ビジネス書出版社クロスメディアグループによる公式チャンネル「クロスメディアTV」では、ビジネスパーソンに必要な「学び」や「健康」をテーマにお届けします。本記事では、『メンターになる人、老害になる人。』著者の前田康二郎氏が、若くても老害になりやすい人の特徴をお伝えします。
まじめで責任感の強い人が引き起こす「業務の属人化」
小早川幸一郎 氏(以下、小早川):ちょっと具体的な話になりますけど。本(『メンターになる人、老害になる人。』)の中には、ビジネスの現場での老害の事例とか、メンターの事例がたくさん書かれていますね。そんな中でメンターと呼ばれるはずの人が老害になってしまうことについて、お話を聞かせていただけますか?
前田康二郎氏(以下、前田):たぶん「老害」と言われる行為にも2つあって。1つはやはり攻撃的な老害と、あとは何もしないという老害。それで職場の組織の話で言えば、一番現場で多いのは、やはり業務の属人化というところだと思うんですね。
小早川:なるほど。
前田:1人の方が、アナログのやり方でもう15年、20年やっていらっしゃって。今はよく「DX」と言われているように、会社を全体的にペーパーレスにしてデジタル化しようという流れがあるんですけれども。
その方だけが断固拒否して「こういう、いいソフトウェアがあるよ」と推薦しても、「いや、このソフトウェアは、こういうところと、こういうところがダメだから、これはできません」と。
もうその人を中心にことが進んじゃう。それはやはり1つの老害と言えるんですよね。ただし、その方がなんでそんなことをしているかというと、まじめで責任感が強いからですね。それなりにその仕事のポジションをちゃんとやってきているから15年、20年もその人がやっているわけです。
でも結局は、そういうことをやることによって、その後任の人がすごく引き継ぐハードルが上がっちゃうんですよ。だから、なんか悪いことをするというよりも、後の人のことを考えてない人が老害になりやすいのかなと思っています。
攻撃的な老害と「何もしない」老害

前田:翻って何もしないという人は「同じようにデジタル化したいんです」とか、若手社員の方が「こういう新規事業をやりたいです」と言っても、「みんながどう言うかな。まぁ。来年でいいんじゃない?」みたいな。「また変なことをやって失敗すると、あれだからさ」と。それは、あなたはいいかもしれないけども、若い人たちは自分の5年後、10年後を考えて提案しているわけですよね。
だから、それも同じように次の人のことを考えていれば、メンターなのかなという気がする。自分の現状のポジションのことだけを考えていると、同じ性質の方であっても老害になりやすいかなとは思いますね。
小早川:なるほどね。なんか「老害」っていう言葉が強すぎるんですけど。なんかソフトなのもハードなのもあれば、今お聞きするとテーマも幅広いものなんですね。
前田:そうですね。だから老いるってことは別に悪いことじゃないと思うんです。老練とか、老舗とか。中国語で老人の老に教師の師で老師、先生。だから別に老いるということは何も悪いことではない。熟練した、むしろいいこと。ただ老害の場合は、何かしらの害があると。じゃあ、その害は何だというところでしょうね。
若くて社歴の長い人が老害になることも
小早川:なるほどね。本の中では「年齢が若い人が、目上の人に対して害を与える老害もある」ということも書かれていますよね。
前田:はい。それこそ松本清張さんが小説を書かれていた時代は終身雇用、年功序列が一般的だったので、もう自ずと年齢の高い方が社歴も長くて、職歴も長いと。だから老害というのは、だいたい年を取られた方というイメージがあるんですけど。
もう今の令和の時代であれば、そういうかたちは、この日本であっても崩壊しているわけですよね。みなさんどんどん転職しますし。あとはリスキリングとか、キャリアチェンジで、20代は営業をやっていたけれども30代からはマーケティングに転じるとか。そうすると、例えば35歳で初めてマーケティング部に転職した人が、29歳の社歴7年目ぐらいの同僚がいたとすると。
そうすると29歳のほうが年下なんだけれども、職歴とか社歴は、そちらのほうが長いので。その方が「なんかおじさん、おばさんが入ってきたな」と言って、「ちょっと可愛がってやろうか」といじめることも現実にはあります(笑)。
小早川:なるほどね。
前田:ですから、「長害」というほうが今の時代の人たちには、しっくり来るかなとは思いますね。
小早川:なるほどね。もっと離れると60歳で定年したあとに、どこか若い人がいる会社にパートタイムで入って若い人にけっこういじめられちゃうっていうのは、もしかして老害(長害)かもしれないですよね。
前田:お互いに敬意があれば、絶対にそういうことは起こらないんですよ(笑)。
小早川:なるほどね。
前田:(敬意が)ないと、そういうトラブルが起こりやすいかなと思いますね。
老害にならず「メンター」になれる人の特徴

小早川:なるほどね。メンターと老害は紙一重。これがこの本のすごくおもしろいところだと思うんですけど。じゃあ老害にならずにメンターになっている人の行動パターンについて、本にはたくさん書いていますけど、簡単に教えていただけますか?
