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新しい価値が生まれる対話の進め方(全1記事)

孫正義氏が毎晩のように行っていた「箱弁会議」とは 脳を活性化させ新しい価値を生み出す対話の仕方

『無敗営業』をはじめ数々のビジネス書を出版し、東京都千代田区で「かぴばら書店」という本屋も運営する高橋浩一氏が、営業力を人生や仕事に活かすコツを配信するVoicyチャンネル「毎日が楽しくなる営業力のヒント」。今回は、脳を活性化させ新しい価値を生み出す対話の仕方を語ります。

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脳を活性化させる上での6つのブレインモードがある

高橋浩一氏:今日は、「新しい価値が生まれる対話の進め方」というところでお話ししていきたいと思います。最近僕は、特にお昼やお茶の時間を使って、けっこういろんな人と話す時間を増やしております。

今、いろいろ新しいことを始めるための仕込みをしているところで、半年ぐらい経った時には、たぶんいろいろ世の中にお披露目できると思うんですけれども。その中でいろんな人と対話をしているのですが、その対話の進め方について、おもしろいヒントが載っている本を見つけました。それを基にお話ししていきたいと思います。

『BRAIN WORKOUT ブレイン・ワークアウト 人工知能(AI)と共存するための人間知性(HI)の鍛え方』という本です。こちらは安川新一郎さんという、もともとマッキンゼーからソフトバンクに社長室長として入社されて、執行役員本部長などをされていた、非常にすごい方なんですけれども。

この本は「人間知性の鍛え方」というテーマで書かれており、非常に中身が濃い本なんですけれども、特にその中で、「対話モード」を解説されている箇所は個人的に興味を惹かれました。

「運動モード」「睡眠モード」「瞑想モード」「対話モード」「読書モード」「デジタルモード」というふうに、いろんな脳を活性化させる上での6つのブレインモードの種類があるんですけれども。

その中で、「自己の意識を他者と共有し、世界認識を広げる」という対話モードが、ものすごくおもしろいポイントでした。ソフトバンクの孫正義社長が、どんなことをやっていたかということが書かれている箇所を引用したいと思います。

孫正義氏が毎晩のように行っていた「箱弁会議」とは

孫社長は、私が社長室長をしていた当時は、毎晩のように長時間の『箱弁会議』を開催していました。日中に分刻みのスケジュールをこなし、19時頃に最後のアポイントが終わると、孫社長の漠然とした興味関心のもとに、なんとなく呼ばれた社内外のさまざまな人が社長室に参集します。

大学の先生、エンジニア、部品メーカーの技術担当などが20人ほど集まり、弁当を食べながら雑談を始めます。最初の頃は、他の会議と同様に仕切らないといけないと思っていた私が、アジェンダを設定し、司会を始めようとしたら、孫社長に止められた記憶があります。

私の仕事は、参加者に弁当を配り、個人NDA(秘密保持契約書)を参加者にサインさせること。そして、社長が追加で参加してほしくなった人に、その場で電話して出席依頼することでした。

そこでは、『今の日本のインターネットの課題は何か』『それをどうすればよいか』くらいの大枠のテーマ設定はあるのですが、発散した議論を整理したり、何か意思決定したりする雰囲気はありません。

何らかの専門を持つ参加者の話や、参加者同士の議論を孫社長がひたすらじっくりと聞き、時折質問をする不思議な会議でした。孫社長が、話を遮らずに黙ってじっと聞いていて、時折冗談で場を和ませるので、参加者も安心して意見を述べることができます。

気づくと3~4時間が経過し、毎晩22時頃になると、突然孫社長が『だいぶ見えてきた』と宣言して散会します。当時、私は何が見えたのかまったくわからなかったのですが、今思うとこれは、未来の大切な兆しを見るための、孫社長にとっての壮大な対話と傾聴の時間だったのでしょう。

出典:『BRAIN WORKOUT ブレイン・ワークアウト 人工知能(AI)と共存するための人間知性(HI)の鍛え方』安川新一郎著(KADOKAWA)


この1ページぐらいの内容は、すごくいろんな示唆に富んだ話だなと思います。まず、「毎晩のように」ということで、孫社長がとても重要視していたということが見て取れますよね。孫さんのスケジュールの中に、毎晩のようにこれが入っているということですから、たぶん相当な意味合いを感じて設定されていたんだと思います。

きちっと仕切るのではなくお弁当を食べながら雑談

あとは、漠然とした興味関心のもとに、なんとなく呼ばれた人たちが集まってきて、きちっとした仕切りの会議ではなく、お弁当を食べながらの雑談であると。これも非常におもしろいポイントだと思うんですよ。あえて緩く設定をしていて、途中で参加者が増えることもあるんですよね。

