日本を元気にするイノベーションの創出を目的としたプロジェクト型コミュニティ「MBAオンラインキャンパス」。同コミュニティが開催した今年の新春イベントに、『ゼロ秒思考』の著者・赤羽雄二氏が登壇。日本を代表するコンサルタントの赤羽氏が2025年の展望と具体的な取り組みを語りました。初回は2024年の総括とトランプ大統領就任による大変化について語られました。
元マッキンゼーで、『ゼロ秒思考』著者の赤羽雄二氏が登壇
赤羽雄二氏:私はこの
『ゼロ秒思考』を11年前に出し、現在44万部になっています。

本業はベンチャーの共同創業・経営支援と、大企業の経営改革です。コマツ(小松製作所)に8年在籍し、2年間はスタンフォード大学に留学して機械工学修士を取得しました。
帰国後1年でマッキンゼーに入り、日本企業と韓国企業の経営改革に14年間取り組みました。その間、毎週月曜日の朝にソウルへ行き、金曜日の夜に戻るという生活を、当初3ヶ月の予定で始めましたが、半年延び、1年延び、最終的には10年間、500週続けました。

マッキンゼーでは、ロンドン、シドニー、パリ、ニューヨークなどで年に何回かカンファレンスがありました。ソウルから水曜日に出発し、香港に水曜の夜10時ごろ到着。2日ほど滞在し、日本に戻って、月曜の朝に再びソウルへ向かう。ニューヨークやシドニー、パリでも同じようなスケジュールでした。こうした活動の中で、主にLGグループの支援を行っていました。
14年後に独立し、ブレークスルーパートナーズを設立。ベンチャーの共同創業・経営支援、大企業の経営改革を行い、多くの企業を支援しています。

現在、支援先のクーガーは、ファミリーマートの7,000店舗でバーチャルヒューマンエージェント(ヒト型AI)が店長やスーパーバイザーを支援し、売上向上に貢献しています。これを1万6,000店舗、全店に展開する計画が進行中です。

また、福岡のシフトセブンは、ふるさと納税のバックエンドを担い急成長しています。企業年金、法定調書、e-Tax連携なども加速しています。その他にも、訪問看護ステーション、英語学習、インド人エンジニアの紹介、九州の不動産会社など、多様な企業を支援しています。
過去にはユニクロで4年間、LGでは10年間、また、パナソニック、カシオ、ローソン、エプソン等を2年ほど支援してきました。
2024年の国際情勢と経済の総括
では、本題に入ります。2024年の総括です。私なりにご紹介したいと思います。

みなさんもぜひ、自分でまとめてみるよいと思います。
1つ目は、イスラエル・ハマス戦争。紛争という言い方もありますが、あえてこの表現を使いました。長期化しており、今ようやく停戦や休戦の話が出ていますが、実際には戦闘が続いています。加えて、イスラエルによるイラン、レバノン、シリアへの爆撃が激化したのが特徴的です。
2つ目は、ウクライナ戦争の継続。ロシアが実際には優勢に進めていると見ています。3つ目は、米中対立の激化。特に半導体やAI分野での競争、台湾問題、貿易摩擦などが焦点となっています。4つ目は、戦争や対立を煽り、一方的な報道を続けたマスメディアの欺瞞が完全にほころびたこと。これが、トランプ大統領の圧勝につながったと考えています。
続いて、国際関係で重要な5つのポイントです。5つ目は、グローバルサウスの台頭。BRICSにイラン、サウジアラビア、エジプト、アルゼンチンの4カ国が加盟し、BRICS全体で世界のGDPの37パーセントを占めるようになりました。欧米諸国は34パーセントなので逆転したわけです。世界の大多数が、これまでの欧米の横暴に対して明確に反旗を翻している状況です。
6つ目は、中国の不動産バブルの崩壊。主要な不動産企業が次々に倒産し、不況が深刻化。経済成長も鈍化しています。中国政府発表の成長率の数字は実際には当てにならず、かなり厳しい状況だと見ています。ただ、深圳などでは「元気だ」と言われることもありますが、全体的には大変なことになっていると理解しています。
7つ目は、米大統領選でのトランプ氏の圧勝。ナショナリズムの高まりです。ここで言うナショナリズムは、変な意味ではなく「自国を重視し、自国の文化を大切にしよう」という流れ。これに対し、民主党は凋落しました。
8つ目は、ビットコインとイーサリアムのETF承認と価格高騰。暗号資産市場は4年ごとに盛り上がるサイクルがあり、今回も大きな影響を世界の金融市場に与えています。今後さらに影響が拡大すると見ています。
2024年の日本経済と社会に起きた5つの変化
9つ目は、生成AIの進化。「ChatGPT」だけでなく、「Claude」や「Gemini」など。GoogleのGeminiも非常にがんばっていますね。加えて、OpenAI、xAI、AnthropicといったAIベンチャーへの巨額投資が進み、話題沸騰。しかし、何兆円も資金が流れ込んでいるものの、実際にビジネスになっているかというと、ほとんどなっていません。つまり、期待過剰な部分が大きいわけです。
そして、日本についても5つのポイントがあります。10番目は、日経平均が34年ぶりの高値を更新し、史上初の4万円台に到達したこと。企業も個人も投資マインドがかなり回復しているのではないかと思います。
11番目は、インフレの加速による価格高騰。家計への負担が激増しています。レストランの価格が突然大幅に上がったり、コンビニのお菓子の値段が上がる一方で、箱だけ大きくなり中身が減っていることもあります。「えっ、何が起きたの?」と思うほど、物価の上昇を実感する場面が増えています。
12番目は、国内の労働力不足がさらに深刻化していること。ホテルが運営できず閉鎖するケースや、一度閉じた施設が再開できない状況が続いています。これは非常に深刻な問題です。
13番目は、訪日観光客の大幅な増加。東京では渋谷、六本木、浅草、明治神宮など、あらゆる観光地に人が溢れています。観光業は完全に回復し、インバウンド需要が再び活発になっています。
そして、最後に個人の話として14番目。これは私がどうしても入れたかったことですが、大谷翔平選手の2024年の圧倒的な活躍です。まさに超人的なパフォーマンスで、日本人に多くの勇気を与えたと思います。
以上、あくまで私の視点ですが、みなさんもぜひ、自分なりのまとめを書いてみるとよいのではないでしょうか。
「なんでトランプ?」という思考はもう捨てたほうがいい
さて、2025年の変化についてですが、これは「トランプ大統領就任による大変化」に尽きます。

