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個人と組織とブランドを調和させる、オルビス社の組織開発を完全解説(全3記事)

効率化が“前例主義”を生み出す誤算 組織開発で社員エンゲージメントをV字回復させたオルビスのノウハウ

組織開発をテーマにしたオンラインイベント「組織開発×スキル成長 DO-OD -OD(組織開発)をDOせよ-」より、オルビス株式会社HR本部 本部長の岡田悠希氏によるセッションをお届けします。当時のオルビスが組織開発を決断した背景や、未来志向の組織文化を作るために行った施策とその効果について語っていただきました。

リブランディングが求められた背景

岡田悠希氏(以下、岡田):(前の記事で触れた、組織のカルチャーを作るためには社員の行動をマネジメントするという説明を踏まえて)「で、オルビスは?」というところの紹介になるんですけど。弊社が2018年から大きくリブランディングをする必要があった背景には、シンプルにブランドのプレゼンス、魅力が落ちていって、新しいお客さまから選ばれる機会が少なくなってきた厳しい実情があったんですね。

競合の大手化粧品はしっかり確立したポジションを持っているし、社名は出せないんですけれども、ルミネの一番いいところに入っているような素敵なブランドが台頭して私たちの居場所がどんどんなくなってしまった。新しいお客さまからも選ばれないし、売上・利益はなかなかしんどいなみたいな。

私たちは、もともと大手に対してチャレンジしていくポジションでこの業界に入っているので、STP(Segmentation=属性、Targeting=ターゲット選定、Positioning = ポジショニング)的には大手に寄らずに、ナチュラルとかオーガニック系のブランドを凌駕していくようなマーケティングのチャレンジをしていきました。

左側がリブランディング前で、右側が後なんですけど、プロダクトも大手っぽい感じじゃなくて、その時の潮流に合ったブランディングをしっかりして、新しいお客さまからも選ばれるブランドになっていこうとしました。実際に、1987年に創業して、2000年代前半までで一気に500億円ぐらいのブランドに成長しているんですね。

成長できた要因はいくつかあるんですけれども、1つの大きな要因としては、ほかのメーカーはどちらかというと卸でどんどん商品を配荷して売上を上げていくビジネスモデルだったんですが、私たちはECや直営店のダイレクトマーケティングが中心でした。

なのでデータドリブンな経営ができていたんです。お客さんの購買履歴を全部持っていたので、どのお客さんにどのタイミングでどういうキャンペーンを張れば、どれぐらいの売上・利益が出てくるか、いわゆるデジマ(デジタルマーケティング)の力があって、こうすれば勝てるというのがだいたいわかっていたんですね。

当時、この業界の他社はまだデータマーケティングをできていなかったので、その優位性でけっこう伸ばせたのは1つの大きなポイントです。

強みが生んだ思わぬ罠

岡田:ある程度の正解パターンを持っていたので、仕事の仕方としては、最適化とか大量のPDCAをいかにミスなく高速に回すというのがとても求められたんですね。他社にできないことをちゃんとするのが鉄則なので。

それをがんばれたから成長できた過去があるんですけど、代償としては、新しいチャレンジが要らない、「決まったことをちゃんとやる」が必勝パターンになりました。組織の雰囲気的にもみんな効率化・最適化が得意なので、求められるマネジメントも挑戦じゃなくて管理なんですよね。

そういうワークスタイルが積層されていくと、部門ごとにシナジーを起こす必要がないので、セクショナリズムとか部分最適が生まれますし、過去にやってきたことに対してどうなのかみたいな過去慣性な風土が生まれていました。

ですが、リブランディングという大きな挑戦はマーケティングのほうにとっても新しいチャレンジでした。同時に事業構造自体も変えにかかって新規事業もスタートさせ、ワークスタイルにもこれまでどおりじゃない仕事の進め方、進化とか新しい価値の創出をすごく求められました。

だけど、実際の風土はセクショナリズムでシニシズムだし、みたいな。だから風土をオープンマインドな未来志向に変えていく必要があったんです。

なので、これをさっきのワークフローで当てはめていくと、私たちの場合はリブランディングが必要だったし、商品もCRMもマーケティングも大きく刷新していく必要があったし、チャネル別の事業部制の組織は廃止にして、全部を横ぐしに挿す、機能別組織に変えていった。

