オンボーディングプランを伝えるオファーレター、お試し期間でミスマッチ阻止
坪井:あとは「業務の壁」を乗り越えるための事例で言うと、いいなと思ったのがSmartHRさんがやっていたオファーレターです。「あなたの1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後の業務のイメージはこんな感じです」という、いわゆるオンボーディングプランがオファーレターとともに書いてあるのを拝見しました。これってミスマッチが生まれにくくてすごくいいなと思いました。
坪谷:確かに。
坪井:最初はここから任せるけど、ここまでやってほしいよと。もちろん今の期待とか会社の魅力とか、いろんな観点がありますけど、そういうものを伝えていった中にオンボーディングプランが書いてある。もう入社後のイメージを組み込んでいるわけなので、採用の段階からできるアクションとしてすばらしいなと思いましたね。
あとは、お試し期間を選考ステップに入れているスタートアップもあります。最大で3ヶ月以内で、その会社の仕事をやってみて、お互いにどう思ったかを選考ステップに入れます。選考というか、お試し入社ステップを入れるんですね。
坪谷:多くの会社だと試用期間を取りますけど、それとは別なんですね。
坪井:別です。それを踏まえて内定を出しますというのをやっていて、なるほどなと思いました。オペレーションはけっこう大変らしいんですけど、30名規模までそれでやって、退職者もゼロだったらしいので、うまくやられていた感じです。
坪谷:いいですね。雇用形態は業務委託ですか?
坪井:業務委託だと思います。複業先として関わってもらうイメージですね。
坪谷:「まず一緒に働いてみて決める」というのは、一番ズレが少なくなりそうなので、できるならそうしたいですよね。
坪井:そうすると、本人も会社も「How to work」が見えるじゃないですか。「自社の仕事環境に入ってもらった上で、この人はどうだったか?」というのを、最後に受け入れ側にも聞いて、全員賛成だったら「オファーを出しましょう」というのは、すごく丁寧なプロセスですよね。
秋山紘樹氏(以下、秋山):選考の中で関係性もしっかり作られるからいいですよね。
坪井:両者にとってのお試し期間という位置づけですから、ある種のフィルタリングがお互いにかかっている感じですね。そこまでやってまで行きたくないなという感じだと、採用候補者の方はそもそも複業をしないでしょう。
坪谷:求職者側も、きっと判断しやすいでしょうね。
坪谷:ここまでで、適応の壁の「理解」と「業務」をお聞きできました。
秋山:あとは「能力」と「成果」ですね。
“未来のマッチング度”も設定できる「適性検査」
坪谷:先ほどの話だと、能力の壁に対する支援には限界があって、ミスマッチも起きる時は起きる、ということでした。
坪井:ただ、能力のところも、さっきのSmartHRさんのオファーレターの話のように、面接で見えた採用候補者の能力を評価してあげたり、ズレがないように埋めていくことはできるんですよね。彼ら(SmartHRさん)は「ズレ埋め」というキーワードで呼んでいたんですが、その部署の人たちがどう評価しているかも含めて、フィードバックをちゃんとお伝えする。
以前のSmartHRさんのバリューには、「認識のズレを自ら埋めよう」という表現が言葉としてあって、オファーレターもその現れだと思います。「そこを期待されているんだな」と思って入ると、先々のボトルネックを外す1つの儀式にはなるかもしれません。
あと、今は適性検査のいろいろな使われ方が出てきています。よくある「個人の特性を見える化します、以上」だと、採用選考でのマッチングに活用するのに一手間かかる分、難しいところがあるんですけど、今は職場の環境とか会社の環境も適性検査で取った上で、個人が当てはまるかどうかのマッチング度合いを見られるツールもあります。
それも今のマッチ度だけじゃなくて、「未来のこの会社はこうありたいんだ」という未来志向のマッチングを設定できたりもする。例えば、もっとイノベーティブな組織にしたい会社だったら、関連する項目の数値を高めに設定して、一定水準以上のマッチング度じゃないと採用選考を進めないスタートアップもあったりします。
行動特性も含めて、面接では見られていない能力全般のようなものを見た中で、選考プロセスに活かしていくことも、1つのやり方だと思います。
既存社員の適性検査も見ながら、カルチャーマッチを見極める
坪谷:組織の適性を測るのは、上長やその組織メンバー一人ひとりの適性検査をするのか、それともサーベイ的に組織全体のタイプを測りにいくのか、どんな形式ですか?
坪井:人数の少ないスタートアップであれば組織全体で見ますね。会社のカルチャーも見るし、部署の単位や職種単位でも見ます。(採用候補者の方が既存社員の)誰に近いかも見たことがあります。
例えば、やり切る力のような行動面もあれば、クリティカルシンキングのような思考面もあります。いろいろな項目を指定できるんですね。その会社が大事にしたいところを設定できるんですけど、例えば会社として大事にする資質が3個で、部署で大事にしたい資質が3つなら合計6つの資質で見ることもできます。
既存社員の回答傾向も見ながら、現状とあるべき姿の両方の度合いから、ちょうどいいカルチャーマッチを指定して見極めていくかたちです。そうすると、今後入社してほしい方に期待している能力や素養、志向性を持っているかどうかの見極めの中で使えるんですね。
坪谷:なるほど。「能力の壁」のギャップを埋めるためのアプローチですね。現メンバーも新入社員もどちらも適性検査を受けていれば、例えば現メンバーはやり切る力が高いけど、今度来る人が低かったら、合わないだろうなとわかる。
坪井:自分たちの面接内容の見直しにもなるんですよ。思っていたとおりのところも見えるし、今まで聞けていなかったことに気づけたり。ある種PDCAのCじゃないですけど、チェックが利くような感じでも使えます。
単純に「ストレス耐性が低いから落とそう」という話ではなく、組織像やポジションに対して求められる理想を、選考の中で見ていくことで、能力の壁を越えやすくするツールとして適性検査も使えるんじゃないかと思いますね。