一代で東証プライム上場を成し遂げた木下勝寿の仕事術や、北の達人コーポレーションの社員の働き方などを通して、「リアルな北の達人コーポレーション」をお届けする「北の達人チャンネル」。本記事では、目標達成できるチームのつくり方について解説します。
北の達人・木下勝寿氏が語るマネジメントの本質
——木下社長! 私は最近マネージャーを任されるようになったんですけど、メンバーの意見を聞いていてもぜんぜんまとまらないんですよ。しかも意見が反映されなかったメンバーと、ちょっと険悪になっちゃったりして。
チームをまとめて、さらに成果を出すってすごく難しく感じるんですけど、どうやったらいいんですか?
木下勝寿氏(以下、木下):それはマネジメントの本質を理解していないからこそ起こっている事態ですね。今日はマネジメントの本質についてお話しします。これが理解できるとチームの話し合いがスムーズになって、さらに圧倒的な成果を上げられるようになってきます。
——よろしくお願いします!
木下:ほかにも仕事がはかどるような動画を出しているので、今日もあなたの学びになったらうれしいです。今日の動画が良かったら、ほかの動画も見てみてくださいね。
また、ただ聞いているよりもアウトプットを行ったほうが記憶への定着率が向上することが科学的に証明されていますので、動画を見て気づきがあったことは、ぜひコメント欄に書いてアウトプットしてみてください。
では、まずマネジメントについて知っておいてほしいことについてです。大前提としてマネジメントというのは、「メンバーのマネジメント」ではなくて「仕事のマネジメント」であるという基本をぜひ知っておいてほしいんですね。

勘違いされやすいんですけども、管理職・マネージャーの仕事はメンバーのマネジメントをすることではなくて、仕事のマネジメントをすることです。やるべき仕事がきっちり行われているか、成果を出すためにどうするかというのをマネジメントすることが仕事です。
極端な話、成果が出ていれば短期的にはメンバーにやる気があろうがなかろうが、メンバー同士が仲良かろうが悪かろうが、どっちでもいいんですね。
独断orメンバーに意見を聞く…よくある失敗2パターン
——そうなんですか? チームがまとまらないと成果が出せないと思っていました。
木下:「短期的に」という言い方をしましたけども、長期的にはやはりチームがまとまらないと、成果を出し続けることはできません。ただ翻って、チームをまとめることが仕事と勘違いしているマネージャーが多いので、あえてそういう言い方をしました。
長期的にはチームがまとまっていなければ成果は出ません。しかしチームがまとまっているからといって、成果が出るわけではないんですね。チームがまとまるというのは必要条件ではあっても、十分条件ではぜんぜんないんですよ。今回は成果を上げるチーム作りについてお話をしましょう。
まず、よくあるマネージャーの失敗。自分が最も質・量ともに良い情報を持っているので、独断で判断してチームに指示をして動かしていく、やらせていくパターンですね。
もう1つがメンバーの意見を聞いて、メンバーの納得性をベースに判断して、物事を動かしていくことです。
これ、どっちも間違いです。1つ目、自分が最も質・量ともに良い情報を持っているので、独断で判断してチームを動かすという場合の問題点。まず客観的視点がない独断の判断なので、間違う可能性があります。
そしてもう1つ、メンバーの気持ちがやはり疲弊してきますよね。短期間的にはOKな場合もあります。「何も考えなくていいから、まずこれをやってくれ」というかたちでガーっとやって成果を出す場合もありますけど、長期は正直続かないんですね。
「メンバーの納得感」をベースに判断することの問題点
木下:一方でもう1つがメンバーの意見を聞いて、メンバーの納得感をベースに判断する場合の問題点。メンバー一人ひとりから意見を吸い上げて物事を決めると、どっちつかずになる場合があります。みんなバラバラの意見を言っていますので、誰かを立てれば誰かが立たないみたいな感じですね。
そしてメンバーの意見は、そのメンバー自身が持っている情報のみから判断した意見であるため、部分最適化されることが多いんですね。
家族とかで考えるとわかると思うんですけども、「家族会議をして家族の方針を決めましょう」という時に、小学生の子どもとお父さん・お母さんがまったく同じ票(数)を持って決めるとどうなるかって話です。子どもが3人〜4人いたら、ご飯は全部おやつにする、お小遣いは10万円にする、とかになりますよね。
ある程度情報の質が違ったものを持っている人が、方向性を決める必要があったり、一方で納得感ベースだけでも物事は動かないという話です。
メンバーからの「情報」と「意見」を分けて考える
木下:じゃあ独断で決めてもダメ、意見を聞いてもダメとなったら、どうすればいいのか。答えとしては「メンバーから吸い上げるものの意見と情報をちゃんと分けて考える」ということです。
メンバーとの関係を良好に保ちつつ仕事をマネジメントするためには、意見と情報を分けるというのがすごく大事なんです。
——意見と情報を分けるって、どういうことですか?
