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スタンフォード式「ワーク・ウェルビーイング」の組織的実践(全3記事)

肥満は脳にも悪影響 ビジネスパーソンが意識したい、ウェルビーイングを保つヒント

組織開発をテーマにしたオンラインイベント「組織開発×スキル成長 DO-OD -OD(組織開発)をDOせよ-」より、医師・医学博士の志村哲祥氏によるセッションをお届けします。ワーク・ウェルビーイングをテーマに、睡眠不足や栄養不足が脳に与える危険性について、医学的見地から紹介します。

国内外で睡眠医学やメンタルヘルスを研究

谷本潤哉氏(以下、谷本):みなさん、お待たせしました。株式会社O:(オー)の谷本と申します。この時間からは「スタンフォード式『ワーク・ウェルビーイング』の組織的実践」ということで。

スタンフォード大学を含めいろいろな研究機関に属されていて、かつ、弊社の社外取締役も務めていただいている志村さんにお話をお聞きできればと思います。志村さん、よろしくお願いいたします。

志村哲祥氏(以下、志村):こんにちは、よろしくお願いします。

谷本:今、アメリカですよね?

志村:実は先週、一時的に帰ってきまして、日本にいます。

谷本:そうなんですね。白衣じゃない志村さんを久しぶりに見ました。

志村:実はこれ、今回の話に関わってくるんですけれども、「野菜を食え(※パーカーには「やさいもたべろ」と記載)」っていう栄養指導パーカーを着ているんですけれどもね。

谷本:すごくかわいいですね。

志村:どうも近年、40歳を過ぎたおっさんはパーカーを着たらいけないというドレスコードができているらしくて。

谷本:炎上していましたよね(笑)。いきなりマニアックな話なんですけど、「土壌が昔と違うから、野菜ってあまり栄養がないぞ」みたいな都市伝説をちらほら聞くんですけど、本当なんですか?

志村:品種の差で栄養素が変わっちゃう可能性はあるでしょうね。

谷本:土よりも品種なんですね。

志村:ただ、あるに越したことはないので、その話をしていこうと思います。

谷本:ありがとうございます。じゃあ、さっそくスタートしますが、今日はこの流れでお話ししていきます。

最初に、登壇者のご紹介と今回の企画内容の解説がありまして、メインが志村さんからスタンフォード式ワーク・ウェルビーイングというものが何なのかをお聞きしつつ、最後にパネルディスカッションのお時間となっております。

じゃあ、最初に志村さんの登壇者紹介から。精神科医というんですかね、睡眠医学のお医者さんでもあり、世界を股にかけて研究されていて、なおかつビジネスでも、ご自身で経営されている企業も含めていろんなところで活躍されている、まさに異能の方。

いろいろなメディアにも出ていらっしゃるので、今日も有意義なお話をお聞きできればと思っております。

青魚を週2回食べると離職率が下がる?

谷本:今日のテーマとしては、これは造語になるんですけども、「ワーク・ウェルビーイング」ということで、働く人にとってのウェルビーイングですね。これの最先端といいましょうか。

概念として「ウェルビーイング大事だぜ」みたいなことは、みなさんも聞いたことがあると思うんですけど、実際にどれぐらいのインパクトがあるかとか、実践するにはどうしたらいいのかをお聞きできるんじゃないかなと思っております。

先ほどの繰り返しになりますが、志村さんが精神医学、産業衛生、ビジネスという3点の視点を持っているので、私も楽しみにしています。


例えば、ここに書いている、「週2回、青魚を食べるか否かで離職率が変わる」などですね。これ、人生が変わると言い切っていいんじゃないかと感じたんですけども。これからの企業活動にワーク・ウェルビーイングは非常に重要なんじゃないかなというところを解き明かすようなお時間にできればと思っております。

最後にパネルディスカッションをさせていただきますが、先に質問をみなさんにお伝えします。これ以外で聞きたいこととか、志村さんのお話を聞く中で出てきました時には、気軽にQ&Aにお書きいただけると幸いです。

私からはですね、ウェルビーイングを実践する上での重要度は「睡眠・生活習慣>食習慣>運動」という理解でよいでしょうかと。あとは、午前に外出しながら1on1するのがいいと最近すごく感じているんですけど、医学的に有用なのかという質問。

続いて、仕事の合間に深呼吸することの効果ですね。私、「Apple Watch」をつけているんですけど、心拍変動を取ることができます。心拍変動のスコアが低いと過緊張していると言われたことがありまして、深呼吸って有用なのかという話です。

他には、私もいろんな会社さんの1on1をご支援していますけど、日本でリアルに増えているのが、部下の方からの経済的なことについての相談。極論を言うと、「私、このままでは生きていけないです。何とかなりませんか?」みたいな相談を受けている方がいた時に、経済的な不安が生産性にどれぐらい影響を与えるかのお話をお聞きできればと思います。

もう粒感がバラバラで恐縮なんですけども(笑)、お聞きできればなと思っております。みなさんからもぜひ、ご意見をどしどしください。

じゃあ、志村さん、今日の本題となりますスタンフォード式ワーク・ウェルビーイングについて、よろしくお願いいたします。

睡眠やメンタルヘルス、産業衛生のプロフェッショナル


志村
:志村と申します。所属が書いてありますが、ふだん日本ではこういうところにいるという感じです。今、研究者として在籍しているだけでして、直近の研究ですと、脳波の解析とかですね。もともとの専門が、先ほどご覧になったとおり、睡眠・眠りと精神・メンタルヘルスと産業衛生となっております。

