日本最大のビジネススクール「グロービス経営大学院」が、ビジネスパーソンに向けて、予測不能な時代に活躍するチャンスを掴むヒントを配信するVoicyチャンネル『ちょっと差がつくビジネスサプリ』。今回は、管理職の「決断力」を高めるための3つのポイントについてお届けします。
スピーディに決断するための3つのポイント
加藤想氏:今日は、決断力を高めるための方法について考えていきます。以前、リスナーの方から「すぐに決断を出す必要があるので、管理職は難しい」というご相談を受けました。
私自身も、メンバーを抱えながらいろんなことを決断していく中で、うまくスピード感を持って決断する方法について、かなり向き合ってきた経験があります。
もちろん、これは簡単な営みではないと思うんですが、考え方自体はとてもシンプルかなと思います。ただ単純に、「費用対効果が高いか・低いかで判断する」という方法になります。
ここで言う「費用」というのは、投入するお金、もしくはその施策にかかる時間のことを指します。そして「効果」というところは、会社の売上アップ、もしくは費用の削減、どちらにつながるのかという観点になります。ただ、これは言ってしまえば簡単なことに聞こえますが、忘れてはいけないポイントもいくつかあります。今回は3つご紹介したいなと思います。
費用対効果がマイナス→プラスになる考え方
まず1つ目は、費用と効果のそれぞれの、見積もりする力が大事になるということです。例えばその施策を進める際に、その課題がどれくらい難しいのか。どれくらい時間がかかるのか。あとは、それを進めるメンバーの力量を正確に把握する必要があります。
また、いざ何か壁にぶち当たった時の、自分のサポートする力。そしてその余力はあるのか。これを総合的に判断した上で、その施策の費用対効果をなるべく定量的に出す力が求められます。
あとはもし、「ちょっと費用対効果がマイナスじゃないかな」と考えた場合でも、もしかすると他の施策に長期的に流用することによって、その効果を高める方法があり得るかもしれません。私はいつもこれを、「2枚抜き・3枚抜きの発想」と言っています。
例えばこのVoicyの収録自体も、ただこれをVoicyの音声メディアで配信するよりかは、Podcastなどの別の音声メディアで配信できる可能性がありますし、この音声で配信しているものを文字起こしして他のテキストコンテンツで使えば、さらにコンテンツを流用できる。
このような発想をすることによって、最初の1つの施策であれば費用対効果はマイナスであったとしても、もっと発想を広げればプラスに転じることも起こり得ます。
これらの力は、やはり現場でプレイヤーとして苦労した経験があればあるほど精度は高くなりますし、2枚抜き・3枚抜きの発想も生まれやすくなるかなと思います。「若い時の苦労は買ってでもしろ」というのは、こういうことでも表れるんじゃないかなと思います。
判断に迷った時に使える「育成」の観点
次に2つ目のポイントとしては、「長期視点」が大事になります。短期の「この施策をやれば、これぐらい効果があるんじゃないか」という発想を、1年後、2年後まで、もうちょっと広げてみるイメージです。
例えば、ある新入社員の方が、「新入社員向けのシステム操作のマニュアル」というアイデアを出したとします。この施策の費用対効果が高いか、低いのかを見てみます。
仮にその施策では、10時間かけてマニュアルを作ったとします。この10時間のコストに見合うためには、新入社員がこのマニュアルを活用したことによって、10時間以上、時間の短縮をできたか。これによって、プラスかマイナスかが決まります。
そもそもこのマニュアルを作った時に、何人の方が使ってくれるのか。あとは、それによって何時間分の削減効果があるのか。そして、そもそもちゃんと使ってもらうためには、どういうことをしないといけないのか。
1年以上回収に時間がかかるなら、その間にシステムにも変更がある可能性があるので、長期視点で見た時に、本当にその施策はプラスなのか、マイナスなのか、考える必要があります。
この時に、1つの観点として加えてほしいのは、育成に関してどれぐらいプラスになるのかというところです。育成という営みは、重要度・緊急度の枠組みで考えた時に、めちゃくちゃ重要なんだけれども、緊急性は低いと言えます。
その施策に対しては、「プラスかマイナスか怪しい」という時でも、ぜひ育成の観点を加えることによって、プラスになるのかを考えてみてもらってもいいかなと思います。
施策の効果が大きくても評価されないパターン
最後の3つ目は、「戦略に合っているか?」という観点です。例えば営業チームに属していて、そのチームの方針が「新規開拓による売上拡大」だった時に、「効率化のためのシステム導入」は、やはり施策としては通りにくかったりします。
私も過去に、ある品物のリサイクルの基準を決めたことによって、かなり大きな費用削減効果を上げることができたんですが、その年の方針としては、売上拡大に寄与できる施策が、やはり評価されやすい。
そんな背景があったりして、自分の施策はとても効果が大きかったにもかかわらず、額は小さかったため、売上拡大に寄与した施策のほうが評価をされていたりしました。
というわけで、今日はすぐに決断をする際のポイントについて、3つお話をしました。費用と効果の見積もり力。そして、長期視点を持つこと。そして、最後の3つ目は、戦略に合っているかを考えることです。
これら3つは、どれが1つ飛び抜けていて良いかというわけではなくて、バランス感も大事になります。すべてをミックスした上で、そして目の前の施策だけじゃなくて、長期の視点も考えながら、良い判断につながれば良いなと考えております。何か判断の良いきっかけになればうれしいです。