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女も男も、管理職はつらいよ 〜昭和100年を本気で終わらせたい人の会~(全5記事)

怖い先輩よりChatGPTに質問したい AIツール普及後の管理職に求められる役割とは

”無理ゲー”化する管理職の実態や、新しい時代に求められるリーダーシップのあり方について議論したイベント「女も男も、管理職はつらいよ 〜昭和100年を本気で終わらせたい人の会~」。XTalent株式会社 代表取締役の上原達也氏、株式会社マクアケ創業者の坊垣佳奈氏、エール株式会社 取締役の篠田真貴子氏が登壇。本記事では、管理職になることで起こる変化やメリット、AIツールで管理職の業務がどう変わっていくのかについて語りました。

管理職になると、会える人と情報量が増える


上原達也氏(以下、上原):
最初のテーマの「管理職のつらさを解剖する」というところは、ある程度進んだ前提で。とはいえ、男性も女性も管理職になるための背中を押すアクションも必要なんだろうと思うんです。

(出産や育児という)ライフイベントを迎えているからこそ、できることがあるという話にもつながってくると思うんですけど、ここは特にジェンダー差が表れるというか。男性と女性の振る舞いや考え方の違いには、個人差があるので、あくまで傾向だとは思うんですけど、社会学的には実証されているものとして(男女差が)あるのかなと思うので。

今のお話から、ぜひ「どうやって背中を押していけばいいのか?」「どんな課題があるのか?」という視点にも切り込んでいけたらいいかなと思いました。

坊垣佳奈氏(以下、坊垣):管理職のつらさばっかりを話してきちゃったので、私はちょっとポジティブなところもお話ししつつ、この話題に入りたいんですけど。

上原:確かに(笑)。

坊垣:私が「管理職を目指すか否かを悩んでいる」フェーズにある方によく言うのが、管理職になると、情報が変わる。会える人が変わるみたいなの(メリット)は、意外とイメージ以上なんじゃないかなと思っているんですよね。

情報量や会える人が変わる影響って、いわゆる仕事におけるディテールの質がどうという話にとどまらない話だと思っていて。会える方々が変わっていくと、自分の考え方がアップデートできたり、視野が広がっていろいろな道が開けるかなと思っています。自分の経験上、そういう可能性や良さは、確実にあるなと思っているんですよね。

篠田真貴子氏(以下、篠田):めちゃくちゃ共感しますね。今のお話に乗っからせていただくと、感覚としては、(管理職になることで)喜んでもらえる人が増える感じなんですよ。担当者だった時は、関わる方も少ないし、自分の仕事を認めてくれるのって、直のお客さんと上司だけじゃないですか。

それが、純粋に関わる人が増えると、「この人たちと一緒に仕事をやってよかった」と思える出会いも広がる。同時に自分ができることの範囲も少し大きくなっていくので、結果として喜びの総量が増える感覚があります。

坊垣:確かに。

篠田:だから、面倒なことや大変なことはいろいろあるんですけど。どうでしょう、例えば坊垣さんと上原さんも、今から「イチ担当者に戻っていいよ」と言われたら、どっちを取りますか? という話だと思うんですよ。

坊垣:そうですよね。サイバーエージェントが、年齢を問わずチャンスをくれる会社だったので、おかげさまで私は管理職が長くて。新卒入社した1年目の子会社立ち上げの時に、すでに業務委託の方やアルバイトの方が自分の部下だったんですよ。

篠田:(坊垣さん自身の)メンバー期間が3ヶ月みたいな(笑)。

上原:(笑)。

この会社なら管理職になりたいという心変わりも

坊垣:「新卒が上司で大丈夫かな?」と自分で思いながら、本当に手探りでやってきた感じです。「プレイングマネージャーが多いよね」という話があったと思うんですけど、当然プレイングもやりながらマネジメントしてきた感覚がある中で、まさにチームでやれることの大きさ。

私はチームでやってきた経験が長いからこそ「1人でできることって本当に少ない。本当に小さいな」って思うんですよね。しかも、自分が一緒に盛り上げてチームを作ってきた感覚もある中で、その成果が得られるとやりがいはすごく大きいなと思っていて。

個々人をどう活かして、どう爆発させていくかで、成果って本当に変わるじゃないですか。それをみんなでやり遂げた時の喜びは、代えがたいなと思ったりします。

上原:そうですよね。僕もいろいろな方の転職支援をしながらでもすごく感じるんですけど。仕事に対して求めるものが、ただキャリアアップする、ただ年収が上がるではなく、何のためにやっているのか、仕事の意義を追求したい方がすごく増えているなと。これは時代と年齢と、どちらもあると思うんですけど。

そこを求めれば求めるほど、自分が決められる立場になることが、すごく大事なんだと思うんですよね。どの方向に進むのか、自分がプレッシャーも背負いながらも意思決定して、多くの人を巻き込んでいく。それがより大きな仕事の意義につながってくる。そのためにも(管理職を)やってよかったなと、自分も今この立場ですごく感じることですね。

篠田:この間、上原さんから、「会社によって『管理職像』が違うから、職場を変えられた方が、『ここだったら(管理職を)やるわ』」みたいなお話を教えていただいたので、ぜひここでお願いします。

上原:これもいろいろな例があるんですけど、転職を考える時に実は「管理職はもういいかな」って思っている方もいらっしゃるんですね。

篠田:「もういい」っていうのは、やりたくないということですか?

