ!」みたいな話ではないという前提で聞いていただきたいんですけども。まずはポイント1つ目ですね。価値観の明文化。

これはすごく大事だなと思っています。右側一番上の、「部やチームのミッション・ビジョンを明文化する」ですね。これは会社のパーパスとか、MVもそうですが、チームにはありますか? 僕はヒューマンキャピタル事業部の責任者なんですけど、「ワークエンゲージメント 最高の社会」を実現するということを掲げています。
これは会社ではなくて、その部署、チームのミッションとして掲げていることなんですね。それ以外にもバリューがあったり、いろいろしますと。まず、これがすごく大事。
もう1つは、マネジメント側ですね。上司とかマネジメント側で、メンバーにどう向き合うとか、コミュニケーションするとか、上司としてどうあるかというマネジメントポリシーを作ること。これに沿ってみんなが動くことがすごく大事ですかね。
あとは「社員が本音を言える環境づくり」「上司を孤独にさせない環境づくり」。これを意識してやっているところですね。
“業務報告としての日報”はNG
司会者:真ん中にある「日報の書き方を教える」。ちょっと具体的に見ていきたいなと思っていまして。
松島:これね。日報にもいろいろあるんですけど、「日報って言葉がちょっと、いまいちだな」みたいな部分もあるんですが。じゃあ、いきましょう。
司会者:新卒社員に書き方を教えているんですね。どういうことを伝えているかというと、まず「読み手がいる物だと認識させる」。その上で、業務の報告だけではなく、出来事に対してどう感じたかを言語化する。あと、仲間のすてきなところを書かせて視野を広げさせたり、成功体験を言語化させて、自己肯定感や成長実感を持ってもらう。未来のことを書かせるなどなど。
新卒社員側だけではなくて、上司にも読み方を教えています。メンバーを成長させるためのツールであり、自分の情報収集や業務確認、数字確認のためだけには利用しない。自分の言ったことが正しく相手に伝わっているかや、捉え方の確認をする。大前提、書いてあることだけで判断しない。
松島:難しいな(笑)。ちょっと、これをしゃべっていいですか?
司会者:お願いします。
松島:まず、業務報告としての日報は止めないといけない。これがもう本当に大事ですね。やはり感情を書ける場所を用意しないといけないですよね。(スライド)左側でいうと、それに加えて周りや仲間を意識するようなこと。あとは自分の有用感、自己肯定感を意識させるようなこと。あとは未来のこと。これを書かせなきゃいけないですね。
やはり「目の前のことができない!」「周りより自分が劣っている!」「学生時代と今と生活リズムも違ってしんどい」。そこばかりなので。未来のことを書くコーナーを作ってほしいなと思います。右側もちょっとしゃべっていいですか?
司会者:はい!
「本音を書いてね」と言ったら本音が出ない
松島:上司側も読解力がいるっていう話なんですが(笑)。まず、日報をちゃんと読める人にするための育成が必要だと思っていて。日報が成長ツールだという大前提の認識とともに「これ、伝わってなくない?」とか、書いてあることだけで判断しちゃう。難しいんだけど、要は「彼がこれを書いているということは?」みたいな視点が必要。
いいことを書いているんだけど、これ「こういうふうに書いておけば上司が満足するんだろうと思って、とりあえず表面的に書いているんじゃない?」みたいなところまで見ようとするということが、すごく大事かなと思っていますかね。
司会者:もう、本当にコミュニケーションツールですね。
新保:どう感じたかってすごく大事で。先ほど「本音」って、あったじゃないですか。本音って感情なんですよ。「本音を書いてね」って言ったら本音が出ない。「どう感じたかも書いてね」という言い方が、すごく秀逸だと思いますね。それが本音につながっているんじゃないかなと思いました。
日報をやっている企業もエクセルとかでやっていると思うのですが、ノートで交換日記をやっている会社さんもありますね。そうすると手書きなので感情が出やすい。文章自体に花丸をしたり、goodって書いていたり、「これが書いてあるね」って、いいところを見ているので承認されている感もあるし、たぶん感情もすごく書きやすくなっている。
松島:業態によってはありかもしれないですね。
新保:ちゃんと返さないと意味がないのでリーダー側も覚悟がいります。覚悟を持てるんだったら、すごくいいツールだと思いますね。