日本を元気にするイノベーションの創出を目的としたプロジェクト型コミュニティ「MBAオンラインキャンパス」。同コミュニティが開催した今年の新春イベントに、『ゼロ秒思考』の著者・赤羽雄二氏が登壇。日本を代表するコンサルタントの赤羽氏が日本企業の発展と5つの生き残り策を語りました。
不法移民問題は本当に各国の経済に影響するのか?
司会者:ここでコメントをご紹介します。トランプ大統領は不法移民の問題についてさまざまな方針を示していますが、「この問題が各国の政治や経済にどのような影響を与えるとお考えでしょうか?」というご質問です。
赤羽雄二氏(以下、赤羽):不法移民に関しては、各国の経済や政治に大きな影響を与えることはないでしょう。現在の状況では、国境を勝手に開放し、メキシコ経由の不法入国者をいったん捕まえても、「2年後に出頭しなさい」と言って国内に放してしまっているのが実態です。その結果、世界中からメキシコやカナダ経由でアメリカに人が流入していますが、これが各国の経済に直接的な影響を与えるとは考えにくい。
ただ、ベネズエラなどの刑務所から釈放された受刑者が大量に送り込まれているという話があります。私はこれは事実に近いと見ています。刑務所が定員オーバーで困っていたところ、不法移民として国外に送り出せたのなら、彼らの立場からすれば「人が減ってよかった」ということかもしれません。しかし、それは「ちゃんと刑務所を作れよ」という話にすぎず、不法移民を追い返すことで各国の経済に影響が出るとは思いません。
また、すでに国内に入ってしまった人々を強制送還するには膨大なコストがかかります。家族が分断されるケースも出てくるため、実際にどこまで強硬な措置を取れるかは技術的に非常に難しい。トランプ大統領が強く打ち出している政策ではありますが、実行面では大きな課題が残るでしょう。
バイデン大統領とカマラ・ハリス副大統領の下で、数年間にわたり1,000万人単位の不法移民が流入しました。その中には、かなりの割合で犯罪歴のある者が含まれていたという指摘もあり、これはほぼ間違いのない事実です。こうした状況を見ると、彼らが本当にアメリカを破壊しようとしていたのではないかと思わざるを得ません。
「化石燃料はダメ」は誤った前提
司会者:もう1つご質問をいただいています。「地球温暖化や資源の問題に関して、原発ルネサンスを問う内外の動きについてどうお考えでしょうか? また、核融合に向けて欧米、特にアメリカやフランスが先行していますが、日本もかじを切るべきでしょうか?」
赤羽:私は専門家ではありませんが、これまで見聞きした中での理解でお話しします。
まず、核融合はまだ現実的ではありません。原発に関しては、運用後の廃棄費用をトータルで考えると、経済的に成り立たない。40年、50年、あるいは60年運用した後の処理コストを含めると、最終的に割高になる上に、安全性のリスクもあります。そのため、私は原発の活用については慎重な立場です。
ただし、技術的にはミニ原発などの新しい試みも進んでいます。例えば、地下4,000メートルに原子炉を設置し、蒸気を取り出す方式などが研究されています。本当に安全で実用化できるなら悪くないですが、開発コストが膨大なため、今後の技術革新次第でしょう。
そう考えると、結局のところ、シェールガスやシェールオイル、天然ガスを活用するほうが現実的です。環境負荷を抑える方法も確立されつつありますし、経済的にも優れています。アメリカはこれからそちらの方向へ大きくかじを切っていくでしょう。
司会者:なるほど。つまり、原発に依存するよりも、新しい資源の開発や、より安全なエネルギーにシフトすべきということですね。
赤羽:本来、「化石燃料はダメだ」という話自体が誤った前提だったわけです。実際、化石燃料を使っても問題ないし、現時点ではそれが最も合理的な選択肢です。
もちろん、原発が本当に安全なら良いのですが、現実にはリスクが大きい。核融合は理論的には安全かもしれませんが、実用化にはまだ時間がかかる。そうなると、環境負荷が大きくない化石燃料を活用するほうが、現状では最も現実的な選択肢だと考えています。これはトランプ大統領の方針でもあり、私もその考えに賛同しています。
太陽光発電や風力発電の課題
赤羽:太陽光発電についてですが、まず環境汚染がかなり深刻です。また、昼しか発電できないため、夜間の電力供給には蓄電池が必要になります。しかし、蓄電池の技術はまだコストや効率の面で課題が多い。
代替手段として揚水発電(水力発電の設備を利用し、昼間に水を上げ、夜に落として発電する方式)がありますが、これにも大きなコストがかかります。つまり、太陽光発電は「昼間に電力が余り、夜には不足する」という根本的な問題を解決しづらいのが現状です。
風力発電もまた、深刻な環境汚染を引き起こします。低周波による健康被害、鳥類への影響などが指摘されており、日本のように適した設置場所が限られている国では、導入のハードルが高い。
欧州では、イギリスの北海などで洋上風力発電が進められていますが、それにも限界があります。日本のように風が安定しない地域では、そもそも効率が悪い。理想的なのは、「風が一方向に安定して吹き、環境負荷が少なく、海が深すぎない場所」ですが、そうした条件を満たす地域は限られます。