上原:はい、やりたくないって。でも、一人の方がある大手企業にいらっしゃって、そこからスタートアップ企業に転職して、今はマネージャーをされているんです。「今までいた会社では、管理職になりたいと思ったことはなかったけど、この会社ならなっていいと思えた」というケースがあったんですよね。

だから「この場所だったらなれるかも」「なったほうがいいかも」という心境の変化って、あると思うんです。なので、「管理職はもういいです」という方にも、「とはいえ、このポジションもどうですか?」と言ってみると、意外と思いも寄らない変化があったりするのは、この仕事のおもしろさだと感じています。

女性に追い風を吹かせて、ようやくイーブンになる


篠田:
目の前の上司と折り合いが良くない状況って、いくらでもあると思うんですよね。それでふわっと「自分は(管理職になるのは)嫌だな」と考えている時と、具体的に自分に引き寄せた時とで、考えが変わる可能性があるのかなと、今聞いていて思いました。

冒頭で投げ掛けてくださった課題に戻ると、多くの職場で、管理職は男性がほとんどだとすると、(働いている人たちの)目に入ってくる景色、環境、傾向として、女性が管理職になることって、相対的に我がこととして考えにくい。

だから、なんとなくふわっと、「管理職ってイメージが湧かないから違う」って、ただ言っちゃっているだけ。男性と比べると、本当に具体的に「あなたが」という話しかけ方をして差し上げることは、すごく大事なんだなって。話をうかがっていてあらためて思いました。

これは1つの例なんですけど、管理職になった女性も含めて、傾向として「男性は仕事、女性は家庭」という役割分担のバイアスを、暗黙に持っている方の比率って、明確に3分の1ぐらいはいらっしゃる。これは別にいいとか悪いじゃなくて、人間なのでそういうのを持っている。

実は私も計測したら、役割分担意識がけっこう強いんですよ。でも、そういう人がいるということは、社内で個別の施策や声掛けを含めて、女性に何か追い風をブンブン吹かせるぐらいで、やっとイーブンになる。

これは個人に落としていくと、「そんな下駄を履かされるの、私は嫌です」とおっしゃる方もいて、個人としてのお気持ちはわかるんですけど。ただ、全体の施策としては、その構造の中なので、女性に追い風をどれだけ吹かすかが大事かなって、私は思っているんですね。

坊垣:そうですよね。いわゆるジェンダーで分けて話をするつもりはないんですけど。具体例で言うと、だいたい同じような経験をしてきた、同じぐらいのレベル感だと思う男女に、「新しいミッションをやってみない?」と言った時の反応って、経験則的には傾向がすごく分かれるなって思っていて。

男性の場合は比較的、即「やります」と言ってくれる。女性の場合は、「ちょっと考えさせてください」「それ、私にできますかね?」みたいな感じになるんですよね。即座に「やります」と言ってくれることがあんまりなくて。これは男性の管理職の方からも、「女性にやる気がない」「管理職や新しいチャレンジに意気込みを感じない」みたいなことは、よく聞いたりするんですけど。

女性特有の責任感の強さとは

坊垣:よくよく「なんでだろう」と考えた時に、男性はやりたいか・やりたくないかで答えているけど、女性はできるか・できないかで答えちゃう思考の癖があるのかなって思っていて。そこには、強い責任感ゆえみたいなところがある。

もしかしたら「自分が生んだ、まさに死ぬかもしれない生き物を生かさなきゃいけない責任感」みたいなものが、女性のほうが少し強く遺伝子に組み込まれているのかもしれないですけど。わかんないですけど、責任感の強さみたいなものを感じるシーンがけっこうあって。

その責任感ゆえに不安。「できるかしら?」みたいな話になるかなと思っていて。その不安をできるだけ排除してあげるコミュニケーションや、少し丁寧に「具体的な仕事がこう変わるんだよ」と提示してみる。上司として「自分が一緒にやるよ」と、声掛けをするとか。

あとは、「うまくいかなかったら、また別のことを考えよう」「じゃあ、1回管理職になっても、うまくいかなかったら、また戻ることはできるよ」と言ってあげて。経験上、いったんチャンスの土壌に乗ってもらうことは、かなり積極的にやっていく必要があるんだろうなと思っています。