このようなチャレンジをしていきつつ、従業員一人ひとりには、効率化・最適化じゃなくて、とにかく失敗してもいいから挑戦してほしいというワークスタイルに変えていかなきゃいけなかった。

そのワークスタイルを生み出すためには、オープンマインド、未来志向、役割とか立場、年齢も関係なくみんなで議論して、新しい意見をしっかり出せるような雰囲気が必要だった。

「昔、これをやって失敗したから意味ないです」みたいな話じゃなくて、「私たちが挑戦していく目標に対して逆算したらどういう行動が必要なんだろうね?」という未来志向の文化が必要でしたし、作っていく必要がありました。

組織改革の重要成功要因を管理職に設定

岡田:どういう行動を積層させていけばそれが作れるのかをまず定義してスタートしたのが、リブランディング初期の組織変革の1つ目でした。

そこで定義した行動指針がこれで、一つひとつは紹介しないんですけど、7つあります。すべて未来志向とオープンマインドにつながるように設計しています。

もちろんセクショナリズムとかシニシズムは終わりにして、新しく作り替えていきたいフェーズだったので、0→1で文化を作るというより、作ってしまった文化を塗り替えていくことが必要でした。そのため、「してほしい行動」と「してほしくない行動」をそれぞれ定義しました。

赤色の「してほしくない行動」はセクショナリズムになっちゃうような行動で、青色はオープンマインドだよみたいに、わかりやすく提示してスタートしています。

でも結局、行動指針って定義はするけれども、実践されないで形骸化していくパターンが多い印象がありました。今回は絶対にそうしてはいけないし、とにかく実践し積層させていくことが超大事なポイントで、当時はそこに最大注力しました。

職務権限規程上の権限をしっかり持っている管理職が、「この行動指針なんてやっても意味ないぜ」というような言動、振る舞いが多いと、そりゃ浸透しないです。でも、パワーを持っている管理職が「この行動指針が死ぬほど大事で、俺も自らやってみる」みたいな振る舞いが多いと浸透していく。

なので、KSF(重要成功要因)は管理職だと。もっと言うと社長です。社長自らがやってもらうぐらいの勢いですけど、やはり権限とか影響力の大きい人が良くも悪くも組織の雰囲気を決めるので、私たちのスタートはとにかく管理職の実践を意識していました。

上司のマネジメントに対し、部下がフィードバック

岡田:なので、3ヶ月に1回、メンバーに対して、上司が7つの行動を発揮できているのかをフィードバックしてもらう「STYLE QUEST」という名前の仕組みを作ったんですね。

私が当時の部下から実際にもらったコメントを紹介します。1つ目の質問は「7つあるうちの、特に強みとなったスタイルはどれですか? 1個答えてください。その理由は?」と。

2つ目は、「『発揮できていなさそうで開発課題なスタイルはどれですか? その理由は?』というのを、1個挙げてください」。私には当時5人の部下がいたので、5人から(コメントを)もらっているんですね。

自分で言うのもあれですけど(笑)、「強み」のほうは、「端的に結論から話をしている」とか「状況変化に対して迅速で的確な意思決定をしてくれている」と。最高の上司じゃないですか。

谷本潤哉氏(以下、谷本):確かに、すごいじゃないですか(笑)。

岡田:すごいですよね。これ、言ってもらえると自信になるんですよね。

谷本:確かに。

効果的なマネジメントの再現性が向上

岡田:「これからも的確に迅速に意思決定しよう」みたいに再現性が高まるので、リーダーシップが強まっていく。一方で「課題」のほうは、「これが嫌です」って言われているので、受け止めるしかないですよね。

例えば「岡田さんとしては狙いがあってのことだと思いますが」、枕詞をちゃんとつけてくれていて、優しいですよね。「してほしいことよりしてほしくないメッセージが多くて、部下が萎縮するからやめてくれ」って言っているんですよね。

私は気づいていないんですよ。「そんなことしていたっけな? そんなつもりはまったくないけど」みたいな。でも「じゃあ、やめとこう。してほしいメッセージを多めにして、トライしてみようかな」という行動変容につながるし。

四半期に1回、今もやり続けていて、そうすると組織の雰囲気も変わっていく。

谷本:たぶんポイントは、コメントの順番が最初にポジティブな内容で、次がネガティブなフィードバック、という流れだったんじゃないですか。そこは大事だったりしませんか?