木下:例えば「明日は降水確率が40パーセントなので、絶対に傘を持っていったほうがいいですよ」みたいなことをメンバーが言ってきたとします。これは「降水確率40パーセント」というのが情報です。「絶対に傘を持っていったほうがいい」というのが意見です。
なので「絶対に傘を持っていったほうがいい」という部分に関しては、必ずしもその人が正しいわけではないですよね。でも「降水確率40パーセント」というのはけっこう重要な情報ですよね。
段階としてはステップ1として、まず情報を聞くことが大事です。メンバーを10人集めました。10人から意見ではなくて情報を吸い上げる場を設けます。「みんな意見を言ってくれ」じゃなくて「これについての情報を出してくれ」と言います。
依頼の仕方をちゃんとしないと、みんな途中から意見になってきますので、ちゃんと情報を上げてもらいます。もちろんリーダー自身も自分が持っている情報をシェアしていきます。
ここでいったん情報を全部出していきます。そこにいるメンバーは、その場で自分以外の9人プラス、リーダーの情報も得ることができます。
一人ひとり意見を持っていたとしても、ここでたくさん情報を集めてみると、自分の持っている情報ってごく一部でしかない(とわかります)。
自分が知っている情報では「こういう意見が正しいな」と思っていたけど、みんなの情報を基にすると「ちょっと違うほうがいいかもしれないな」と、メンバー自身もこの場で意見が変わってきたりするんですね。
なので、いったん情報を全部集めます。リーダーは10人の情報と自分の持つ情報を基に「みんなの情報を統合すると、Aという方法が最適だと思ったけども、どう思う?」と言って、この段階で初めてみんなに意見を聞くんですね。
意見がまとまらない時の対処法
木下:同じ情報を聞いているので、もちろんメンバーのレベル差はあると思うんですけども、大半は同じAという判断になる場合が多いと思います。
ただし人によってはBという、違う意見を持つメンバーもいると思います。でも大半は同じ判断をするので、実はここで多くのメンバーの納得感が生まれているんですね。
意見を聞くのではなくて情報を聞いた後で、みんなの情報を合わせた意見を1つ出すと、これに同調する可能性が非常に高いということです。でも一方で全員が全員じゃない。Bという別の意見を持っている人もいます。
次のステップ2で、初めて意見を聞きます。その場合はBの人の意見を聞きます。その上で、ほかのメンバーに対してそれをどう思うかと聞くんですね。
「Bのほうがいいとこの人は言っています、これについてどう思いますか」みたいな。この結果リーダー自身も「Bのほうがいいんじゃないか」って意見に同調する場合もあります。これはぜんぜんOKです。
一方でほかの人から「自分もBだと思う」とか「やっぱりAじゃないか」とか、もしくは新たに「それだとCっていう考え方もあるよね」みたいになってくると思います。
ここで最終的にどうしていくか、リーダーが決めていくんですけども、最終的に1つにまとまらない場合はどうするか。
ステップ3として、方針を決めるというのがあります。その時のリーダーの役割は、まとめることではなくて方向を決めることが大事なので、「まず今回はAでやってみましょう」と言います。
そして「○○までに△△の成果が出なかった場合はBに切り替えましょう」という方針を決める。それでみんなに言っていく感じですね。
ここで多くの人は、結果的に情報しか出していないことになりますが、リーダーと同じ意見だったり。もしくは違う意見の人は意見も出しているので、納得感がすごく高い状態を形成できるんですね。
最終的には「責任者自身が納得しているか」が大事
——私、みんなの意見の折衷案を考えていました。最終的にはリーダーが方向性を示さなきゃいけないですよね。
木下:そうですね。リーダーというのは責任者です。責任者というのは文字どおり責任を取る人のことです。責任者がいない組織・チームは機能しないんですね。
なぜなら責任というのは失敗の罰を受けることではなくて、問題を解決することだからです。「責任を果たす」という言い方をすればわかりやすいと思うんですけども、責任を果たすというのは問題を解決することです。

つまり責任者というのは、失敗した時に責任を果たさなければいけないので、少なくとも責任者自身が納得していないものは選べないんですね。それがうまくいかなかった時に改善策を出さないといけないので、最終的には責任者自身が納得していることがすごく大事になってきます。
なので極端な話でいくと、責任者以外の全員が違う意見になった時でも、最終的には責任者の納得感を優先する必要があります。
最終的にみんなの情報を集めて、リーダーはAじゃないかと思った。ほかの人は全員Bじゃないかと思った。でもそこで話し合ったとしてもまとまらない。
その時にリーダーは「すまんが今回はAで1回やらせてくれ。ここまでにこういうふうにならなかった場合にBに切り替えましょう」と、話を持っていく感じですね。
どのような判断でもメンバーの納得感が高くなる理由
木下:このやり方をしていれば多くの情報から判断するので、まず正解確率が高くなるということですね。リーダー1人の情報、メンバー一人ひとりの情報だけじゃなくて、全員の情報を集めて判断するので正解確率が高くなります。そして成功しなかった時も次の手が準備されていますので、成功確率が高くなります。
どのような判断にしろ、メンバーの納得感が高くなるということです。自分1人の情報で「正解はこうだ」と思っていたメンバーも、ほかの人の意見・情報に接することで視野が広がって成長していくので、非常に良いやり方だと思っています。
なのでマネジメントする場合は、まず最初に「メンバーから意見ではなくて情報を聞くことが大事だ」と覚えておいてください。
Zoomの会議なら、納得していない人は一発でわかる
——情報を聞いた上で、みんなとは違う判断をしたメンバーが遠慮して、反対意見を言えなくなってしまうことがあると思うんですけど。そういう状況でもみんなが安心して違う意見を出せる場を作るために、北の達人ではどんな工夫をされていますか?
