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ミドル層が組織成長のキーになる!〜働きがいを高める、一生働きたい職場の作り方〜(全4記事)

給料や人間関係が良いだけでは部下は満足しない メンバーの「働きがい」を育む5つのステップ

組織の持続可能な成長と革新を実現するカギとなるのが、ミドル層のリーダーだと言われています。本イベントでは『もう、転職はさせない! 一生働きたい職場のつくり方』著者の田岡英明氏が登壇し、働きがいのある職場の作り方について明かしました。今回は、メンバーの「働きがい」を育む5つのステップをお伝えします。

タテ・ヨコ・ナナメの「相互理解」を促進

田岡英明氏:さて、そんな組織(多様な価値観を活かしあうサークル型の組織構造)を作るための5つのステップということで、みなさんにお伝えしていきます。1つ目は、タテ・ヨコ・ナナメの相互理解を促進していきましょうということです。多様性の時代なので、互いの違いを認め合うとか、関係の質を高めることをお伝えしています。

相互理解からスタートすることに関して言うと、ダニエル・キムという方が組織の成功循環モデルを提唱しています。非常に近い考え方なのでちょっとお伝えすると、組織には関係の質、思考の質、行動の質、結果の質の4つが回っているんだと言っています。

ダニエル・キムは、多くの組織がバッドサイクルを回していると言っています。左側に書きましたけど、バッドサイクルというのは、マネジメントとしても経営層としても結果から始まるわけですね。「結果が出なかったらお前らの給料も出ないんだぞ!」みたいな感じですね。そうすると、対立、押しつけ、命令する、関係の質が悪化すると言われています。



結果だ、結果だと言われますので、大きな成果を出さなきゃいけないとなってしまうんですよね。なので「俺はそんなにやれないよ、そっちでやってくれよ」というかたちで関係の質が悪化するわけです。

関係の質が悪化すると、思考の質が「なんかこの組織おもしろくないな」「受け身で聞くだけでいいや」となっていって、行動も受け身になって、結果も出ないというバッドサイクルに陥ります。

ダニエル・キムは、そうしたバッドサイクルが散見される中で、グッドサイクルを回してくれと。グッドサイクルは関係の質から回しますので、お互いに尊重して一緒に考える。関係の質が高いので、気づきがあって「おもしろいね」という思考の質が高まる。

思考の質が高まるので、行動が自発的になっていき、結果が上がると。するとさらに信頼関係が高まるのが好循環モデルです。ぜひこの好循環モデルをみなさんに回していただきたいなということです。

メンバーのモチベーションを上げるには

関係の質から回しましょうねということに関して言うと、最近の流行り言葉は「心理的安全性」ですね。心理的安全性の高い組織は組織の成果が高いんだということも今、データとして実証されています。やはりこの関係の質から回すことは非常に大切です。



なので、ステップ1は相互理解を促進することから始めてみてください。朝礼、定例会議は雑談から入る。チェックインをするとかですね。あとは、プライベートをどこまで出すかは考えなきゃいけないんですけど、ある会社さんでは、メンバーのプロフィール集を作っています。ぜひステップ1として働きがいのある組織を作るために、相互理解を促進することからやってみてください。

そして2つ目は動機形成になります。ソロバンとロマン、共感と尊重のコミュニケーションと書きましたけれども。先ほどのミッションにも近いんですが、会社の理念があると思います。そこに対して我々はビジョンを「遠すぎず近すぎない組織のみんながワクワクする将来のありたい姿」と書いてあります。自組織のビジョンをどのように語っていますかということです。

自組織は10億円達成するんだというソロバンだけでは、どうしたってモチベーションは上がりません。やはりこのロマン、大義、志、興奮、思い。我々の仕事がどんなインパクトを社会に与えるんだろうという思いをしっかり語らないと、なかなか動機形成がされないんですね。なので「そんな組織になっていきたいですね」というビジョンをぜひ語ってほしいわけです。



心理学ではよくこのようなことを言うんですけど、こんな絵の海に行きたいですよねということよりも、やはりこんなバーンと大きい海のほうが行きたいわけですね。みなさんの語るビジョンが白黒になっていくと、向かいたくなくなりますので。

ぜひみなさんには、こんな明るい色の組織ビジョンを語ることをやってほしいということです。今、組織でどんなビジョンを語っているかなということも少し考えておいてください。

