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新春イベント : 赤羽雄二の提言 ~2025年はどういう年になるか、何に取り組んでおくべきか(全6記事)

『ゼロ秒思考』著者が解説、トランプ再任で経済・外交はどう変わる? 戦争は落ち着く兆しも、関税強化が貿易に影響

日本を元気にするイノベーションの創出を目的としたプロジェクト型コミュニティ「MBAオンラインキャンパス」。同コミュニティが開催した今年の新春イベントに、『ゼロ秒思考』の著者・赤羽雄二氏が登壇。日本を代表するコンサルタントの赤羽氏が米国一強とドル高の行方や、激化する米中対立と貿易戦争について語りました。

米国一強とドル高の行方

赤羽雄二氏(以下、赤羽):トランプ大統領就任による大変化

2番目のポイントは、「米国一強、ドル高に」です。為替の動きを正確に予測できる人はいません。ですので、「これが当たる」と言っているわけではありませんが、マクロ的に見て、米国一強の状況が続く以上、ドル高になる可能性が高いと考えています。

欧州はウクライナ戦争の影響で、ロシアからの天然ガス供給が遮断されました。これについては、CIAが関与し、海底パイプラインを爆破したということがほぼ明らかになっています。同じNATOの一員であるドイツへの天然ガス供給を意図的に遮断したというのは、なかなか酷い話ですよね。その結果、ドイツ経済は深刻な打撃を受けています。

さらに、欧州ではナショナリズムの台頭が進んでいます。これは「自国を大切にする」という意味であり、帝国主義的な愛国心とは異なります。欧州各国には、シリアなどから数百万人規模の難民が流入しており、EUの制度的な歪みがますます拡大しています。そもそもEU自体が、ナショナリズムとは相反するグローバリズムの仕組みではないか、という議論も出てきています。

一方で、トランプ大統領はシェールガスやシェールオイル、天然ガスの開発を全面的に推進し、エネルギー価格を下げることで物価高を抑えようとしています。これが今、大きな議論を呼んでいます。

米国経済は産業面では非常に順調で、一強状態が続いています。しかし、課題もあります。トランプ大統領は中産階級以下の支持を受けて当選しましたが、現在、米国では物価高が深刻化しています。昼食を食べるのに3,000円から5,000円かかることも珍しくありません。日本では800円程度で済むものが、米国ではとんでもない価格になっている。この物価高をどうコントロールするのかが、大きな課題です。

また、米国株式市場は好調で、投資している人にとっては非常に良い状況ですが、明らかに過熱気味です。実際の株価や時価総額のデータを見れば分かりますが、市場は常にバブルを繰り返します。大きく上がった後には必ず下落があり、その後また上がる。そしてまた下がる。これは何百年も続いている、いわば経済の自然の摂理です。

そのため、今後の課題は、このバブル崩壊をどう緩和するかという点にあります。とはいえ、全体的にはドル高の流れが続くと考えています。

トランプ大統領は戦争を止めるのか

そして、「国際紛争の終結」。世の中は決定的に変わりました。これはリーダーシップの問題であり、みなさんが今後どう生きるかという話とも関係しています。

トランプ大統領がウクライナ戦争やイスラエル・ハマス紛争を止める可能性は高いと考えています。彼は無意味な戦争に反対してきた人物ですし、プーチン大統領や金正恩とも直接対話を重ねてきました。今後も対話を続けるでしょうし、すでに動いているはずです。

ただし、イスラエル・ハマス紛争に関しては、一時的な休戦が発表されているものの、実質的にはかたちだけでしょう。イスラエルは戦闘をやめない。欧米諸国がこれを黙認してきた以上、今後も変わらないでしょうし、変えることもできない。

2023年10月7日のハマスによる攻撃以降、あらゆる虚偽の情報が拡散されてきました。例えば、「多くのイスラエル人女性が強姦された」「40人の赤ちゃんの首がはねられた」「オーブンで焼かれた」といった報道がありましたが、これらはすべて事実ではない。

イスラエル国内の調査機関や団体も、これらが誤情報であることを認めています。強姦被害があったとされる場合、当然ながら被害者は病院に行くはずですが、誰一人として「被害を受けた」として病院を訪れた記録が見つかっていません。つまり、虚偽の情報がまかり通っているということです。