「『だいぶ見えてきた』と宣言して散会します」ということなんですけども、まさしく何かの新しい価値が生まれる対話って、こんな感じなのかなと思います。これを安川さんは、さらにアレンジをしてやられていらっしゃるとのことで、安川さんのやり方も後ろのほうに書いてありますので、引用したいと思います。

「私は時々テーマを設定して、3~4人の知人・友人で対話をする会を企画しています。『読書行為が何をもたらすか』『アメリカの民主主義に今何が起きているか』『日本のスタートアップ環境は本当に良くなったのか』など、そのテーマに詳しそうな人に声をかけて話します。

この時、テーマについての権威と呼ばれる大先生を生徒が囲む1対Nのスタイルは取らず、一定の知的好奇心を持って世の中を見ている情報感度の良い人を集めて、結論を出すことを求めずにフラットな対話を行います。

対話会で最も重要な「参加メンバーの数」と「選び方」

この対話会で最も重要なのは、参加メンバーの数と選び方です。自分自身が話してみたいと思う人だけではなく、参加者それぞれにとっても、『お互い話してみたい』『このテーマについてどう考えているかを一度聞いてみたい』という人を、できるだけ年齢や性別、得意分野が多様になるようにセッティングします。

それぞれに忙しい人だったり、必ずしも親しい友人ではなかったりするので調整は大変ですが、この人選にエネルギーをかけるのが最も重要です」。参加者は限定されているそうなんですけど、「『そのテーマ、おもしろそうだから聞いてみたい(傍聴したい)』というような人が現れても、参加人数はその対話をする4~5名に限定します」。

孫さんは20数名で行っていたということでしたが、安川さんの対話会は4~5名です。会場はあえておいしい料理を出すお店は避けて、ゆったりと雑談ができる場所で行うそうです。

「そして、こうした対話会の場合は、最初に参加メンバーでのメッセンジャーグループを作っておくと便利です。その対話の場で思い出した、おもしろいと思った本の情報やその書評、関心を持っているニュース記事のURL、訪れた場所の写真なども、リアルタイムで共有しながら進められるからです。私はこれを『読者限定のリアルタイムWebマガジン』と捉えています」。

これは本当に示唆深いですよね。今思い返すと、自分もこれに近いようなことをやったことはあるんですけども、ここまでちゃんと考えて体系的に実証したことはありませんでした。じゃあこれを経て、自分なりにこういうふうにアレンジしてみようと思ったことをお話しします。

対話で新しい価値を生み出す

対話って非常にインパクトが大きいなと思うんですけど、何人かを集めるのはやはりなかなかエネルギーがかかるので、今のところは1対1のランチやお茶というかたちでやっています。「この人と話したいな」と思う方や、何かテーマを持っていらっしゃる方とざっくばらんに気軽に話すことで、いろんな気づきを得られます。

あと、先ほどの安川さんの箇所で出てきた、メッセンジャーにリアルタイムで情報を打ち込んでいくのも実際にやっています。「誰といつ、どんなふうに話をしたっけな」というおぼろげながらの記憶さえあれば、後から辿れるので非常に便利だなと思います。

自分1人で考えるよりも、人と話しながら考えるというのは、やはり特別な意味というかインパクトがあると思うわけですね。というのは、やはり人が違えばそれぞれ経験も異なるし、知見も異なります。それがかけ合わさった時に、何か新しい発見が生まれると思います。

それには、きちっとした型にはまった進行より、いかに緩い雑談を入れられるかが大事だと感じるわけですね。やはり1人で考えるのと、人と一緒に話して考えるのって、ぜんぜん違うなと思います。

ただ、安川さんの本の中には、もちろん1人で考えるモードについても、「瞑想モード」とか「読書モード」とか「デジタルモード」とか、ちゃんと章を割いて書かれています。

いろんな知的創作活動をやっていく上での話が書かれていておもしろいのですが、僕はその中でも「対話モード」に興味関心が向きました。この本自体が対話の本ではなくて、対話はある1つの要素であるということです。

「新しい価値を生み出す」ということと「対話」をひも付けて考えるに当たり、これは非常におもしろい本でした。日常で仕事をしていると、どうしても発想の枠が限定されがちじゃないですか。仕事のルーチンを回しているだけですので、それをいい案配でかき回すという意味で、他の人との対話は、やはり新しい価値を生む源泉になるなと、あらためて感じた次第です。

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