上原:そうですね。

篠田:ちなみに、マクアケさんの中では「やってみて駄目だったら戻ったらいいよ」という仕組みはなされていたんですか? 会社によっては、昇格したのに落ちるって大ペナルティで「もう一生立ち直れません」みたいな仕組みの会社もけっこうあるなと思って。

今のアプローチはすばらしいなと思ったのと同時に、それが実現できている環境ってどうなっているんだろうって、すごく興味が出まして。

坊垣:なるほど。たぶん、多少サイバーエージェントの文化が踏襲されていて、その影響を受けているところもすごくあると思うんですけど。IT業界って、エンジニア職が本当に隣の席にいるっていう環境の中で、管理職じゃなくて、プロフェッショナル職みたいな受け止め方なんですよね。

篠田:職種の1つ。

上司が偉いわけではなく「管理職」もひとつの役割


坊垣:
管理職じゃなくても、プレイヤーの立ち位置が、みんな「平(ヒラ社員)です」というより、「プロフェッショナル職です」という捉え方をしているので。プロフェッショナルを突き詰める道を選ぶのか、管理職として経営により近づいていくビジネスキャリアを選ぶのか。こういう発想の中にいるっていうのは、多少あるかなと思います。

篠田:なるほど。それ、すごく共感しますね。これはかなり大きなコンセプトチェンジになるから、日本の多くの企業が今すぐやったらという、簡単な話ではない前提ではあるんですけど。おっしゃるようにマネジメントって、それはそれで専門の職種なんですよね。

例えば、「営業ができます」「経理ができます」という専門性と、実は並列なところがあると思っていて。「その力を使う業務をやってみますか?」というのが、業務として捉えた時の、本質だと思うんです。

だからこそ、逆にいくらイチ営業パーソンとしてすごいからって、いい営業マネージャーになれるわけじゃないことにも、つながる話だと思うんですけど。今の坊垣さんの捉え方と、それが実装できている組織はすごく合理的だし、少しずつそういう組織が増えていくほうにいったらいいなって、とても(思います)。

坊垣:そうですね、確かに。昭和的感覚でどうしても、「上司が偉い」みたいな感覚があると思うんですけど。私自身もよく「役職は役割ですよね」と言っていて。

篠田:下手をすると、「(上司は)いい人格であるはず」みたいな幻想すら(笑)。

坊垣:そうなんですよね。それは上司本人にとってもプレッシャーになったりすると思うんですけど。役割だと捉えられると、新しいミッションを付加されている感覚でやれるのかなと思っていて。

そういう(上司はいい人格であるはずという)感覚でいるからこそ、(マネジメントが)できない時の勉強の仕方も、「人格も含めてできて当然だ」みたいに捉えられちゃっているほうが、けっこう本人もつらいのかなと思ったりもするんですね。

怖い先輩よりChatGPTのほうがいい

上原:最後は「令和の管理職像は?」というテーマを用意したんですけど、まさにそこにつながる内容で。たぶん昭和からのキャリアって、一本道のレールをずっと駆け上がっていくような道だったと思うんですけど。

これからはもっと「ライフイベントがあるよね」「親の介護があるよね」「何かリスキリングして新しい道に行こう」とジグザグになっていくというか。そういうものが今まで許されてなかったと思うので。その前提が変わっていかないと、管理職は、みんなが目指していける1つの役割になっていかないのかなと確かに感じました。

篠田:本当にそうですよね。「令和の」と言ってくださったので、私は超素人ではあるんですけど、AIが入ってくると、管理職の仕事ってすごく変わる。会社によっては、まったく要らなくなるタイプの職種もあるでしょうし、逆にめちゃくちゃ重要度が上がる職種と、けっこう分かれてくる気がしています。

これは実際に聞いたお話なんですけど、ある大企業で1年以上前からChatGPTを社内用にチューニングして、わりと自由で使えるようになされていると。そうしたら、やはり若手ほど、何なら新入社員が一番使うと。

管理職の方が「あるタスクをやって」と渡すと、これまでであれば新入社員さんは、2~3年上の先輩に「これ、どうやるんですか?」と聞いていたのを、全部ChatGPTに聞くんだと。

先輩だっていいかげんだし、怖い先輩や嫌いな先輩よりは、ずっと付き合ってくれるChatGPTのほうがナチュラルにいいでしょうし。世代的にもそっちのほうが親和性があるよという話で。

その後、その会社で組織へのインパクトがどう出ているかまでは知らないんですけども。こんなエピソードをひとつ考えると、先ほど坊垣さんがおっしゃったように、管理職として、部下の業務を深く知っていなければならないとか、そういうことの、必要性はますます下がっていく。

それよりも、仕事はチームでやるものなので、そこの関係作りや役割分担を見ていきましょうねと。元気づけたり、「調子に乗るな」と言ったり(笑)。そういう話だとすると、今までの管理職像とは相当違うのは、容易に想像できるなと思いました。

坊垣:そうですよね。

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