お知らせ
お知らせ
CLOSE

女も男も、管理職はつらいよ 〜昭和100年を本気で終わらせたい人の会~(全5記事)

期待されていても“この会社では管理職になりたくない”という声が増加中 出世が豊かさの象徴だった昭和からの変化のリアル

”無理ゲー”化する管理職の実態や、新しい時代に求められるリーダーシップのあり方について議論したイベント「女も男も、管理職はつらいよ 〜昭和100年を本気で終わらせたい人の会~」。XTalent株式会社 代表取締役の上原達也氏、株式会社マクアケ創業者の坊垣佳奈氏、エール株式会社 取締役の篠田真貴子氏が登壇。本記事では、管理職になりたくない人が増えている現状とその課題について語りました。

第一線の管理職の生々しい悩み

司会者:ここから、次のアジェンダに進んでまいりたいと思います。ご登壇者をご紹介していきますので、パネラーのみなさんから、自己紹介も兼ねてお話しいただければと思います。では上原さん、よろしくお願いします。

上原達也氏(以下、上原):みなさんこんにちは。XTalent株式会社で代表取締役をしております、上原達也と申します。私は6年前にこのXTalentを創業しまして、そこから一貫して「フェアな労働市場を作る」というミッションのもとに、「withwork」(転職サービス)を運営しております。

この人材紹介というビジネスを通じて、共働き世代がいかに社会で活躍していくか。その先のジェンダーギャップ解消など、社会課題そのものへのアプローチをしていきたいと思って、このテーマに取り組んでおります。

withworkを運営しながら、共働きのあり方がすごく変わってきていると感じまして。僕らはこれを「共働き3.0」と提唱しています。今日はその話はないんですけど、またどこかでそんな話もお伝えできたらと思います。今日はよろしくお願いします。

司会者:上原さん、ありがとうございます。では、お二人目をご紹介してまいります。篠田さん、よろしくお願いします。

篠田真貴子氏(以下、篠田):よろしくお願いいたします。エールの篠田真貴子でございます。今日のテーマに関して言うと、私自身、管理職としての経験は、外資系の大企業で初めてマネージャーになり、部下を持って。その後、「ほぼ日」という会社で役員としてチームをまとめながら、上場に向かう経験がありました。

より今日的なテーマでいくと、エールは「誰にも当たり前に、聴いてもらう時間がある社会」を目指して事業をやっています。社外から1on1を企業にご提供させていただいていまして、取り組み先は大企業さんが中心なんですね。

しかも受講者は、第一線の管理職の方がとても多いので、管理職のみなさまの非常に生々しいお考え、ご状況を吐露される……。私はセッションに入っていないんですけれども、それをまとめたものや課題感は、具体的にたくさん見聞きをしています。今日はそんな観点から、お話しできればなと思っております。よろしくお願いします。

司会者:篠田さん、ありがとうございます。よろしくお願いします。

サイバーエージェントグループでマクアケを創業

司会者:では、次のご登壇者をご紹介します。坊垣さん、よろしくお願いします。

坊垣佳奈氏(以下、坊垣):よろしくお願いいたします。私は2006年にサイバーエージェントに新卒入社をしていまして。サイバーエージェントというと、本当に男女を問わず、若い方が抜擢されて子会社を立ち上げたり、新規事業を立ち上げたり、みたいな印象があると思うんですが。

その中でも、まさに(イメージ通り)のキャリアになっていて。新卒入社のタイミングから子会社の立ち上げをやったり、2013年にサイバーエージェントの中でマクアケを立ち上げています。実は(マクアケが)サイバーエージェントグループだと、あんまり知らない方もいらっしゃるかなと思うので、あえてお話ししているんですけれども。

(グループの)中で立ち上げをさせていただいて、途中で外部出資が入って、上場もさせていただき……。12年ほど共同創業者・取締役というかたちで参画をしてきたんですが。

つい最近(2024年12月)、役員の立場は退任をさせていただいて、顧問という新しい関わり方をさせていただくようになりました。事業自体は次世代に任せて、私は新しいチャレンジと社会貢献を目指して、あらためてリスタートを切っているところになります。

マクアケという会社における、いわゆるジェンダーギャップの解消、管理職の育成は当然、我がこととしてやってきたところもありつつ。さまざまな会社の社外取締役外部アドバイザーをやらせていただく中で、最近は男性も多いかなと思いますが、女性を中心に働き方やキャリア形成のご相談をいただく機会が増えています。そこで日々感じていることを自身の経験も含めて、お話しできたらと思っています。

私自身は1年半前に子どもを生みまして、絶賛子育てと両立中です。みなさんと悩みは同じというところで、お話を楽しく進めていけたらと思っています。お願いします。

性別を問わず、管理職自体が“無理ゲー化”している

司会者:ありがとうございます。では、さっそくトークセッションを始めていければなと思います。ここからはいくつかテーマ設定をさせていただいております。

お話が盛り上がって違うところにいっちゃうかもしれませんけれども、一応テーマを3つ設けております。ここから上原さんにバトンタッチして、進めていただければと思います。よろしくお願いします。

