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社員の力を引き出す経営戦略〜ひとり一人が自ら成長する組織づくり〜(全5記事)

日本の約10倍がん患者が殺到し、病院はキャパオーバー ジャパンハートが描く医療の未来と、カンボジアに新病院を作る理由

特定非営利活動法人ジャパンハートが主催したビジネストークイベント「社員の力を引き出す経営戦略〜ひとり一人が自ら成長する組織づくり〜」。株式会社一休の代表取締役社長・榊淳氏、株式会社シンクロの代表取締役社長・西井敏恭氏をスピーカーに招き、ジャパンハートの創設者の𠮷岡秀人氏と共にトークセッションが行われました。本記事では、ジャパンハートがカンボジアに病院を新設する理由について、𠮷岡が医師としての思いを語ります。

多いと日本の10倍…がん患者が殺到するカンボジア

西井敏恭氏(以下、西井):あと、なんで今カンボジアに新しい病院を作ろうとしているのかという話だけ、せっかくなので𠮷岡先生から話してもらえたらと思うんですが。

たぶん、過去にやったことがないぐらいすごいお金です。今までも、ミャンマーやカンボジアで僕が行ってる病院がいくつかあるんですが、どうしてもそこじゃ足りなくなっているというのが今の東南アジアの状況です。

今回はすごくお金がかかるし、たぶんこのままだとジャパンハートが潰れちゃうんじゃないかって思うぐらい(笑)、すごくお金を使わなきゃいけないので。せっかくなので、𠮷岡先生に話してもらったら?

𠮷岡秀人氏(以下、𠮷岡):患者がすごく来てるんですよ。実は日本にがんの拠点病院は15個あるんですね。北海道大学から始まって、東北大学、この(会場の)近くには成育(国立成育医療研究センター)があったり、神奈川県立こども(医療センター)があったり、東京都立(病院機構)があったり。そんな感じで15個の病院があるんです。

今、僕らが治療してるのは肝臓のがん、腎臓のがん、神経から出るがんとかなんですが、そういうがん(患者)がおそらく日本の1つの病院の数倍来てます。下手したら10倍ぐらい集まってきていまして、その子たちを治療してるんですね。

最初に作った病院がもうキャパオーバーで、(患者が)入らなくなってるんですね。ほかの病気の難病の子もたくさんいるので、がんの子どもだけ見てるわけにいかないじゃないですか。そうすると、どうしても追いつかなくなる。

「金持ちを診る病院は腐るほどある」

𠮷岡:あと、ミャンマーはご存知のようにクーデターがあって軍政になってから、医療者がいなくなっちゃったんです。ということは、難病の子どもは軒並みみんな亡くなっちゃっているんです。ミャンマーはカンボジアの人口の3倍ですから、3倍の子どもたちがいる。こういう子たちも受け入れていかないといけないじゃないですか。

ラオスにも小児病院があって、人口は少ないんですがぜんぜん診てくれないんですよね。だから、お金がある患者たちは外国へ行っちゃう。でも、ない人はそのままでしょう?

こういう子どもたちを収容して、治療していかないといけない。金持ちを診る病院は腐るほどあるんですよ。でも、お金がない人を診てくれる病院なんて存在しないじゃないですか。

だからカンボジアの病院もそうですが、どこかでちょっと治療を受けたけどお金がなくて、途中で(治療を)やめた子どもたちもたくさん来るんですね。ここの施設はタダだから来るんですよ。そういう病院を誰かが作らないといけない。

カンボジアでがんの治療を始めた時もそうだったんです。誰かがやらなければ医療なんて広まらない。知識も広まらない、薬も流通しない、技術も広まらない。そのままの状態が続く。誰かが1年早く始めたら、1年分たくさん助かる。2年早く始めたら、2年ぶん助かる。

助かる数は坂道のように上がっていくので、一番ピークのところが後ろから削られてるだけじゃないですか。だから、大変だけど誰かが早く始めなければならないと思ってるんですね。

“つらいけどもう一度行きたい”と思える病院を作るために

𠮷岡:どんな病院にしたいかだけ最後に一言言うと、みなさんは日本の病院に行くじゃないですか。どこの病院へ行っても一緒で、しょうもないでしょう。

(一同笑)

