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個人と組織とブランドを調和させる、オルビス社の組織開発を完全解説(全3記事)

働く環境や文化でパフォーマンスに3割もの影響が 社員の力を引き出す組織開発のステップ

組織開発をテーマにしたオンラインイベント「組織開発×スキル成長 DO-OD -OD(組織開発)をDOせよ-」より、オルビス株式会社HR本部 本部長の岡田悠希氏によるセッションをお届けします。目指すべき組織文化を設計するための考え方など、組織づくりに役立つトピックを紹介していただきました。

HR未経験から入社し、組織開発を担当へ

谷本潤哉氏(以下、谷本):オルビスの岡田さんに「個人と組織とブランドを調和させる、オルビス社の組織開発を完全解説」ということでお話しいただきます。個人的にはめちゃめちゃ興味深いテーマなんですけども、こちら、スタートさせていただきます。

岡田悠希氏(以下、岡田):よろしくお願いします。

谷本潤哉氏(以下、谷本):最初に自己紹介をよろしいでしょうか?

岡田:はい、オルビスの岡田と申します。HR本部を担当していて、採用から組織開発・労務まで、全部を担当している状況です。

もともとは営業の仕事をしていて、そこからリーダーシップとかマネジメントの領域に興味・関心が高まって、ジョブチェンジを考え始めました。

そんな時にオルビスが「HRが未経験であっても、勢いがありそうなやつがいたら来てほしい」みたいな、事業と組織の両方を大きく変革していくタイミングと重なってジョインさせてもらって。そこから組織改革・変革をずっと担当してきたという感じです。

谷本:ありがとうございます。今日、私が司会進行ということで、岡田さんがお話しされているところで合いの手を入れさせていただく担当になります。

私、株式会社O:(オー)という会社を経営しておりまして、人事(向け)の人材育成Webサービス、「Co:TEAM(コチーム)」を展開しております。

オルビスさんは化粧品メーカーで、ブランドがすごく大事、もう死活問題かと思います。これを実際に体現され、かつ社内のみなさんと一人ひとりの自覚を意図的につなげていくことは、化粧品メーカーじゃない一般企業にとってもすごく学びになるんじゃないかなというところが、今回のテーマになっております。

私が最後に岡田さんにお聞きしようと思っている質問を最初に開示いたします。社員として化粧品が好きな方がオルビスさんにジョインされると思いますが、そこから、どうやってオルビスさんのブランド意識を醸成し、体現につなげたのか。どういったことをされたのかをお聞きできればと考えております。

2つ目に、2018年からかなりドラスティックにリブランディングされた中で、急激な変化に対応できなかった方がいらっしゃったのではないかと思います。もしいらっしゃった場合、どういうアプローチをされたのかというのがお聞きしたいことです。

最後、2018年からのリブランディングにおけるすごいところが、スピードです。普通に考えたらあり得ないぐらいのスピードでブランドが変わっていきました。岡田さんが携わられたところで、何かスピード感醸成の観点で組織開発に関連する内容があればお聞きできればなと思います。

岡田さん、謎にハードルを上げてしまってすいません(笑)。みなさんからもお聞きしたいことがございましたら、どしどしQ&Aをいただけますと幸いです。じゃあ、岡田さん、すいません、ここからお話しいただいてもよろしいでしょうか?

HRの本質的な役割とは

岡田:はい、承知しました。では、あらためましてよろしくお願いいたします。みなさんもいろんな課題感や悩みごとがあってこのカンファレンスにご参加されているのかなと思います。1つでもお役立ちできるように一生懸命お話ししたいなと思っていますので、どうぞ最後までよろしくお願いいたします。

一応、簡単に会社の紹介をすると、化粧品メーカーです。もともとはカタログ通販からスタートして、今はアプリのほうが大きくなっているんですけど、事業全体で500億円弱規模ぐらいのブランドになっています。リアル店舗でもチャネルを持っていて、メインはBtoCのビジネスモデルですので、直営でがんばっています。

ただ「Amazon」とか「ZOZOTOWN」といったプラットフォーマーも出てきていることと、やはりこの業界、ドラッグストアといった量販店でも購入される方がたくさんいらっしゃるので、2024年からはBtoBのチャネルも拡大している状況です。

従業員は1,000人ぐらいの組織規模です。今日いただいたテーマが、この、投映させてもらっているテーマになっていますので、「個人と組織とブランドを調和させる」というところまでお話しできるかがわからないんですけれども、2018年からリブランディングしていった取り組みについてご紹介させていただければなと思っています。

このプレゼンはどっちかというと、できたことの話が多く入っているので、「いやいや、実際はどうなの?」みたいなところは後半の質問でビシバシもらえるとありがたいです。

じゃあ、さっそく自明の話からしちゃうんですけど、HRの本質的な役割は、「いい人」を入れて、辞めてもらっちゃ困る人をリテンションすることかなと思っています。

国内においては人口がどんどん少なくなっていくので、採用はすごくしんどいし、転職も当たり前にしていける世の中で人材の流動性は高まる一方です。この流れは不可逆的なので、リテンションも難しいし、HRの本質的な役割を果たす難易度が年々上がっている状況かなと思います。

組織文化でエンゲージメントを強化する

岡田:この上で1つ重要なポイントになるのが、従業員と社員のエンゲージメント、深いつながりとか強い絆です。

やりたいこと、課題もたくさんあると思うんですけれども、HR投資を無限にできるわけじゃないので、何でエンゲージメントを取るのかのフォーカスポイントをしっかりと定めていくことが大事です。

「どこにフォーカスする?」って考えた時に、私はやはり、組織文化かなと思うんですね。報酬とか働き方とか、成長できる環境とかに関しては、いい条件が出てくるとそっちに流れていっちゃうので。