上原:ありがとうございます。今日は最初に「女も男も、管理職はつらいよ」というテーマを掲げているんですけど。「女性のリーダーを増やしていこう」という風潮はありつつも、なかなか目指せない、目指したくない人もいる。これを、解像度高く議論していきたいと思っています。

自分も、こういうテーマでよく登壇させてもらったり、いろいろな方のお話を聞いたりするんですけど。最初に補助線として「ライフイベントと管理職をどう捉えるか」の話ができたらと思っています。「ライフイベントがある女性こそ、一度管理職になったほうが、裁量を持って自由度が高く仕事ができる」。そういう話って、よくされていると思うんです。

一方で、転職支援とキャリア相談において、女性も男性もだいたい30代から40代ぐらいまでのキャリアで一定の経験を積んで、これから管理職を目指していく方々とお話をすることが多いんですけど。女性だけではなくて男性からも、「この会社の中でこれ以上、上を目指せない」「目指したくない」と聞く機会がすごく増えてきたと感じています。

1つの会社でしっかり経験を積んで、信頼も得ていて、「これから管理職に上がっていく」と期待されている方々が、今の組織の上にいる人たちを見て、「あんなふうにはなれない」「なりたくないな」と、捉えている事象が増えたように感じるんですよね。

最初に戻ると、「女性こそ管理職になったほうがいい」「なかなか女性が管理職になりたがらない」という議論も、これはこれでしっかりと深める余地があるんですけど。

一方で、「管理職自体の無理ゲー化」という事象にもしっかり向き合っていかないと、このテーマって前に進まないと思っていまして。今日はそういったかたちで、いくつか議論を分けながら進めていけるといいのかなと思っています。

管理職の話を聞いてくれる人はいない

上原:というわけで、テーマ1「管理職になると“しんどい”のはなぜ?」ですね。お二人のお話をぜひうかがっていけたらと思うんですけど。まさに管理職の方々の声を聴く事業をされている篠田さんから見て、このテーマで今どういうことが起きているのか。みなさんの理解も深められたらと思っているのですが、いかがですか?

篠田:ありがとうございます。「管理職のしんどさって、実際どうなっているんですか?」ということに関して、まずエールで関わっている範囲でお話をすると、「本当に大変だな」と率直に思います。

特に私たちは大企業のお客さまが多いこともあると思うんですが、まず1つには、ほぼみなさんが第一線のプレイングマネージャーなんですね。

最近よく聞く言葉で「ピープルマネージャー」。つまり「管理職」と言っても定義がふわっとしていた中で、ちゃんと部下を、人をマネージしてくださいねということが、明確にあらためてミッションとして位置づけられているのがひとつ。

加えて、「プレイング」なので、自分もプレイヤーとして何らか業務目標をやっていますよと。これだけでもけっこう大変だと思うんです。

ここに乗っかってくるのが、コンプライアンスのようなお話です。最後は現場の第一線でちゃんと見てくださいと、任されている。さらに、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)だ何だとあって、そこに360度評価が入ってきます。扱わなきゃいけない情報量、バランスさせなきゃいけない事柄が、本当に多岐にわたっているようにお見受けしています。

そこに、ピープルマネジメントの観点から、1on1で今まで以上に部下と時間を取ってやってくれというのが乗っかってきます。でも、この管理職の方の話を聞いてくれる人は誰もいない。非常に孤独で、「全部自分で解決しなきゃ」という心情になりやすいご状況かなと見ています。

上原:なるほど。確かにこれはめちゃくちゃ大変ですね。自分の会社を見返しても、こういう大変さは、昔に比べると変わってきていると思います。これは、坊垣さんのこれまでの企業経営の観点から見ても、同じように映りますか?

坊垣:そうですね。時代の変化もすごく大きいと思っていて。私はIT業界が長いわけですが、私が新卒だった20年近く前は、けっこうみんな深夜残業があって、ハードに仕事をして会社を支えるみたいな(雰囲気)が、はびこってはいたと思うんですよね。

それが、当然ながら(制度が)整えられてきて、時間制限ができて、すごくホワイトな働き方が増えている。ライフイベントとの両立も含めて、すばらしいことである側面が大きいとは思いつつ、それを管理する立場が、管理職にはさらに乗っかってきている。

私がお付き合いする大企業の方は金融機関の方が多いんですけど、「昔は自分たちが一番遅くまで働いて、部屋の明かりを消していた。今も管理職になって、部屋の明かりを消している」「ビルの電気を消したり、鍵を締めている」みたいな話を聞くんですね。

もしかしたらずっと同じ世代がすごく苦労しているところがあるのかもなと。今まさに篠田さんがおっしゃったような負荷が、さらに乗っかってきているのかなと、ちょっと思ったりします。