頭を切り替えることが、ほぼすべてではないかと思っています。「なんでトランプ?」と思う方もいるかもしれませんが、それは今日以降、捨てたほうがよさそうです。
米国国民の大半は、マスメディアの報道がいかに嘘ばかりかに気づきました。「YouTube」「X」(旧Twitter)、「TikTok」などで真相が広まり、その結果、トランプが圧勝。得票数、選挙人の数、上院、下院すべて圧勝という状況になりました。
イーロン・マスクが「今回の選挙結果に驚いた人は、自分の情報源を見直したほうがいい」と投稿していましたが、まさにその通りだと思います。
マスクがTwitterを買収した時、多くの人が「何をしているんだ?」と疑問視し、メディアも批判的でした。彼自身も「数千億円損した」と発言していました。しかし、それまで制限されていたTwitterを、Xへと転換することで風通しが良くなり、今回の選挙結果にも大きな影響を与えました。
現在、トランプ大統領の右腕的な存在としても活躍しています。もちろん、今後どこで衝突するかは分かりませんが。マスク自身、もともとは民主党支持でしたが、途中で考えを変えました。そして、今では「トランプ大統領はすばらしい」と評価しています。
そして、みなさんご存じのように、トランプの耳の横を銃弾がかすめた事件がありました。たまたま頭の向きをわずかに変えたことで、耳をかすめて軽傷で済んだ、まさに奇跡的な出来事でした。あれを「ヤラセだ」と言う人もいますが、あんなものヤラセでできるわけがありません。
みなさん、自分があの場に立って「ヤラセだから大丈夫。耳の横をかするだけ」と言われて、銃弾が真横をピュッと通るのを受け入れられますか? あり得ないですよね。もし1秒、0.5秒違っていたら、目の前でとんでもない映像が流れていたはずです。
この事件で、多くのアメリカ国民が「これは神の加護だ」と受け止め、トランプ自身もそう考えたようです。その結果、彼の人間性にも変化があったという話もあります。私は神の加護とは思いませんが、少なくとも、あの体験を経て覚悟が変わったのではないかと感じます。
メディアのおかしさに気づいた出来事
2016年、私はトランプとヒラリー・クリントンの公開討論会をじっくり見ました。その時点で、どちらにも偏見はなく、フラットに観ていました。しかし、討論を聞く限り、明らかにトランプのほうが優れていた。一方のヒラリーは説明がしどろもどろになる場面が多かったのです。さらに、当時は私的メール問題など、いろいろな疑惑もありましたよね。
ところが、討論会の後に流れるメディア報道を見ると「ヒラリー優勢」とばかり報じられていました。非常に違和感がありました。「こんなのおかしいよね」と思っていたら、結果としてトランプが当選。このとき、私はあらためて「メディアはおかしなことをしている」と痛感しました。
私はもともとエンジニアで、国際問題や社会、歴史には正直あまり関心がありませんでした。しかし、この10年、真面目に本を読み、YouTubeの英語動画を聞き、さまざまな情報を得る中で、世の中には明らかにおかしなことが多いと気づきました。というか、おかしなことだらけです。
2016年、フラットな気持ちで討論会を見た自分の結論と、メディアの報道が真逆だったことで、すでに違和感を抱いていました。そして、2020年の大統領選挙では、不正選挙の可能性が非常に濃厚で、多数の証拠が挙がっています。
YouTubeなどにも情報がありますが、「陰謀論だ」と言われることが多いですね。しかし、陰謀論と言われたら、むしろ「それは真実を隠そうとしているのでは?」と疑ってみたほうがいいですね。そう考えたほうが妥当なケースが大変多い。
今回の選挙では、もと反トランプだったイーロン・マスク、Metaのマーク・ザッカーバーグ、Appleのティム・クック、Googleのサンダー・ピチャイ、Amazonのジェフ・ベゾスといったハイテク企業のトップたちが、トランプ氏の別荘「マラ・ラゴ」に集まり、食事を共にし、議論しています。
「なんだ、彼らはトランプにすり寄っているのか」とシニカルに言う人もいますが、実際には半年前からすでに流れが変わっていました。トランプ大統領自身が「ビットコインはとても大事だ。価格上昇おめでとう」と発言し、シリコンバレーの関係者とも前向きな関係を築いていました。
また、副大統領候補のJ・D・ヴァンスはシリコンバレーのベンチャーキャピタリスト出身。こうした動きが積み重なり、彼らは「どうやってAmerica Firstのもとでアメリカを立て直すか」を議論するようになったのです。
もし今、「なぜトランプ?」と思っている方がいるなら、イーロン・マスクが言うようにご自身の情報源を見直したほうがよいかもしれません。日本のメディアは一切信用できませんし、アメリカを含め、世界中のマスメディアは基本的に信用できない。正しい情報は流れていない、というのが現実です。
主催:
MBAオンラインキャンパス