人事領域の専門家の株式会社壺中天 代表取締役の坪谷邦生氏と採用市場研究所 所長の秋山紘樹氏が、毎回ゲストを迎えてトークセッションを行う「採用入門」シリーズ。今回は、株式会社ゆめみ 取締役 CHROの太田昂志氏を迎え、同社の採用戦略について鼎談します。本記事では、ゆめみの採用選考の判断基準やプロセス、それらの背景にある哲学を明かしました。
選任の採用担当者がいなくても、採用活動の量は増やせる
坪谷邦生氏(以下、坪谷):ここからゆめみの選考について教えてください。
太田昂志氏(以下、太田):もちろんです。詳細については他の記事でも公開されていますので、ぜひご確認いただければと思いますが、その前に、まずはゆめみのビジネスモデルについてお話しさせてください。
ゆめみはいわゆる稼働率ビジネスで、エンジニアやデザイナーがクライアントのプロジェクトに参画し、時間単位で料金をチャージするモデルを採用しています。
そのため、利益を最大化するためには、営業部門や管理部門の人数を最小限に抑えることが重要になってきます。
実際、ゆめみの管理部門比率は全社員400名の中で、わずか2~3パーセント程度にとどまっています。専任の採用担当者もおらず、強いて言うなら、代表の片岡がその役割を担っているんです。
坪谷:なるほど(笑)。
太田:私たちは約7年間、自律分散型組織であるティール組織を実践してきましたが、この組織形態は採用業務と相性が良いと実感しています。
先ほどお話ししたように、専任の採用担当者はいないのですが、採用活動には全社員の60パーセントが何らかの形で関与しています。例えば、一次面接を担当する人、リクルーター活動を行う人など、多くのメンバーが各々の役割で採用に携わっています。
さらに、毎月2~3パーセントの時間を、採用や人材育成の活動に割いてもらっています。結果として、普通の会社に比べて、圧倒的に多くの人が採用活動に携わり、より多くの量をこなすことができています。
ゆめみの採用の哲学
太田:せっかくなので、私たちの採用に対する哲学もお伝えさせてください。

採用活動って、つい「採用する側の視点」に陥りがちじゃないかと思っています。つまり、採用する側は「自社にとって良い人材を採用しよう」といった視点になりがちだということですが、私はこの「採用する側」と「採用される側」という構造自体があまり良くないんじゃないかと考えています。
そうではなく、お互いが対等に向き合えることが重要だと思っています。この考え方の根底には、ゆめみが掲げる「社会や組織のひずみをなくす」という想いがあります。採用を含めた社会のマッチングの仕組みそのものを見直し、より良いかたちにしていこうということです。
採用プロセスにおいても同様で、私たちは「良い面も悪い面もすべて伝える」ということを大切にしています。
例えば、応募者が「良い会社だ」と思って入社した結果、実際にはその会社が自分に合わなかったというケースがありますよね。それは理想と現実とのギャップから生じるものですが、その結果、離職につながるのは非常に残念ですし、お互いにとってそのような状態はできる限り避けたいはずです。
こうした状態に陥らないためにも、ゆめみでは採用に対する向き合い方を明確に言語化しています。
例えば、面接を担当することになった方には「相手を見極めることよりも、決して飾らず、自分らしく振る舞ってください」と伝えています。ゆめみで働いていて感じていることをそのまま話してもらうことで、ミスマッチがなくなるように工夫しています。
坪谷:なるほど。
採用プロセスは、お互いにとっての成長の時間
太田:もちろん、実際にはご縁やタイミングもあります。ただ、もうひとつ大切にしていることとして、ゆめみには「命の無駄遣いをさせない」という哲学があります。せっかく時間を使っていただく以上、応募者の方に、成長の機会にしていただくことが大切だと考えています。
そのため、採用のプロセスにおいては、一回一回、応募者の方に丁寧にフィードバックし、お互い成長の時間として向き合うようにしています。
この採用態度を前提として、実際の採用プロセスとしては、カジュアル面談、書類選考、課題試験、そして2回の面接を経て、採用の可否を決めるようにしています。

面接では基本的に聞かれたことは、ありのままを話すんですけど、1つ見極めのポイントがあるとすれば、課題試験のところです。
ゆめみの課題試験として、例えばエンジニアであればプログラミングの試験みたいなものがあるんですけど、けっこう難しいので通過できない方が一定数いらっしゃるんです。
やはりエンジニアリングの会社なので、一定の技術力がなければ、入社後に活躍していただくのが難しいからです。逆に面談はどちらかというとアトラクトに重きを置いていて、ジャッジメントはあまりしないんです。
その上で、最終面接は、今も変わらず代表の片岡が担当しています。最終面接通過率は、新卒エンジニアが53パーセントで、デザイナーが30パーセント、中途は幅があるんですけど、最終面接だからといって全員が通過するわけではないんです。