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⑩太田昂志氏に聞く採用戦略(全4記事)

“あの会社、なんかすごそう”が採用に効く 錯覚と実態を積み重ねる、ゆめみの採用ブランディング戦略 [1/2]

人事領域の専門家の株式会社壺中天 代表取締役の坪谷邦生氏と採用市場研究所 所長の秋山紘樹氏が、毎回ゲストを迎えてトークセッションを行う「採用入門」シリーズ。今回は、株式会社ゆめみ 取締役 CHROの太田昂志氏を迎え、同社の採用戦略について鼎談します。本記事では、ゆめみのユニークな認知獲得手法や、HR・IR・PRの「3R」の循環について語りました。

採用の「認知度」と「認識度」は別物

太田昂志氏(以下、太田):「弱者の戦略」の三つ目である「戦う意欲をくじく数的・量的優位を築く」という点ですが、先ほど触れたアウトプット文化を根付かせることに加え、もう一つ重要なのが質的な側面の強化です。

ここで鍵となるのが、「認知度」と「認識度」という二つの概念です。「認知度」というのは、ターゲット層がその企業の名前を知っているかどうかを指します。例えば、日立製作所やAppleといった大企業は誰もがその名前を知っていると思います。

ただ、採用戦略において、多くの企業はこの「認知度」だけで止まってしまっているのが現実ではないかと思います。

同時に大事なのが、実は「認識度」なんです。これは、ターゲット層に対して、企業が期待する認識がどれだけ浸透しているか、を意味します。具体的には、その企業がどんな事業を行っているのか、どんな特徴があるのか、などです。

この「認知度」と「認識度」はしばしば混合されがちですが、それぞれ別物として捉えて、両立させることが重要です。

また、採用の競争環境において、競合が大企業であれば、私たちのような企業を深く知ってもらうのは簡単ではありません。そこでゆめみではあえてリスクを取った認知獲得手法を採用しています。

その1つが「社員のキャラクター化」です。社員一人ひとりをキャラクター化し、パーソナルブランディングを通じて「誰に、どのように話してもらうか」を設計しています。

たとえば、代表の片岡は「一見おふざけをしているように見えて、実はロジックに強く、しっかりした経営者」とか、私自身で言えば、「一見真面目で冗談が通じなさそうに見えるけれど、実はおちゃめな一面がある」とかです。

このように、社員をキャラクター化し、「第一認識」と「第二認識」の間に、あえてギャップを作るように設計しています。

この意外性のあるギャップこそが、相手の関心を引きつける力になると考えているからです。

「ゆめみって、こういうおもしろい人たちがいるんだ」と感じていただければ、そこからその人自身のナラティブに自然と引き込まれ、結果的にゆめみにも興味を持ってもらえる。そんな「人を通じて組織を知っていただく」導線を築いています。

応募者の心に残る「ギャップ」の作り方

太田:もう1つが「採用プロセスにおけるパーセプションギャップ」です。

良い意味で、ゆめみでは、意図的に炎上するような投稿をやっているんです。例えば大喜利をやったり、Qiitaでわざとおもしろおかしいネタを書いたり、祭り(技育祭)でふざけてみるとか。

最初は一見ふざけているように見える。でも、話を聞いてみると、「あ、意外にも良く考えられているんだ」と気づいてもらえる。この瞬間に驚きが生まれ、しかもそのギャップの大きさがポジティブな印象として記憶に残るんです。

このように、「ただおもしろそうな会社」ではなく、「おもしろさの裏に戦略性と思想がある会社」として、深く強く印象づけていくことを狙っています。

坪谷邦生氏(以下、坪谷):なるほど。

太田:採用プロセスにおいても同じです。例えば、ゆめみを知るきっかけとなるSNSでは、あえて採用ブランドのイメージを一時的に下げるような投稿を行っています。ですが、その後のプロセスでは、応募者のみなさん一人ひとり、丁寧かつ真剣に向き合っています。

このギャップも、「実はゆめみは、見た目以上に深く戦略を考えている企業なんだ」とポジティブに受け止められる要因となっています。結果として、応募者のみなさんにとって、心に残る採用体験へとつながっているんです。

坪谷:とてもおもしろいですね!

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