でも組織文化は今日、明日で作れるものじゃないので他社優位性もありますし、ここでつながることができるとリテンションの確度も高まっていきます。この組織文化にアプローチしていくというのがやはりすごく大事なことだと思っています。

なので、「いい人を入れて、辞めてもらっちゃ困る人をちゃんとリテンションする」ことのベースはカルチャーマッチだし、どういうカルチャーを作っていくかがすごく大事だなと。なので私たちもリブランディングしていく際には、カルチャーを一丁目一番地に置きながら改革をしていきました。

事業戦略によって必要な組織文化は異なる

岡田:じゃあ、「どんな組織文化がいいのか?」なんですけど、その組織に必要な文化があると思うので、やはり最適解はないかなと思っています。だからもう、各社各様の文化が作られていて。

例えばR社だとチャレンジングで若手の裁量も多く、思いやりのある開放的な文化が育まれているし、従業員としゃべると活き活きして目を輝かせている。K社はどっちかというと軍隊みたいな組織で、その代わり、みんな成果にコミットしているみたいな。T社はその真逆みたいな。

でもこれって結局、R社は新規事業を出し続けることがビジネスモデルなのでこういう文化が必要だし、K社の場合は、「とにかくこの方法で仕事をすれば絶対に成果が出る」という営業の仕組みが成り立っているので、いい意味で内向きな組織文化を作っておくのが勝ち筋になってくる。

T社は保険系の会社なんですけど、変化はあまりせず、トラブルなくしっかりやっていく事業がすごく大事。転勤もある大きい組織なので、「会社が好き」みたいな文化のほうが事業を進めていきやすいだろう、みたいな。

つまり、事業戦略とか事業計画に基づいてゴールを決めて組織文化を育んでいくことが大事かなと。なので、最適解はなくて。以前、ティール組織が流行りましたけど、「ほんまにそれだけが正解か?」と思っています。

その組織のビジネスモデルや事業計画、社長の意志に基づいた組織文化のあるべきかたちがあると思うので、そこをしっかり探して作っていくのが大事なのではないでしょうか。

文化だけではなく事業にフォーカスする

岡田:じゃあ組織文化をどうやって作っていくか、オルビスの事例も踏まえて、ちょっと大きいところから話をします。

経営の営みって「成り行きでいくとこれぐらいの売上やけど、いろんなステークホルダーに約束するので、目標はここに置きます」みたいな感じじゃないですか。「差分あります」みたいなことを、がんばって中期経営計画や全体戦略を作って埋めていく。

全体戦略を作った時に、基本的には財務と事業と人・組織の戦略に落とし込まれていきます。なので、人・組織の観点だけで戦略と戦術を作ることは不可能で、ヒト・モノ・カネのリソースそれぞれの戦略が密接不可分につながりあって、全体戦略を実行していく。

だから組織文化も、文化だけではなく事業にフォーカスする観点がすごく大事かなと思っています。

もうちょっとこの経営のワークフローをわかりやすくしたら、こんな感じかなと思います。戦略があって戦術があって、それを投資配分したり役割分担したりして、最終的にお客さまに価値を提供していくという一連のフローがあると思います。

この、作った戦術とか役割分担した施策を実行していくところは、一人ひとりの従業員の行動が掛け合わさっていくので、真ん中に行動の発揮が入ってくるかなと。

ヒト・モノ・カネのリソースを当てはめていくとこんな感じになります。なので、モノの戦略とカネの戦略にちゃんとインパクトをヒットさせられるようなヒトの戦略を作っていくのが当たり前なのですが、ヒトとモノとカネって責任者も部署も異なるので、連動が図りづらいです。けれども、密接不可分にやっていく必要があると思っています。

「ヒト」は変数の大きいリソース

岡田:私たちHRはヒトのところのマネジメントを担当します。モノとカネは配分したらそれで終わりだし、定数的な感じだと思うんですけど、ヒトって意志とか感情を持っているので、すごく変数が多いと思うんですよね。

めっちゃやる気やったら持っている以上の力を出せるし、やる気がなかったら、ほんまは100持っているのに80ぐらいしか出されへんし、みたいな、変数の多いリソースだなと。なので、ヒトのリソースを最大化させていくのがHRのミッションであり腕の見せどころかなと思うので、ここをがんばらないといけないよねと。

そう考えた時に、事業上、どういう行動発揮をしてもらう必要があるのかと、発揮しやすい組織ってどういう文化があるのかを結びつけて考えていかないといけないなと思っています。

実際に働く環境とか文化次第で、パフォーマンスに3割ぐらいの影響を与えるという論文でも出ているので、文化にアプローチしていくのはフォーカスポイントとしてありだし。

最初の話に戻ると、今後の国内の労働の市況感、トレンドを考えても、ここにアプローチしていくことが重要だと思います。

「どうやってカルチャーを作るの?」という本題に入っていきます。これは元LINEの青田努さんから勉強させてもらったんですけど、カルチャーはにじみ出てくるアウトプットなので、それ自体をマネジメントすることはできません。

一人ひとりが所属している組織での振る舞いや言動の積層で作られていくから、最終的な超遅行指標をマネジメントするのはナンセンスであると。なので、その手前の先行指標である一人ひとりの振る舞いとか言動がマネジメントポイントです。

ということは、組織文化を作ろうとした時には、作りたい文化につながるような行動を定義して、それをひたすら積層させていくアプローチになります。

そう考えていくと、HRのワークフロー的にはピンク色のところをグルグル回していく、そしてグレーのところにインパクトを与えていくことがやはり大事。なので、組織文化は単独で考えずに、事業などと紐づけることが大事かなと思っています。

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