給料や人間関係が良いだけでは従業員は満足しない

これは有名な話なんですけど、お好み焼き屋である千房の中井(政嗣)さんは従業員の方々によく、「自分たちの目的は何だと思う?」と聞くわけですよね。その従業員の方は、「おいしいお好み焼きを作ることが我々の目的ですよね」と答えます。

そうすると中井さんは、「まぁそれもあるんだけどさ」と。「うちのお好み焼き屋さんに来てくれる人は、おいしいお好み焼きを食べながらビールを飲んで、『あー、おいしかった。明日もがんばろう!』と言って帰るじゃん。我々の組織の目的は、明日への活力を再生産する場を提供することなんだよね」と、従業員の方みんなに語るんです。

ですので、働いている方々のモチベーションはやっぱり高いんですね。ぜひみなさんも、メンバーが「そんな組織になっていきたいですね」と思えるようなビジョンを語っていただきたいなと思います。

そしてもう1つ、動機形成に関して言うと、このフレデリック・ハーズバーグの理論も押さえておいてください。これは二要因理論ということで、人のモチベーションに関して、2つの要因を伝えています。

1つは働きやすさの要因の衛生要因。1つは働きがいの要因の動機付け要因ですね。給料、人間関係、福利厚生は、不満足を減らすが、満足には至らないと言っています。満足に至るためには、責任ある仕事を任されている実感値とか、自分の仕事に対して上司から承認があるとか、達成経験の中で成長実感を感じる。こんな部分が満足を増やすんだと言っています。



このバランスが大切なんですが、ぜひミドル層のみなさんには、この満足を増やすところにどれだけ自分自身が関われるかを、押さえておいてほしいなと思います。

強みを生かしあう「協働意識」をつくる

動機形成に関して言うと、マズローの欲求5段階説も少し押さえておいたほうがいいと思います。このようなマズローの欲求5段階説は有名です。働いている方々の欲求としては、社会帰属欲求と承認欲求が非常に強いです。



社会帰属欲求というのは、つながりの欲求です。やはり孤立化していない状況を作らなきゃいけない。その上は承認欲求なので、自分自身の仕事に対して上司から承認があるというところを作っていかなきゃならない。承認欲求が満たされると、自己実現欲求に向かっていきますので、人は自律していきます。ぜひみなさんには、そんな状況を作っていただきたいなと思っています。

そんな会社(の例)として株式会社ピーターパンという船橋のパン屋さんの例も入れておきましたので、後でまた読んでいただけたらなと思います。



さて、相互理解から動機形成。そしてステップ3は協働意識になります。強みを生かしあう協働意識の醸成です。動機形成されて1つの方向に向かうんだけれど、従業員がバラバラで協働しなかったらなかなか組織成果が出ないので、やはりそこに協働意識、助け合うとか連携し合う醍醐味実感の仕掛けをしていかなければなりません。

今は多様性の時代なので、強みばかり持っている方ばかりではなく、ジグソーパズル型の組織運営が求められます。やはりある人の強みである人の弱みを賄っていくとかそういうことも大切です。あとは、ダイバーシティのマネジメントからすると、強みのマネジメントと言われたりもします。できないところをなくさせればミスがなくなると言われる一方で、強みが生きるとイノベーションが生まれるんだと言われています。

ですので、ぜひみなさんには一人ひとりの強みとか役割を明確に視覚化していただいて、自分自身の強みを生かして働いていく。そんな仕掛けもしていただけるといいかなと思っています。

現場で人を育てる3つのステップ

強みに焦点を当てるのは非常に大切です。沖縄教育出版という会社は、協働意識を生むために毎朝、朝礼でお互いに「ありがとう」と言い合う時間を作っています。あとよくあるのはサンキューカード、グッジョブカードを使いながら、お互いの協働意識を醸成することがされています。ですので、3つ目のステップとしては協働意識の醸成をぜひ作っていってください。



協働意識ができたならば、次は成長と改善に向けて切磋琢磨し続けるということになります。内省により成長を促しながら、人と組織の成長を仕組み化する。

現場で人を育てることに関しては3つのステップが大切になります。部下からすると、仕事を任されて、やり遂げて、振り返って初めて成長していきます。上司・経営層からすると、仕事を任せて、応援をして、やり遂げさせて内省をさせるということです。

この3つ目のステップで振り返らせることによって人は成長していきます。これは経験学習モデルの中でも同じことが言われていますけど、ぜひそのようなコミュニケーションを取りながら、一人ひとりの成長を促す。