木下:私は当てます(笑)。会議はZoomでやるんですが、すごくやりやすくて、一人ひとりの顔のサイズが全部同じなんですよ。
例えば10人、20人で会議する時、以前はリアルの机に集まっていたので、遠くの席の人の顔は見えなかったですけども、Zoomだと全部等間隔で映る。そうしたら怪訝な顔をしている人は一発でわかるんですね。

なので「誰々君、どう?」ってどんどん当てていきます。当てていって情報を出してもらったり、もしくは意見が1つ出ている時には違う意見を出してもらったりして、それを基に「こういうふうにしていきましょう」となる。
「こういうふうにしていきましょう」の時も顔を見ます。怪訝そうな顔をしている時に「どう、何々君?」って感じで確認していくのを、けっこう私はやっています。このやり方は、Zoomが普及したことによって、よりやりやすくなったかなと思っています。
北の達人で実践している「数字で報告するフォーマット」
——北の達人では会議の場で、どうやって意見と情報を分けているんですか?
木下:当社のクレドには「数値化主義」という項目があるんですね。当社では数字で報告するフォーマットがすごくたくさんあるんですよ。例えば「多い」とか「少ない」とかは意見ですよね。
そうではなくて数字で「何が何と比較して何パーセント多い」とか「何パーセント少ない」というフォーマットで出してもらいます。なので、これが情報になるんですね。
例えば求人募集で採用人数に満たない場合って、原因は応募者が少ないのか、応募者は多いけれども選考を通過する人が少なかったのとか、ありますよね。
これをちゃんと数値で全部パーセンテージを出して、標準に比べてどれがどれぐらい低いとか高いとかってかたちにして出してもらうので、正確な情報を出しやすくなっています。
集客においても、目標に対して足りない原因は広告表示回数なのか、広告のクリック率なのか、購入率なのか。それぞれの要因の重要度を全部、数値で報告する仕組みになっています。
数値に対してもフォーマットがあるので、入力すると自動的に計算でパーセンテージが出ます。計算が不得意な人でも一応何が要因かがわかるようなフォーマットがあるので、情報としてはすごく出しやすくなっているかなと思います。
人の意見にはやはり感情が含まれていて、感情には個人差があるんですね。なので同じ情報を見ても、各自が違う感情を持って、違う意見を持つと正確な判断ができなくなります。意見ではなくて情報で判断するという時に、情報が最もわかりやすいのが数字なので、そのようにしています。
完全に数字で管理したほうが、部下に寄り添える
——数字がすごく大事というのはわかるんですけど、「数字、数字」って言っていたら「冷たい人なんだな」って思われそうで怖いんです。
木下:実はそうではなくて、KPIが整っている組織、数字での管理の仕組みが整っている組織はできている・できていないというのがはっきりしているので、そもそもできていない人に「君はできていない」みたいな話をする必要がぜんぜんないんですね。
まず現状が数字ではっきりとわかっている状態なので、上司と部下とのマネジメントにおいて、お互いに何がどれだけ足りていないかわかっている。それをどうするかということだけに集中して話ができるので、KPIがはっきりしているほうが、実は人に寄り添えるんですよ。
そこがはっきりしていないと「僕はできていると思っています」「いや、でも君はできていない」みたいな話になりますよね。でも完全に数字で管理している場合は、人間的な部分に寄り添うことに集中できるので、意外と逆に優しくなるんですよね。
——それを聞いて安心しました。怖くないですね。
木下:ぜんぜん怖くないと思いますよ(笑)。では、最後にまとめますね。マネジメントの本質というのはメンバーではなくて、仕事のマネジメントです。
成果を出すためにはメンバーの意見ではなくて、情報を集めることが重要です。情報を共有して全員が同じ前提を持つことで意見が整理され、正確な判断が可能になります。
さらに意見には感情が含まれるため、数値など客観的な情報を活用することがポイントです。それにより納得感が生まれ、チーム全体が成長し成果を最大化できます。ぜひ自分のチームでも試してみてください。