出世するのが豊かさの象徴だった昭和

上原:なるほど、確かにそうですよね。僕も社会人になったのは2010年ぐらいでしたけど、その頃はもうハードワークが当たり前。日本全体で見ても、まだまだそうだったと思うので。働き方改革が正しく進むようにはなってきたものの、それをちゃんと管理するのは管理職ですというのが、「夜、電気を消す管理職」につながっている。

坊垣:そうです(笑)。

上原:今は大企業だけじゃなくて、ベンチャーやスタートアップの働き方もだいぶ変わってきたと思うので、そこにもつながる話なのかなって感じますね。

篠田:坊垣さんが言ってくださった、金融機関の世代で思い出しまして。1つ付け加えるならば、特に大企業の場合、今の管理職の方々が入社された時って、本当に新卒一括採用で、終身雇用的な働き方が前提でした。なので(当時は)管理職から見ると、部下のみなさんも自分と同じような育ち方をしてきていて、言ってみれば共通言語があった。

これが、大企業も早いところではここ10年、少し様子を見ていた会社さんも、本当にここ3~4年ぐらいで、いわゆるキャリア採用が増えてきました。そうするとチームに、自分と同じように新卒一括採用で入ったのではない人が来るんですよね。こういう人たちとどうチームを作っていくかというのは、ご自身の経験だけではなかなかやり切れない。ここに苦労されているお話を聞きます。

坊垣:本当にそうで、事実として画一的な働き方、価値観があったと思うんですよね。

篠田:「阿吽の呼吸」ですよね。

坊垣:昭和ではみんな会社で長く勤め上げて、管理職になって、出世していくことが豊かさの象徴というか。

篠田:まさにその世代です(笑)。

坊垣:戸建てを建てて、車を買って。でも、「それが本当に、みんなにとって豊かなんだっけ?」みたいな問いが、当然なされるようになってきていて。(今は)「それぞれにおける豊かさを求めていい」という空気感があると思うんですよね。

管理職のみなさんも、キャリア相談では、それぞれの状況に合わせたアドバイスをしていかなきゃいけない。でも、まさに篠田さんがおっしゃるとおり、「自分は経験してきていない」という状況にあるんだろうなって思いますね。

篠田:本当にそうですね。

新卒採用の制度が急速に変わっている理由

篠田:初めに上原さんが投げ掛けてくださった問いの中に、若手がジェンダーを問わず、「管理職は、ちょっともういいです」ということが課題であることと、今の坊垣さんの話って、まさに直結していて。

会社の中で管理職になることを、自動的に「みんなが望むものである」という過去のモデルから、当然一人ひとりの価値観が変わってきている。一方で、「管理職ってみんなが目指すものだよね」という前提で、選抜や育成のあり方が出来上がっていて、アップデートされていない。それが構造的なギャップなんだと思います。

アップデートされていない要因はいろいろあるんですけど、私が大きいと思っているのは、経営者から今の管理職までの方々は、なりたいと思って(今の立場に)なったことです。自分の成功体験だから、そうじゃない見方があることを前提に見直すのが、めちゃくちゃ難しい。

例えば新卒採用なんかは今、スピーディーにやり方が変わっているし、キャリア採用が意外と早く広がっている。これは自分の思い入れがそこまでないから、仕組み(の変革)はできるんです。でも、こと昇格となると、意思決定者が自分ごとになりがちで、変えるのが難しいタイプの課題なのかなと。その狭間に、今日の「管理職はつらいよ」というテーマがあるのかなと思います。

上原:うーん、確かに。世代によって価値観がどんどん変わってきているのに、組織のOSが上の人たちの価値観で作られている。働く人は多様になっているのに、組織の価値観は旧世代のまま。そこには確かにすごく大きな溝がありますよね。

坊垣:
そうですよね。だから、経営層から求められていることと、本質的にやらなきゃいけないことは、けっこう違う。中間管理職のみなさんは、そこに挟まれているんじゃないかなと思うんですよね。

上原:これはなかなかつらいですね(笑)。

坊垣:(笑)。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
スピーカーフォローや記事のブックマークなど、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

すでに会員の方はこちらからログイン

または

名刺アプリ「Eightをご利用中の方は
こちらを読み込むだけで、すぐに記事が読めます!

スマホで読み込んで
ログインまたは登録作業をスキップ

名刺アプリ「Eight」をご利用中の方は

デジタル名刺で
ログインまたは会員登録

ボタンをタップするだけで

すぐに記事が読めます!

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

この記事をブックマークすると、同じログの新着記事をマイページでお知らせします

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

人気の記事

    新着イベント

      ログミーBusinessに
      記事掲載しませんか?

      イベント・インタビュー・対談 etc.

      “編集しない編集”で、
      スピーカーの「意図をそのまま」お届け!