そして、個と組織の相乗効果を増幅させるためには、やはりやる気と能力が業績につながっていきます。また、尊重と連携も組織の業績につながっていくとお伝えしています。ぜひみなさんには、やる気が上がる仕掛けや能力が上がる仕掛け。

あとはお互いが尊重し合う、連携し合う仕掛けもしっかり打っていただいて。その中で人と組織が成長していくような現場を作っていただければなと思います。

「〇〇な人ベストテン」で従業員にスポットライトを

1つ事例をお伝えすると、中里スプリング製作所という群馬県のバネ工場があります。ここの社長の中里良一さんは非常に有名なんですが、一人ひとりが成長していくということに対して、社長が本気でやっています。

やる気、能力を上げることに関して言うと、「挨拶の声が大きくて元気をくれた人ベストテン」とか、「お客さまの評判がいい人ベストテン」とか。いろんな評価基準で従業員個々人、いろんな方にスポットライトが当たるようにしている会社さんもあります。

個と組織が本当にがんばっていく、やる気・能力が上がっていく、尊重、連携が上がっていく。ぜひみなさんも、そのためにどんな仕掛けをしていこうかなと考えながらマネジメントしていただけるといいんじゃないかなと思います。

「成長サイクル」に見合った育成をする

さて、最後にステップ 5になります。相互理解が促されました。動機形成がされました。そして協働意識も育んでいき、人と組織が成長していく。そんな組織が出来上がっていきました。

そしたら、やはり評価という部分で、次につながるフィードバックをしっかり仕組み化していただいて、強みがどんどん発揮される現場を作っていってほしいと思います。

先ほどみなさんに課題感で出してもらいましたけど、全員が納得する評価はなかなか難しいと思いますが、ぜひ一人ひとりの成長につながるようなフィードバックをしてほしい。一人ひとりの成長サイクルに見合ったフィードバックが非常に大切になります。



草創期とか成長期、成熟期、衰退期、人は成長のいろんなサイクルを経験していきます。

その中で、草創期であれば小さな階段を作って成功体験を重ねさせるとか、成長期であればどんどん権限委譲していくとか。成熟期になったら、さらに新しい成長に向かわせるために新しい役割を担わせるとかをやっていかなきゃならないので。評価をすることが次の成長につながるようなフィードバックを、みなさんにはやっていただきたいなと思います。

評価に関して言うと、先ほど言ったとおりダイバーシティマネジメントはいわゆる強みのマネジメントがメインになりますので、強みに焦点を当てていくことが非常に大切です。そこに対してはピグマリオン効果が現れやすくなっています。

メンバーは上司の期待どおりに変わっていく

これはロバート・ローゼンタールという方が教育現場でお伝えした事例ですけれども、やはり上司が部下に対して、良い期待、肯定、ありのままに認めていく、受け止めていく。そうすると、ピグマリオン効果(他者から高く期待されると学習成績がアップしたり仕事の成果が上がったりする心理現象)が発揮されますので、どんどん部下は成長していく。

逆に、「いや、この部下はどうしたってダメなんだよな」と悪い期待とか否定、決めつけで接していくと、ゴーレム効果(周囲の期待によってパフォーマンスが下がる現象)です。部下はどんどんダメになっていくと言われています。ぜひみなさんには現場でピグマリオン効果を発揮してほしいなと思います。



さて、働きがいを育むために、サークル型のコミュニケーション設計についてもお話ししましたけれども。そのために、相互理解、動機形成、協働意識、切磋琢磨、評価の5ステップ(が必要)です。こんなふうにぜひ、ステップバイステップで、みなさんも現場で作り上げていただきたいなと思っています。

さて、みなさん、明日から何を実践しますか? ドラッガーが、組織は「普通の人たちが共通の目的のために、チームワークで非凡な成果を上げる仕組み」だと言っています。これを我々は『おおきなかぶ』でよくお伝えします。おじいさん、おばあさんが来て抜けなかったこの大きなかぶが、お嬢さんが来て猫が来て犬が来ても抜けなくて、そしてネズミが来て、やっと抜けたという物語です。

やはり筋骨隆々な人がいるわけでもなく、みんなの力を合わせながら大きな仕事をしていく。そのためにマネジメントのミドルのみなさんが活躍していく。それが非常に理想かなと思いますので、ぜひがんばっていただきたいなと思っています。

さて、明日からが本番です。今日は50分という短い時間で少し駆け足の部分もありましたが、参考になったものがあれば使っていただいて、ぜひがんばってください。では、私の時間はいったんここで終了したいと思います。みなさん、ご清聴誠にありがとうございました。

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