𠮷岡:どこから入って、どこへ通って、どこで薬をもらって、どこで会計をして出てくるか、一緒でしょう? 僕はぜんぜん違う病院を作りたいんですよ。

日本人はフレームが強すぎて、「これが正しい」と思ったらそのフレームから出られないんです。ここの国の人たちは常に出られないんですよ。

僕はいつも言うんですが、病院に犬を連れてくるセラピードッグってあるじゃないですか。あんなの絶対に日本人には発想がないでしょう。やろうとしたら絶対に潰されてますから。「感染を起こしたら誰が責任取るんだ」とか、そんな話ばっかりが出て絶対にできない。

あれは外国から出てきたから日本で実現したわけですね。それで受け入れてるわけですよ。だから、今のみなさんが行くなんでもないどこも一緒な病院は、日本人には変えられないんです。

実は子どもたちが病院へ行ったら、がんの子どもなんか長い子は1年入院しますから、何ヶ月も入院する。想像できると思うんですが、つらい治療もたくさんあるでしょう。

だから僕はどんな病院を作りたいかというと、「でも、入院したい」という病院を作りたいんです。それはどんな病院かというと、例えば病院の中が全部アニメでできている。

いろんなアニメがあって、入院中の子どもが動く時はゆっくり走る電気のおもちゃみたいなものでずっと走れる。最近はスーツケースに乗ってる人が多いでしょ? あんなのに乗っていて、点滴をぶら下げる台があって、子どもたちがそんなので行くとか。

病院に入院したら必ずガチャガチャができて、つらい治療が終わって、退院する時もガチャガチャができるとか、手術が終わった子はガチャガチャの券をもらってやれるとか。あるいはご飯はキャラクターのものが出てくるとか、入院する服は全部キャラクター。

子どもたちが「あそこはつらいんだけど、絶対に入院したい。もう1回行きたい」という病院にしたいんですよ。そういう病院を作りたいんですね。

カンボジアでは、がん患者の子どもの多くは通院していない

𠮷岡:だって、術後のがんのフォローアップだってなかなか来てくれない。本当はもう2年ぐらいフォローしたいのに、「もういいかなと思って」とかいって来てくれないんですよ。でも、子どもが「あの病院へ行きたい」と言ったら来てくれるじゃないですか。

そしてお金がない人も、子どもたちが喜びそうな病院があれば、親も連れていきたいと思うでしょう。例えばカンボジアだって、今はがんの子どもたちの多くはそもそも病院に行ってないんです。でも、そのまま死んでる子たちを引っ張り出してこないといけない。

そういう病院が噂になっていれば、そういう病院に来るじゃないですか。そして、それが本当にすごく有名になってきたら、日本のマスコミも取材に来て見に来てくれる。そうしたら、今度は日本にそれが広がりますよ。

日本の病院がそういうかたちで、アニメがいっぱいあって、子どもたちが喜ぶ、子どもたちが「つらいけど入院したい」って言う病院が、社会的に広がっていくでしょう。

さっきの話じゃないですが、誰も損しない仕組みだし、アニメなんて日本の輸出産業の最たるものじゃないですか。そういうものを世界の子どもたちがちゃんと体験できて喜んでくれたら、やらない手はないじゃないですか。そういう病院を作ってみたいと思ったんですよ。そうしたら、日本にも良い影響が出るじゃないですか。

西井:これを見ているオンラインのジブリさん、藤子不二雄さん、ぜひご連絡をお待ちしてます(笑)。

堀江聖夏氏(以下、堀江):(笑)。

西井:でも、そういうところでもご協力いただける仲間が増えることは、僕らはすごく大事だと思っているから、今日来ていただいたり聞いていただいている方で、協力いただけるだけでもすごく良いことだし。

医療とは「治す」ことだけではない

西井:ビジネス観点で言うと、𠮷岡先生の近くにいると、僕はこういう発想を持てるわけです。これって日本の中だけにいると見えない話だし、もう1個言うと、1周還って日本のためになってるんですよね。これがジャパンハートのすごく良いところだと思っていて。

世界中をいろいろ旅行している中で、日本はすごく世界中にリスペクトしてもらってる国なんですよ。ただ、医療っていわゆる「治す」だけではないと、𠮷岡先生がよく言っていて。