厚労省から出た「睡眠ガイド(健康づくりのための睡眠ガイド2023)」の策定にも関わっています。ここで「みんなちゃんと寝よう」と言っているんですけれども、これ、出来が良くてですね。これを作った面々は全員寝不足なんですけど。

谷本:なるほど(笑)。

志村:実は、私はスタンフォードでは脳の老化や加齢、その予防法に関する研究をしています。なので今日は、残念ながらスタンフォード・ビジネス・スクール(スタンフォード大学経営大学院)とか、MBAの話は出てきません。スタンフォード大学の中にあるので自転車で通りますが、あまり接点がありません。

というわけで、経営学のトレンドの話も出てきません。どちらかと言うと、どの時代でも通用するような、たぶん1万年前も100年後もそうだろうという話が主になりますので、お気軽にご聴講いただければと思います。

かつ、タイトルは若干誇大広告で。今回、話をするのはスタンフォードじゃなくて、日本にいた時の、東京医科大学でやった研究がベースになっています。

スタンフォードには確かに籍もありますし、研究をしていますということで紹介していきます。申し訳ありませんが、よろしくお願いします(笑)。

谷本:すいません、ありがとうございます。

筋肉を鍛えるように、脳を良い状態に保つ

志村:さて、今日は何を話すのか。1つ見てほしいことがありまして、アスリートという人種がいます。オリンピック選手や野球選手じゃなくてもランナーとか、何かのスポーツにすごいコミットをしている人がいますよね。

こういう人はスポーツにエンゲージしていると、自分のパフォーマンスをいかに高めるか、管理をすると思うんです。例えば、もちろん毎日、筋トレを毎日するでしょうし、ちゃんと寝るだろうし、ご飯もタンパク質を取ってどうこうとか、すごく気を使っていると思うんです。

ただ、実際に競技をやる時に何をやっているかというと、ランナーであれば基本的に脚の大腿四頭筋だけとか、上腕だけとか、体の局所的な部分だけを使うわけですよね。でも、がんばって全身を整えてパフォーマンスを発揮している。

考えてほしいんですけれども、我々も一応、毎日真剣に生きているんですよ。かつ、多くの社会人も体の特定の部位を使って仕事や生活をしているはずなんです。その部位ってどこでしょう? たぶん脳ですよね。

そして、考えてほしいんですけれども、筋肉と一緒で、脳みそも臓器の1個なんです。ということは、どうすれば脳がパフォーマンスを発揮できるのか、健康を維持できるのか。良い状態、つまりウェルビーイングを達成できるのかについてはわかっているので、やっていきましょうというのが今日の話です。

谷本:なるほど。いや、もう最高のつかみ、ありがとうございます。

志村:1億総アスリートという感じで、明日からワーク・ウェルビーイングをやっていこうということを、まず紹介させてください。

痩せすぎ体型はボケるリスクに

志村:というわけで、まず、日頃の生活で大事なことを3つ紹介したいと思います。1つは、ご飯です。当然じゃんと思うかもしれませんけれど、どう大事かという話をしていきます。

人間は食べないといつか死にます。ただ、死ぬまでいかなくても、筋肉も臓器も萎縮するんですよ。慢性的な低栄養が続くと臓器も脳も減っていくんです。

(スライドを示して)これ、何かっていいますと、BMIと、その後ボケるかどうかですね。adolescent、思春期。adulthood(成人期)、20代とか30代でBMIがいくつだったかと、その後どれぐらいボケるかという図を表しています。まず身も蓋もないことを言いますと、ボケる一番のリスクファクターは、現在の頭がいいかどうかなんですよ。

谷本:へぇ。そうなんですね。

志村:例えば、人間は加齢によってIQが下がっていきます。ただ、IQ110の人が20下がって90になるのと、もともと80の人が60になるのとは意味が違うわけですね。

というわけで、どこのラインでボケるかが学歴で変わりますという話なんですけれども、それは置いといて、このMediumが一般的な高卒・大卒の方だとして、だいたいBMI22〜23ぐらいが一番ボケにくいんです。

谷本:へぇ。

志村:一方、太りすぎているのはちょっとボケるんですけれども、もっとまずいのはこっちのほうで、BMIが18.5以下とかの痩せている人たち、実は将来ボケます。

谷本:えぇ!?

志村:低栄養ってボケるんですよ。

谷本:そもそもBMI18.5を切ったら低栄養になるんですね。

志村:低栄養です。例えば身長が154センチの女の子で40キロ以下とかだと、とても危ないですね。日本ではダイエットが流行っています。そんなに食べないで「これだけ食べるようにしておこう」と倹約してBMI18〜19とかを保つ方、いると思うんですけれども、脳がやられますのでウェルビーイングじゃないんですよ。

谷本:なるほど。

志村:ほかにも研究はいっぱいあって、だいたいBMIが18.5を下回ると、IQが下がってくるんです。当然ですよね。脳みそってエネルギーを食う臓器なので、機能を下げてエネルギーの消費量を節約しちゃうんですよ。

というわけで、もちろん肥満はまずいんですけれども、痩せもまずいんです。今聞いている方、もしくは自分の部下に痩せている人がいる場合には、言い方は大事なんですけれども、もうちょっとだけ栄養に気を使っていただくように伝えるといいんでしょうね。

という感じで、まずご飯って食べなきゃ死にますし、死ぬまでいかなくても脳はやられます。

谷本:そうなんだ。

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