岡田:そうだと思います。やはり最初にいいことを言われたほうが受け止めやすいというか。

谷本:そうですよね。「Good Bad」の順ですよね。いや、「Good Motto 」か。横から失礼しました。

岡田:いやいや、ありがとうございます。

谷本:ありがとうございます。

岡田:組織変革時に一番初めにやったのはこれで、このサイクルを回し続けて文化形成を進めて、私たちの考える、従業員一人ひとりが挑戦し活躍できるような文化をグレー(の部分)にインパクトさせていくことをやり続けています。

採用基準にも目指す組織文化を反映


岡田
:ただ、もちろんHRの仕事ってそれだけじゃないので、採用して教育して、エンゲージメントを高めてリテンションして評価する、というサイクルを回していかないといけません。

範囲が広いし至るところに課題があるので、全部に課題設定したくなるんですけど、そうすると進んでいかないので、やはりフォーカスポイントをどこに定めるかが大事かなと思っています。

2018年当時は、とにかくリブランディングという新しいチャレンジを創出し、実際に成果を出していくフェーズでした。そういった文化は作りつつ、HRの仕事においても、挑戦がどんどん加速される組織を作っていかないといけないので、中途採用もいっぱい入れるし、採れないところは業務委託のスペシャリストにどんどんジョインしてもらいました。

「挑戦していくとはこういうことなんだ」みたいな風土も作らないといけないので、先ほどの行動指針を実践している、あるいは持っている人を採用し、最終面接でもそこを確認するぐらいの勢いでした。

人事制度も年功序列制をやめて、チャレンジした人をちゃんと評価する制度に切り替えていかないといけないという。

もちろん、人材開発もチャレンジできる人をがんばって教育したかったんですけど、リソースを分散させるとそれだけ進んでいかないので、当時は、一番「面」を取れそうな採用と制度に着手していました。

評価制度で社員の行動を促す


岡田
:私たちの人事制度ってこの3つがポイントなんですけど、これを使ってカルチャーを作っていくと。人事制度を使って成果に対してダイナミックに報酬を設定して、経営と個人の目標をMBOで結びつけ、動いていく方向性をそろえているかたちです。

なので、私たちの場合は賞与と基本給が3対7の割合なんですけど、基本給は「OS評価」で決まるんですね。これ、「ORBIS STYLE評価」なんですけど、行動指針を評価軸にしていて。

極端に言うと、成果を出せなくても、さっきお伝えしたORBIS STYLEを毎日意識して実践して、一生懸命に働いてくれたら月給はちゃんと出る仕組みになっていて。

逆に残り3割の賞与は幅を持たせて、成果をダイナミックに評価して「最高で3倍まで出すよ」みたいな。基本給はやはり生活給なのであんまり変動させずに、ちょっとずつ昇給していく仕組みです。このように制度も使って文化形成していくことを大事にしています。

谷本:個人間の賞与の変動幅がすごいですね。オルビスさんほどの規模の会社では、おもしろいというか珍しいというか。

岡田:これはメッセージですよね。実際に200〜300パーセントはほんまに出しますけど、下限が25〜30パーセントになることはほとんどないに等しいですね。

谷本:なるほど、なるほど。

岡田:もちろんその時の業績にもよるんですけど、運用ベースではそのような考えですね。25パーセントとかにするとね、「もう辞めようか」って思われてしまう。

谷本:そういうメッセージになりますよね。なるほど。でも、すごいですね。

社員のエンゲージメントが劇的に回復


岡田
:ありがとうございます。さっきのフィードバックの仕組みも、ずっとやり続けているので、定点観測しているスコアも徐々に伸びてきていて。エンゲージメントも、リブランディングし始めたときはけっこう混乱したのでだいぶ下がったんですけど、回復してきました。

谷本:(笑)。すごいですね、本当に絵に描いたようなV字回復ですね。

岡田:いや、本当、当時はちょっとしんどかったですね。

谷本:すごいですね。

岡田:年齢がすべてじゃないんですけど、やはり20代後半から30代前半の、チャレンジして成果を出した人がちゃんとマネジメント層にアサインされるようになって、いろんな年代のダイバーシティが作れてきてよかったな、みたいな。

今はこういう事業戦略、組織戦略でフレームを作っているんですけれども、文化をどうアップデートしていくか、作っていくかということを中心に、1回決めたことは半年、1年でやめずに、強く意思決定してひたすらやり続けるのが大事だなと思います。

私からのお話は以上にさせていただいて、谷本さんにお渡しします。ありがとうございました。

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