結局のところ、化石燃料を利用しつつ、できるだけ大気汚染を抑える方が、現実的な解決策だというのがトランプ大統領の考え方です。私もエンジニアとして、この意見には同感です。
これまで、地球温暖化に関する反対意見は抹殺され、議論すら許されない状況が続いてきました。私自身も、マッキンゼーでグローバリズムを推進する立場にいましたが、実際にはその中で多くの問題があったことに後から気づきました。本来、こうした事実は議論されるべきなのに、それができない環境が続いてきた。
イスラエルの問題も同様で、「議論できない」という時点でおかしいと考えた方がいい。何かの話題について「議論すること自体がタブー」とされる場合、むしろそこに重要な真実が隠されている可能性が高い。自分で情報を調べ、深掘りしていけば、いま私が話していることはすでに明らかになっているはずです。
マスメディアについても同じです。新聞やテレビが一斉に同じ論調を繰り返している時点で、何らかの意図的な操作が行われていると考えるべきでしょう。要するに、それはプロパガンダです。
日本企業の発展と5つの生き残り策
赤羽:では、次の話題「日本企業の発展と生き残り策」に移ります。

スライドにある5つのポイントを中心にお話しします。
いま、世界は劇的に変化しています。ここにいらっしゃる方々の多くは、大企業の経営者というよりも、中堅幹部や中小企業の経営者、ベンチャー関連の方が中心だと思います。業種も異なれば、直面する課題もさまざまですが、共通して重要なのは「経営者のリーダーシップ」です。
いまや 事業構造改革は不可避です。特に影響を受けるのは、自動車、機械、部品、電機、建設、運輸、流通、金融といった業界で、ほぼすべての産業に及びます。もちろん、これ以外の業界でも同様の課題に直面している企業は多い。既存のビジネスモデルを見直し、大胆な変革を進めることが急務となっています。
また、中国依存からの脱却はもはや待ったなしの状況です。米中対立が激化するなか、中国国内の経済不況や共産党体制の不安定化が進み、さらに、中国で得た利益を日本に送金できないケースも増えてきています。できる時もあるが、できない時も多い。そして、労働争議の頻発や反日感情の高まりも無視できない要因です。
こうした状況を踏まえると、もはや「中国依存」から抜け出し、独立性を確保することが必須になっています。すでに 中国にある資産が回収不能になるリスクも現実味を帯びており、対応の遅れは致命傷になりかねません。
日本企業のDXは「どうしようもないほど遅れている」レベル
赤羽:さらに、DXは単なるIT化ではなく、「デジタル時代における経営者主導の事業構造改革」です。日本企業には、この強力な推進が求められています。
しかし、現状では 世界の先端企業から2〜3周遅れの状態です。仮に400メートルトラックを20周するレースに例えるなら、日本企業はすでに先頭集団に対して3周あるいはそれ以上遅れています。これは、「少し遅れている」レベルではなく、「どうしようもないほど遅れている」レベルだと私は理解しています。
この状況を放置すれば、日本企業は世界の競争から完全に取り残されることになります。経営者が今決断し、改革を進めなければ、取り返しのつかない事態になるでしょう。
DXが進まない企業の経営者に足りない決断
赤羽:経営者の視点で言うと、DX推進において「IT部門や情報システム部門に任せている」とか、「彼らがやっているから大丈夫」という考え方は、はっきり言って駄目です。なぜならば、これは経営者主導の事業構造改革であり、トップダウンで推進しなければ絶対に進まないからです。
「うちもDXに取り組んでいる」と言う経営者や幹部の方に対して、私はこう尋ねたい。「では、社内の最優秀人材をDXのリーダーとして抜擢していますか?」と。
大抵の場合、それはできていません。だいたい1.5流くらいの人材がアサインされていて、本当に優秀な人材は別の業務に就かせているケースがほとんどです。もちろん、例外的にしっかりやっている企業もありますが、一般的にはDX推進の優先度が低く、本気度が足りないのが実情です。
本気でDXを進めるなら、強力なチームを編成し、徹底的に推進する必要があります。例えば、DXリーダーに対して、「お前が責任を持ってやれ。今年中にどこまで進められるのか言ってみろ」と問い、「ここまでやります」と目標を設定させる。そして、「それに必要なメンバーは社内から自由に引き抜いていい」と指示する。
ここで重要なのは、「えっ、上司に断らなくていいんですか?」と聞かれたときに、「いい、断らなくていい。必要な人材をどんどん採れ」と言えるかどうかです。それくらいの覚悟で進めている企業は、成功する可能性が高い。
しかし、現実には、DXリーダーに最優秀人材を任命していないし、リーダーに人を自由に引き抜く権限も与えられていない。つまり、その時点で「本気でやるつもりがない」というのが、ほとんどの企業の実情です。
主催:
MBAオンラインキャンパス