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⑩太田昂志氏に聞く採用戦略(全4記事)

“あの会社、なんかすごそう”が採用に効く 錯覚と実態を積み重ねる、ゆめみの採用ブランディング戦略 [2/2]

採用活動に活かせる“錯覚資産”とは

太田:採用戦略で工夫している点として、「錯覚資産」という考え方も紹介させてください。細かいところは、ゆめみのNotionを読んでいただければと思いますが、冒頭のランキングも「どのランキングで上位を取るのか?」を決めて、そこに対して集中的に投資を行っています。

実際に上位に入ることができれば、「あの名だたる企業と肩を並べている」という認知が生まれ、それだけで“すごそう”という印象を持っていただける、いわば“錯覚資産”も形成されるのです。

こうして生まれた“錯覚資産”をうまく活用しながら、さらに実績を積み重ねていくことで、やがて“実態資産”へと転換していく。ブランディング投資においては、こうしたステップも着実に踏んでいます。

坪谷:やはり、一つひとつに練られた背景があるところが特徴ですね。しかも、練り上げたものを積み上げているから、結果的に高いところまでいくんだなと。

太田:なんかすみません、これは私が考えたわけじゃなくて片岡が考えたので。

坪谷:(笑)。

太田:私も最初に聞いた時に、すごく考えているなと思いました。

坪谷:太田さんは今、この片岡さんが作ったものをベースに人事のトップとしてやっていく中で、何を重点的にやっているんでしょうか?

「採用」を組織全体の機能として設計する

太田:私が重点的に取り組んでいるのは、採用も含めたHR(人事)全般の改革に加えて、IRやPRとの連携を通じて、統合的に組織の変革を推進することです。

具体的には、HRで積み上げた実績をIR活動に活用し、その成果をさらにPR活動に活かすという形で、HR・IR・PRの「3R」を循環させる活動に取り組んでいます。

坪谷:めちゃくちゃおもしろいですね。第8回の対談の時に、『すべては1人から始まる――ビッグアイデアに向かって人と組織が動き出す「ソース原理」の力』の翻訳者の山田裕嗣さんと対談させてもらったんですよ。

山田さんとは生態系としての組織のお話をしたんですけど、今の話は完全に全体の循環の話だなと思いました。採用設計を知っている会社はあっても、採用を組織全体の機能としてどう循環させるかまでを設計している会社はなかなかないなと。ゆめみさんはそこをされているところが素晴らしい。

社員のパーソナルブランディング設計

秋山紘樹氏(以下、秋山):先ほどお話しいただいたパーソナルブランディングについて、少し戻ってお聞きしてもいいですか?「一見ふざけているように見えるけど、実は高い実績を持っている」という認知ギャップを作る戦略は、とても興味深いと思う一方で、実際にこれをうまく実践できる人は限られているのではないかと感じました。

社員の方がこういうキャラクター設定や発信方法を決める際に、会社として何かサポートをされているんでしょうか? 例えば、マーケティング部門のような専門家がアドバイスをしているのか、それとも最初からこういった発信力やキャラクター演出ができる人材を採用しているのか、どのような形で進められているのか教えていただけますか?

太田:いずれの要素もありますね。まず、タレントという点においては、全メンバーの2.5パーセントぐらいしかいないんですよ。なので、誰をタレントにするのかを見つけてきて、パーソナルブランディングみたいなところをけっこう個別で指南しているんです。

秋山:なるほど。

坪谷:それは、もともとのタレントさんの個性に合わせてブランディングをよりシャープにするようなことですか?

太田:そうです。

坪谷:ああ、やはりそうですよね。あんまり作ってしまうと苦しくなりますからね。

太田:そうなんです。実はミソは「第二認識」にあってですね。弱みをいかに最小化し、強みをどのように増大させるかが肝なんです。例えば、この「そば屋」さんという方は、お酒が入るとテンションがハイになるという弱みがあるんです(笑)。

(一同笑)

太田:とても素敵な方なんですが、場合によっては、その個性に驚かれることもあります。それを逆手に取って、「そういうキャラなんです」というふうに作ってあげると、弱みが最小化されるんですよ。

坪谷:なるほど。「愛してあげ方」をセットする感じでしょうか?

太田:そうです。エンジニアとしても優秀な方なので、「お酒が入るとハイテンションだけど、ふだんはエンジニアとしてしっかりしていて優秀だ」という感じです。

坪谷:そうすると、なんというか本人も生きやすくなりますね。

太田:そうなんです。

坪谷:それを福ちゃんがやっているというのも、すごくギャップがあります。表面で見える姿からは想像できないです。そこを担っているのが実は彼だと言われるとドキッとしますね。

太田:そうなんです。実は、こうしたパーソナルブランディングを支えている福ちゃん自身も、自らこうしたセルフブランディングを実践しているので、説得力がありますよね。

秋山:いや、すごいですね(笑)。ありがとうございます。

真面目な社員と突き抜けたタレント社員の役割分担

坪谷:片岡さん、考えているなぁ。「弱者の戦略」という記事自体も福ちゃんが書いているんですか?

太田:そうですね。片岡がどこかで話した内容をコンセプトに、福ちゃんがより細かく書いている感じです。

秋山:ちなみに、2.5パーセントのタレントの方々は、やはり面接などにも出てこられたりするんですか?

太田:面接に出てくる人もいれば、そうじゃない人もいますね。ここは、どちらかというと、社内でそういう人を見つけたらタレント化していくという感じです。

秋山:そうすると、先ほどの2.5パーセントのタレントの方々についてですが、彼らは採用面接にも参加されているのでしょうか?

というのも、採用面接では限られた接点の中で会社の雰囲気をいかに伝えられるかが重要だと思うんですね。記事などで見かけた印象的な社員の方と実際に面接で会えると、応募者もより会社のイメージが具体的になってスムーズかと思ったのですが。

太田:なるほどですね。要はタレントが前に出たほうがいいんじゃないかということですよね?

秋山:そうですね、一案としてそういった考え方もあるのかなと思いました。

太田:そこは役割分担があって、タレントが活躍するのは最初のキャッチ(認知)のほうですね。ゆめみの8割〜9割の人たちはとても真面目なんです。

ちなみに、新卒向けの説明会の会場とかでも、こういう格好をして行くので、相当浮くんですよ(笑)。

坪谷・秋山:(笑)。

太田:なんなら、それぞれのキャラクターの等身大パネルも置いたりして、「なんかおもしろいな」と思ってもらう。ただ、実際に話してみると、急に真面目な技術論を語り始めるというギャップが生まれるんです。こうして、『ゆめみっておもしろいな』という印象がより一層強くなるんですよ。

秋山:役割分担なんですね。

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