残念なことにその数ヶ月後、Facebook(現「Meta」)の元COOであるシェリル・サンドバーグが、「イスラエルの受けた被害」や「ハマスの残虐性」を強調する映画を制作し、欧米諸国の世論操作を続けています。結局のところ、欧米の立場は変わらず、今後もこの構図は維持されるでしょう。

非常に残念ですが、戦争自体は終わるとしても、トランプ大統領はイスラエルに対し、「やるべきことはすべてやれ」、つまり、戦争終結の前に徹底的に攻撃を続けろ、という姿勢を取る可能性があります。彼なりの理屈で戦争は止めるが、イスラエルの軍事行動は継続されると見ています。

激化する米中対立と貿易戦争

次に、「中国との緊張が激化」についてです。2018年ごろから、中国は危険な存在であるという認識が広がり、それ以降、米中関係の緊張はさらに高まっています。

現在、トランプ大統領は巨額の貿易赤字削減を掲げ、「関税を6割かける」と発言しています。これに伴い、関税を徴収するための新たな機関が設立されることになりました。アメリカにはIRS(内国歳入庁)という税務機関がありますが、それとは別に関税専用の機関ができるというのは、かなり大きな動きです。

さらに、知的財産の侵害や技術覇権争い、南シナ海問題も深刻化しています。中国が勝手に海を埋め立てて軍事拠点化していることや、台湾周辺で中国の潜水艦が威圧的な行動を続けていることなど、問題は山積みです。

私は、トランプ大統領がこうした課題に断固として取り組んでいくと考えていますし、実際に期待もしています。

一方、日本国内では、石破(茂)さんが非常に親中的な立場を取っていることが懸念されます。例えば、過去の国際会議で習近平氏と会談し、英国の首相とも連携して親中路線を示していました。

トランプ大統領とは面談できず、一方で安倍昭恵さんは招待されたという事実からも、石破さんの立場がどう見られているかは明らかです。私はこれを非常に深刻な問題だと考えていますし、今後の動向を懸念しています。

グローバリズムからナショナリズムへの転換

そして次に、「グローバリズムからナショナリズムへ」。

これまで世界を席巻していたグローバリズムに対し、トランプ大統領は戦いをリードしていくでしょう。プーチン大統領とも連携する可能性が高いと考えています。

従来、グローバリズムは「国際化は良いものだ」という前提で語られ、反対意見は抹殺されてきました。しかし、実際には「それは本当に正しいのか?」という議論が必要だったはずです。

正直に言えば、私もここでこういう話をすることにはリスクを感じます。万が一、「赤羽が電車で盗撮した」とか「女子トイレに入っていた」といったデマが流れたら、それはこうした発言を封じるための陰謀だと思ってください。すでに多くの書籍でも指摘されていますが、こうした話は避けられないため、あえてお話しします。

トランプ大統領は「America First」を掲げていますが、これは「アメリカだけが大事で、他はどうでもいい」という意味ではなく、「Your Country First」。つまり、「誰にとっても自国は大切だろう?」という考え方です。

みなさんもご存じの通り、彼はカナダやメキシコ、グリーンランドに関する発言で物議を醸してきました。例えば、「カナダはアメリカの51番目の州になればいい」とか、「アメリカはグリーンランドを買収すべきだ」といった発言ですね。

また、パナマ運河の通航料が高すぎるとして「値下げしろ」と主張しています。パナマ運河はアメリカ大陸を横切る重要なルートですが、中国の企業や組織が深く関与しており、これがトランプ氏の発言の背景にあります。

もちろん、こうした発言は相手国からすれば不愉快なものです。そのため、「トランプは帝国主義者ではないか?」「ナショナリストではないか?」とメディアが批判しています。しかし、これらは過去から続くプロパガンダの一環です。確かに、トランプ大統領の口の悪さや品のなさ、過激な言動は目立ちます。しかし、本質を見ることが重要だと私は考えています。

気候変動は「詐欺」という考え方

次に、「地球温暖化対策、CO2削減の見直し」についてです。トランプ大統領は地球温暖化をまったく信じておらず、気候変動を「詐欺」と断言しています。そして、パリ協定からの再離脱を指示する方針です。これまで地球温暖化への反対意見は抹殺されてきましたが、ようやく議論できる環境が整ってきたという状況です。