看護師さんがすごく手厚くて、もしかしたら患者さんが死んじゃった時に一緒に泣いちゃうぐらい。こういう心のケアはすごく日本らしいというところから、たぶん「ジャパンハート」というネーミングになっていて。

こういう日本の良さを、実は海外だからこそ感じてもらえたり。回り回って、最終的には日本のためになってるというのが、ジャパンハートのすごく素敵なところだなって思ってますね。

𠮷岡:そうですね。だから、僕は「円」をイメージして経営してるんですね。先ほどのように、病院のトップが一番地位が低い人や給料が低い人に感謝を伝えて、初めてそこで円が完結するじゃないですか。そして、僕らが日本からお金を集めたりして海外に持っていって、それが今度は日本に還ってくる。

今、日本で新しく生まれる子どもたちは、もう2024年で70万人を切るんです。僕が日本で医者やってる時は120万人ですよ。半分近くまで落ちる勢いで子どもたちが激減してるんですね。

「日本の感性が入った経営」の手法

𠮷岡:だから何が起こるかというと、医療者の技術力が落ちるんです。例えば、外科なんか特に落ちますね。だって医者の数は同じだけいるわけだから、治療する数が半分じゃないですか。

でも、そこへ来て日本の若い先生たちが学ぶんですよ。そうしたらその技術をもって、今度は日本の子どもたちを助けていくでしょう。そうしたら、初めて円として完結するじゃないですか。こういうかたちだから、今は日本の大学病院をはじめとして、大きな病院の先生たちもすごく協力してくれてるんですね。若い先生にいろんな経験をさせるのは日本のためだから。

そういう感じで、僕の感覚では円を描くように、すべての善意も含めて完結させていくというのがすごく日本文化というか、日本の志向というか。日本の感性が入った経営じゃないかなというふうに、今は感じてます。

堀江:ありがとうございます。そうしたら私から、新病院の建設プロジェクトの応援方法などについてもご紹介をさせていただければと思います。

みなさんのお手元のパンフレットにも詳しい内容は書いてあるのですが、来年2025年の10月の開院まで、残り11ヶ月となっております。円安の影響などもあり、この開設に必要な残り4億円が不足している状況でございます。

ご支援方法としまして、現在企業パートナーを募集しておりますほか、個人としても任意のご寄付額をお選びいただき、100万円以上のご寄付をいただいた方には病院の名誉ファウンダーとして、世界の命の格差をなくす拠点にご自身のお名前を後世にわたり残していただくことができます。

そして、スクリーンが見えておりますでしょうか。開設後の病院内に、ご自身のお名前を載せた記念プレートも飾らせていただくなど特典もございますので、オンラインでご視聴いただいてる方も、よろしければご検討いただければと思います。

パートナー企業は一部のご紹介にはなりますが、ご覧の会社さまがすでにご賛同くださっております。ありがとうございます。

国内外で幅広く活動するジャパンハート

堀江:また、ジャパンハートでは国内外の活動を幅広くご支援いただけるマンスリーサポーターというプランもございます。ご自身が関心を持たれた分野に合わせて、私たちと一緒にジャパンハートの一員、ファミリーになっていただけたら非常にうれしく思っております。

ジャパンハートの公式LINEがございまして、まだお友だちの登録やSNSフォローが済んでいない方もぜひこちらを。なんで登録をするかといいますと、私も登録しているんですが、現地の病院の進捗情報、あとは最近だとYouTubeで看護師さんがなぜ・どのような思いで働いてらっしゃるのかという(情報を発信しています)。

実際の現地の声は、行けない方は特にお聞きすることはとても大事だなと思っております。そちらも日々発信しておりますので、ご登録をお願いいたします。スライドのQRコードから携帯でもアクセスすることができます。

先ほど先生が仰っていた「円」というと、こうして今ここに来てくださってる方もそうなんですが、今はオンラインでもSNSでも、どんなかたちでも遠くの人とつながることができると思います。

今日ここに来てくださった方、そして今オンラインでご視聴いただいている方との「縁」を大事にしていけたらなと思っております。ということで、ここでオンラインでご参加のみなさまとはお別れとなります。ありがとうございました。

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