前田:まず自分が社会人というか、脱サラして初めてお会いした方に励まされたおかげで、あの1冊目の本が出せたんですけど。その方というのは、取引先の会社の役員の方なんですけど、その方とは最初はお仕事でご一緒していなかったんです。
通り道でその方の席の前を通らなきゃいけなくて、お互いにご挨拶をしているうちに、その方もすごい読書家で「こういう本、おもしろいですよ」とおすすめいただいて。その方の特徴というのは、常に上機嫌で、不機嫌な顔は一切ない。もう100パーセントポジティブ(笑)。
なので、その方にも「今度本を書きたいと思っているんですよね」って言ったら、「前田さんは絶対に大丈夫ですよ」と、何の根拠もなく(笑)。でもやはりそれぐらいの会社の役員の方が「絶対に大丈夫」って言ってくださるんだったら、「あ、自分は大丈夫かもしれない」って思えるようになったんです。
それまでは私の周りの方って、やはり家族も、友だちも、同僚もまじめな方が多かったので。それこそ「会社員を辞めて、脱サラしてフリーランスの事務職になる」って言ったら、みなさん猛反対ですよね。それは良かれと思ってということですけど、あまりにもそうやって言われると、やはり自信がなくなってきちゃうし。
うまくいくこともいかなくなっちゃうこともあるかなと思うんです。だからリスク管理というのは、多くの人が自分でわかっていると思うので。あとは、やはり最後の後押しというか。いわゆる応援団みたいな方がいてくれると、私はすごく助かったので。もう常に100パーセント味方だよという方がメンターの1つの条件かなと思いますね。
「押しつけがましい」「おせっかい」と思われないために
小早川:年齢とかキャリアに関係なく、どの人に対しても敬意を持って接していて、押しつけがましくない。あと、その人を励ますような感じの人はメンターに多いかもしれないですよね。
前田:どっちかというと、教えてあげようという人は1人もいないですね。
小早川:なるほどね。でも教えてあげようみたいになっちゃいますよね。
前田:普通は、まだ新入社員で右も左もわからないから「私が教えてあげよう!」というふうになっちゃうと思うんですけど。メンターの人は、そういう発想はやはりないですよね。
小早川:なるほどね。
前田:若くても職歴も関係なく対等ですね。それが大きいかなと思いますね。
小早川:でも、相手によっても変わってきますよね。「教えてください!」と言う相手に対しては、教えてあげようという人はメンターになるかもしれないけど。そうじゃない人に関しては「押しつけがましい」「老害だ」って言われちゃうから、難しいですね。
前田:相手から「教えてください」って言われたら、じゃあ「教えてあげるね」というかたちだと思うんですよね。逆に、おっしゃったように、いわゆるおせっかいというか、そういう方ほど「教えてあげるよ」って、別に教えてもらいたくない人にまで言ってしまう。ともすれば老害っぽく思われて誤解されてしまうということは、あるかなと思いますね。
小早川:難しいですね。いったんここまでで、前田さんありがとうございました。