私自身、エンジニアとしての視点から言うと、現在、地球は全体として寒冷期に入っており、一部の地域では温暖化が見られるものの、長期的には寒冷化が進んでいると考えています。実際、南極では氷の厚みが増しているという報告もあります。

また、「北極の氷が溶けると地球全体の海面が何十センチも上昇する」と言われますが、これは誤解です。氷が水の上に浮かんでいる場合、溶けても水面は変わりません。にもかかわらず、こうした基本的な事実が無視されて議論が進められているのは、あまりにもおかしい。

私は、地球温暖化は局地的な現象であり、人間の活動が主な原因とは考えていません。この点では、トランプ大統領と同じ意見です。もしみなさんの中に、「地球温暖化対策をやめるの?」「CO2削減をやめるの?」と驚いている方がいたら、一度、YouTubeや書籍などを通じて多角的な視点から情報を得た上で、あらためて議論してみるといいかもしれません。

崩れたマスメディアの信頼

それから、先ほどから話に出ていますが、「マスメディアが平気で嘘をつくことがばれた」という点についてです。私はかつて、米国のジャーナリズムを尊敬していました。それは、ほとんど知らなかったからです。しかし、実際にはこの数十年で地に落ち、いまや体制派のプロパガンダ機関と化しています。

英語のYouTubeを見ていると、「Lie(嘘)」という言葉が頻繁に使われています。つまり、マスメディアが明らかに嘘をついているということが、もう誰の目にも明らかになっているわけです。これは「あきれる」レベルではなく、完全に信用を失っているという状況です。

例えば、『ニューヨーク・タイムズ』をはじめ、ABCやCNNといったテレビ局、CATVなどの嘘が次々と暴露されています。そして、トランプ大統領は、自分に対して不正確な報道を繰り返していたマスメディアを訴え、実際に勝訴しています。

ABCテレビはトランプ氏からの名誉毀損訴訟に対し、16ミリオンドル(約23億円)と、さらに裁判費用1億円から1.5億円を支払うことで合意しました。こうした判決が出たことで、「マスメディアは嘘をついている」という事実が、いよいよ誰の目にも明白になったということです。

暗号資産の躍進とトランプ大統領の戦略

次に、「暗号資産が躍進、表舞台に」についてです。トランプ大統領はいろいろと発言しますが、これは本音だろうと私は考えています。実際に暗号資産業界からの献金も受け、関係者とも会っており、「米国を暗号資産の世界的な中心にしたい」という強い意向を持っています。これが実現するかどうかはまだ不透明ですが、私は通す可能性が高いと見ています。

これまで証券取引委員会(SEC)の委員長は暗号資産に否定的な立場を取っていました。そのため、リップル(XRP)なども規制の対象となりましたが、すでに委員長の交代が決定し、次の人事も確定しています。

今後、規制緩和やルールの透明化が進み、何が認められ、何がダメなのかが明確になるでしょう。現状では規制が不明確なため、多くの人が積極的に関与できない状況ですが、それが改善されれば市場の活性化につながるはずです。

また、税制優遇の話も浮上しています。まだ正式には決まっていませんが、「アメリカ発の暗号資産であれば、売却時の税金をゼロにする」という案も出ています。さらに、ビットコインを戦略的に備蓄する構想もあり、「発行済みのビットコインのうち5パーセントを政府が買う」という計画が検討されています。ただし、これは上院・下院の承認が必要なため、最終的にどうなるかは不透明です。

今回の大きな変化として、グローバリズムからナショナリズムへの明確な転換が進みました。地球温暖化対策やCO2削減の見直しもすでに始まっています。また、マスメディアの信頼が完全に崩れたことも、特に若い世代では顕著です。

今や、テレビを見るのではなく、YouTubeやTikTok、X(旧Twitter)で情報を得る人が増えています。そして、そうしたメディアを見ていると、「マスメディアの報道はおかしい」と気づくケースが多い。これが、いま起きている大きな変化の1つだと考えています。

主催:MBAオンラインキャンパス

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