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新春イベント : 赤羽雄二の提言 ~2025年はどういう年になるか、何に取り組んでおくべきか(全6記事)

元マッキンゼー・赤羽雄二氏が説く、日本企業の収益力が決定的に弱い3つの理由 米国トップ企業との時価総額の格差を埋める「経営改革」の鍵

日本を元気にするイノベーションの創出を目的としたプロジェクト型コミュニティ「MBAオンラインキャンパス」。同コミュニティが開催した今年の新春イベントに、『ゼロ秒思考』の著者・赤羽雄二氏が登壇。日本を代表するコンサルタントの赤羽氏が、日本企業が経営改革を成功させるための「7つの鍵」を語りました。

米国の上位2社の時価総額が、日本の上場企業全体を超える現実

司会者:コメントが来ています。「日本はAIの仕組みそのものを理解している人が少ない」というご意見ですね。

赤羽雄二氏(以下、赤羽):そうかもしれませんが、その中でもできることはたくさんあります。次々に登場するOpenAIやxAIの技術、MicrosoftのAI製品などは、世界中の国と同じように日本でも使えます。大事なのは、それらをどう活用して生産性を向上させるかという点です。足りないものを嘆いても仕方がないですが、今できることは山ほどあると思います。

世界の時価総額ランキングの上位20社を見ると、その状況がよくわかります。

今日時点の為替レートを1ドル156円とすると、1位はAppleで時価総額558兆円。1年前は300兆円ほどだったのに、急激に伸びています。次にNVIDIA。AI向けのGPUを開発している企業ですが、時価総額は520兆円。この1位と2位は、頻繁に入れ替わっています。

Microsoftも、一時期は苦戦していましたが、現在は495兆円まで回復。Googleの親会社Alphabet、Amazon、Metaも続きます。Metaは一度大きく下落しましたが、ここにきて大幅に回復しました。テスラも半年間で劇的に持ち直してきています。TSMC(台湾セミコンダクター)も時価総額の上位に入っています。

一方で、日本企業はどうかというと、35位にトヨタ自動車がようやく登場し、時価総額はわずか38兆円という状況です。

仮にGoogleがトヨタを買収しようとすれば、ソフトウェアやインターネット関連の企業が、自動車というハードウェアを手に入れ、利益率の低い部分を整理しながら運営するということも十分に考えられます。もちろん、実際に買収するとなると、さまざまな規制があるとはいえ、そうしたシナリオが現実味を帯びるほどの規模感の違いが生まれています。

さらに、テスラの時価総額はトヨタの7倍にも達しています。これは明らかに異常な状況で、一度大きく調整が入る可能性が高いとは思います。ただし、テスラが下落したとしても、トヨタもまた下落するかもしれません。それだけ市場全体の流れが急速に変化しているということです。

なお、トヨタの時価総額については、日本の「Yahoo!ファイナンス」などで表示されている数値と若干の誤差があるかもしれませんが、今回参照しているリストではこのような数字になっています。

日本企業の経営改革を成功させる7つの鍵

司会者:コメントでも、「米国の上位2社の時価総額を合計すると、日本の上場企業全体の時価総額を上回るというのは、桁が違いすぎてびっくりです」といった意見をいただいています。

赤羽:そうですね。日本企業の競争力は、この35年間、右肩下がりだと考えています。収益力が決定的に低い理由は、大きく3つあります。

1つ目は、事業構造改革の遅れ。これは経営者の問題です。2つ目は、IT化の遅れ。これも経営者の責任です。3つ目は、英語力の弱さ、グローバル化の遅れ。日本の強みの裏返しではありますが、結局のところ、これも経営者の責任です。つまり、すべては経営者のリーダーシップ不足に行き着きます。

では、どうすればいいのか。(スライドにある)「経営改革を進める7つの鍵」が、その答えになります。

これは何度もいろいろな場所でお話ししてきましたが、ビジョンの確立、既存事業の見直し、新規事業の創出、経営支援能力の強化、幹部人材の育成、部下の成長支援、社内外のコミュニケーション強化と、これらすべてをやらなければなりません。

大事なのは、右側にある「7つの鍵を同時に開ける」という考え方です。ドアに7つの鍵がかかっている状況を想像してください。1つの鍵を開けただけでは、ドアは開きません。苦労して3つ開けても、残り4つが閉まっていれば、やはり開きません。

つまり、どれか1つの施策だけを頑張っても、経営改革は進まないのです。すべての鍵を同時に開けて、はじめてドアが開く。

だからこそ、事業構造改革やDXの推進、AIの導入を成功させるには、本気で経営改革に取り組まなければなりません。掛け声だけではなく、すべての要素を動かしていくことが不可欠です。本気でやりましょう、ということです。

時代の変化に対応し、組織やキャリアを守るための行動指針

赤羽:続いて、(スライドの)「一人ひとりが何を目指し、何に取り組み、どうリーダーシップを発揮し、将来に向けて何をどう準備しておくべきか」についてお話しします。

何に関心を持つべきかという点ですが、繰り返しになりますが、まず「ウクライナ紛争やイスラエル・ハマス戦争とは何だったのか?」ということです。厳密には「何だったのか?」ではなく、「今も何が起きているのか?」ということですね。「本当は何が起きているのか?」「欧米諸国は過去、アジア・アフリカに対して何をしてきたのか?」。帝国主義や植民地支配、富の収奪があり、今も続いています。

「世界から戦争がなくならないのはなぜなのか?」。これについても、戦争を利用して金儲けをしている人たちがいるからです。兵器産業を中心に、利益を得ている層が確実に存在します。

「SDGsや環境問題は本当に正しいのか?」という点も、あらためて考える必要があります。人口問題は確かにありますが、「人口が多すぎるから減らそう」という目的でコロナが流行させられたという説もあり、これについても深く考える必要があります。「では、本当は何なのか?」と。

一方、右側にはAIやロボットといった技術の進化があります。「これらがもたらすリスクとチャンスは何なのか?」「DX化が進まない日本企業や日本社会はどうなるのか?」「この状況でどう生き延びるのか?」といった問題にも向き合う必要があります。

また、健康寿命100年時代についても考えるべきです。「健康寿命」というのは、寝たきりではなく、胃ろうやチューブを使わずに生きられる期間のことですが、これが95歳から100歳まで伸びる時代がやってきます。

現在50歳くらいの人は、まさにその時代を迎えることになります。70歳くらいの人でも、95歳くらいまで健康寿命がある人が増えていくでしょう。この変化の中で、「何をどう変えて準備するべきなのか?」というのは非常に重要なテーマです。

結局、「自分と家族、そして会社を守るために、今、何をすべきなのか?」ということが問われています。リーダーシップが本当に重要になってきます。

主催:MBAオンラインキャンパス

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